星影さやかに の商品レビュー
人心まことに深淵なり。舞台は戦前から戦中、そして戦後に至って昭和の東京五輪を終えたあたりまで。当時の軍国主義と人権思想、それに抗うことの困難、諦観、その先の無力感と罪悪感。あらゆる人たちにとって、出自に関係なく男も女も強きも弱きも、喜びに満ちて錦繍に包まれた生などない。同調より貫...
人心まことに深淵なり。舞台は戦前から戦中、そして戦後に至って昭和の東京五輪を終えたあたりまで。当時の軍国主義と人権思想、それに抗うことの困難、諦観、その先の無力感と罪悪感。あらゆる人たちにとって、出自に関係なく男も女も強きも弱きも、喜びに満ちて錦繍に包まれた生などない。同調より貫徹が優れているわけでもなく、あるがままに生きることを求めるべし。そうなのだと、登場する面々の人生が教えてくれる。ガリレオのごとく星影よりさやかなる真理を見ても、むしろ苦悩は募る。あたかも「さやか」が逝った年。少々掛けすぎにて御免。
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戦争と生活をうまく結びつけた一冊 今だから読んで考えさせられるというか 人生の終盤に差しかかった今 読んで 戦争という極限状態に置かれた時の 人の生き方を改めて考えさせられた。
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古内一絵「星影さやかに」、2021.6発行。昭和11年1月生まれ、良彦は国民学校で歴代天皇の暗唱、教育勅語、その終わりには御名御璽(ぎょめい ぎょじ)、竹槍、匍匐前進・・・。昭和39年、東京オリンピックが終わった後、72歳の生涯を終えた父良一の人生に思いを寄せる物語です。考えさせられる作品です。東京の中学校で英語教師をしていた良一は、この戦争は勝てない。戦争に行くべきではないと話し、非国民として仙台古川の旧家に帰り引きこもりの日々。終戦前後本当に多くの変化が。でも態度が変わらなかったのは大人は父だけ。良一は東京オリンピックの開会式は、大雨のぬかるみの中での出陣学徒壮行会を連想するので嫌いだ。閉会式でみんなが肩を組んでる姿はいいと。
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『立場は違えど、家族を想う気持ちは皆一緒!』 非国民と呼ばれ神経症を患い、書斎に引きこもる父。 鬼婆のような姑に仕えた母。 父の死後、遺された日記で父の苦悩を知った良彦。 誰の立場で読むかによって、味わいが変わってくる。 そんな、読めば読むほど味の出る作品です!
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図書館で借りたもの。 非国民と呼ばれた父を恥じていた、軍国少年の息子に届いた遺品の日記。激動の昭和を生きた親子の記憶が紐解かれる――。宮城県古川を舞台に描く、三世代をつなぐ家族小説。 “「お父さんに限らず、この世の中を生ぎていぐのは、ご苦労さんなこどでねがでしょか」” 人生山あり谷あり。 生きるって大変だけど、頑張ろうって思えた。 『鐘を鳴らす子供たち』のラジオドラマが出てきた!作品同士の繋がり。田舎にもラジオドラマは浸透していたんだね。
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良彦、父の良一、母の寿子の視点で戦前から東京オリンピック頃までの物語。 タイトル通り静かな物語だけど、戦争や震災の描写は生々しいところもある。 今年東京2021を終えた今のタイミングだったことがエモい。
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作品の一番最後の一文が、この物語の全てを物語っていて、その一文とそれが表現している光景が、強く印象に残った。 ***ネタばれ*** 宮城県の田舎の夜空に、無数の星が明るく輝く光景が浮かび、その光景は、人生に例えられている。 『闇が深ければ深いほど、強くさやかに輝く』 なんて心強...
