霧をはらう の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少し前に読んだ『二人の嘘』に続いて連投の裁判ものだが、こちらは正統派のストーリーと言えよう。ドラマを見ているようで(ドラマなんかここ何十年みていないがw)なかなか煮え切らない被告の長女の態度にもやもやしながら、弁護士団の中でも不穏な動きを垣間見るので何かあるなぁと読む進めていくとページ数が残り少ないのにえ、このままじゃ足りない、また強引なオチか?と心配するもなかなかうまい流れで綺麗に収めてくれた。ページ数はたっぷりあったがあっという間に読み終えた。裁判員裁判を扱いながらまったく裁判員を登場させない潔さが変にだらだらしないのでいい。 タイトルがそのまんまでひねりがないのでそこが星3。
Posted by
少し長い気もするが、面白かった。 病院で起きた点滴死傷事件の冤罪裁判に挑む若手弁護士の活躍がメインではあるが、それよりも中盤までの冤罪の母親の長女の心の葛藤の描写が非常に秀逸で、これが本作に奥行きを与えている。 逆転無罪に至る裁判員裁判の過程は都合良く、帳尻合わせした感が否めない...
少し長い気もするが、面白かった。 病院で起きた点滴死傷事件の冤罪裁判に挑む若手弁護士の活躍がメインではあるが、それよりも中盤までの冤罪の母親の長女の心の葛藤の描写が非常に秀逸で、これが本作に奥行きを与えている。 逆転無罪に至る裁判員裁判の過程は都合良く、帳尻合わせした感が否めないが、最後に明らかになる真犯人を巡るプロットで少し緩和されたか。少し甘めの評価5で。
Posted by
病院で起こった点滴死傷事件。逮捕された母親の無実を勝ち取るために弁護人として奮闘する伊豆原。彼の青臭いほどの正義感、勝算が掴めない中で前に進もうとするひたむきさが際立つ。 野々花の鈍感さや由惟の頑なさに辟易し、心情的に寄り添えず前半はなかなか進まなかったが、終盤の緊張感ある法廷シ...
病院で起こった点滴死傷事件。逮捕された母親の無実を勝ち取るために弁護人として奮闘する伊豆原。彼の青臭いほどの正義感、勝算が掴めない中で前に進もうとするひたむきさが際立つ。 野々花の鈍感さや由惟の頑なさに辟易し、心情的に寄り添えず前半はなかなか進まなかったが、終盤の緊張感ある法廷シーンには引き込まれた。 冤罪の恐ろしさを軸に、犯罪者家族への理不尽な偏見をも描き、曇りのない目で人を見ると言うことの難しさを実感させてくれる。 「勝てなくても負けんな」 母の犯罪を受けて叩かれ続ける姉妹に涼介がかけたこの言葉は胸に刺さった。 ただ、いくら娘同然とはいえ、死刑になるかもしれない公判で大物人権派弁護士がそれはないでしょ〜な展開に違和感ありあり。 無理に最後にそんなオチを持ってこなくてもよかったのに……と残念な気持ち。
Posted by
まとわりついている霧を払って、その人を一人の人間として見てもらうようにする弁護士。物語に徐々に引き込まれた。もし裁判員になったら冷静になって務められるかなと思う。
Posted by
+++ 『火の粉』で裁判官の葛藤を、『検察側の罪人』で検事の正義を描いた 雫井脩介が問う、弁護士の信念とは? 作家デビュー20周年を迎えた著者の渾身作! 病院で起きた点滴死傷事件。 入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。 逮捕されたのは、生き残った...
+++ 『火の粉』で裁判官の葛藤を、『検察側の罪人』で検事の正義を描いた 雫井脩介が問う、弁護士の信念とは? 作家デビュー20周年を迎えた著者の渾身作! 病院で起きた点滴死傷事件。 入院中の4人の幼い子どもたちにインスリンが混入され、2人が殺された。 逮捕されたのは、生き残った女児の母親。 人権派の大物弁護士らと共に、若手弁護士の伊豆原は勝算のない裁判に挑む! +++ 500ページ超えのボリュームを感じさせない面白さである。人物描写がまず素晴らしい。どの人物も、実際の姿をたやすく想像できるので、その行動がとてもリアルに感じられる。折々に挿みこまれる違和感も、後半にはすべて解消され、すべて腑に落ちる。考えさせられる要素が盛りだくさんだが、そのどれもが、いつ自分に降りかかってもおかしくないことばかりで、我がこととして深く思いを致すことで、さらに物語の面白さが深まる印象である。ラストの事実には驚かされたが、人間の弱さがもたらす罪を思い知らされる心地である。物語としての着地点のそのあとに、さらに別の深い闇と、それを解きほぐす日々が待っているのかと思うと気が重くなるが、少しでも救いのある方向に進んでくれることを願うばかりである。充実感と共に読み応えのある一冊だった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私の好きな法廷もの。読み応えあり。 ほんとにこの天然の母親、空気が読めないちょっと鈍感で、しかも日頃から点滴のボタンを操作してたという状況から、ほんとに犯人じゃないの?と私までも懐疑的になってしまったよ。 それにしても、無罪判決をいくつも勝ち取ってきた人権派代表の貴島弁護士(病死で途中退場)が最後の最後に冤罪を容認するなんてひどいすぎる。いくら過去の事情があったって許されることではないのに。 その点、伊豆原弁護士はぶれなかったね。 頑なだった被告人の長女も、職場でいわれなき疑いをかけられて(アイスクリーム事件のあの女は最低すぎる) 理不尽な扱いを受けたからこそ、母親の気持ちがわかり、そっから変わってくれたよね。 冤罪ってこうして生まれるのね。状況証拠だけで追い詰めて自白させてって。 あの新人看護師のお菓子の袋の音に気づくはずっていく発言が流れを変えたし、婦長の川勝さん(最初はちょっと疑った)が会話を一部始終を肯定してくれたのも良かった。 スリリングな後半の展開で最後が感動。 できれば。真犯人(元看護師の庄村さん)の弁護をすることになった伊豆原の続編も読みたいわ。
Posted by
法廷モノで動きが少ないのでこのボリューム読了できるかと不安だったが、タイトルのごとく段々と霧が晴れていった。主人公のキャラがいいので続編にも期待したい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
普通の小説なら無罪でめでたしだろうけど、この場合そう思わせといて逆もアリかと勘ぐったのでドキドキした。 霧ははらわれたが、母親のキャラはとても苦手なタイプ。
Posted by
設定はしっかり者なのに強者には逆らえない由惟おかしいが、犯罪者家族への目を逸らしたくなる醜い偏見ゾワゾワ。最後は晴れやかに霧が晴れたが、どう混入させたのか気になる。「やってもいないことをその場の空気で認めてしまい、あとから否定しても相手にされなかった。一旦色眼鏡で見られ、そこに味...
設定はしっかり者なのに強者には逆らえない由惟おかしいが、犯罪者家族への目を逸らしたくなる醜い偏見ゾワゾワ。最後は晴れやかに霧が晴れたが、どう混入させたのか気になる。「やってもいないことをその場の空気で認めてしまい、あとから否定しても相手にされなかった。一旦色眼鏡で見られ、そこに味方がいなければ誰だって母と同じ目にあう可能性はある。身体を丸めて自分を守るだけでなく戦う勇気を」
Posted by
法廷サスペンス。絶望の淵にあっても必ず救いの手を差し伸べる人が登場する。それが雫井作品の真骨頂だ。伊豆原の真犯人を突き止める執念と温かみ溢れる人間性が心地よい余韻をもたらした。
Posted by