聖なるズー の商品レビュー
「正欲」(朝井リョウ)の次に読んだ作品。 「正欲」が性を取り扱った作品だからこそ、本書を選んだ。 単に可愛いというだけで犬や猫を飼うが、 どこまで真剣に動物の性を考えているだろう。 自分たちが人を愛するのと同じ感覚で、動物を愛して、動物にも性欲があり、それをどう受け止めてあげ...
「正欲」(朝井リョウ)の次に読んだ作品。 「正欲」が性を取り扱った作品だからこそ、本書を選んだ。 単に可愛いというだけで犬や猫を飼うが、 どこまで真剣に動物の性を考えているだろう。 自分たちが人を愛するのと同じ感覚で、動物を愛して、動物にも性欲があり、それをどう受け止めてあげることができるか、を考える人たちがいる。 動物性愛。 これを動物虐待と呼んでいいのか。 動物の声や気持ちを正確に分からない人間が、「それ」が愛なのか、虐待なのか、「それ」を法律や社会が決める事はできるのか。 自分にまったく発想もできない価値観に出会えることこそ、読書の醍醐味。 どこまで真剣に自分たち人間の性について考えているだろう、というところまで踏み込んで書かれており、作者さんの粘り強い取材のおかげで、深く、多面的な見方を学ばせていただいた。 性を扱うからこそ、人間の本質に迫ることができていると思う。
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普段の生活や属するコミュニティからは知り得ない世界。 これこそが読書体験か。 異世界からは幾分近づいたが、まだドイツ程の距離感
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パーソナリティとは、自分と相手の関係性の中から生じ・発見され・楽しまれ・味わわれ・理解されるもの。「キャラクター」が誰から見てもある程度変わらない固有の特徴なのに対して、パーソナリティは相互関係の中で生まれる揺らぎのある可変的なもの。 ズーたちは共通して動物にパーソナリティを見出...
パーソナリティとは、自分と相手の関係性の中から生じ・発見され・楽しまれ・味わわれ・理解されるもの。「キャラクター」が誰から見てもある程度変わらない固有の特徴なのに対して、パーソナリティは相互関係の中で生まれる揺らぎのある可変的なもの。 ズーたちは共通して動物にパーソナリティを見出し(見出され)ている。 ズーだけに限らず、自分と違う性癖に触れたとき、理解しようともせず真っ向から否定したり偏見を押しつけて相手を傷つけるのは避けたい。自分がどうあるべきか、正解はないことだからこれからも考え続けていく... 「誰かにとって、ある誰かが特別なのは、共有した時間から生まれるその人独特のパーソナリティに魅了されるからだ。それが揺らぎ続け、生まれ続けるからこそ、私たちはその誰かともっと長い時間をともに過ごしたくなる。同時に、その人といる間に創発され続ける自分自身のパーソナリティにも惹かれる」
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新たな世界 獣姦というではなく動物の意思をくみとり向こうがその気になればする 性的なことはタブー視とされるが最も原始的で感覚的なことだと思います そういう嗜好がない人も読んでみてほしいです
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こんな世界があったとは、読む前と後で動物性愛者「ズー」の印象がずいぶん変わった。 動物とセックスする人、についてこれまでの私の人生で耳に入ってきた情報といえば、岩井志麻子さんが5時に夢中で「田舎育ちは獣姦経験がある」と話していたことぐらいである。かなり昔のことだが、強烈すぎて忘れ...
こんな世界があったとは、読む前と後で動物性愛者「ズー」の印象がずいぶん変わった。 動物とセックスする人、についてこれまでの私の人生で耳に入ってきた情報といえば、岩井志麻子さんが5時に夢中で「田舎育ちは獣姦経験がある」と話していたことぐらいである。かなり昔のことだが、強烈すぎて忘れられない記憶だ。番組上ではネタとして扱われていたし、”現代ではありえない”と思っていた。 しかし、実際に愛情を持って犬や馬をパートナーとする人がいるという。人間の一方的な快感のために動物を利用するものと思っていたが、そういうことではないらしい。 ズーはパートナーの動物との対等な関係性を重視している。相手がしたくて、自分もしたいときにはセックスをするし、必ずしもパートナー関係にセックスは必要ではないようだ。そもそも餌をあげる側ともらう側で対等って成り立つの?というのが疑問ではあるが、誰に迷惑をかけるわけでもなく、本人と動物とが幸せに暮らしているなら外野が批判などする権利はないと思った。 ただ、私自身のセクシャリティの観点から気になることはいくつかあった。これはズーを否定するものではない。 ズーはセックスの始まりについて、「動物が誘ってくる」「自分にだけ特別な行動をとる」と言っているが、その人がいない時には他の人間を誘っている可能性はある。動物に対して共感性が高い人だけが、そのサインに気づいて、さらには動物を受け入れても良いと考えている人だけが、最終的な行為に及ぶ。 この本に出てくるズーの多くは、動物のペニスを肛門に受け入れる男性だ。その始まり方は動物の欲求のために共感性の高い人が利用されているようにも感じてしまうのだが、逆に動物が人間の欲求を嗅ぎ取って行動しているのかもしれず、動物の本音が聞けない以上、人間の解釈で物事は進んでいく。そしてズーたちが語るのは、パートナーとの関係は「愛」で成り立っているというものだ。 著者も触れているとおり、ズーのパートナー(多くの場合犬)は人間に惜しみなく愛をくれるし、常に人間を必要としている。だからこそズーは、自分の身体を、全てをパートナーに捧げられるのだろう。 人間同士の場合、粘膜と体液の接触で染症する病気が色々あるけど、人間と動物の場合はどうなるの?「犬の精液で子宮が満たされて幸せ」と語るズーの話があって、自分の感覚としては怖いなと思った。人間と動物、両方が性の対象となる人もいるそうなので、その辺りは気になるところである。
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◎最近読んだ本で最もよかった。 動物性愛というテーマで、こんなにも自己と他者の対等性を考えさせられるとは思わなかった。 ◎「言葉を交わせない動物との間に合意はない」という非難が出てくるが、言葉が必ずしも対等な関係性を担保するわけではないだろう。 言葉が本当の感情や想いを表すこ...
