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母の待つ里 の商品レビュー

3.9

81件のお客様レビュー

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2024/09/02

人の生死やふるさとについて自分事として考えさせられる

本書は、見知らぬ山里をふるさとに見立て、そこで一人暮らす老婆を母親に仕立てる一見荒唐無稽な仕掛けによって、ふるさとでの親子体験を完璧な疑似ストーリーとしてメンバーに提供するカード会社のプレミアムサービスがあり、このサービスを高額な料金を支払ってまで利用する都会暮らしで、それなりの...

本書は、見知らぬ山里をふるさとに見立て、そこで一人暮らす老婆を母親に仕立てる一見荒唐無稽な仕掛けによって、ふるさとでの親子体験を完璧な疑似ストーリーとしてメンバーに提供するカード会社のプレミアムサービスがあり、このサービスを高額な料金を支払ってまで利用する都会暮らしで、それなりの社会的地位も経済力もある男女3人、最終的には4人になるが、彼らそれぞれの物語である。4人に共通しているのは、帰るべきふるさとを持たず、すでに両親がないことに加え、そろそろ老境に差し掛かっての孤独感や疎外感、寂寥感や虚無感そして何より心の拠り所のなさを抱えていることであろうか。無償の愛と真心、嘘のない言動で接してくれるかりそめの母親との一夜限りの交歓を通じて、4人は現実生活の中での自然と不自然、自由と不自由、幸福と不幸について深く考える機会を得る。終盤に自然といえば至極自然な想わぬ結末が待っているが、それが奇しくもサービスの利用者達をつなぐことにもなる。母親役を完璧に演じ切った老婆が最後に独白する寝物語が重く切なく心に響く。人の生死やふるさとについて自分事として考えさせられる著者らしいハートウォーミングな感動作である。

fugyogyo

2024/10/23

父のふる里を思い浮かべながら読んだ。 遠くに見える山。いちめん広がる田んぼ。茅葺き屋根の家(だいぶ前に建替えた) そしてみんな親切でユーモアあって、行くたびに心が洗われた。 それも直になくなる。自分もあの土地に暮らしてみたいと思うけれど現実は厳しいかなと思う。

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2024/10/18
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見逃してしまったNHKでのドラマ。 二週に渡ったのに、どちらも見過ごしてしまった。 予告を見て、これは絶対面白い!と思ったのに。。 本屋でこの文庫を見つけた時、最近、積読が増えることを気にして本を買わない自分が、絶対買おう!と、無意識に手にしていた。 (まあ、結局、同時に他3冊も買ったんだけど) 前半は、予告を見て予想していた通りの展開。 しかし、最後は想像もしていなかった展開。 でも、あれでしか終われなかったのだろうな。。 ちよさんは、とても懐の深い方で、どんな子供も包み、愛しむ人。 こんな方が母だと名乗ったら、完全に母になってしまうだろうな。 ある意味、本当の母親よりも深い愛情の人。 でも、最後に東日本大震災に実の子供と孫を亡くされていたことを知り、ちよさんは、ヴィレンジの母となっている時間の間、幸せだったのだろうか。。寂しくはなかっただろうか。。悲しくはなかっただろうか。。辛くはなかっただろうか。。と、思わずにいられなかった。 ああ、そう思うと、母と子は互いに傷を慈しみあっていたのかもしれないな。。と思った。 ひとときの麻酔のように、その時を過ごしていたのかもしれないと。 浅田次郎さんの作品は初めて読んだが、とても心地よい読了感だった。

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2024/09/10

初めての浅田次郎先生の作品 さらっとした文体、長くもない分量でこの引き込まれよう、感情移入、からの号泣 二親が生きていようともいなかろうとも、母とふるさとはそれぞれ…?

