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ブラックボックス の商品レビュー

3.3

211件のお客様レビュー

  1. 5つ

    16

  2. 4つ

    62

  3. 3つ

    91

  4. 2つ

    24

  5. 1つ

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2022/04/15

文章が特別美しいわけでもなく、むしろ文法の正確性という意味では若者の独白らしく逸脱していて、馴染みのない用語も多く、それなのに不快感がない。 文章が正しいということ、文章が美しいということ、文章が快いということ、文章が感じさせるということは、必ずしもシルエットが重ならないのだと思...

文章が特別美しいわけでもなく、むしろ文法の正確性という意味では若者の独白らしく逸脱していて、馴染みのない用語も多く、それなのに不快感がない。 文章が正しいということ、文章が美しいということ、文章が快いということ、文章が感じさせるということは、必ずしもシルエットが重ならないのだと思った。 物理的な世界にではなく精神的な深さに物語は広がり、見方を変えればただウジウジと心中を吐露しいささかの脱皮を遂げる感じに、私が未だ掴めていない純文学の何たるかを垣間見た気がする。 サクマは社会不適合者のようでありつつ、今の世を生きる少なくない人々の中に大小様々のサクマがいるのだと思う。 今このときの閉塞感と、よりどころなくそこに身を置く者のモヤモヤした不透明感をよく表していると思ったが、後半になると特殊環境下での自問自答もとい禅自答の様相を呈し、なかなか寄り添えなくなってしまった。

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2022/04/14

主人公はまさに今を生きている人物。 衝動的で、楽な方を選び、難しいことは考えない。 先の読めない世の中だからこその処世術にも思えるが、なかなか共感のしづらい人物だった。 単調な日常の中で、今日と明日は似ていても違う、という言葉には、今を生きたい主人公にとっての大きな機転となるの...

主人公はまさに今を生きている人物。 衝動的で、楽な方を選び、難しいことは考えない。 先の読めない世の中だからこその処世術にも思えるが、なかなか共感のしづらい人物だった。 単調な日常の中で、今日と明日は似ていても違う、という言葉には、今を生きたい主人公にとっての大きな機転となるのかもしれないと思わされた。

Posted byブクログ

2022/04/13

疾走感があり軽い文章で短かったのでさくっと一気読み。 冒頭のシーンはほんとうに素晴らしい。主人公サクマの人間としての本質や価値がだいたいわかる。 それゆえ最初から最後まで、彼に共感できる人は少ないだろう。対人関係が下手でキレやすい。学歴コンプ、薄給、将来への不安、現実逃避。 いき...

疾走感があり軽い文章で短かったのでさくっと一気読み。 冒頭のシーンはほんとうに素晴らしい。主人公サクマの人間としての本質や価値がだいたいわかる。 それゆえ最初から最後まで、彼に共感できる人は少ないだろう。対人関係が下手でキレやすい。学歴コンプ、薄給、将来への不安、現実逃避。 いきなり刑務所に話が変わるのはさすがにぶっ飛びすぎててどうかと思ったけれど、まぁ簡単に堕ちる人間もいるのだなぁと納得させつつ、読む。 伝えようとすることはわかるけれど、大人からみるとやはりサクマが子供すぎて、あるいは少しの障がいをもった男なのか?と思うほど。 サクマの一人称で書いているためよけい、彼の独りよがり感が増していて、現実社会にむすびつけるのが難しくなる。 作者の次回作に期待。

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2022/04/10

【群像 2021年8月号にて読了】 芥川賞受賞作なので読んでみました。 作者の趣味の分野なのか、専門用語なども出てきますが、すんなりと読むことができました。 人はちょっとしたきっかけで転落する危うさを持ち合わせているのだと強く感じました。 それがふだんありがちなことであり、状...

【群像 2021年8月号にて読了】 芥川賞受賞作なので読んでみました。 作者の趣味の分野なのか、専門用語なども出てきますが、すんなりと読むことができました。 人はちょっとしたきっかけで転落する危うさを持ち合わせているのだと強く感じました。 それがふだんありがちなことであり、状況設定も現代そのもの。それがリアリティに繋がったのだと思います。 この作者は次はどんな作品を書かれのだろう? と思いました。

Posted byブクログ

2022/04/07

本当に現代は生きにくい世の中になっている。昔から生きにくい人は大勢いただろうが、現代はどうやって生きづらさから脱出できるのか、その術は単純ではない。 目に見えるヒエラルキーが確固としてあった時代は、諦めもつきやすかったし、それなりに生きていく手段もあっただろう。 でも現代は、一見...

