水中の哲学者たち の商品レビュー
色んな言葉が心地よく刺さった。しかし、どのフレーズも全然思い出せない。いい本を読んだ時、素敵な他者と出会った時、案外言語化しにくいなと思う。それでも読後感をあえて言葉にするならば"心のスキップ感"があるというところか。子どもの時にしたあのスキップだ。この気分の...
色んな言葉が心地よく刺さった。しかし、どのフレーズも全然思い出せない。いい本を読んだ時、素敵な他者と出会った時、案外言語化しにくいなと思う。それでも読後感をあえて言葉にするならば"心のスキップ感"があるというところか。子どもの時にしたあのスキップだ。この気分の時に、いつもならイラッとすることが起きても、それは勝手に身体をすり抜ける。平気とか耐えれらるとか、ましてやポジティブに受け止められるとかでなく流れていくのだ。 …とにかくいい本をありがとうございました!
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誰にも話さないふと心の中で勝手に話し始めた事がつらつらと書かれてると感じました。 誰とも共有しない。でも思った事がある。 「読もう」と思って読むより写真集を眺めるように文字を追いかけていく方が読みやすい作品。
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哲学対話がしたくなる本。 言葉が頭の中で踊る。ゴムボールを投げたら頭の中に弾けて、またほかの場所で弾けて。ポンポンと跳ね回る。 頭の中のいろんなところを柔らかく刺激されて、そこからいろいろ考えちゃう。 「これが正しい」と感じ方の正解を突きつけられるのが、私は時にこわい。その感覚に寄り添ってくれる本でもあった。 あなたとわたしが違うということを、その違いを楽しめるようにいたい。 あなたの苦しみ、悲しみを理解できることは永遠にないけれど、共に考えることができる、というところはとても好き。 そんなことを、難しい哲学の話はなく、様々な哲学対話の体験や、カバンの中に茶碗蒸しをぶちまけたときについこぼれた「なんで」から考えさせてくれる本。 「なんで」は問いであり、すでに哲学とのこと。 私も毎日哲学してる。 好きなところその① 考えるということは、むしろ弱くなることだ。確固たる自己というものが、ひどくやわらかくもろいものになって、心細くなる。わかっていたはずのものが、他者に問い返されて、分からなくなってしまう。見慣れたものが、ぐねぐねと動いて、不思議な何かに姿を変えてしまう。 好きなところその② わたしたちは、隣のあなたには声を張り上げなくても聞こえるから、ちかしいあなたには何を言っても伝わるから、なんて思って勝手に満足している。そうして、隣のあなたに伝えようとすることを忘れてしまう。
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抽象的な表現のまま進んでいく描写が多く、自分には合わなかった。 とても曲線を感じる文章だった。それはそれで美しいと思います。
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とっても優しい本です。 哲学と聞くと少し難しい印象を持ってしまいますが、全くそんなことはありません。 こんなに読みやすい哲学の本があるんだ、というのが最初の印象です。 内容としては、筆者が毎回とあるテーマを用いて参加者と話し合う哲学対話(例えば人は何故生きるのか、幸せとは何...
とっても優しい本です。 哲学と聞くと少し難しい印象を持ってしまいますが、全くそんなことはありません。 こんなに読みやすい哲学の本があるんだ、というのが最初の印象です。 内容としては、筆者が毎回とあるテーマを用いて参加者と話し合う哲学対話(例えば人は何故生きるのか、幸せとは何なのか、大人と子供の違いは何なのか等々)について、参加者の不意の一言について深く考えたり、日々の小さな出来事から哲学を見いだしたりと多岐に渡ります。 哲学書と言うよりは哲学エッセイに近い本なので、作者の価値観がたっぷりと垣間見えます。 読んだ後の作者の印象としては、きちんと生きることや目の前の人に向き合い、悩み、目まぐるしい世の中で自分の存在を保とうとしている人、というイメージを持ちました。
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親戚を嫌いでもいいんじゃないですか。 どうしてそう思ったんですか。 私は私をいつ引き受けたのかわからないままトロッコに乗っている。 なぜ友達の人生を歩めないのか。羨ましい。 その場にいるだけは辛い。ペットボトルを眺めていれば、ペットボトルを眺めている人になれる。
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まえがきの数行を読んだ時点で、あ、好きだ。と思った。 「人々と問いにとりくみ、考える。…そんな問いをもとに、世界に根ざしながら世界を見つめて考えることを、わたしは手のひらサイズの哲学と呼ぶ。」 著者は、本書を「刺しゅう糸のように、たくさんの糸がよりあわさってできている」とし、ほつ...