◎最近読んだ本で最もよかった。 動物性愛というテーマで、こんなにも自己と他者の対等性を考えさせられるとは思わなかった。 ◎「言葉を交わせない動物との間に合意はない」という非難が出てくるが、言葉が必ずしも対等な関係性を担保するわけではないだろう。 言葉が本当の感情や想いを表すことは少ないわけで、機微を取り零したり、そもそも本心とは裏腹のものであったりすることが多い。 また、言葉を発する前の関係性で、言葉には制限ができる(支配者―被支配者のような関係性では対等な言葉を交わせるわけはない)。 むしろ相手との対等性をおざなりにしてしまうのが、見せかけの言葉によるコミュニケーションなのではないか。 それに比べ、五感を研ぎ澄ませて、パートナーである動物の感情や欲望を察知し、対等な存在として共生しようとしているズーたち(動物性愛者)のほうがよほど他者に対して誠実だと感じた。 ◎日本での家庭動物(ペット)は、性欲をもたない「子ども」として扱われるという話もなるほどと思った。 ◎最後の、「友人」のくだりがとてもよかった。
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読んでよかった!!! 不思議な納得感とあわせて、最後愛について痛烈に批判した後、しかし果たして「愛なしで対等でいられたことがあったのか」「むしろ人間同士の方が対等であることの方が難しいのでは」と裏返っていくのが興味深い。 言及されているように、「対等性」が自分にとっても一番大き...
読んでよかった!!! 不思議な納得感とあわせて、最後愛について痛烈に批判した後、しかし果たして「愛なしで対等でいられたことがあったのか」「むしろ人間同士の方が対等であることの方が難しいのでは」と裏返っていくのが興味深い。 言及されているように、「対等性」が自分にとっても一番大きい問題点だったようにおもう。 言語や体格や種を凌駕して対等であるには、「動物は動物である必要がある」点こそ、「対等性」を解決しているようで、結局「支配」ともとれる余地を内包してしまっている。 >ズーたちにとって、ズーであることは、「動物の生を、性の側面も含めてまるごと受け止めること」だった。 これから生きていくにあたって、↑の文章が心に刻まれたのは間違いない!
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動物性愛者「ズー」を取材したノンフィクション本。ペット等と暮らした事がないので、最初は具体的な動物への性愛についてどこか遠い世界の事の様に読んでたけど…読み進めていく中で抽象度は高くなり、それは動物と人間の関係性だけでなく、人間と人間の関係性にも通じていき面白かった。愛とは何か?...
動物性愛者「ズー」を取材したノンフィクション本。ペット等と暮らした事がないので、最初は具体的な動物への性愛についてどこか遠い世界の事の様に読んでたけど…読み進めていく中で抽象度は高くなり、それは動物と人間の関係性だけでなく、人間と人間の関係性にも通じていき面白かった。愛とは何か?どうやって相手との対等性を維持するか?など、「愛」についての考え方の土台が揺らぎ、再構築された気がする。 愛は創造的である事を知った事や、新たな価値観をインプットできた事が良かった!
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動物と性行為を含めた恋愛関係を築くズー。共感はできないけど、この本を読んで少し理解できた気がする。気がするだけ。登場するズーたちの懐が深く、知的な人柄が印象的だった。 相手と対等に在るというのはすごく難しいと思う。色々と考えちゃったな。
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これは頭ぶん殴られた気分になる本。動物性愛といっても、さまざまにある。数週間動物性愛の「ズー」と共に暮らすことで、理解から入る。その愛が真実と語られるが、しかし、さまざまな視点からその性愛についてスポットライトを当ててゆく。どの立場の人たちの言葉にも理がある。反する立場の人たちに...
これは頭ぶん殴られた気分になる本。動物性愛といっても、さまざまにある。数週間動物性愛の「ズー」と共に暮らすことで、理解から入る。その愛が真実と語られるが、しかし、さまざまな視点からその性愛についてスポットライトを当ててゆく。どの立場の人たちの言葉にも理がある。反する立場の人たちにも別角度の理がある。そしてそれぞれに矛盾や都合の良い解釈がある。しかし、それは人間同士の性愛に対してもだ。遠い世界かと思っていたら、距離を詰められて殴られる感覚。一度読んでみてほしい。
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