聖なるズー の商品レビュー
夏休み-17 しらひなが、【私が読んだ中で一番ロマンチックで愛のことを真摯に考えた本】と推してくれたから、私は手に取れた。 性暴力を受け続けた著者が、セックスと愛を捉え直すために、ドイツで動物性愛について調査をする。ズーと呼ばれる動物性愛者と寝食を共にしながら、彼らの考えや、そ...
夏休み-17 しらひなが、【私が読んだ中で一番ロマンチックで愛のことを真摯に考えた本】と推してくれたから、私は手に取れた。 性暴力を受け続けた著者が、セックスと愛を捉え直すために、ドイツで動物性愛について調査をする。ズーと呼ばれる動物性愛者と寝食を共にしながら、彼らの考えや、それを否定する愛護団体の声や、人間のセックスについても広く耳を傾けながら、考え続けるノンフィクション。 テーマが衝撃的/未知の世界すぎて、正直読むのが怖かった。(セックスという言葉が出てこないページがない)なんかまだ、自分の言葉で語れないけど、動物の性欲にも目を逸らさず、丸ごと愛す生き方を一貫しているズーたちの言葉が、なんかたしかに非現実的でどこまでもロマンティックだなと思ってしまった。 でも著者は一冊を通して(あとがきでさえも)常に冷静で、ズーのことを受け入れたい、理解したいという気持ちでありつつ、どれか一つのセクシュアリティを肯定したり、否定したりしない。自身の経験から何か一つの正解に縋りたい気持ちではあろうに(ごめんなさいこれは勝手な見解です)、ありのままの彼らの言葉を受け止めて、濱野さんなりの考察をすすめていく考え方/書き方が、とてもよかった。 朝井リョウ「正欲」を読んだときには、"水"に性的興奮を覚えるセクシュアリティ(言い方合ってるかな)が大きく扱われていて、でもこれは「どうしようもないもの」であり、それを受け入れられない世の中に閉口するしかない/諦めた当事者のやるせなさを痛感した。 セクシュアリティ関連といったらそうだが、この本の中には、「ズーという生き方を知って、ズーになった」という人物が出てくる点で、「正欲」とは全く違うと確信した。「これはクルトの個人的な、性差別に抗う政治活動なのだ」という文、これだ。私たちは(少なくとも私は)限りなく狭いセクシュアリティと性に対する価値観しか知らない中で生きてきたということを突きつけられた。 最後には、人間より明らかに短い動物の寿命と死、出会ったズーの一人一人と向き合い続けたことによってできたパーソナリティ、ここまできてなお、ズーのパートナーとなるのは言葉でコミュニケーションを必要とする/裏切る「人間」ではなく、言葉の要らない/一生裏切らない「動物」と感じていることなど、考え続けて何年経っても湧き続ける疑問や新しい現実が畳みかけてくる。ぜんぜんまとまらないけど、とにかく読んでよかった。しらひなありがとう。
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ドキュメンタリーであるが、筆者の文章や描写が非常に上手く小説のように読めた。 愛や対称性ついてなど…いろんな角度から考えることの多いテーマだけど、読む価値あり。おすすめできる一冊。
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自分以外の生き物との対等な関係とは何だろう? 答えはまだ見つからないけど、考え続けたいと思った。 著者から切実な問いをいただきました。
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・ドイツではかつてユダヤ人への虐殺が行われており、それに付随する形で同性愛者などへの弾圧も激しかった。そのため戦後のユダヤ人差別の撤廃運動に伴い、様々な「性」を背景とする人々の抗議活動が活発化し、ドイツ社会そのものが性に関する活動にも寛容?(ある程度受け止める、認めるための土壌が...
・ドイツではかつてユダヤ人への虐殺が行われており、それに付随する形で同性愛者などへの弾圧も激しかった。そのため戦後のユダヤ人差別の撤廃運動に伴い、様々な「性」を背景とする人々の抗議活動が活発化し、ドイツ社会そのものが性に関する活動にも寛容?(ある程度受け止める、認めるための土壌が構成されるよう)になった。 →これまでドイツは性に寛容というか、SMなどを含む性活動に他の国よりも積極的なイメージがあったが、それが戦後の抗議活動を基とするものだとは思ってなかった。 ・作者が「暴力は意外にも生産的な行為である(怒り、悲しみなどを産むから)」と述べていたが、上記の性に寛容な文化の形成のように、戦争とDVも規模が違うだけで同じ性質を持っているのだと改めて感じた。 ・動物(パートナー)をありのままに受け止める・対等になることがズーの方たちの愛し方で、セックスはあくまで発生する事象に過ぎないというところが興味深かった。 セックスを愛に付随するものとして大切にしている人にとって、何かしらの理由・言い訳が必要な刹那的なセックスを肯定できないというのは動物性愛/人間性愛に関わらず理解できる価値観だと思った。
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著者の渾身の文章に引き込まれた。 動物の性欲を尊重し、動物と性行為をする人々が存在するということに驚かされたが、読み進めていくうちにそういうこともあるのかも知れないと思えた。 セックスとは何なのかということに対してもう一歩踏み込んで欲しかったが、自分の常識が覆される貴重な体験が出...
