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タラント の商品レビュー

3.9

156件のお客様レビュー

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    38

  2. 4つ

    62

  3. 3つ

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2024/09/12

角田光代のタラントを読みました。 タラントの意味はタレントの語源でもあり、才能や賜物という意味です。 主人公のみのりは学生の時から仲間とボランティア活動で海外に行っていました。東京で暮らすみのりのところに、祖父の清美が東京に用事があると泊まって行きます。 戦争で夢を終えなかった、...

角田光代のタラントを読みました。 タラントの意味はタレントの語源でもあり、才能や賜物という意味です。 主人公のみのりは学生の時から仲間とボランティア活動で海外に行っていました。東京で暮らすみのりのところに、祖父の清美が東京に用事があると泊まって行きます。 戦争で夢を終えなかった、祖父の清美と夢を追い挫折して、また夢を追う孫のみのり。 自分の才能に夢を持って生きていけるのは20代前半までという感じはしますね。 その後夢に向かって進んで行けるのは、その夢を信じてまっすぐ進んでいく強い信念と才能だと思います。 私も、20代の頃は1度はヨーロッパの自転車のロードレースで走ってみたいと思ったり、有名な建築家になりたいと思ったりしました。 今の歳になって思うのは、毎日が充実している事は幸せだと思えることですね。 それにしても、この本は長かったです。 450ページ位ありましたが、半分でよかったです。笑

Posted byブクログ

2024/08/31

「比べたらだめだ。つらさの大小を、苦しみの大小を、失ったものの大小を比べた途端に、私たちは想像を放棄する。そして断絶してしまう。」(p.350) 2020-21年の読売新聞朝刊連載。あらゆる「タラント」が輝くこの五輪シーズンに読めてよかった。幸福も不幸も、選ばれた人のみに降り注...

「比べたらだめだ。つらさの大小を、苦しみの大小を、失ったものの大小を比べた途端に、私たちは想像を放棄する。そして断絶してしまう。」(p.350) 2020-21年の読売新聞朝刊連載。あらゆる「タラント」が輝くこの五輪シーズンに読めてよかった。幸福も不幸も、選ばれた人のみに降り注ぐのではなくて、この世に生を受けた誰しもが、なんらかの痛みを、喜びを背負う。それはなんにも、比べるものじゃない。 「知りたい」と願う、「知ること」の残酷さに直面する、自分を守るために「知らない」ふりをする、でもそれは結局できないこと。 だってきれいなだけじゃない世界も、きたない世界も、全部一つなのだ。「感情と感覚」を切り離すモノローグから始まって、でも誰より彼が、大きな感情の渦の中にいた。 彼が、もう一度感情を揺らす機会(それって一番、生きてるってことだと思う)を奪ったコロナ禍が憎くて、その中でできることをと、「跳んで」見せた若い輝きがあまりに眩しくてぼろぼろ泣いた。 戦争も地震も疫病も、自分の力ではどうしようもない、でも、生きているわたしたちにはできる何かがある。 主人公の大学の先輩の市子や後輩のムーミン、甥っ子の陸、夫の寿士といった脇を固める“良識派”の造形がいい。市子さんのいう、「来世で幸せになりたいからいいことをするのと、いい気分になりたいからいいことをするのはあまり違わない」(要約)といった言説は慈善活動につきまとう「偽善」の呪いから多少は解放してくれる気がする。 いいことをするのではない。いやな気持ちになりたくないだけ。誰かを幸せにしたいのではない。自分が不幸になりたくないだけ。 それで自分も他人も傷つかずに生きていけるなら、「偽善」もなにも悪いことじゃない。 「立っていられなくなるくらいの恐怖につかまりそうになったら、そこから逃げていい。きれいなものだけ見たかったら、きれいな世界にだけ目を向けていればいい。それがきれいごとでもまやかしでも、とりあえずはそれでいい。だいじょうぶだと思えるまで、そうしていればいい。」 陸が課題図書を託されたように、いろいろな人の夏に、一石を投じ、支えとなる考えや言葉をもたらしてくれる著書であると思う。 本には、力がある。 そう思わせてくれる、改めて信じさせてくれる一冊。

