ボーダー 移民と難民 の商品レビュー
2023.7.22市立図書館 「紙つなげ!」のノンフィクション作家による入管問題に関するノンフィクション。初出は集英社クオータリー『kotoba』(2013春〜2014冬号、このときはたしか『ダブルリミテッド(←長年日本で生活する外国人労働者のこどもが陥る、日本語も母語も満足に話...
2023.7.22市立図書館 「紙つなげ!」のノンフィクション作家による入管問題に関するノンフィクション。初出は集英社クオータリー『kotoba』(2013春〜2014冬号、このときはたしか『ダブルリミテッド(←長年日本で生活する外国人労働者のこどもが陥る、日本語も母語も満足に話したり読み書きできない状態)』というタイトルだった、2020春〜2021春号)。掲載されていたときにきれぎれに目にしていたけれど、本になってまとめて読める日を待っていた。ありがたいことに夏休みの入り口といういいタイミングで順番待ちしていた図書館の本が手に入った。いまはちょうどテレビドラマ「やさしい猫(原作は中島京子の小説、読了済)」も放送中なので、いろいろ重なることも多そう。 入管問題に熱心に関わる弁護士となった大学の同窓生に著者が偶然にも再会したのが始まりで、入管、移民と難民に関わる現状を国内外で取材し、入管や外国人労働者をめぐるさまざまな闘いを追っている。牛久をはじめとした入管の問題はあちこちで聞いて知っていたが、数年前に鎌倉にできた難民支援施設(アルペなんみんセンター)のことはこの本ではじめて知った。仮放免になっても拘禁反応がでるほどだという過酷な入管収容の話ばかり続いていたので、心ある人の存在に著者同様なんだかほっとしてしまったが、このような場所が全国に増えていかないと救われるべき人が救われない。 ウクライナからの避難民(←微妙に言葉を使い分けている)への支援や、アフガニスタンから来ている人800人のうち100人余りが異例の規模で難民認定されたというニュースもあり、入管を巡る状況はよくなっていくと信じたいが、この本の刊行直前には世論も高まり提出がいったん見送りになった入管法改正案(強制送還停止規定の適用除外)は、けっきょく6月に成立してしまった。 「やさしい猫」のSNS上での反響を見る限り、一般的な人々の在日外国人への感情はまだまだ(なんでそこまで、と悲しくなるぐらい)厳しく冷たい。「入管に捕まっているのは偽装難民や犯罪者ばかりで厳しく弾いていかないと日本の治安が悪くなる」という思い込みをどうやって解いていけばいいのだろう。 この作品は著者が元日本語教師というバックグラウンドもあって、私自身と近いスタンスで技能実習をはじめとした受け入れ制度や日本に住む外国人の事情を(実感として)誠実に的確にとらえているので、こうした情報をなるべく多くの人に読んで知ってもらえたらいいなと願う。
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難民の受け入れ、入管の改善のために四半世紀に渡り闘い続ける「難民弁護士」の奮闘の日々を、現在入管に収監されている在留外国人の取材と共に綴られています。 先日、中島京子著「やさしい猫」で日本の信じがたい人権侵害・悪法について知り、かなり衝撃を受けたところ。 ウクライナ難民で始まっ...
難民の受け入れ、入管の改善のために四半世紀に渡り闘い続ける「難民弁護士」の奮闘の日々を、現在入管に収監されている在留外国人の取材と共に綴られています。 先日、中島京子著「やさしい猫」で日本の信じがたい人権侵害・悪法について知り、かなり衝撃を受けたところ。 ウクライナ難民で始まった話ではない。日本でも受け入れられていますが、日本の難民認定率は1%にも満たない低さ!! 果たして受け入れたその後は…? ウクライナ以外の国からの難民希望者の対応は…? 本書は、日本であまり知られていないその現実について綴られています。 無知・無関心は大きな罪を作り出す。 入管では、もし家庭や介護施設であれば犯罪になるようなことが罷り通っている。司法手続きなしで非正規滞在者を自由に捕らえることができ、無制限に収容できる。 入管法改正法案は更にひどい…。 助けを求め、希望を持って日本という国に渡ってきた人たちに申し訳なさすぎて言葉にならない。 いつか自分達が外国に助けを求めたとして、まるで犯罪人のように扱われ自由もなく、同じように扱われることをどう考えるのか。 人権侵害も甚だしい。 かつての「ハンセン病患者隔離」のように、ひっそりと人生を狂わされている人がいる。 『私たちを助けてくれるの?』 少女の声が頭から離れない。 本書は是非多くの人に読んで知って頂きたいと思います。
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自分のまわりの平安にしか目を向けない日々を送っているとこぼれてしまう問題を ちょっと視野を広げるだけで 不思議に思ったり疑問をもったりすることが出来る。 その問題についてネット検索はすぐに答えを出せそうに思うけれど じっくり考えながら答えを出すのは良書に出合うことである。 この...
