楽園とは探偵の不在なり の商品レビュー
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設定や世界観が面白い、というか魅力的でした。キャラクターも素敵。青岸が主人公のギャルゲーかよ、と思ったけど笑。 なんというか分かりやすく死にそうな、悪くて、同じような人たちが死ぬ。特に気になることや思い入れがないまま死んでいき、トリックも特殊設定から分かりやすかったのでハラハラやショックな展開、ひっくり返される展開はなかったけれど、最後まで通して読むとテーマ的にはそれで合っているかもしれない。 例えば大槻君が死んで、血塗れのコックコートだけが出てきてそこも含めて推理するとかだったらまた彼の思いや行動の真摯さも感じ方が変わってきたかも知れないけれど…それだと伝えたいテーマの意味がブレるから。天使のルールから外れて好き勝手する奴らが裁きを受けないのは何なんだよ、この世界は何がしたいんだよって打ちのめされた人達が抗う話な訳だから、これで良いんだと思う。
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2人以上を殺した人間の前に即座に天使が現れ、地獄に引きずり込まれてしまう…という設定の世界で、連続殺人事件に探偵が挑むミステリ。 登場人物が所々不自然な台詞回しをする点と、「2人以上殺すことはできないのに、どうやって⁈」という謎の解決策に驚きがあまり無い点と、「探偵の不在」が楽園...
2人以上を殺した人間の前に即座に天使が現れ、地獄に引きずり込まれてしまう…という設定の世界で、連続殺人事件に探偵が挑むミステリ。 登場人物が所々不自然な台詞回しをする点と、「2人以上殺すことはできないのに、どうやって⁈」という謎の解決策に驚きがあまり無い点と、「探偵の不在」が楽園である理由が解らない点が気になった。 登場人物の姓が覚えやすいのは好印象です。
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常木王凱が所有している常世島に集まった者たちが、次々に殺され犯人を探し出す探偵 青岸焦の活躍を辿る物語だが、「降臨」という状況下で、のっぺらぼうの顔を持つ天使が舞っているという設定がなされている.この状況下で人は2人目の殺人を犯すと地獄へ落とされることになっている.探偵事務所を運...
常木王凱が所有している常世島に集まった者たちが、次々に殺され犯人を探し出す探偵 青岸焦の活躍を辿る物語だが、「降臨」という状況下で、のっぺらぼうの顔を持つ天使が舞っているという設定がなされている.この状況下で人は2人目の殺人を犯すと地獄へ落とされることになっている.探偵事務所を運営していた青岸は降臨以降仕事がなくなり、島へ招待された.政崎、天澤、争場、報島がおり、料理人の大槻、執事の小間井、メイドの早倉、さらに青岸が乗った船に忍び込んだ伏見、常木の主治医 宇和島が館に居た.まず常木が殺害されストーリーが始まるが、青岸が次第に的を絞り犯人を推定していく過程が楽しめた.探偵事務所時代にいた赤城たちが事故で死んだ事件がベースになっており、伏見の島への潜入もある意味で重要だった.常木の悪行に復讐することをもくろんだ犯人を炙り出す青岸の推理展開が見事だ.面白かった.
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人を2人殺した人間は天使によって地獄に落ちるという特殊設定の元で、天国の存在を確かめに孤島を訪れた探偵が遭遇した「起こるはずのない連続殺人」の謎を解くという趣向のお話。単行本出版当時の各種年間ミステリランキングの上位に入ったようで、確かにこのタイプの作品を好きな人は一定数いそうな...