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2024/09/07
  • ネタバレ

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ふるさとを提供するクレジット会社のサービス。電話応対はAIか?ビジネスとしてありかも。相川橋の停留所を降り立ったとたんエキストラつきではじまる。独身で社長の松永徹。熟年離婚した室田精一。女医の古賀夏生。母親役のチヨさんが母親になりきり演じきって、臨機応変に対応してるのがお見事。温かい方言も心に沁みた。カード会社と限界集落が結託した嘘の世界なのだが、ちよさんの最期は擬似子どもの名刺を握っていて、他の子供たちも集まってきたというくだりは苦しくなった。現実は大震災で子を亡くしたちよさん。幸せだったのだろうか。

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2024/08/20
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浅田次郎さんの小説はいつも面白い世界を見せてくれる 人生に疲れ果てた寄るべない人々が、ありませぬふるさとと、いもせぬ母を求めてあの家を訪れる

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2024/08/18
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2024/08/01予約 8 思いがけないストーリー、どんどんのめり込んであっという間に読了。 読み終えるのが残念だった。 プレミアムカード会社の「ホームタウンサービス」を利用する還暦前後の3人。 大会社の社長、松永徹 病院勤務の女医、古賀夏生 会社の部長、室田精一 ヴィレッジで待つペアレントのちよ、彼女は疑似故郷の母親で、帰ってくる子どもの名字に合わせて松永、古賀、室田、になったりする。ちよの、AIではないのに臨機応変なクレバーさ、対してユナイテッドカードプレミアムクラブの吉野さんのAI疑惑。 どちらも現代にあっておかしくない、考えうるサービス。 ちよさんの、本物と間違うほどの子を想う情愛。ところどころ綻びが現れても、それも子を思うがゆえ、と心から思える。 対してAI吉野さん、こちらもなかなか洗練されたプロフェッショナルな受けこたえが、素晴らしいと思った。 ストーリーが進んでいくにつれ、ホームタウンサービスの裏側、各人のバックグラウンドが明らかになり、求める人、求められる人がいて成り立っているなら、否定するものではないと感じた。多分、この本のいいところは、人間っぽさが各所で見えるから。サービス契約(?)には含まれないラストの電話連絡がまさにそれ。 私はちよを始めヴィレッジの人々の訛りがわかりにくく苦戦したが、読んでよかった、おすすめです。

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2024/08/15

 故郷へ訪れるのは、60歳を超えた方たちであり、迎えるのは田舎の人達。  けじめをつける。 自分を納得させる。 自由は幸福なのか? 老後の生き方は人それぞれ。 正解なんてありゃしない。  思う存分、生きよう。

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2024/08/14

結構、すっ飛んだ設定ではありましたが。。。「お母さん」の東北弁が、なんか心地よい。3人とだいたい同じ年代なので、分かる気もする。自分の母親も、何があっても絶対的に自分の味方だし、いつもお腹いっぱい食べさせようとするし。また直ぐに「腹減ってないか」と聞くし。

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2024/06/06

仮に父母の生家があったにしても、この歳になれば誰しも付き合いはなくなるだろう。東京は人間関係が淡白で、血縁などは大切にするどころか、しがらみとされる場合の方が多いと思う。 たとえば、それぞれの人生を歩む兄と妹が、何年かに一度だけ親族の結婚式や葬式で顔を合わせたとしても、べつだん不...

仮に父母の生家があったにしても、この歳になれば誰しも付き合いはなくなるだろう。東京は人間関係が淡白で、血縁などは大切にするどころか、しがらみとされる場合の方が多いと思う。 たとえば、それぞれの人生を歩む兄と妹が、何年かに一度だけ親族の結婚式や葬式で顔を合わせたとしても、べつだん不仲だと言うわけではない。 そして悲しいことには、濃密な付き合いを避けてきた分だけ、孤独な老後が待っている。病院にも施設にもそうした老人が溢れており、むろん自分自身もその運命を辿っているのである。 だからそこ、この村に憧れた。村人たちは、何もないところだと口を揃えて言うが、東京に生まれ育った人間から見れば、ここには何もかもがあったから。

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