作品の一番最後の一文が、この物語の全てを物語っていて、その一文とそれが表現している光景が、強く印象に残った。 ***ネタばれ*** 宮城県の田舎の夜空に、無数の星が明るく輝く光景が浮かび、その光景は、人生に例えられている。 『闇が深ければ深いほど、強くさやかに輝く』 なんて心強い言葉なんだろう。 でも、私も人生を振り返ってみると、そうかもしれない。闇が深いほど、晴れたときは凄くクリアで明るい。 古内さんの小説は、勇気づけられる事が多いです。 また、主人公の良彦は、戦時中、神経症を患い、近所から「非国民」と呼ばれていた父親を恥じていたが、父親の死後、遺品である日記がでてきた。なぜ父は心を病み、非国民と呼ばれたのかが明らかになるのだけれど、その日記は、幻覚に苦しみながらも、教師として、親として、懸命に道を探ろうとしていた一人の男性が誠実に生きてきた証だった。 情けなくなんかなかった。死を望みながらも死なずに戻ってきて、真面目に生きて寿命を全うしたお父さん。なんて深いんだろう。 人が人生を全うするのに大事なことが、たくさん詰まっている作品だった。 また読み返して、心に刻みたい。
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わたしの中で、古内一絵作品、№1! (そんなに読んでいるわけではないけれど) 『十六夜(いざよい)荘ノート』も戦争に巻き込まれていく人々を描いていた けれど、正直、あれは空回りの感が・・・ 今、数年を経て、作家が、再調されたのだろう、 本作では、見事、想いが昇華されていると感じた...
わたしの中で、古内一絵作品、№1! (そんなに読んでいるわけではないけれど) 『十六夜(いざよい)荘ノート』も戦争に巻き込まれていく人々を描いていた けれど、正直、あれは空回りの感が・・・ 今、数年を経て、作家が、再調されたのだろう、 本作では、見事、想いが昇華されていると感じた。 親子三代・・・ 「非国民」と罵られた父親を中心に、その母(息子からは祖母)、妻(母) それぞれの視点で「父」が語られ、最終章は、「父」本人により、 己の人生が明らかにされる。 ちなみに、次男(ブロローグとエピローグ、第一話、第二話の語り手)が 鬼婆と呼ぶ、祖母の名前は多嘉子!w (文字を見る度に、ギョッとした) 「世の中は、不確かで理不尽なもので一杯だ。 ...苦楽は、二つで一つだ。 ...先の見えない道を模索していくしかないのだ」 誠実に生きたい、人生の節目を前に、 そう思わせてくれる、小説。 蛇足ながら、著者が、いつも颯爽とした、職場のH氏の同級生と知った。 当時のことから、著者の葛藤がうかがえるようで、近しい想いを抱かせてくれた。
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戦争中に不条理さを体験し、未来ある子供たちを守ろうとしたお父さん。 神経症になりながらもブレなかったお父さん。 大きくなるにつれてお父さんを受け入れていく息子。 お母さんの視点や過去から、器がでかいってこんなことなんやなぁと思えたおばあさん。 沢山の人の沢山の想いが交差してるのに...
戦争中に不条理さを体験し、未来ある子供たちを守ろうとしたお父さん。 神経症になりながらもブレなかったお父さん。 大きくなるにつれてお父さんを受け入れていく息子。 お母さんの視点や過去から、器がでかいってこんなことなんやなぁと思えたおばあさん。 沢山の人の沢山の想いが交差してるのにとても読みやすかった。 学ぶことがいっぱいあった。
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東京出身の作者が宮城県古川周辺を舞台とした作品を良くここまで描くことができたと思う。 同様に舞台は戦中から最初の東京オリンピック。 1966年生まれの作者にとっては全て生まれる前で、その調査は大変なものだと思う。 これまでの古内作品とはかなり違うが、人生どう生きるか少し考える機会...
東京出身の作者が宮城県古川周辺を舞台とした作品を良くここまで描くことができたと思う。 同様に舞台は戦中から最初の東京オリンピック。 1966年生まれの作者にとっては全て生まれる前で、その調査は大変なものだと思う。 これまでの古内作品とはかなり違うが、人生どう生きるか少し考える機会になった。
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