永遠についての証明 の商品レビュー
数学を題材とした小説と言われてすぐに思いつくのは『博士の愛した数式』。小説もさることながら、映画での寺尾聡の演技が素晴らしく、両方とも心に残る作品となった。博士がいた数学の世界はとてもやさしく美しいもので、数学とはなんの縁もないわたしにも、そのきらきらした光が見えるような気がした...
数学を題材とした小説と言われてすぐに思いつくのは『博士の愛した数式』。小説もさることながら、映画での寺尾聡の演技が素晴らしく、両方とも心に残る作品となった。博士がいた数学の世界はとてもやさしく美しいもので、数学とはなんの縁もないわたしにも、そのきらきらした光が見えるような気がしたのを覚えている。 しかしこの小説の中の並外れた才能を持つ三ツ矢瞭司は、数学を学ぶことの喜びを味わうと同時に、果てしない孤独に蝕まれていく。 答えが分かっても、それを証明することができなければ数学という学問は成り立たないようだ。みんなに理解してもらえるよう、そしてその証明に矛盾や穴がないように。 目的地に行くには、電車に乗ったり、車で行ったり、遠いところなら飛行機で行く。歩くことも必要になるだろう。そのどれかが間違っていたら、ちゃんとたどり着くことができない。でも瞭司はどこでもドアのようなものを使い、一瞬でそこに到着してしまう。 そんな瞭司の才能を、同じ大学の同級生である熊沢は、妬みながらも魅かれた。佐那はただただすごいと思った。3人は数学という絆で結ばれていたが、時が経つにつれ、それもだんだんほどけてしまう。人が変わっていくのは当たり前のことだ。それを成長と呼ぶこともできるし、挫折とみることもできる。でもそれぞれにちゃんとした事情があるのだ。 ひとり取り残された瞭司は壮絶な孤独感に襲われ、やがてアルコールに溺れていく。 すべての原因は瞭司の中にある弱さだ。 人間として成長できなかった。 誰も悪くなんかない。 周りの誰もが後悔の念や謝罪を口にするけど、もしまた同じようなことが起きても結果は同じだろう。なぜならみんな自分自身の人生があって、まずはそれを守らなければならないんだから。 だから最後はちょっと泣きそうになった。 プルビス理論の塵と弦理論のストリングス。 美しい森の真理。
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天才が堕ちていく描写がとても辛かった。 天才は孤独になりやすいという話をどこかで聞いた覚えがあるけれど、まさにそんな話だった。 数学の知識はないけれど、十分に楽しめました。 ただ、最終的な結末が微妙に感じた。意外とあっさり終わってしまった…
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天才的数覚をもった青年の生涯。 数学というものが苦手なため、物語中に出てくる理論などさっぱりわからないのだけれど、それでもなんて美しく熱いのだろう。同時に彼のその不器用さが、たまらなく、喉を締めつけるように苦しかった。 もしもの話をしても仕方がないし、あの過程を辿ったからこそ、そ...
天才的数覚をもった青年の生涯。 数学というものが苦手なため、物語中に出てくる理論などさっぱりわからないのだけれど、それでもなんて美しく熱いのだろう。同時に彼のその不器用さが、たまらなく、喉を締めつけるように苦しかった。 もしもの話をしても仕方がないし、あの過程を辿ったからこそ、それは証明されたのだろう。でも辛いね。
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数学の才に恵まれるが故に誰からも理解されない瞭司。大学の数学科で同じく特別推薦生である熊沢と佐那に出会い、彼らと友情を築きながら感性で数学の真理を追う瞭司は、その才能から周りとの関係を歪ませていく。 才能を持つからこそ周りの嫉妬や僻みにさらされ、次第に孤独になっていく様子が哀しい...
