ブラックボックス の商品レビュー
ブクログのレビューでしんどいとか共感できないとか割とマイナスな感想を目にしたのでどうかなぁと心配しながら読み始めました。 そういうレビューとは全然違いました。 共感を必要とする類の小説ではないし、内容も全くしんどくないです。 社会生活を違和感なく送ることができない主人公の声だけ...
ブクログのレビューでしんどいとか共感できないとか割とマイナスな感想を目にしたのでどうかなぁと心配しながら読み始めました。 そういうレビューとは全然違いました。 共感を必要とする類の小説ではないし、内容も全くしんどくないです。 社会生活を違和感なく送ることができない主人公の声だけで書かれた小説で、心の状態や考え方や感じ方などとても丁寧に表現されていて、刑務所生活を経て少し未来が見えて来る終わり方も良く、芥川賞候補になるのがわかる作品でした。 この主人公のような人、きっとたくさんいると思いました。 とても興味深い、良い小説だと思います。
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なんとなく感じている将来への不安を具現化してくれた気持ちよさがある小説。 会社に入り、訳もわからず加入させられる社会保険や保障。税金。年金。 社会の複雑なよくわからないもの、調べたら良いのだが何故かずっと分からないまま心の容量を圧迫しているものを放置し続けた末路がサクマなのかも...
なんとなく感じている将来への不安を具現化してくれた気持ちよさがある小説。 会社に入り、訳もわからず加入させられる社会保険や保障。税金。年金。 社会の複雑なよくわからないもの、調べたら良いのだが何故かずっと分からないまま心の容量を圧迫しているものを放置し続けた末路がサクマなのかもしれない、、、 小説で伝えたい事とは異なるかもしれないが、同居人など自分の理解者とはしっかり対話したほうが何事も円満に進めるコツかなと感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
なんたる詳細、なんとも緻密。なんだ、このリアリティは!? 「いける、とサクマは即座に判断した。判断すると同時に身体はもう動いている。サクマにとっての判断とは、思考というよりむしろ習性 — 過去の経験と現在との類似性を照合して当てはめるのではなく、その瞬間瞬間の環境に脊髄とか筋肉が反応するという点において — に近いものだ。」 冒頭すぐにある、こんな刹那を細密に描いた文章があり、驚いた。その後も終始この調子で、なかなかページを繰るスピードがあがらないもどかしさもあるのだが、ついついその実感のこもった描写を時間をかけて目で追っていた。 「すっかり燃やし尽くしたと思っていたあの感情がまたにおう。」 「とにかくおれのしたことと結果がブツ切れになっている」 こうした若さゆえか、主人公が若いからか、芥川賞作品でしか見られないような青臭い表現に触れることが出来るのも、受賞作を読む楽しみのひとつだ。 メッセンジャーというギグワーカーの主人公サクマが、事件を起こし服役する。その日々をひたすら内省的に、サクマ目線で社会を見据える。詳細な日々の描写が、外の世界でも、塀の中でも不思議なほど連綿とした繋がりがあるところが興味深かった。 それは、 「遠くに行きたかった。遠くというのはずっと距離のことだと思っていた。両親も弟も繰り返しを繰り返していた。おれは多分それが嫌だった。遠くに行きたいというのは、要するに繰り返しから逃れることだった。」 というサクマの思いとはウラハラのようで胸苦しい閉塞感が終始つきまとう。 が、意外と重くない。暗くない。 「ちゃんとするってなんなんだ。」 「自分はずっと遠くに行きたかった。今もそのように思っている。」 そんな自問を繰り返すサクマは、この後、なんとかなるんじゃないかな? そう思えた。
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ブラックボックスというタイトルは、何を意味しているのか? 主人公サクマの心情・脳か、サクマが入ることになった刑務所のことか? 原因と結果のつながりが不明であるということであれば、急にキレてしまい、しまいには刑務所行きとなるサクマの心の中のことかもしれない。 独居で50日間の隔離で...
