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夏物語 の商品レビュー

4.1

263件のお客様レビュー

  1. 5つ

    82

  2. 4つ

    94

  3. 3つ

    45

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    3

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2024/11/01

人生のやるせなさを物語におこす才。というかそれこそが文学の原点なのかもしれない。 ボイジャーが出てきた時、BUMP OF CHIKENの『話がしたいよ』の2番の歌詞が不意に浮かんだ。夏子と逢沢さん、逢沢さんと「父」、夏子と善さん、夏子と仙川さん、夏子と巻子が話をしたいと。多分作...

人生のやるせなさを物語におこす才。というかそれこそが文学の原点なのかもしれない。 ボイジャーが出てきた時、BUMP OF CHIKENの『話がしたいよ』の2番の歌詞が不意に浮かんだ。夏子と逢沢さん、逢沢さんと「父」、夏子と善さん、夏子と仙川さん、夏子と巻子が話をしたいと。多分作品との関連は無いんだろうけど、親和性を感じたのは事実。『億男』の主題歌だっけ? 『すべて真夜中の恋人たち』の時もそうだったけど、川上未映子の小説の主人公は結構非常識だったりする。水筒に日本酒入れてたり、人に着いて行ったり、昔住んでいたとはいえ、今は何の関わりもない元の住処のドアを開けてみたり。半分意識が持っていかれてるにしても、そうはならんやろってなる。大胆だよな。 海外の文学のように、登場人物の夢の中なのか妄想の中なのか観念的な何かなのか、よく分からないがそれが文学的に働くような難しいようなわかった気になるようなならないような、海外でも評価を受けているのは、そういうことなのか。 物語の最後の最後に、出産。男が決して表現できない、経験した者にしか分からない痛々しさと等価以上の産まれた時の多幸感。素晴らしいといっていいのか分からないけど、男である自分からしたら未知すぎる領域。

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2024/10/29

面白かったーー! 川上未映子さんの作品は黄色い家からの2作目。 正直、テーマの不妊治療?についてはわからない部分が多かった。 けど、川上さんの独特の世界観がやっぱり好きやわあ。

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2024/10/20

最後まで回収されなかったいくつかの伏線のように、今はまだ答えがでなくてもこれからも考え続けたいテーマがこの世界には溢れている。

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2024/10/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

打ちのめされた。おそらく2,3年前に読んでいたらまた全然違った感想を持っていただろうと思う。 ・第一部は「乳と卵」に加筆した作品。銭湯のLGBTQ、九ちゃん、家賃滞納、女の人は死んでも成仏できない、遊園地での酒の話…新しい描写もあっておもしろく読めた。前作よりも読みやすかった気がする。不穏な感じもこちらの方がましだったような。 ・第二部。独身で自身の子供に「会いたい」という欲求が芽生える夏。AIDで生まれた当事者たち。反出生主義。女と男。家族。母と子の関係。病気。センシティブが詰め込まれていた。思っていたもやもやが全て書かれていた。  今、子供を持つことに迷いを持ちつつも不妊治療をしているアラサーの立場で読んでみて、泣いてしまう場面が多かった。当事者の会で夏が思わず反論する場面、遊佐の子供の描写、出産の場面。少し背中を押してもらえた気がする。夏子が書いた小説を読んでみたい。 なぜ事実婚を選択したのか、また立場が変わったら感想が変わるのか確かめるために、時間をおいて再読したい。

Posted byブクログ

2024/10/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

※ネタバレあり 夏子出産おめでとう!と伝えたくなった。 最後どんな風にこの夏物語を畳むのだろう…と思ったら、両思いの人の精子で妊娠・出産、仕事もうまくいっている、おそらくお金の心配もなさそう、周りに恵まれた友人と家族がいる…めちゃくちゃサクセスストーリーやなと思いました。夏子は行動力というか、自己実現能力が高い人間だと思う。 半出生主義の考えを持ちながらそれでも生きている善さんのその後を知りたいと思いました。善さんにも、生きていてよかったと思える瞬間が訪れてほしい。 反出生主義は理論ではよく理解できるしきっと正しいことを言っているのだろうけれど、生きるって、命って、夏子が妊娠の選択をしたように、たとえそれが間違いであり、苦であると分かっていたとしても、それでも希望を求めて生き続ける、それが人間というものなのかなと思いました。 人間は宇宙探査機のボイジャーのように、真っ暗な世界をたった一人で歩むこともある。それに意味があってもなくても、進み続けることが生きるということなのだと思います。 なんか、わたしは進撃の巨人の最後を思い出しました。人類は戦争の歴史を繰り返す。でもそれと同時に、自分と大切な人の幸せを願って平和を求めることもやめない。その繰り返し。 間違いを、過ちを繰り返す。それでも、人間は希望を求めて生き続ける。

Posted byブクログ

2024/09/14

この作家の作品を読むのは初めて。書店のPOPに動かされ手に取った。倫理的なテーマだが、台詞も多く読みやすい。 関西弁で優れた文学作品が書けるか、というくだりも興味深い。大阪弁ネイティブが、大阪弁で書けば、リズムや言葉の応酬が表せるかというと、そんな単純なものじゃないと。 2部...