Posted byブクログ

2024/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

義足アスリートの物語と思って読み始めたが、作中のキーマンとなる高跳び選手は第五章に入るまで登場してこない。「タラント」というタイトルは、神から与えられた天賦の才能、というより、なにを使命として生きるか、をテーマとしているのだと思う。 ボランティアに関わる主人公みのりと友人たちの、使命感や葛藤や後悔には共感できる部分が多かった。 物語はみのりの学生時代〜、祖父の清美の戦争体験、そして現在、という3つのパートが交錯し、不登校になってしまった甥の陸も絡んで、それぞれの人生に行き詰まった閉塞感がモヤモヤと長く続くため前半はなかなかページが進まない。 が、祖父の過去やパラ選手との交流が次第に明らかになっていき、最後の第八章で一気に感情を爆発させるところが素晴らしかった。ここまで読んできてよかった(涙)。 寡黙で滅多に感情を表さなかった祖父の、その沈黙は絶望だったのだとみのりは気づく。走ること、跳ぶことが好きで、そのタラントを持って生まれたはずの清美は、よく分からない戦争という暴力によって無理矢理戦わされ、いのちを使わされた。片足とともに自分が何を失ったのかすら分からず、何を返せと叫べばいいのかも分からない。その抑えた怒りと抗議の声は、今もなお世界の紛争地で戦わされる子供兵や、爆撃で足を失った少年の姿と重なって、どうしようもない悲しみが胸に溢れた。 ラスト数ページは、陸がのちに書いた清美の物語なのだろう。 実際には延期になってしまった2020年のパラリンピックで、「じいちゃん度の高いじいちゃん」はぶっちぎり最年長の選手として高跳び種目に出場し、空へと高く跳び上がる…、素晴らしいエンディングだった。

Posted byブクログ

2024/08/09

何事にも消極的なみのり。東京にちょくちょく通った片足の祖父。 二人をつなぐものは何か。 物語はみのりの現在、大学生の頃、社会人になってから、じいちゃんの断片的な記憶からなる。 表紙の絵から義足の高跳び選手の話かと思ったが、実際はみのりの行っていた貧しい国での子供の支援の話が...

何事にも消極的なみのり。東京にちょくちょく通った片足の祖父。 二人をつなぐものは何か。 物語はみのりの現在、大学生の頃、社会人になってから、じいちゃんの断片的な記憶からなる。 表紙の絵から義足の高跳び選手の話かと思ったが、実際はみのりの行っていた貧しい国での子供の支援の話がメインだった。 子供の支援からパラリンピックの話題まで色々あったが、結局何が話題だったのかちょっと分からないところがあった。

Posted byブクログ

2024/08/09

奈倉有里さんと逢坂冬馬さんの「文学キョーダイ!」で激推ししていたので、期待して読む。ハードル上げすぎたかもだが。 前半、今一つ乗れず、一気読みと言うわけにはいかなかったが、後半はスピードアップ。 ムーミンの声のくだりは、病院の待合室で読んでいたのだが、落涙してしまった。 心霊現...

奈倉有里さんと逢坂冬馬さんの「文学キョーダイ!」で激推ししていたので、期待して読む。ハードル上げすぎたかもだが。 前半、今一つ乗れず、一気読みと言うわけにはいかなかったが、後半はスピードアップ。 ムーミンの声のくだりは、病院の待合室で読んでいたのだが、落涙してしまった。 心霊現象とかではなく(作者もそう書いているが)亡くなった人の声が聞こえてくることってあるよね。 それは、その声の主のひととなりが内面化されているってことだ。だから、その人の心の中に、声の主は生きてるってことなんだよね。だから、肉体は無くなっても、その精神はいろんな人の中で脈々と生き続ける。 あー、ムーミンは生きてるんだなあと思ったら泣けてきた。 それから、讃岐うどん食べたくなったー!

Posted byブクログ

2024/08/09

 なんかこの小説には色んなことが詰まり過ぎていて、感想をまとめるのが難しい。角田さんの言いたいことがタイトルの「タラント」(才能)に集約されているのかどうかもよく分からない。  小説として内容がまとまっているかどうかは別として、角田さんは人の正直な気持ちを書いてくれる人だと思った...

