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夏日狂想 の商品レビュー

3.8

32件のお客様レビュー

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2024/09/10

中原中也の詩に誘われるように読み始めた。明治の終わりに生まれ、大正、昭和と激動の時代を駆け抜けた野中礼子(長谷川泰子)が主人公。3頁にわたる文献を参考に執筆した著者の熱量が痛いほど伝わってきた。 詩人ランボーを愛した水本(中原中也) 水本と片岡(小林秀雄)二人の男に愛された礼子...

中原中也の詩に誘われるように読み始めた。明治の終わりに生まれ、大正、昭和と激動の時代を駆け抜けた野中礼子(長谷川泰子)が主人公。3頁にわたる文献を参考に執筆した著者の熱量が痛いほど伝わってきた。 詩人ランボーを愛した水本(中原中也) 水本と片岡(小林秀雄)二人の男に愛された礼子。故郷の広島を捨て、憧れの女優になるため東京、京都、そして再び東京へと…自由に恋をして夢を追いかけるはずが、男の世界では女の地位は低く、自ら発言する場所もない! 「いつしか男たちの夢を自分の夢にすり替えるような女になってしまった」と礼子が言うように、女が一人で生きることがいかに難しい時代だったか! 連日の空襲警報。東京の空を飛ぶB29に向かって「戦争の馬鹿野郎!」と叫ぶ礼子たち女の声が聞こえた気がした。 原爆から一年後、変わり果てた広島で出会った少女のために礼子は自分が見たことを書きたい、皆に読んで貰いたいとやっと文士の道を歩む決意をする。目指すものが見つかると、人は女はこんなにも強くなれるのか! ラストまでスピードが落ちることもなく詩人、中也のあの詩を礼子が唱えるあたりから涙、涙・・ そう、夏の真昼の暑い時、彼女は…

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2024/09/05

明治37年広島市生まれ、種苗問屋のひとり娘礼子の物語。 自他共に認める器量よしで、文才もある彼女が夢見たのは女優になること。目的を達するために、文筆家の男性と暮らしては、離れていく。現実の生活が重くのしかかるなか、恋愛に生きる彼女の日々の前半は、正直あまり興味が持てなかった。 ...

明治37年広島市生まれ、種苗問屋のひとり娘礼子の物語。 自他共に認める器量よしで、文才もある彼女が夢見たのは女優になること。目的を達するために、文筆家の男性と暮らしては、離れていく。現実の生活が重くのしかかるなか、恋愛に生きる彼女の日々の前半は、正直あまり興味が持てなかった。 後半、昭和に入り文筆活動を始めた頃からの礼子の生き方、考え方に筋が通ったものを感じてきた。戦時中、共に辛酸をなめた橘との日々は過酷だが、お互いに支え合う同志として、いい関係だなと思った。自分の思いを心に秘めて、生き残るために時代に合った女性を演じた彼女の心意気は、数々の経験がなせる技のように思えた。また、礼子の目線からみた戦争に、悲惨さとやりきれなさを感じた。 戦後、彼女は信念をもって、書くことを続けていく。エンディングは、礼子の気持ちに寄り添えて、これでよかったような気がした。 明治、大正、昭和と生き抜いてきた1人の女性の物語は、読みごたえがあった。読後、始めに書かれていた中原中也の「春日狂想」の全文を読んでみた。心に染み渡ってきた。

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2024/04/20

明治大正昭和を生きた女性のお話。 この時代の女性がここまで強い意志を持って生きたことは きっと現代の私たちが想像する以上。 広島の原爆ドームが陳列物産館だった頃の話は貴重だった。 中原中也のイメージがガラッと変わった。笑 ”髪を編んだり装飾具を身につけたり着飾ったりしてうわべだ...