まえがきの数行を読んだ時点で、あ、好きだ。と思った。 「人々と問いにとりくみ、考える。…そんな問いをもとに、世界に根ざしながら世界を見つめて考えることを、わたしは手のひらサイズの哲学と呼ぶ。」 著者は、本書を「刺しゅう糸のように、たくさんの糸がよりあわさってできている」とし、ほつれているものも絡まっているものも、それをそのまま書いてしまった。とまえがきに書いている。…すでに心を透かしてくれるようだ。 まえがきのうちから、どんどん著者の言葉にどっぷり浸かって、いっしょになったつもりで潜り込んでいく。 潜り込んでいった先で、小学生が、いろいろな人が、哲学対話としてさまざまな問いについて対話する。決めておいたテーマについて、たくさんの疑問が、問いが溢れる。みんな真剣に対話をしている。 私もその場所に行きたい、と思った。 〜はなんで〜なんだろう。そんなふうにふと気になったことを呟いて、茶化されたり、何馬鹿なこと考えてんのと一蹴されたりしない、なんて、なんてすばらしいんだろう。わたしも飛びたい。 著者は新しい考えが、驚きがあったとき、がっしゃんと音がするという。それを著者は生まれ変わりの音だという。 わたしはそういうとき、がっしゃんという音はしない。逆に無音になる。無音になって、ぴゅんと一瞬自分がいなくなって、抜け殻の身体の呼吸がとまる。それからわたしが還ってくる。私は生まれ変われているんだろうか。 やさしい文章なのに、読み進めるたび著者の言うがっしゃん状態になって、私はぽかんとなって、もう一度読み返したりしてなかなか進まない。 本文にない新たな疑問が湧いてきて、そっちを考えてしまうときもある。 絶望したくない。考えを重ねていくと絶望にもぶち当たるけど。 …どうやったら絶望しながら生きていけるんだろう。 でもそうやって読み進めるうち、どんどん何かが解放されていく気がする。 ああ、いろんなことに疑問を持っていいんだ。わかると思っても、わからないと思ってもいいんだ。矛盾を抱えていてもいい。なんで矛盾しちゃうのか考えていい。自分を、世界をこわがっていいんだ。そんな世界でいっしょにおろおろしてくれる人がいるんだ。 深くて水圧が強くて冷たくて暗くてこわい深海から、陽光がきらめくあたたかな水面へと、手を取ってゆっくり引き揚げてもらっている感じ。 哲学って、自由なんだ。 自由に考えて、生きていいんだ。 何も知らないけど、そう思えた。 著者のやさしい、曖昧だけど率直で、いい意味で感情的で、それでいて著者の世界には常に哲学が存在している…いや、世界が哲学でできている。そんな文章が、もう全部大好きになってしまって、本文を全て引用してしまいたいくらい。 一言一句、忘れたくない。 この本で得た感情を、知識を、なにひとつ忘れたくない。でもどうしたって全部暗記して覚えておくことなんて私の頭じゃできないと歯ぎしりして、食い込むように、でもどこか肩の力を抜いて読む。 何度でも読みたい。 あと、共感について考えさせられた。 共感するとき、必ずしも同じところで同じように共感しているわけではない。たしかに。だって私たちはどうしようもなく他者だから。だから対話をするんだね。
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ブグ友さんの本棚で気になったので図書館で予約、半年待ちました。 手のひらサイズの哲学ってまえがきにありましたが、いやいや手のひらに収まらないし脳が渋滞しました。 哲学対話のファシリテーターという経験をいろんなエピソードを交えたエッセイ。 対話の恐ろしさや自分や他人の壊れる音、考え問うことの辛さ、畏怖と快感に心揺さぶられる体験「わたしわたしゲーム」、私を眺めること、わからなさに向き合うこと、衝撃的な他者性の告知などなど、キーワードを拾ってわかったようなわかってないような気になる。 「哲学対話は、知をケアする、真理をケアする。そして他者の考えを聞くわたし自身をケアする」らしい。かといって、共感の共同体ではないらしい。 道徳を揺さぶられるおばあさんのエピソード、私も座席に座らない派です。 永井さんとその場にいるように新緑の匂いが強く感じた。 短歌がいくつか紹介されていた。特に好きな歌。 本当のわたしはここにいない だからここにいないあなたが好き 元気が出ないと思ったら、手のひらを陽の光に当ててみよう。
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図書館で借りて読んでみて、これは手元に置いて繰り返し読みたいと思い買うことにする。周りに人がいても思わずブハハッと笑ってしまうような親しみもあり、その中で私に今刺さっている言葉は「神が沈黙してるのはさ、うちらが他者の声を聞くためじゃね」である。
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