檸檬先生 の商品レビュー
ラスト、涙が込み上げるのを抑えきれなかった。 「私」を通して檸檬先生が詳細に描写されていて、それは青春とも人生ともいえる取り替え不可能で唯一無二のものなのに……。 独特の表現が自然に散りばめられていて、繰り広げられる世界の明度や彩度があがった気がした。 共感覚を扱うことで、マイ...
ラスト、涙が込み上げるのを抑えきれなかった。 「私」を通して檸檬先生が詳細に描写されていて、それは青春とも人生ともいえる取り替え不可能で唯一無二のものなのに……。 独特の表現が自然に散りばめられていて、繰り広げられる世界の明度や彩度があがった気がした。 共感覚を扱うことで、マイノリティの生きづらさや周りから受ける圧力を追体験し、それ故に檸檬先生と少年の結びつきを特別なものと感じ取る。 日常の、人生の積み重ねを丁寧に描く筆力がすごいと思った(これで受賞時高校生とは!)
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共感覚に性同一性障害、それにいじめなどたくさんの問題を詰め込んだ人間の根源に関わる物語。周りからハブられている小学3年生と中学2年生の魂の触れ合い、交流でお互いを支え合って生き延びる。 お互いの成長が幸せにはつながらない哀しさ、愛の不条理が心に残る。
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無理ゲー。 少年が何を言っても檸檬先生も、この結末は変わらなかったと思う。 それでも少年と檸檬先生の会話は素敵だったし、少年が色の溢れた世界に希望を見いだしていくところもよかった。 「でも僕たちはやっぱり普通じゃありません。でも普通じゃないところは誰にだってあると思うし、それ...
無理ゲー。 少年が何を言っても檸檬先生も、この結末は変わらなかったと思う。 それでも少年と檸檬先生の会話は素敵だったし、少年が色の溢れた世界に希望を見いだしていくところもよかった。 「でも僕たちはやっぱり普通じゃありません。でも普通じゃないところは誰にだってあると思うし、それをわかり合うからこそ僕たちは仲良くなれるのだと思います。」
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いやー切ない、でも綺麗でずっと読んでたい。 同い年だとは思えない、尊敬です。 ほんとに切ない、余韻がすごい。
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共感覚がテーマなので読んでみた。色が見えるのは想像できなくもないが、混ざるってどんなだろう。それが自分だけにわかる感覚って気づいたときは孤独だし恐ろしいと思う。檸檬先生の気持ちは計り知れなかった。
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十二色相環。 共感覚(きょうかんかく)→音に色が見えたり、その逆だったり、数字が色だとか見た目が図形とか。 刺激を強く受け取ってしまう。 色聴 小学3年生の少年は、音楽を聴いても絵を見ても他の人みたいに楽しむことはできない。 数字に色が見えるから計算するのも大変。 共感覚はあまり...
十二色相環。 共感覚(きょうかんかく)→音に色が見えたり、その逆だったり、数字が色だとか見た目が図形とか。 刺激を強く受け取ってしまう。 色聴 小学3年生の少年は、音楽を聴いても絵を見ても他の人みたいに楽しむことはできない。 数字に色が見えるから計算するのも大変。 共感覚はあまり知られていないので、少年はただの変な人だった。でも同じ共感覚を持つ15歳の少女に出会えた。色々教えてくれるから先生。レモン色だから檸檬先生。 先生に対する気持ちは、仲間のような好きだったのかも。 愛なのか? 想いが足りなかったのか? だから、先生が抱えている大きな悩みを理解できなかったのか? 少年は檸檬先生を孤独にしてしまった。 ラストは衝撃的。違う結末を望みたかった。 現役高校生の作品。すごい。 学校図書館◯
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まずもう1ページ目から、高校生(当時)の文体とは思えない。 色彩にあふれた表現だった。 みずみずしい、という表現がまさにぴったり当てはまる。 「死体」までをも、こんなに鮮やかに詳細に表現している作品を、私は知らない。 みずみずしいのとは正反対に、少年の孤独や閉塞感が描かれて...
まずもう1ページ目から、高校生(当時)の文体とは思えない。 色彩にあふれた表現だった。 みずみずしい、という表現がまさにぴったり当てはまる。 「死体」までをも、こんなに鮮やかに詳細に表現している作品を、私は知らない。 みずみずしいのとは正反対に、少年の孤独や閉塞感が描かれていた。 少年の見える世界は色彩豊かなはずなのに 少年の心の中はずっと曇っていてそして無色だった。 色の共感覚は私はないけれど、この少年の曇ったような気持ちはすごく伝わってきた。天気で表すなら確実にくもりである。 だけどそれが、先生との出会いによって、ほのかに色づいていく。 少年は檸檬先生に救われた。 でも少年は檸檬先生を、救えなかった。 檸檬先生の存在はあまりに彩度が高くて、そして檸檬先生の抱えるものは、少年が支えるにはあまりに鮮やかで、大きすぎた。 少年は幼くて純粋だった。 檸檬先生もまた、幼くて、純粋だったのだ。 ただまっすぐに思いを伝えて、そしてただまっすぐに、その思いを受け取った。 たった、それだけのことだったのだ。 少年はこれからも、抱えきれない「檸檬先生」を抱えて、今日を生きていく。 これが、2002年生まれの作家。 そして、カバーイラストが、ブルーピリオドの山口つばささんというのも、完璧だ。 (next door design岡本歌織さんの装丁センス、さすがです) ※ (複数の誤字脱字があって校閲全く通ってないな、と思ったけれど、高3ゆえの若さと勢いが感じられる、ということにしておく。ご愛嬌。)
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私立の小学校に通う私。奇怪なモノとしてクラスメイトからいじめられていた。そんな時、唯一の安らげる場所・音楽室で、ある少女に出会う。中学3年生で、私と同じ特殊な見え方をもっていた。それは「共感覚」というもので、音や文字に色を感じたりする現象のことである。共感覚を始め、色んなことを知...