自分のまわりの平安にしか目を向けない日々を送っているとこぼれてしまう問題を ちょっと視野を広げるだけで 不思議に思ったり疑問をもったりすることが出来る。 その問題についてネット検索はすぐに答えを出せそうに思うけれど じっくり考えながら答えを出すのは良書に出合うことである。 この本はまさにひとつの問題を提起してさらに考える機会を与えてくれる良書である 。 今の日本ががっかりする国とならないように考えていきたいと思う。 佐々さんは今、闘病中とのこと。 早くお元気になられますように。 次の作品を待っています。
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まだ読んでる途中だが、ウシュマさんの事件意外にも入管内での人権無視の体制 日本でこんなことが起きてるのか?!と悲しくなる。 また弁護士の児玉さんのTwitterに多数の「即帰れ」などのコメント 一部とはわかっていても同じ日本人なのかと悲しくなる。 自分自身も今まで無関心でいたこと...
まだ読んでる途中だが、ウシュマさんの事件意外にも入管内での人権無視の体制 日本でこんなことが起きてるのか?!と悲しくなる。 また弁護士の児玉さんのTwitterに多数の「即帰れ」などのコメント 一部とはわかっていても同じ日本人なのかと悲しくなる。 自分自身も今まで無関心でいたことも同様に情けなく思う。 自分がもし海外に行って、このような待遇を受けたらと思うといたたまれないし、その国を憎むだろう。日本はすごいだろ?良い国だろ?と心から言える国になってほしい。
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予想していたより読み進めやすかった。そして、かなり酷い想像をしていたにも関わらず、入管の収監者への扱いが酷かった。治安維持法と同列(より悪い)に述べられるなんて。ウィシュマさんのようなことが特別ではなく、恒常的な状態だなんて、おかしい。集団ですごす部屋のトイレに壁がない、ほぼ室内...
予想していたより読み進めやすかった。そして、かなり酷い想像をしていたにも関わらず、入管の収監者への扱いが酷かった。治安維持法と同列(より悪い)に述べられるなんて。ウィシュマさんのようなことが特別ではなく、恒常的な状態だなんて、おかしい。集団ですごす部屋のトイレに壁がない、ほぼ室内だけで過ごす、痛くて叫び続けたり血を貯められるほど吐くのに医療が受けられない…。四年収監されて仮放免になったナイジェリア人のエースがアルペなんみんセンターのクリスマスコンサートで脂汗を流してうずくまるように身体を曲げている(普通なら感情が揺さぶられるような合唱)のが、収容で極端に刺激がなかったための拘禁反応だと書かれていて、これが命からがら日本へ逃れてきた人に対する国の対応なのかと、恥ずかしくなる。 おかしいのは日本の社会構造も。みんなが嫌がる労働を「海外」からの技能実習制度に頼る。円安でどんどん日本離れが進んでいるのはむしろ自らを見つめ直す良い機会。安いカット野菜も、骨とり魚も、きれいにさばかれた肉も、もっと必要に応じて高くなればいいのだ。大学進学率が50%超えるのがおかしい。どんな仕事についても、一生懸命働けばそれなりの福祉や、仕事への尊敬を受けられるような社会構造を築くべき。 とまあ、色々なことを考えさせられた。★4にしたのは、収監される人たちがどういう事由でそれぞれそこにいるのか比率が分かりにくかったから。 これを読んで、少し知った私にできることは何だろう?難しい。
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心が痛い。 読んでいてこんなに心が痛むノンフィクションは、他にない。 罪悪感といたたまれなさに、何度も読むのを止めようと思った。 日本には「入国管理局」の名の下に、平然と人権を蹂躙して「正義」を標榜する機関がある。どんなに証拠を積み上げても、難民として認定することを拒んでいると...