本当に現代は生きにくい世の中になっている。昔から生きにくい人は大勢いただろうが、現代はどうやって生きづらさから脱出できるのか、その術は単純ではない。 目に見えるヒエラルキーが確固としてあった時代は、諦めもつきやすかったし、それなりに生きていく手段もあっただろう。 でも現代は、一見平等に能力に応じてチャンスがあるかに見えるがゆえに、その波に乗れなかったものたちの吐き出しようのない闇が深い。 淡々とその闇を描いた作品だ。ほんの少しだけの光が見えるところも切ない。 このリアリティがこの作品の価値だと思う。

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2022/04/07

第166回芥川賞受賞作。 いま流行りの個人で宅配を請け負う仕事を生業とする主人公。冒頭から危険運転で自損事故を起こす、不吉な予感から始まる。刹那的な生き方をする主人公の一人語りで進行する。タイトルが暗示する見えているようで、見えてない世界を浮遊する。 コンビニのバイトで知り合った...

第166回芥川賞受賞作。 いま流行りの個人で宅配を請け負う仕事を生業とする主人公。冒頭から危険運転で自損事故を起こす、不吉な予感から始まる。刹那的な生き方をする主人公の一人語りで進行する。タイトルが暗示する見えているようで、見えてない世界を浮遊する。 コンビニのバイトで知り合った彼女との間に子供ができるが、税務署から訪れた職員の何気ない表情から切れ、駆けつけた警官ともに暴行を働き刑務所に入れられる。ここでの生活から、主人公は外ではわからなかったゴールの感覚を理解していくが、脱力感さえ感じさせる思考からは先が見えないなか、どうなっていくのかの答えを提示せず、余韻を残して読者に事後が委ねられる。著者の感覚が投影されたような不思議な空気に包まれた小説である。

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2022/04/13

本を開いてみたら文章が好きだなと感じて読み始めた。リアリティが凄くて、自転車の描写、通り過ぎる人々、雨の一つとっても細かく書き込まれてたから読んでて面白かった。何が起こるんだろうとワクワクしながら読めた。個人的に文章がすごく好きだった

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2022/04/04

第166回芥川賞受賞作。 自転車便のメッセンジャー、サクマのお話。 ちょうど真ん中くらいに*があって、そこで場面が変わる。昨日、キリがいいからとそこまで読んで、今日、続きを読んだけど、話が変わっていてちょっとびっくりした。 誰もが、爆発したいような感情をなんとかコントロールして生...

第166回芥川賞受賞作。 自転車便のメッセンジャー、サクマのお話。 ちょうど真ん中くらいに*があって、そこで場面が変わる。昨日、キリがいいからとそこまで読んで、今日、続きを読んだけど、話が変わっていてちょっとびっくりした。 誰もが、爆発したいような感情をなんとかコントロールして生きている。とは言え、何がきっかけでタガが外れるかもしれないし、頭突きしたり、噛みついたりするかもしれない。 俺が一つの会社で続けて働いているのも奇跡みたいなものなのかもなとも思えてきた。

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2022/04/04

❇︎ ブラックボックス/砂川文次 ちゃんとしたい どこか遠くに行きたい 繰り返しから逃れたい そう考え続けたサクマが自分の中の 不快感を飼い慣らせずに爆発させた結果、 刑務所に入ることになる。 刑務所で刑期を勤める中、自分と向き合い 受け入れようとし始める。 変化はすぐに...

❇︎ ブラックボックス/砂川文次 ちゃんとしたい どこか遠くに行きたい 繰り返しから逃れたい そう考え続けたサクマが自分の中の 不快感を飼い慣らせずに爆発させた結果、 刑務所に入ることになる。 刑務所で刑期を勤める中、自分と向き合い 受け入れようとし始める。 変化はすぐには現れないが、誰にも徐々に 何かが変わる瞬間があるのかもしれない。

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2022/04/16

何をやってもうまくいかず、長続きしない主人公。 カッとなりやすくすぐに切れるからだ。 今は、主に書類を運ぶバイク便の仕事をしている。 日々の仕事、過去の出来事、これからのこと、同居人とのこと、自転車を走らせながら考える、葛藤する。 人を一歩下がったところで見ていて、何事にもあ...

何をやってもうまくいかず、長続きしない主人公。 カッとなりやすくすぐに切れるからだ。 今は、主に書類を運ぶバイク便の仕事をしている。 日々の仕事、過去の出来事、これからのこと、同居人とのこと、自転車を走らせながら考える、葛藤する。 人を一歩下がったところで見ていて、何事にもあまり関心を寄せず、そのくせ自分のことになると、見境がつかなくなり、手遅れの事態を招いてしまう。 人の性格や習性はそう簡単には治せないものだから、こういう厄介な自分を抱えてこれからも生きていくしかないのだろう。 同時に発表された、直木賞受賞作品にくらべて、だんぜんリクエストが少なく、すぐに手元に来たこの本。 芥川賞って、やっぱり取っつきにくいのかな。 第166回芥川賞受賞作

Posted byブクログ