著者の渾身の文章に引き込まれた。 動物の性欲を尊重し、動物と性行為をする人々が存在するということに驚かされたが、読み進めていくうちにそういうこともあるのかも知れないと思えた。 セックスとは何なのかということに対してもう一歩踏み込んで欲しかったが、自分の常識が覆される貴重な体験が出来る本だった。
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動物性愛者を取材し、考察し、一緒に生活もしてみた筆者のノンフィクション。 少しだけエグい描写はあるが、色々と勉強になったし、考えることが増えた。筆者も述べているが、動物を飼う、一緒に暮らすということについて、ハードルが上がってしまった。 パートナーである犬や猫とは対等な関係だと、...
動物性愛者を取材し、考察し、一緒に生活もしてみた筆者のノンフィクション。 少しだけエグい描写はあるが、色々と勉強になったし、考えることが増えた。筆者も述べているが、動物を飼う、一緒に暮らすということについて、ハードルが上がってしまった。 パートナーである犬や猫とは対等な関係だと、人間が言っており、そこら辺はどうにも。対等とは。
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思ってたよりエグくなくて助かった。 ズーたちが理論武装してる感じにずっとモヤモヤしながら読んでいたが、第6章末文でそのモヤモヤが的確に言語化されていてスッキリした。
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すげぇ本です。このテーマで本にしたところがすげぇ。性虐待をテーマにしているのかと思いきや、読み進めると、虐待は性の一つの姿で、性(ジェンダー)そのものをテーマにしている。し、考察が深い。動物愛という超超少数派を対象を仔細に観察することで、ジェンダー全体に思慮が及ぶというスキームが...
すげぇ本です。このテーマで本にしたところがすげぇ。性虐待をテーマにしているのかと思いきや、読み進めると、虐待は性の一つの姿で、性(ジェンダー)そのものをテーマにしている。し、考察が深い。動物愛という超超少数派を対象を仔細に観察することで、ジェンダー全体に思慮が及ぶというスキームが素晴らしい。 動物愛をヘンタイとして差別視することを否定も肯定もしておらず、(公平な考察のため、友好的なインタビュー関係を築くため、動物愛を肯定発言するシーンは多いが、それに影響うけることなく、冷静な視点が続く。と同時に、否定もせず、筆者自身が受けて来た性虐待と動物愛はどちらが醜悪か比較するシーンもあり、さらに性虐待すら悪いと言ってない節すらある。)最後まで読み進めると、動物愛がヘンタイか差別対象か醜悪か、などの議論が、もはや「どうでもよくなる」という不思議。その境地に至って初めて触れることのできる「性(ジェンダー)」の真理がある気がする。、、、って、気にさせてくれる。。。
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朝井リョウの正欲が水を性的対象とする人間を描いた生ぬるいフィクションだったが、こちらは動物を対象とする人たちに迫ったドキュメンタリー。 知らないことだらけで衝撃だった。
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ノンフィクションライターで、人類学のセクシュアリティ研究者、濱野ちひろによる、彼女の修士論文を土台としたノンフィクション。ズーフィリアのある団体に所属する人たちを中心に行った人類学的調査の記録。ズーフィリアの人たち(本書では、「ズー」と略される。本稿でも以降、ズー。)は、日本語で...
ノンフィクションライターで、人類学のセクシュアリティ研究者、濱野ちひろによる、彼女の修士論文を土台としたノンフィクション。ズーフィリアのある団体に所属する人たちを中心に行った人類学的調査の記録。ズーフィリアの人たち(本書では、「ズー」と略される。本稿でも以降、ズー。)は、日本語で動物性愛者といい、一般的には異性愛や同性愛のように、動物への性的な興奮を覚える人のこと。本書では、一般的に「異常」「動物虐待」と捉えられかねない動物性愛のイメージに反して、聖人のように厳格な倫理のもとで動物を愛するズーの人たちを描いている。これを読むことで、ズーといわゆる獣姦と何が違うのかがわかる。また、全体を通してズーではない人間が社会をどう規定しているか、パーソナリティとは何なのか、愛とは、と多くのことについて自分の常識が狭い枠組みにとらわれていたことに気づかされる。
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