オオルリ流星群 の商品レビュー
伊与原さんの新作は、夢をあきらめない中年男女を描いた群像劇だった。 高校3年の文化祭で、オオルリの“空き缶タペストリー”を共に作り上げた仲間たちが再会し、丹沢の山頂に私設天文台を作ることになる。45歳となった彼らは、それぞれの置かれた環境に不満や物足りなさを感じていて、27年振り...
伊与原さんの新作は、夢をあきらめない中年男女を描いた群像劇だった。 高校3年の文化祭で、オオルリの“空き缶タペストリー”を共に作り上げた仲間たちが再会し、丹沢の山頂に私設天文台を作ることになる。45歳となった彼らは、それぞれの置かれた環境に不満や物足りなさを感じていて、27年振りの共同作業に嬉々として汗を流す……。 いやあ、いいなあ。もう大満足の1冊。45歳定年制もなるほどと思えたし、カイパーベルトの話もエキサイティングだった。笑って泣けて熱くなれた。
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'72年生まれで理系な伊予原さんが描く世界は、懐かしい感じのキーワードが多くあって、世代的に刺さる。本作の中でも活躍するミニFMとかエアチェックとかもそう。また、'70~80年代のJ-POPがこれまた刺さりまくり。ター坊の「都会」とか、フツー出てこないので、こ...
'72年生まれで理系な伊予原さんが描く世界は、懐かしい感じのキーワードが多くあって、世代的に刺さる。本作の中でも活躍するミニFMとかエアチェックとかもそう。また、'70~80年代のJ-POPがこれまた刺さりまくり。ター坊の「都会」とか、フツー出てこないので、これはもしかしたら伊予原さんはファンなのか、、、。 そして、最後に出てきたユーミンの「ジャコビニ彗星の日」。これは知らなかったなあ~。思わず、Youtubeで聴いてしまいました。 梅ちゃんがどういう風に関与するのか最後までワクワクさせるいいお話でした。
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人物も天体も生物もみんな魅力的な一冊。 それぞれの事情があり、それぞれの向き合い方がある。 特別じゃなくてそれが当たり前。
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「ここで始めたかったんだよ。もう一度(P69)」 神奈川県の秦野市が舞台で、秦野に戻ってきたスイ子は、高校時代の同級生が28年ぶりに再会し、かつての仲間と共に手作りの天文台を作ることに。主要登場人物が全員45歳ということで、夢破れて地元に帰ってきたものもいれば、地元に残って事業を...
「ここで始めたかったんだよ。もう一度(P69)」 神奈川県の秦野市が舞台で、秦野に戻ってきたスイ子は、高校時代の同級生が28年ぶりに再会し、かつての仲間と共に手作りの天文台を作ることに。主要登場人物が全員45歳ということで、夢破れて地元に帰ってきたものもいれば、地元に残って事業を続けているものもおり、それぞれが悩みを抱えているが、仲間で協力して天文台を作っていくことでそれぞれが人生の大切なコトに気付いていく… 45歳が読み進めて行くと全員18歳に見えてくる不思議、30年前くらいのヒット曲もいろいろ出てくるので、45歳前後(ロストゼネレーション世代)の人には絶対刺さると思う。
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再生の物語。自分はゴリゴリの文系だけど伊与原新の作品は好きだな。梅ちゃんがかけた松任谷由実のジャコビニ彗星の日を30年ぶりくらいに聴いた。
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神奈川県秦野市。祖父から受け継がれている薬局で働く久志は、ある時友人から、高校の同級生・彗子が秦野の不動産を訪ねてきたという目撃情報を聴く。彗子とは高校の文化祭で、彗子を含め六人で大きな作品を作った縁がある。彗子は、その後東京の大学へ進学し、それ以降は音信不通だった。 45歳にな...
神奈川県秦野市。祖父から受け継がれている薬局で働く久志は、ある時友人から、高校の同級生・彗子が秦野の不動産を訪ねてきたという目撃情報を聴く。彗子とは高校の文化祭で、彗子を含め六人で大きな作品を作った縁がある。彗子は、その後東京の大学へ進学し、それ以降は音信不通だった。 45歳になった今、なぜ彗子は戻ってきたのか?久しぶりに会って聞いてみると、小さな天文台を建てたいということだった。資金がそんなにないため、久志を含め、昔の同級生が結集し、天文台を建てようと奔走する。そこで昔の知らなかった記憶がわかってくる。 伊与原さんは地球惑星科学を専攻していたこともあり、空や星といった知識を散りばめながら、幻想的な小説を手がけている印象がありますが、今回は星です。星や惑星に関する知識が多く紹介されていて、その描写は幻想的で、ついつい目で見たくなるなと思わせてくれます。 ちなみに題名の「オオルリ」は鳥の名前ですが、重要なキーワードとなっています。 高校の同級生達が結集して、天文台を作っていく姿に、年齢が変わろうとも青春だなと感じさせてくれました。 時折、童心に帰る若者を見ているかのようなハツラツさや無邪気な姿にいつの時代も変わらないなと思わせてくれました。 物語の舞台は神奈川県秦野市。都心から約1時間ながらも、自然に囲まれた場所です。 28年という長い期間は、色んな変化をもたらしています。文化祭に携わった六人は現在、弁護士を目指したり、引きこもりになったり、亡くなったりと様々です。 天文台を建てることがメインの話ですが、その他に要となるのが、高校生の知られざる過去です。 六人で作ろうとした作品ですが、突如一人脱退しています。なぜ携われなくなったのか?その事実もわからないまま、その人は亡くなります。その重要な鍵を握るのが彗子です。 彗子がどのような人生を歩んできたのか?なぜ天文台を建てるのか?明らかになっていくのですが、切ないの一言に尽きました。 謎の方は切ないのですが、天文台の方は青春を感じさせてくれます。久志と彗子が、天文台を建てるために土地や部品を探すために奔走です。 偶然すぎるでしょうとツッコミたくなるくらい、あらゆる偶然が重なって、完成していきますが、頑張っている姿に勇気をくれました。 なかなか45歳というと、大きな目標を立てなくてもいいかなと思ってしまうかもしれませんが、年齢なんて関係ないと思わせるような大きなプロジェクトに励む姿は羨ましもありました。特に引きこもりだった人が、プロジェクトに携わっていく姿は、ジーンときてしまいました。 仲間って良いなとしみじみ思いました。 明確な目標があれば、実現できるかもしれない。日常生活では、色々な不満は多くありますが、いつまでも挑戦し続ける姿に頑張ってみようと思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
高3の夏、文化祭に向けて仲間たちと作った巨大な空き缶オオルリタペストリー。あの時の6人の、28年後。 45歳になった今、自分たちはまだいまだに見えないものを見ようとしてもがいている。 あの時、起こっていたこと、思っていたこと、知らなかったこと、見えなかったこと。それは28年という時間の中でずっと心のどこかにくすぶっていて。でもそれを一人で直視することはできずにいる。そんな一人一人の心の動きが手に取るようで。お前にもあるだろう、と問われているようで。 あの時見上げていた星。それを目指して歩いていた時間。ふと気づくとその光は見えなくなってしまっていた。無くなってしまったのか、消えてしまったのか。 「星食」という言葉を初めて知った。見えないからってそこにないわけじゃない。今、ほんの少し今だけ他の星の影に隠れているのかもしれない。その見えない光を見るために、あの時、見失った光を探すために、45歳の青春がはじける。思い出を共有することはできない。それでもその思い出が始まったところからもう一度今を見つめることはできる。ラストシーン、見えない光が見えた。目を閉じて聞く光が見えた。
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