心が痛い。 読んでいてこんなに心が痛むノンフィクションは、他にない。 罪悪感といたたまれなさに、何度も読むのを止めようと思った。 日本には「入国管理局」の名の下に、平然と人権を蹂躙して「正義」を標榜する機関がある。どんなに証拠を積み上げても、難民として認定することを拒んでいるという事実がある。難民認定にも人種・国籍の差別がある。そしてそのことを、日本人のほとんどが知らない。知ろうとしていない。ウクライナ避難民受け入れの美談に酔って、「日本は良い国だ」という偏向報道の歪みのままに、日本礼賛に旗振りをしている。 吐き気がする。 自分自身の無知と無関心の罪深さに狼狽えるばかりだ。 本書の終わり近くでは、鎌倉市の方々や市行政の方々の、温かい支援や難民支援に向けた国への働きかけのことが紹介されている。けれど、結局はそれも「善意」のレベルで止まっていて、国を変えるための「政治」には繋げられていない。子ども食堂に感じるのと同質のものを、ここにも感じる。 ささやかな善意の積み重ねは不可欠だ。それを否定するつもりは微塵ない。自分自身もそうして動いている人間の1人だ。 けれど、それは結局、隙間埋めにしかならない。大きく壁がくずれているところにいくらパテを塗ったって、風は入るし水は漏れるし、いつかは建物自体が崩れ落ちる。 佐々さんの本を読むと、いつも、何かしなければという責め立てられるような思いに駆られる。 何ができるのか?どこから始めればいいのか? 答えはないけれど、まずは動こうと思う。 読者の責任はそこにある。
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日本への移民と難民について、徹底した取材に基づいて詳細に描かれている作品…。移民と言えば、技能実習生…技能実習生がどんな経緯を辿って日本に来ているのか、今まで深く考えることはなかったなぁ…私の職場にも技能実習生はいるけれど、彼らがいなくなったら…今の仕事成り立たないだろうなって思...
日本への移民と難民について、徹底した取材に基づいて詳細に描かれている作品…。移民と言えば、技能実習生…技能実習生がどんな経緯を辿って日本に来ているのか、今まで深く考えることはなかったなぁ…私の職場にも技能実習生はいるけれど、彼らがいなくなったら…今の仕事成り立たないだろうなって思うとこの作品を読んで大反省しました!! そして、ウィシュマさん死亡事件で日本の入管・難民問題をほんの少しだけ知っていた程度だったんだと愕然としました。ウィシュマさん死亡事件は明らかになった事件であって、こういった悲しいことは過去にも起きていたんだと…本当に怖くなりました。 「国籍や在留資格に関係なく、すべての人が家族と一緒に暮らす、 迫害の恐怖から逃れる、不当な身体拘束から解放される、 あるいは、収容されていても適切な医療を受け、命を維持できる。 いわば当たり前の世界が私の夢です。」と語る、児玉弁護士の言葉が胸に残っています。この社会にある、目に見えない「ボーダー」を取り払うため、私には何ができるだろうか…考えさせられる一冊になりました。佐々涼子さんの作品は、どれも心を打つものですが、この作品も読めて良かったと思いました。
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日本人の人権感覚が問われている。女性、LGBTQ、高齢、障害、子ども、、、そして移民難民への対応。心優しい人もたくさんいる中、この問題が起きている原因は日本人の国民性なのか?閉鎖的、人見知り遺伝子?鎖国日本が生きやすいのか?それは正当化されることなのか? 日本人は多様性を受け入れ...
日本人の人権感覚が問われている。女性、LGBTQ、高齢、障害、子ども、、、そして移民難民への対応。心優しい人もたくさんいる中、この問題が起きている原因は日本人の国民性なのか?閉鎖的、人見知り遺伝子?鎖国日本が生きやすいのか?それは正当化されることなのか? 日本人は多様性を受け入れ難いのか? どうしたらいいのか考えさせられる。
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自分が暮らす国で起きている現実。 治安を、自国民を守ると言うある種の正義の遂行が善意の人々さえも追い詰め時に命をも奪う。 これは正義なのか。
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2023年9冊目。 佐々さんの本は必ず読んでいます。 イギリスがEUを離脱するというニュースが話題になっていた頃から、移民・難民の支援について関心がありました。 JICAから教材を取り寄せて、教科書的な情報以外のことも、自分なりには教えてきたつもりでした。 が。 この本を読んで...
2023年9冊目。 佐々さんの本は必ず読んでいます。 イギリスがEUを離脱するというニュースが話題になっていた頃から、移民・難民の支援について関心がありました。 JICAから教材を取り寄せて、教科書的な情報以外のことも、自分なりには教えてきたつもりでした。 が。 この本を読んで、日本の移民・難民に関する政策や、入管の実態を知り、言葉を失いました。 また、何となく知っているつもりでいた技能実習制度についても、詳しく学ぶことができました。 日本が値踏みされる状況になっていることに気づかされた時、驚いてしまいましたが、驚いた自分に嫌悪を感じました。 この本曰く、一面では、日本は経済大国でも人権国家でもないのだから… この問題は、関心ごとの一つになりました。 勉強していきたいと思います。
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