この作家の作品を読むのは初めて。書店のPOPに動かされ手に取った。倫理的なテーマだが、台詞も多く読みやすい。 関西弁で優れた文学作品が書けるか、というくだりも興味深い。大阪弁ネイティブが、大阪弁で書けば、リズムや言葉の応酬が表せるかというと、そんな単純なものじゃないと。 2部構成の第1部は、2008年に芥川賞を受賞した「乳と卵」を約10年経ってリメイクしたもので、第2部は第1部の8〜10年後の物語だという。 15歳のときに、9つ年上の姉・巻子と二人きりになった主人公の夏子。20歳のときに生まれ育った大阪から上京し、作家を目指している。第1部では、30歳の夏子を、巻子ともうすぐ12歳になる娘の緑子が訪ねてくる。巻子は豊胸手術のために東京へ、費用もさることながら、いろいろと事情や考えることがあるようす。そして、緑子は母と話すことが無くなっていて、最低限の筆談でコミュニケーションを取っている。 第2部では、夏子は小説が一つ売れ、40歳手前で、子を産みたいと考えるのがテーマ。子は産まれることを選べないが、そこには奇跡的な出会いと、生物学的な結合があり。子をもうけたいと親が思うのは、どんな世界、どんな人生が待つか分からないのにギャンブルではないか、そして無責任ではないか、というような考えも登場する。

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2024/09/12

最後の場面を電車の座席で読むことになって、比較的混雑している車輌、溢れる涙をハンカチで押さえ、鼻をグズグス言わせながら最後のページを読み終えて文庫本を閉じ、顔をあげたら、立ったり座ったりの老若男女の姿が目に入り、ああここにいるみんな例外なく、それぞれがそれぞれの母親から産まれてき...

最後の場面を電車の座席で読むことになって、比較的混雑している車輌、溢れる涙をハンカチで押さえ、鼻をグズグス言わせながら最後のページを読み終えて文庫本を閉じ、顔をあげたら、立ったり座ったりの老若男女の姿が目に入り、ああここにいるみんな例外なく、それぞれがそれぞれの母親から産まれてきた存在なんだと、感慨深く眺めておった次第でありました。

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2024/09/11

長いけれど、人の一生を見ているような重厚感あふれる物語だった。 主人公の心境や、周りの人達の生い立ちや思想が丁寧に描かれていた。

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2024/09/11

結構な大作だけど読み通してしまった。 最近ツイッター、じゃないや、xで反出生主義とか男をひたすら嫌悪する投稿を見かけてそういう考えが気になっていて、それで何かの拍子にこの本の存在を知って読んでみた。主題はAIDで子どもを産むことの是非みたいなところだと思うんだけど、そこだけに収ま...

結構な大作だけど読み通してしまった。 最近ツイッター、じゃないや、xで反出生主義とか男をひたすら嫌悪する投稿を見かけてそういう考えが気になっていて、それで何かの拍子にこの本の存在を知って読んでみた。主題はAIDで子どもを産むことの是非みたいなところだと思うんだけど、そこだけに収まらないというか。善百合子の反出生主義的な主張とかは少し共感する自分がいる。あとは逢沢の育ての父がボイジャーと絡めて言っていることも。結局は答えはなくて考えて何かがわかるというものでもないし、仏教的な考え方に落ち着きそう。漢字とひらがなのバランスはターゲットにしている読み手とかいろいろ考えているんだろな。 主人公をはじめ登場人物が個性豊かで面白い。そこには自分の知らない世界があった。貧乏な家に生まれ育って、東京に出てきて作家を目指し、姉が豊胸するしない、姪が姉と口きかなくなる、女の子が成熟していく過程での悩み、女湯に現れた明らかに男な人物、男性優位社会を批判する売れっ子作家の遊佐リカ、旧に亡くなった八王子の金持ち出身の編集者の仙川さん、AIDで生まれ育ての父から性的虐待を受けてきた善百合子、他にも精子提供者の恩田とか当たり屋の九ちゃんとか。最後の出産の描写は、あの頃の自分はなんもわからんかったけどもっとできたことあったんだなって振り返ったり。 作中に出てきた主人公の小説が笛吹川のようだとあって、気になって笛吹川も読んじゃうかな。

Posted byブクログ

2024/09/09

最近自分が考えることとリンクしてるから選んだ本。 全体の内容はもちろんだけど感覚の描写が的確というか完璧というかめっちゃ伝わってきて好きだった。 寝る前の頭の中とか。 まだ咀嚼できてないというか自分のスタンスへの影響を確定できてないけど、自分の中の大切な存在になった気がする。 私...

最近自分が考えることとリンクしてるから選んだ本。 全体の内容はもちろんだけど感覚の描写が的確というか完璧というかめっちゃ伝わってきて好きだった。 寝る前の頭の中とか。 まだ咀嚼できてないというか自分のスタンスへの影響を確定できてないけど、自分の中の大切な存在になった気がする。 私は80%くらい善さんと同じように考えてるなあ。

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