ブラックボックスというタイトルは、何を意味しているのか? 主人公サクマの心情・脳か、サクマが入ることになった刑務所のことか? 原因と結果のつながりが不明であるということであれば、急にキレてしまい、しまいには刑務所行きとなるサクマの心の中のことかもしれない。 独居で50日間の隔離で自分を見つめ直し、自分なりの心の整理ができてきたのに、最後、差し入れられた本にも手を付けられず、円佳からの手紙にも結局返事を書かなかった。人間、簡単には変われない、ぐるぐる回って同じ失敗を繰り返し(ループ)、遠くのゴールにたどり着くのは大変なのだ。
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同い年の男性が書いたこの作品に刮目し文章を食い入るように見つめながら、何が私と違うのか何が私と違うのかと、一度見通した自分の番号が無い合格掲示板を何度も見返し続けるような読後感がただよっている。怒りが怒りを呼び、昇華も爆発もしないままで無力感として沈殿する。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
都会を颯爽と走るメッセンジャーの話かと思って読み進めたら、なんと刑務所内の出来事にまで。 タワーマンションに住むつもりはもうないと表現されていたけれど人生、何処でどう転がってしまうか分からない。 格差問題って事でもなくただもう不運な話。堪え性のない、キレやすい性格…でも、サクマは自分に正直にいつも過ごしていただけ。 手は器用でも、生き方が不器用。そういう人間、いくらでもいるし、自分だってそうかもしれないと思ってしまう。 人間はいつだって1人なんだ…しみじみ思う。
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コレ内容がしんどいです。 疾走感はあるしテンポよく読めるんだけど、サクマが悲しい。 自分のいた環境に窒息感を覚え、仕事も続かず、飽きっぽく、学歴もなく。でもそんな自分じゃ駄目だって焦るのに投げ出すを繰り返して、ほんとに読んでて苦しかった。 後半戦はさらにシンドいことになってて焦り...
コレ内容がしんどいです。 疾走感はあるしテンポよく読めるんだけど、サクマが悲しい。 自分のいた環境に窒息感を覚え、仕事も続かず、飽きっぽく、学歴もなく。でもそんな自分じゃ駄目だって焦るのに投げ出すを繰り返して、ほんとに読んでて苦しかった。 後半戦はさらにシンドいことになってて焦りました。 サクマ、全然悪いやつじゃなくて、ちゃんと彼なりの理由があって行動してるのに、こうも上手くいかないとは。 最後は懲罰房での経験からの気づきとともに生き方への明るい未来の兆しがあったけども、けども。 今の若い人たちの将来が誰も彼も幸せであって欲しいーー。 芥川賞。 私設図書館にて。
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予備知識的に、なんかコロナで大変な世相を反映した社会派、というような煽りを、ちらぁっと見ただけだったので、なんとなく、コロナで大被害を被った業界の人のそこらへんの経済的健康的な困難を描いたものかねぇ、というような想像で読み始めた。全く違った。文章や語彙、文法がとても現代的なので、...
予備知識的に、なんかコロナで大変な世相を反映した社会派、というような煽りを、ちらぁっと見ただけだったので、なんとなく、コロナで大被害を被った業界の人のそこらへんの経済的健康的な困難を描いたものかねぇ、というような想像で読み始めた。全く違った。文章や語彙、文法がとても現代的なので、私のようなダイナソーにはちょっと読みづらかったのだが、総じてテンポがよいのでバランスよく読める。しかも、内容はかなり重く暗いのに、とても読みやすい。不思議な読み心地。この読みやすさは文章が平易であることもたしかにあるかもしれないが、主役の”サクマ"が、ある種異世界人ぽいというか、悩んでいるようで、なやんでないというか、他人事感があるというか、感情というか情動に障害があるような、脳味噌のどこかがノックアウトしてる感じ。芥川賞にありがちな、読了感がどうしようもない作品ではあるが、そんなに嫌な気分が後をひかない。 ジョン・アーヴィングの『サイダーハウスルール』を思い出した。あの、ホーマーのように、まあ、とりあえず全てを先送りにして、なんとなく、どの場所でも適応している風に、適応していない、あのどうにも説明しがたい雰囲気。そして、たまに頭真っ白になって爆発する。 P120 ”ここは全然ゴールでもなんでもないことをわかっていく。特に、こなれた振る舞いをする人間ー大体が累犯とか暴力団関係者とかその両方とかーを見るにつけ、なるほどここは最悪のゴールではなく、ある種の人間にとっては、例えば世間における社会人大学院とか海外転勤とか、要するに人生の一ステージに捉えられているということをまざまざと見せつけられた。” 目から鱗がおちた。
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時々感情が暴発し暴力行為に及ぶ自転車のメッセンジャー、サクマ。彼自身が持て余す心の動きをすくい取り刑務所で過ごして変わることへの望みが生まれる心境までを丁寧に綴っている。
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とても幸せとは言い難い他人の人生をただひたすら聞かされてる気分だった。ずっと「早く終わらないかなぁ」と思いながら、読み進めていった。 フォントのせいなのか、自転車に興味がないからなのか、読みづらかった。主人公も苦手。不良すぎる。 この本のメッセージをある程度掴むとするなら、最...
とても幸せとは言い難い他人の人生をただひたすら聞かされてる気分だった。ずっと「早く終わらないかなぁ」と思いながら、読み進めていった。 フォントのせいなのか、自転車に興味がないからなのか、読みづらかった。主人公も苦手。不良すぎる。 この本のメッセージをある程度掴むとするなら、最後の3ページで十分だと思った。
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