護られなかった者たちへ の商品レビュー
生活保護制度にまつわる物語です。 申請する側と審査する側、双方の視点から描かれており、非常に興味深い内容でした。 最後の伏線回収は二段構えになっており、一段目は予想できたものの、二段目には驚かされました。 社会問題に切り込みながらもエンターテイメント性をしっかりと備えた傑作です!
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舞台は震災の爪痕を残した仙台。生活困窮者の実態が生々しく描かれていた。 健康で文化的な最低限度の生活は憲法第25条で定められている。明日を生き抜くために生活保護を受けるべき人間が認定がおりず餓死してしまう。憎悪の目を向けられたのが生活安全課だ。 職員が相次いで二人殺され、死因は餓死。 悪者は誰なのか…いや善悪だけでこの物語は語れない。読んでいて心が苦しくなった。
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真犯人は想像がついたけれど、最後のもう一押しは唸った。 さすが中山七里さん、、でも、そうよね。 物語の構成もさることながら、色々と考えさせられる議題。 貧困と格差。 不届者の大きな声ではなく、真面目で善良な人々の小さな声を拾うために、社会はどうあるべきか。 それぞれの背景に何...
真犯人は想像がついたけれど、最後のもう一押しは唸った。 さすが中山七里さん、、でも、そうよね。 物語の構成もさることながら、色々と考えさせられる議題。 貧困と格差。 不届者の大きな声ではなく、真面目で善良な人々の小さな声を拾うために、社会はどうあるべきか。 それぞれの背景に何があるのか。もっともっと想像力を働かせないと。
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おもしろかった! 絶対に犯人だと思うけどどう終わるのだろうかと思いながら読み進めていたら別の人が犯人でしかも序盤の登場人物で驚いた。 驚きが2倍くる仕組みで特に終盤は手が止まらなかった,
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ずっと読みたかった作品。 ブクログでも度々お見かけしていて、ようやく手に取れた。 宮城県警シリーズ、1作目。 仙台市の福祉保険事務所の課長が身体を拘束された餓死死体で発見された。被害者は誰もが口を揃えて「人格者」だと言う人物で、怨恨の線は薄いと思われた。捜査が暗礁に乗り上げるな...
ずっと読みたかった作品。 ブクログでも度々お見かけしていて、ようやく手に取れた。 宮城県警シリーズ、1作目。 仙台市の福祉保険事務所の課長が身体を拘束された餓死死体で発見された。被害者は誰もが口を揃えて「人格者」だと言う人物で、怨恨の線は薄いと思われた。捜査が暗礁に乗り上げるなか、二体目の餓死死体が発見される。連続餓死殺人事件の裏に隠された切なすぎる真実とはー…? 生活保護を受けるべき人が受けられず、受けなくてもいい人が受けている。 生活保護を支給するかどうか、線引きをしなくてはいけない役所。 とても難しい問題だなぁと思った。 ちょうど読了したタイミングで生活保護の「水際作戦」についての記事が出ていた。 この作品に書かれているようなことが実際に起こっているのかな。 日本の社会保障制度は見直した方がいいのかもしれない。 人との繋がりが希薄になった今だからこそ、けいさんの言葉が胸に沁みた。 昔みたいに人との繋がりがたくさんある世の中になったら孤独死も減るのかな。 さすが、「どんでん返しの帝王」というだけあって、ミステリーとしても面白い作品だった。 けれど、それ以上にいろいろと考えさせられる作品だった。 ✎︎____________ 日頃の行いと報いは全くの別物だ。(P34) 周りが全員病人だと、自分も病人だってことが分からなくなってくるんです(P91) 追い詰められた人間は餓えた獣と同じだ。餓えた獣には常識も理屈も通用しない。(P115) 真っ当な行政機関という定義は何なのでしょうか。国民のためにはどんな無理難題でも抱え込む組織ですか。それとも省庁の指示通りに運営して行政に破綻を来たさない組織ですか(P222~P223) 人から受けた恩は別の人間に返しな。でないと世間が狭くなるよ(P262) 厚意とか思いやりなんてのは、一対一でやり取りするようなもんじゃないんだよ。それじゃあお中元やお歳暮と一緒じゃないか。あたしやカンちゃんにしてもらったことが嬉しかったのなら、あんたも同じように見知らぬ他人に善行を施すのさ。そういうのが沢山重なって、世の中ってのはだんだんよくなっていくんだ。でもね、それは別に気張ってするようなことでも押しつけることでもないから。機会があるまで憶えておきゃあ、それでいい(P262) 敵を作るより味方を作っておいた方がいい。味方が多い人間は強いよ。そして強い人間に盾突こうとするヤツは少ない。どっちが楽だと思う(P253) 飯食ってクソして寝るだけが生活じゃないだろ。