私立の小学校に通う私。奇怪なモノとしてクラスメイトからいじめられていた。そんな時、唯一の安らげる場所・音楽室で、ある少女に出会う。中学3年生で、私と同じ特殊な見え方をもっていた。それは「共感覚」というもので、音や文字に色を感じたりする現象のことである。共感覚を始め、色んなことを知っていることから、私は少女を「檸檬先生」と呼ぶことにした。二人は意気投合し、共感覚をテーマにした作品を作ろうとする。 第15回小説現代長編新人賞受賞作で、受賞したのは18歳の方です。 あまり馴染みのない「共感覚」。その視点から見た景色を垣間見ることができるのですが、とにかく特殊でした。見える文字や音が、色に見えるという現象に疑ってしまう自分がいたのですが、とても不思議でした。 そういった現象に文章に起こすのですが、色を使っての表現がバラエティに富んでいました。耽美的な情景や人物、はたまた悲劇的に使われたりと、色と言葉との幅広さに面白みもありましたし、読んでいて言葉が美しかったです。 青春小説なのですが、所々にいじめなど差別される場面が登場します。「普通」と違うということでいじめられるのですが、胸が締め付けられる思いでした。周りの生徒だけでなく、先生までも味方につけてくれない状況に憤りも感じました。 そういった中で、同じ悩みを共感できる少女の存在感に一筋の光がきたようで、その後の活動に勇気をくれました。 ここでは、「共感覚」だからこそ表現できる絵を創作していきます。「共感覚」に限らず、現実でも、それぞれがもつ能力を発揮することで、生きる糧に繋がるのでは?ということを教えられたようで、前向きな気持ちにさせてくれました。 そんな矢先での最後の展開には衝撃すぎでした。 思わず、言葉を失いそうでした。「何で?・・・」と思いましたが、それまでの心境を考えると、わからないまでもないですが・・・とにかく衝撃でした。 ここでも、色の表現が書かれていて、不謹慎かもしれませんが、美しい情景描写でした。 デビュー作ということで、今後の作品が楽しみです。
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普段はあまり読まない系統の本ですが、小説現代長編新人賞ということで、どんな感じなのかな?と冒頭をチラッと読んだら…あまりにも衝撃で何故そこに至ったのか気になって気になって、一気に読んでしまいました。 「共感覚」が主なテーマとなっていて、その中で生きづらさを感じている少年と檸檬先生...
普段はあまり読まない系統の本ですが、小説現代長編新人賞ということで、どんな感じなのかな?と冒頭をチラッと読んだら…あまりにも衝撃で何故そこに至ったのか気になって気になって、一気に読んでしまいました。 「共感覚」が主なテーマとなっていて、その中で生きづらさを感じている少年と檸檬先生の関係、心情、変化がとても繊細に綴られています。 とにかく表現がすごい。書いたのは高校三年生!? 決して私の口からは出てこないような表現も、不思議とサラサラと頭に入ってきてこんな感情なのかな?と想像できる。そこがすごい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
珠川こおりが破裂させた檸檬は、こなごなになって私の胸に深々と突き刺さった。突き刺ささったかけらは棘となり鈍い痛みと共に残り続けるのだろう、私の中で。 共感覚を持つ8歳の少年と15歳の少女。 誰からも受け入れられず、存在さえ認められない二人。けれど、少年は少女のことを檸檬先生と呼び慕う。 檸檬先生は、少しだけオトナであるがゆえに、共感覚を飼いならす術を知っている。それを少年にと教えていく。 二人が自分たちにしかわからない世界、音を色で表現し、「絵」という形で作り上げていく、その過程に自分もそこに参加しているような気がしてくる。言葉で伝わるものはしょせん言葉でしかない。感じることを目で見える形にする、それでしか分かり合えないもどかしさも同時に体験している気がしてくる。文化祭での少年のプレゼン。この素晴らしさよ。 檸檬先生のおかげで少年と周りの壁が少しずつ低くなっていく。友だちができ共感覚も制御できるようになっていく。少年の成長を、その変化を、檸檬先生はどう思って見ていたのか。彼女の孤独を思う。 檸檬先生の高校進学を機に疎遠になった二人。そして十年後。 19歳と25歳で再会する二人。芸大に進学する少年、親の言うがままに進学し就職し、結婚まで仕切られていくであろう檸檬先生。そして冒頭の衝撃的な瞬間へとつながる。 檸檬先生は少年に何を託したのか。少年から何を得たかったのか。少年の目に何を焼き付けたかったのか。 会わなかった十年間。そこにどんな時間が流れていたのか、少年はもう知ることはない。 濃密で鮮やかな色に染められた一年間。空白で透明な十年間。少年はずっと後悔し続けるのだろう。答えの出せない問いを投げ続けるのだろう。届かない檸檬先生への思いを描き続けるのだろう。いつか、あの日の赤から檸檬色の光を見つけるまで。
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