数学の才に恵まれるが故に誰からも理解されない瞭司。大学の数学科で同じく特別推薦生である熊沢と佐那に出会い、彼らと友情を築きながら感性で数学の真理を追う瞭司は、その才能から周りとの関係を歪ませていく。 才能を持つからこそ周りの嫉妬や僻みにさらされ、次第に孤独になっていく様子が哀しいし、妬む側の気持ちの方がより理解できるからなおのこと辛い。 数学のせいでばらばらになった彼らだったが、結局数学で繋がっていたのだと気付いた時には涙が溢れた。
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面白かったし悲しかった 誰にも理解できない数学と誰からも理解してもらえない孤独と そしてなんといっても酒 数学の話も面白かったけど人物それぞれの心情、背景がしっかり書かれているので没入感があって良かった 同じ部屋でみてるような感じ 私も目の前の現実なんてどうでもいいくらい何かにハ...
面白かったし悲しかった 誰にも理解できない数学と誰からも理解してもらえない孤独と そしてなんといっても酒 数学の話も面白かったけど人物それぞれの心情、背景がしっかり書かれているので没入感があって良かった 同じ部屋でみてるような感じ 私も目の前の現実なんてどうでもいいくらい何かにハマってみたい人生だったよ 天才は1人で死んだけど、ずっと数学の世界で生き続けるんだなと思った
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電車で読んで失敗した。涙が… 数学は数学者だけのものじゃないし、数学者にもいろんなスタイルがあっていいんだなって思わせてくれる。 でも、多様であればあるからこそ、自分にとっての何かを見つける苦労や苦悩は深くなるんだろうな。 子孫を残すというかたちじゃなくても、 偉業を成し遂げる...
電車で読んで失敗した。涙が… 数学は数学者だけのものじゃないし、数学者にもいろんなスタイルがあっていいんだなって思わせてくれる。 でも、多様であればあるからこそ、自分にとっての何かを見つける苦労や苦悩は深くなるんだろうな。 子孫を残すというかたちじゃなくても、 偉業を成し遂げるというかたちじゃなくても、 有名になって記録や記憶に残るというかたちじゃなくても、 人は永遠になれるんだろう。 蛇足。文庫版の表紙はもっと森のイメージに寄せてほしかったなぁ…
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数学者、数字を羅列するだけで1日はおろか気付いたら何日も…なんて話には聞くもファンタジーかと思っていた世界がここにあった。 それだけで世界が何層も広がった気がしている。読んで良かった。 ただ好き、を追求するのには暸司くんは天才すぎたのか。生き方って誰にも決められないはずなのにね...
数学者、数字を羅列するだけで1日はおろか気付いたら何日も…なんて話には聞くもファンタジーかと思っていた世界がここにあった。 それだけで世界が何層も広がった気がしている。読んで良かった。 ただ好き、を追求するのには暸司くんは天才すぎたのか。生き方って誰にも決められないはずなのにね。 アル中の辛い描写が胸に痛い。
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理数系を避けてきた私にとって、登場人物に嫉妬を覚えつつ読み更けた。 ただ、アル中にて逝去という おきまりのパターンは、いただけない。
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間違いなく今年のベスト5に入る小説に出合った。最後はもう涙が止まらなかった。美しくて愚かで、純粋で、この物語に出合えたことを幸せに思う。
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天賦の才に恵まれた数学者の栄光と挫折、そして彼を巡る周囲の葛藤を描く青春小説であり、真理の残酷さを説く人間ドラマ。文庫化に際し加筆修正が加えられたようだが、これがデビュー作とは到底思えない堂々とした仕上がり。ラストの展開は少々やり過ぎ感が否めないが、直感型の才覚に振り回され、周囲...
天賦の才に恵まれた数学者の栄光と挫折、そして彼を巡る周囲の葛藤を描く青春小説であり、真理の残酷さを説く人間ドラマ。文庫化に際し加筆修正が加えられたようだが、これがデビュー作とは到底思えない堂々とした仕上がり。ラストの展開は少々やり過ぎ感が否めないが、直感型の才覚に振り回され、周囲の変化に適合出来ない瞭司の生き辛さ。そして、嫉妬心と自己弁護から己の性分を受け入れられない熊沢の対比が絶妙。どちらにも感情移入出来るがゆえ、遣る瀬無さもひとしお。行き過ぎた天才にこそ、それを支える右腕的存在が必要不可欠なのだろう。
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