何を信じて、何を護るのか。かたちにならないものがかたちのあるものより大事になることがあるんだ(P295) 法律と歪んだ信条が護るに値しない者を護り、護らなければならない者を見て見ぬふりをしている。(P370) 心に受けた傷は金銭や安定した生活で塞がるものではない。時間の経過で和らぐものではない。(P397) 護らなくてもいい人間が存在しないのと同じ理屈で、殺されてもいい人間など存在しない。(P412) 護られた者たちとそうでなかった者たちの境界線はいったいどこにあったのだろうか(P424) 国や省庁の命令は人の命より大事なのか。公務員ってのは市民のためにあるんじゃないのか。厚労省ってのは国民の健康を護るためにあるんじゃないのか(P452) 護られなかった人たちへ。どうか声を上げてください。恥を忍んでおらず、肉親に、近隣に、可能な環境であればネットに向かって辛さを吐き出してください。何もすることがなくて部屋に閉じ籠もっていると自分がこの世に一人ぼっちでいるような気になります。でも、それは間違いです。この世は思うよりも広く、あなたのことを気にかけてくれる人が必ず存在します。わたしも、そういう人たちに救われた一人だから断言できます。 あなたは決して一人ぼっちではありません。もう一度、いや何度でも勇気を持って声を上げてください。不埒な者が上げる声よりも、もっと大きく、もっと図太く(P468~P469)
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仙台旅行の予定を立てたので、この地を舞台とする作品を読みたいと思い手に取った。前評判には殆ど触れずに読み進めたが、出会えて良かった作品だと思う。読後にはこの国の福祉の在り方について調べ、己の考えを新たにすることになった。 旅行ではただ観光するだけではなく、震災遺構にも訪れようと計...
仙台旅行の予定を立てたので、この地を舞台とする作品を読みたいと思い手に取った。前評判には殆ど触れずに読み進めたが、出会えて良かった作品だと思う。読後にはこの国の福祉の在り方について調べ、己の考えを新たにすることになった。 旅行ではただ観光するだけではなく、震災遺構にも訪れようと計画を変えた。
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受刑者の中に裕福な家庭で育った者は1人もいない 。そのことを考えるべきだ。遠慮が美徳とされる時代を生きた人が社会保障を受けられず、声のでかい欲に塗れた人間が遊び金欲しさに社会福祉を利用する。かといって不正受給という簡単な言葉で片付けられない環境の人達もいる。護られることの無かった...
受刑者の中に裕福な家庭で育った者は1人もいない 。そのことを考えるべきだ。遠慮が美徳とされる時代を生きた人が社会保障を受けられず、声のでかい欲に塗れた人間が遊び金欲しさに社会福祉を利用する。かといって不正受給という簡単な言葉で片付けられない環境の人達もいる。護られることの無かった人達に対し、果たしてどれだけの人が関心を持ち救いの手を差し伸べるのだろうか。
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読み終わって鳥肌が立った。 一連の事件は利根が犯人、それを追う警察の図式でストーリーが展開されるもんだからまんまと嵌められた。生活保護を受給できずに餓死した遠島けいの復讐を誓い、当時の福祉保健事務所の対応者を殺しているかと思っていた… 『護られなかった者たちへ』とのタイトルの“護”、護る・護られるが色んな視点から色んな想いが語られる。 ここ最近読んだ作品では設定に無理があったり、いやらしさ(無理やり、話を盛ってるような笑)を感じたがこの作品は最後の結末まで自然な展開で引き込まれる。ただただ、難しい社会派小説より心に響くメッセージ性がありました。映画ではきっと伝えきれない、やっぱり小説!!と思える作品でした。 中山七里という新たな作家との出会いに感謝。
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作家さんとこの作品の事を全く知らないまま軽い気持ちで読み始めたら、とんでもない作品でした。 読後のこの感情をどこにぶつけたらいいのか分からないぐらい気持ちの整理がついていません。 何も知らないまま読んで、ある意味正解だったかもしれないです。 名作でした。一生忘れません。
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税金である生活保護で護られる人と、護られるべきなのに護られなかった人。 元受刑者の社会復帰の難しさ。 但し、受刑者は税金で護られる矛盾とギャップ。 生活保護の不正受給も問題視される中、「正直者だけがバカを見る」の典型的な世の中の成り立ちに切なくもなる。
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