 なんかこの小説には色んなことが詰まり過ぎていて、感想をまとめるのが難しい。角田さんの言いたいことがタイトルの「タラント」(才能)に集約されているのかどうかもよく分からない。  小説として内容がまとまっているかどうかは別として、角田さんは人の正直な気持ちを書いてくれる人だと思った。  主人公のみのりは大学でボランティアのサークルに入り、アジアや中東の貧しい地域や難民キャンプや国内の被災地などでボランティア活動をしていた。  そのサークルで出会った仲間の思いは様々だった。「ボランティアなんていい人ぶってるみたい」と抵抗を感じながらも、影響を与えやすい先輩に付いていくうちにいつの間にか世界の子供たちの現況を伝えるジャーナリストとなった玲子。目の前の子供に手を差し伸べるよりも先にカメラを構え、仲間の顰蹙を買うくらい野心的な報道カメラマン志望の翔太。市子は卒業してからフェアトレードの食品を扱う会社を立ち上げたが、市子の告白によると「人助け」よりも「美味しいものを世間に知ってほしい」「誰もやっていないことをしたい」という野心からの行動だという。  そして、みのりはというと「なんか面白そう」と参加したネパールのスタディツアーで、全く笑わない、人身売買された女の子がみのりの努力によって少しだけ心を開いてくれたことがきっかけで、「たったひとりの子供を助けたい」「あの子の普通と私の普通は繋がっている」と思うようになった。そんな思いを大事にして、社会人になってから参加したパレスチナ難民キャンプで、ある片足を失った男の子を助けたいと思い、逆にその子の命を危険に晒すような失敗をしてしまい、積極的にボランティア活動をすることが怖くてなってしまった。  みのりが特に片足を失った男の子を助けたいと思ったわけは、みのりの祖父の清美が戦争で片足を失っていたからであった。  家族に自分のことを全く話さない祖父の清美であったが、実は戦争で足を失う前はオリンピック候補になるくらいの陸上選手で、みのりが上京してからは度々東京にきて、義足陸上を始め、そこで出会った女の子が清美に励まされて、パラリンピックの選手に選ばれたことを知った。  そのことをきっかけにみのりの甥や夫とともにパラスポーツと義足について調べることになった。  みのり達が調べたところによると、第二次世界大戦後、戦争で足を失った人のリハビリのためにスポーツを提案した物凄いエネルギーを持った医者がいて、最初のパラリンピックは一回めの東京オリンピックだったこと。そしてパラスポーツの発展とともにどんどん良い義足が開発されるようになったことなどが分かった。その最初のパラスポーツを提案した医者は「足を失った人を助けたい」とかそんな優等生的な動機ではなく「自分の研究成果を広めたい」という野心からだったからかもしれない。でも、それでいいのだと思った。少しでも「自分に何か出来る」と突き進んでいくことが結果的にすごい社会貢献になる。それが自分に与えられた少しの「タラント」を使うことではないかと。  出会ったとき70代だった祖父の清美と7歳だった涼香がパラ陸上を通じて友情育んでいったことを知ったみのりは、シンプルにパラスポーツというものに興味を持った。「足にハンディのある人が義足の力を借りて頑張っている」のではなく、シンプルに「頑張っている人」だと知り、リスペクトした。そして、義足への興味と自分の海外でのボランティア経験から、やりたいことを見つけた。  この季節になると、毎年放送される某24時間放送の「愛は地球を救う」番組を観ると、確かに感動するのだが、「ハンディのない人」が「ハンディがあるのに頑張っている人」を高みから見ているような違和感があって、どこか押し付けがましい感じが拭えない。だけど、きっかけは何でもいいのかな。先ずは知ることが大切。そして、「いい人だと思われたいから」でも「可能性を広げる手助けをしたい」という野心からでもボランティアとか困難な人を助けることに参加してみることで、真にシンプルな友情が生まれるのが素敵なことだと思う。  もうすぐ、パリオリンピックが終わり、パラリンピックが始まる。パラリスポーツと義足のことを少し知ったので、パラリンピックに少し興味を持って観てみようと思う。

Posted byブクログ

2024/06/06

タラント どんな人にも それぞれ与えられた才能がある 小さい大きいは関係なく 一歩踏み出してみること

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2024/06/04

学生時代に国際ボランティアに明け暮れたものの、ある出来事をきっかけに情熱を失った主人公。主人公を取り巻く学生時代のボランティア仲間。学生の頃、陸上競技の才能を見出されオリンピック候補にもなったが戦争で片足を失い、感情を封印した主人公の祖父。その祖父が密かに通っていた競技会で出会い...

学生時代に国際ボランティアに明け暮れたものの、ある出来事をきっかけに情熱を失った主人公。主人公を取り巻く学生時代のボランティア仲間。学生の頃、陸上競技の才能を見出されオリンピック候補にもなったが戦争で片足を失い、感情を封印した主人公の祖父。その祖父が密かに通っていた競技会で出会い、その後パラリンピックの候補にもなった競技者。さまざまな人物が、何かを始めようとして挫折したり、批判されたり、不幸に見舞われたり、失敗を恐れて動けなくなることがある。でも、小さなことでも、社会の役に立たないことでも、誰にも褒めてもらわなくても、始めたらいいんだよ、というメッセージ。不自然でも、無理な設定でもなく、自然と読める。

Posted byブクログ

2024/05/31

「タラント」(角田光代)を読んだ。 ものすごーく良い物語だな。 全人類に読んでもらいたいと思ったぞ。 それぞれの人生において今まさにその第一歩を恐る恐る踏み出そうとしてる人もダラダラと惰性で歩いてる人も目標に向かってまっすぐに歩いている人も行き先を見失ってうろたえている人も...

「タラント」(角田光代)を読んだ。 ものすごーく良い物語だな。 全人類に読んでもらいたいと思ったぞ。 それぞれの人生において今まさにその第一歩を恐る恐る踏み出そうとしてる人もダラダラと惰性で歩いてる人も目標に向かってまっすぐに歩いている人も行き先を見失ってうろたえている人も立ち止まってクールダウンしている人もとにかくすべての人にだ。 本を読んで泣くのはいつものことだけど。 涼花と陸に惚れてしまうぞ。 あーしみじみと浸った。

Posted byブクログ

2024/05/26

前半は主人公の感情にモヤモヤする部分があってダレたけど、そのフリがあってか、後半から終盤までのカタルシスがあった。 主人公の自分語りの鬱陶しさと、きーちゃんとムーミンの人間的な魅力(2人とも強い!神様感!)のコントラストも印象に残った。

Posted byブクログ