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母の待つ里 の商品レビュー

3.9

92件のお客様レビュー

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2024/09/02

人の生死やふるさとについて自分事として考えさせられる

本書は、見知らぬ山里をふるさとに見立て、そこで一人暮らす老婆を母親に仕立てる一見荒唐無稽な仕掛けによって、ふるさとでの親子体験を完璧な疑似ストーリーとしてメンバーに提供するカード会社のプレミアムサービスがあり、このサービスを高額な料金を支払ってまで利用する都会暮らしで、それなりの...

本書は、見知らぬ山里をふるさとに見立て、そこで一人暮らす老婆を母親に仕立てる一見荒唐無稽な仕掛けによって、ふるさとでの親子体験を完璧な疑似ストーリーとしてメンバーに提供するカード会社のプレミアムサービスがあり、このサービスを高額な料金を支払ってまで利用する都会暮らしで、それなりの社会的地位も経済力もある男女3人、最終的には4人になるが、彼らそれぞれの物語である。4人に共通しているのは、帰るべきふるさとを持たず、すでに両親がないことに加え、そろそろ老境に差し掛かっての孤独感や疎外感、寂寥感や虚無感そして何より心の拠り所のなさを抱えていることであろうか。無償の愛と真心、嘘のない言動で接してくれるかりそめの母親との一夜限りの交歓を通じて、4人は現実生活の中での自然と不自然、自由と不自由、幸福と不幸について深く考える機会を得る。終盤に自然といえば至極自然な想わぬ結末が待っているが、それが奇しくもサービスの利用者達をつなぐことにもなる。母親役を完璧に演じ切った老婆が最後に独白する寝物語が重く切なく心に響く。人の生死やふるさとについて自分事として考えさせられる著者らしいハートウォーミングな感動作である。

fugyogyo

2025/02/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

第一章を読んで「ん?」ってなり、第二章を読んで、ああ、これはふるさと疑似体験をする個人の短編ものかなって思って続きを読むと、ちゃんとした一つの物語であると気づく。おふくろとはなにか?ふるさととはなにか?核家族が当たり前となり、未婚のまま独身のまま生涯を過ごすのも当たり前となった。故郷は捨てられ墓仕舞い、集団墓地・供養、どんどんと過去は捨てられ親も捨てられ、自分が老いたときにふと立ち止まり振り返った時には何もかもがなくなっていた。そんな心の隙間に”母の待つ里”が存在したら? 物語に出てくる”母”がもうこれぞ母ってくらい母然としており、利用者の三人が三人ともハマってしまう様がよくわかる。自分はまだ母を亡くし2年目で、また母と寄り添って生活していたので演出者”母”を母として認める感覚が分からないけれど、このご時世、こんな需要はあるんだろうなって納得する。嘘と現実がない交ぜになりどう収めるんだろうと読み進めていくので時間があっという間に過ぎてしまった。ぐいぐいと引き込まれている仮想現実と現実の溶け合う母の待つ里は一泊二日50万円、さてこれはお高い?安い?

Posted byブクログ

2025/01/25

架空のふるさとを疑似体験できる高額なサービス。利用者は、それぞれの人生を懸命に歩み、世間的には成功者となった還暦世代の男女。みんな十分な地位や富を得ているが、各様に後悔や寂しさを抱えている。そんな男女を迎える「ふるさとの母」の言葉や様子が、なんとも素朴で温かい。しんみりと心にしみ...

架空のふるさとを疑似体験できる高額なサービス。利用者は、それぞれの人生を懸命に歩み、世間的には成功者となった還暦世代の男女。みんな十分な地位や富を得ているが、各様に後悔や寂しさを抱えている。そんな男女を迎える「ふるさとの母」の言葉や様子が、なんとも素朴で温かい。しんみりと心にしみる物語でした。

Posted byブクログ

2025/01/20

東北弁が読みづらさを生む一方で、リアリティと故郷感を醸成。 誰の胸にもある故郷を求める現代人の心理が細かく表されていた。

Posted byブクログ

2024/12/24

着地点がどこなのか、わからぬまま、里を訪れるゲストたちと同じような気持ちで読み進めた。 ラストを知ると、母の思いが胸に詰まる。 よく帰ってきたな… 帰ってきてくれる家族がいることの幸せを思う。

Posted byブクログ

2024/12/08

ぽっぽやの原作の人の最新作だった。日本人にとっては共通の文化となる、古き良き田舎とノスタルジー。実体験がなくても共感できるはず、自分らの世代にとっては「母」ではなく「婆ちゃん」に置き換えれば感情移入しやすい。ここであまりネタバレするわけにはいかないが、自分も民宿に泊まる度に似たよ...

ぽっぽやの原作の人の最新作だった。日本人にとっては共通の文化となる、古き良き田舎とノスタルジー。実体験がなくても共感できるはず、自分らの世代にとっては「母」ではなく「婆ちゃん」に置き換えれば感情移入しやすい。ここであまりネタバレするわけにはいかないが、自分も民宿に泊まる度に似たような体験をしたという感覚がある。しかし、最後の2ページが余分であった…日本人に共通する悲劇、そこに無理やり重ねなくてもよかったと思う

Posted byブクログ

2025/01/20

NHKのドラマは見損ねたのだけれど、キャストだけでも十分魅力的で・・・ 本は本でよかった。 母は母なんだなあ・・・ 遠野の言葉で語る昔話、よかった。 生きることを「生きるとはどういうことか」 改めて考えさせられる。

Posted byブクログ

2024/11/25

てっきり母親との残された時間的な話かと思いきや、ほぼSFの境地です。レンタル実家というべき、高額所得者専用の「理想のふるさと」。出てくる主人公たちが形は違えど「ふるさと」に嵌っていきます。ホラーではないです。SFという肌触りです。

Posted byブクログ

2024/11/10

少し先の話になるが、私も定年を迎える時期になると、何かが抜けてしまうような感覚なのだろうか? 独身ではないので、今はまだ何も考えられていないが、人の暖かさを感じる作品でした。

Posted byブクログ

2024/11/04

帰ることができる場所と、待っていてくれる人がいる。 田舎で育った自分には当然のことなんだけど、それが当然じゃない、『不自然』な人がたくさんいる、それが今の日本のひとつの姿らしい。 今も田舎に住み、都会暮らしになんの憧れも抱かない自分には今ひとつ想像ができないことなんだけども。

Posted byブクログ