じゃむパンの日 の商品レビュー
なんだか一時期、すごく頻繁に本書のことを目にしたものだから、気になって気になって図書館で予約してみたら、まぁすごい数の予約が入っていた。で、やっとこさ借りることができた。 とりあえず余計な情報を入れずに読み始めた。「ズコーッ」という感じだった。あの、昭和の、ずっこけシーンの「ズ...
なんだか一時期、すごく頻繁に本書のことを目にしたものだから、気になって気になって図書館で予約してみたら、まぁすごい数の予約が入っていた。で、やっとこさ借りることができた。 とりあえず余計な情報を入れずに読み始めた。「ズコーッ」という感じだった。あの、昭和の、ずっこけシーンの「ズコーッ」が頭にまず浮かんだ。面白い。なんなんだ、この人は。というか、この人の家族は。桃を買ってきて包丁で切って「おぎゃー」という声を発するおじいさん。娘が血を吐いて入院しているというのに、「ベレー帽を買いに行く」というお母さん。大正生まれのおばあさんの口癖が「何くそっ!」というのは、面白さとともに苦労が偲ばれてなんだか胸がいっぱいになるし。 で、ご本人も面白すぎる。教習所で右折がなかなかできないとか、編み物が趣味だというから、こちらもそのつもりで読み進めたら、手袋の右手が5つ(あれ、4つだったかな。まぁ、どっちでもいいか)できたとか。「なんでやねん」だ、本当に。わりと不器用で名を馳せている私でもぶっとんだ。 途中、気になって、著者のことをググってみた。芥川賞を受賞していた。若くして亡くなっていた。 それを知ってから少ししんみりしながら読んで、気づいた。「ズコーッ」はいっぱいなんだけど、なんとなく淋しさ、切なさ、哀愁、郷愁があるのだ、このエッセイは。たまに出てくる小児病棟の話は、どの視点で書かれたものなのか。結局最後までわからなかった。そのずっこける感じと哀愁漂う感じがなんとも不思議にミックスしていて、なかなか他にはないエッセイだと思う。たぶん、記憶からこぼれ落ちて読んだことや内容が忘れ去られてしまう読書にはならないんじゃないかと思う。 それでもやはり「面白かった」と言える。関西人でもない私でも、むしろ関西には避けられているんじゃないかと思うほど関西に縁がない私でも、「なんでやねん」と何度もツッコんでしまった。いつもバスタオル一枚しか身に着けていない留学先のドイツ人て、なんやねん!なんでやねん! スパンスパンスパンと短い文章が、とても心地よい。説明がたりないはずなのに、わかってしまう文章。どちらかというと長い文章を書きがちな私にとってはとても新鮮だった。「今、私は短歌を読んでる?え?詩かしら?」なんて思ったことも。こんなふうにも文章を書いてみたい、そう思った。だから、このレビューでも意識してみた。 あぁ、この先、赤染晶子さんの作品が増えることはないのだと思うと、とても悲しい。 好みは分かれるかもしれないけれど、読んで損はない本だと、太鼓判を押します。ドン!
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オチがなんとも京都人らしくて 片方の口の端が2ミリ上がる。 スパッと切れた断面の綺麗なものを見ている感じ。
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赤染晶子さんの独特な面白世界。シュールなショートコントみたいな。最後の岸本佐知子さんとの交換日記もまたパラレルワールドへ飛んでいってしまってとても面白かった。パンの隅までジャム。
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思い出から最近のことまで、身の回りのあれこれや、近しい人とのやりとりがほんわかと綴られていて、とても良い。 この人の新作が読めないのは寂しい。
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んーわけが分からない、って話に始まり、小さい頃の思い出と、京都への思い、祖父母ことが散りばめらた不思議な魅力のあるエッセイ
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とても楽しかった。ジワジワくる感じ。かと思えば切ないとこもある。現代を生きる関東人としては、一昔前だったり関西だったりの、良くも悪くもゆるくて適当で他人の領域にズカズカ踏み込んでいく感じに憧れてしまったり。無いものねだりなんだろうけど。 著者の新しいエッセイがもう読めないのかと思...
とても楽しかった。ジワジワくる感じ。かと思えば切ないとこもある。現代を生きる関東人としては、一昔前だったり関西だったりの、良くも悪くもゆるくて適当で他人の領域にズカズカ踏み込んでいく感じに憧れてしまったり。無いものねだりなんだろうけど。 著者の新しいエッセイがもう読めないのかと思うと残念でならない。
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エッセイという括りでいいのかしらと思うくらい日常離れしてるお話が多い、というか赤染さんの書く文章が独特。 乙女の密告もそんな印象だったな~ 岸本さんとの交換日記が面白い。
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こんな風に世の中を感じ表現できる人が、今はもう居ないなんて。 出版までを支えた多くの人たちに感謝です。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日常にきっとこういう人がいたんだろうなぁ、って目を細めて懐かしむ気持ちになるエッセイ。今よりも色々と粗さの際立つ時代の話や、京都の話。自分よりも妻が読んだらどう思うだろうかと思ってしまった。
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フフッと笑いながら心が暖まっていく。 この無駄のない文章は何なのだろう。 ノートみたいなシンプルな装丁。 この人はもういないけれど ても生きている。
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