人を2人殺した人間は天使によって地獄に落ちるという特殊設定の元で、天国の存在を確かめに孤島を訪れた探偵が遭遇した「起こるはずのない連続殺人」の謎を解くという趣向のお話。単行本出版当時の各種年間ミステリランキングの上位に入ったようで、確かにこのタイプの作品を好きな人は一定数いそうな気はする。 だけど個人的にはいろいろ詰めが甘い印象のほうが残った。例えば悪天候でもないのにすぐ現場に来ようとしない警察の設定ってどうなのだろうか。地獄に落ちたことになった後で現世に戻ってきた人はいないんだから、地獄の存在なんて現世の人間が勝手に想像しているにすぎないのでは?天国の存在確認を主人公の行動指針に据えていることに違和感を覚える。 人が人を殺すとはどういうことなのかという定義付けも曖昧で、あのパターンではどうなるの?っていうようなケースがすぐ思い浮かぶんだけど、さすがにそこは気にしちゃいけないのかな。色々例をあげてたらそれだけで倍ぐらいの長さになりそうだし。 トリックに関しては本格のレベル的にどうなのかよく分からないけど、比較的オーソドックスな部類だろうか。そこまでの驚きは無かった。 たぶん探偵の存在意義を主人公が自問自答するシーンが本作の一番の読みどころで、過去の回想と絡めたエモい感じが出ていてそこは良かったと思う。
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文庫化したので速攻で手に入れて読んでみた。 斜線堂有紀さんを読むのはこれで2作目。 2人殺すと“天使”により地獄に堕とされる世界線。 そんな中、孤島で起きるはずのない連続殺人が起きてしまい… あらすじから既に面白いのは確定だなと思っていましたが、やはり面白かった。 2人以上殺せないから良いように感じるが、この仕組みを悪用する奴はいるし、それに巻き込まれる”善人”にやるせなくなってしまいました。 主人公の青岸も、天使により様変わりした世界の黒い部分の犠牲を受けた1人。 バックボーンがしっかり描かれていて、感情移入してしまいました。 ハッピーエンドとは言えないのかもしれないけど、結末がとても好きです。 いろんな意見があるのかも知れませんが、作中で宇和島が言っていたように、青岸の推理はある人を”絶望”から救ったと思います。 絶対に覆せない不条理にも、探偵としての使命を全うする青岸に胸を打たれました。 本格ミステリでありながら、ここまで切なくエモーショナルな気持ちになるのは初めてかもしれません。
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2人以上殺したら天使によって地獄に落とされるという世界観で、連続殺人が発生してしまうという特殊設定ミステリー。 SFのような世界だけど本格ミステリーで面白かった。 途中で挟まれる過去の話もよかったからその頃の事件をもっと知りたい!
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新しい本格ミステリーだった。 犯人はおおかた察しがついてしまったが、メッセージ性や世界観に引き込まれる作品。 斜線堂先生の作品は文体が読みやすくて好みだ。
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特殊設定ミステリ。映画化された屍人荘の殺人ではゾンビだったが、これは天使のいる世界での殺人事件。こういった現実とは違う世界でのトリックは、作者の力量が試される。本作は まあまあというところか?伏線が多数張られているが、回収方法が私の想定とは違った(ので真犯人も想定とは違った)。 ...
特殊設定ミステリ。映画化された屍人荘の殺人ではゾンビだったが、これは天使のいる世界での殺人事件。こういった現実とは違う世界でのトリックは、作者の力量が試される。本作は まあまあというところか?伏線が多数張られているが、回収方法が私の想定とは違った(ので真犯人も想定とは違った)。 神の試し、神の愛、アノディヌスは 違った使い方もあったのでは? と ぶつぶつ文句が言いたくなったので、星は辛口の3つ。 人を殺しても一人なら地獄に落ちない という設定は まだまだ使えそう。
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『二人殺せば地獄に引きずり込まれる』という制約のある世界観の中で、いかにして連続殺人は行われたのか?という単なる犯人当てミステリでは済まない物語である上に、『天使が裁くのならば探偵は必要なのか?』を始終問われ揺さぶられる感情の熱さと、天使の裁きの抜け穴を探す悪人はのうのうと生き延...
『二人殺せば地獄に引きずり込まれる』という制約のある世界観の中で、いかにして連続殺人は行われたのか?という単なる犯人当てミステリでは済まない物語である上に、『天使が裁くのならば探偵は必要なのか?』を始終問われ揺さぶられる感情の熱さと、天使の裁きの抜け穴を探す悪人はのうのうと生き延び、それを許せない善人の方はあっけなく死んでゆくという冷酷さの両方を浴びせられ、時々手を止めて咀嚼しなければいけないような濃厚な一冊だった。ただ、ラスト、謎はすっかり解き明かされ、前向きな雰囲気で締めてくれたところは美しかった。
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