明治大正昭和を生きた女性のお話。 この時代の女性がここまで強い意志を持って生きたことは きっと現代の私たちが想像する以上。 広島の原爆ドームが陳列物産館だった頃の話は貴重だった。 中原中也のイメージがガラッと変わった。笑 ”髪を編んだり装飾具を身につけたり着飾ったりしてうわべだけの人になるのではなく、思いやりのある柔和で平穏な人になりなさい” ”じっと待つんよ。気が熟すのをじっと待つんよ” ”生きているうちは生きたいように生きれば、ただそれだけでいいのさ”

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2024/03/19

淡々と。 熱いものを平たく。 こういう生き方もあるなぁと。 やはり老いたら、若い人に教えをこうていかねば。 そして、やりたいことは何歳でも諦めないこと。

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2024/02/02

2024.2.2 読了 この作者さんが こんな話を書くんだー。 読み進めていくうちに、 これは ほんとにあった話?と調べてみたら あったんですね。 大正から 戦前戦後にかけて、 激動の時代を 自分の気持ちに正直に 生きてこられた礼子。 いまなら 全然おかしくないけど、 ち...

2024.2.2 読了 この作者さんが こんな話を書くんだー。 読み進めていくうちに、 これは ほんとにあった話?と調べてみたら あったんですね。 大正から 戦前戦後にかけて、 激動の時代を 自分の気持ちに正直に 生きてこられた礼子。 いまなら 全然おかしくないけど、 ちょっと時代が早かった。 女が1人で 全てに責任を持って 生きていくだけでも大変だった時代。

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2023/08/30

2023.08.30読了。 2023年、36冊目。 久しぶりの窪美澄作品。 初期作品を気に入ったのでかなりの作品を読んで来ましたが、期待が高まり過ぎたせいで物足りなく感じる部分は有ります。 しかし、冷静に考えるとモデルになる人物も存在するのでそこまで奔放にストーリー展開出...

2023.08.30読了。 2023年、36冊目。 久しぶりの窪美澄作品。 初期作品を気に入ったのでかなりの作品を読んで来ましたが、期待が高まり過ぎたせいで物足りなく感じる部分は有ります。 しかし、冷静に考えるとモデルになる人物も存在するのでそこまで奔放にストーリー展開出来ないのは仕方が無いと思いました。 自分と同い年の作家さんだけに必要以上に期待してしまうのかも知れません。 満足度4.3/5。

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2023/08/24

礼子と共に生きている気分になることができた。 彼女は美しく、その周りを取り巻く男の人達は逞しくも幼くも欲深くもあり、彼女の人生を分厚く彩っていた。この本きっかけに中原中也の詩集を買って読んだが、背景を知った上で読む詩は学校の授業で惰性で読む時と印象が大分変わり面白かった。

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2023/06/24

外国の文化が広がり、自由だった大正から、豊かな昭和初期を経て、暗く貧しい戦争時代、そして戦後の生活が1人の女性の人生を通して伝わってくる。 二・二六事件、満州事変、戦時中の言論統制等、今の時代だからこそ改めて学ぶべきだと強く思う。 女性は10代で結婚するのが当然の時代。主人公の...

外国の文化が広がり、自由だった大正から、豊かな昭和初期を経て、暗く貧しい戦争時代、そして戦後の生活が1人の女性の人生を通して伝わってくる。 二・二六事件、満州事変、戦時中の言論統制等、今の時代だからこそ改めて学ぶべきだと強く思う。 女性は10代で結婚するのが当然の時代。主人公の礼子のように、夢や目標を持ち優秀であっても、ひとりで生きていくのは困難で、男の助けが必要なのは容易に想像できた。 賢いからこそ抱く社会への違和感、男性への反発、葛藤…。 令和になって女性の立場はだいぶ変わった。今の時代に生まれてよかった。

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2023/06/08

きっとモデルがいるんだろうと思いつつも、最後まで読み終わってから、ああそうか、と気づく程度の文学的知識しかなく…。でも女性の一代記としてはとてもおもしろく読めました。礼子は、結局自分を捨てたり、曲げたりはしていなかった。こんな生き方もあるんだな。 2023/4/20読了

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2023/05/22

大正から昭和を生きた礼子の生涯。 序盤から中盤は恋多き女という印象ですが、人生の後半で作家として花開く礼子。 女性の強さ、たくましさを感じられる1冊。

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