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物語のなかとそと の商品レビュー

4.3

42件のお客様レビュー

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2023/06/22

大好きな江國香織さんのエッセイ。 物語のなかにいる、でもそれはそととつながっているからこそ。 何度ももどってきたい。

Posted byブクログ

2023/05/13

“書くことは、一人だけでする冒険だと思う。” 『物語のなかとそと』は 日常の中の「書くこと」と 「読むこと」について語られた本だ。 江國香織は二十歳のときに 光村図書の雑誌「飛ぶ教室」に 「桃子」という短い作品を投稿し、入選。 アルバイトでお金を貯めては 旅に出ることを繰り...

“書くことは、一人だけでする冒険だと思う。” 『物語のなかとそと』は 日常の中の「書くこと」と 「読むこと」について語られた本だ。 江國香織は二十歳のときに 光村図書の雑誌「飛ぶ教室」に 「桃子」という短い作品を投稿し、入選。 アルバイトでお金を貯めては 旅に出ることを繰り返している時期だった。 出版社から次の作品の依頼があり 三、四年かけて9本の作品を作った。 それが『つめたいよるに』という 短編集になったのだという。 “手紙でも小説でも、文章を書くとき、私は自分の頭が透明な箱になっているように思う。そこは言葉がなければ空っぽなのだが、冬、と書けばたちまち冬景色になり、わかめ、と書けば、たちまちみずみずしい半透明の緑色の海草でいっぱいになる。だから文字のあける穴が必要で、日々箱に去来するたくさんのものを、たぶん人は昔から、文字を通して外側とつなげてきたのだろう。ほんのすこし時間を止めて、とどめておけないものをとどめおこうとして。  書くことは、一人だけでする冒険だと思う。” 彼女はずっと冒険をしているのだ。 箱の中のものを文字でつなげて。 そうして出来上がった物語は 数えきれない読者の胸へ届く。 それから「読むこと」の章の中では マーガレット・ワイズ・ブラウンの 絵本に触れる時の感動をこう語る。 “(前略)でも、いちばん大切なのは、いま、ここに、ただひたすらいい、としか言いようのない何冊かの絵本が存在しているということ。それを読めるということ。何度でもそこにいかれるということ。私たちがそれを、わたしの本、にできること。” 書くことは一人の作業だけど 読むことは二人の作業だと思う。 書き手と読み手の時間差の対話。 いつでもそこへいける、という幸福。 江國香織の小説を読んだ時、 「自分が言いたかったことが こんなところに書かれていた!」と 身悶えしたくなる体験が いままでに何度もあった。 その度に強烈に打ちのめされて、 そして静かに救われる。  小説の世界に自分の分身を見つける時、 その本は紛れもなくかけがえのない一冊になる。 

Posted byブクログ

2023/02/23

江國香織(1964年~)氏は、目白学園女子短期大学国文科卒、米デラウェア大学卒の小説家。『号泣する準備はできていた』で直木賞(2004年)受賞。そのほか、フェミナ賞、紫式部文学賞、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞等を受賞。 本書は、「読むこと、書くことに...

江國香織(1964年~)氏は、目白学園女子短期大学国文科卒、米デラウェア大学卒の小説家。『号泣する準備はできていた』で直木賞(2004年)受賞。そのほか、フェミナ賞、紫式部文学賞、山本周五郎賞、中央公論文芸賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞等を受賞。 本書は、「読むこと、書くことにあけくれて暮らして」いる著者が、「書くこと」と「読むこと」と「その周辺」に関して、過去に雑誌や新聞に掲載したエッセイと掌編小説(極めて短い小説)をまとめて、2018年に出版、2021年に文庫化されたものである。 私は、様々な分野の人が書いたエッセイ集を好んで読み、これまで、女性の作家では、小川洋子、多和田葉子、梨木香歩、角田光代らのものを読んできたが、(当然のことながら)取り上げるテーマ、考え方・感じ方、文体等に個性が表れ、作家本人のことを知ることができて、とても面白い。本書については、新古書店で偶々見つけて、手に取った。 そして、読み終えて、多くのエッセイ集(掌編小説を含む本書は「散文集」だが)と同様、解説で作家の町屋良平が、「江國香織がどうやってそのような稀有な作家人生を生きつづけていられるのか、その秘密をちょっとだけ理解したような気がした」と書いているように、私も著者のことが少しだけわかったような気がした。 中でも印象的だったのは(町屋氏も書いているのだが)、エッセイ「物語のなかとそと」に書かれている、「本を読んでいるあいだ、私はその物語のなかにいます。そして、私の仕事は小説を書くことですから、仕事をしているあいだ、私はその小説のなかにいます。つまり、現実を生きている時間より、物語のなかにいる時間の方がはるかにながい。もう、ずっとそうです。」という記述である。更に著者は、「エッセイよりも小説の方により自分が露呈する、というのはいつもながらこわいことです。」とも書いている。 私は、多くの本を読むものの、大半はエッセイを含むノンフィクションで、それは、読書の中にも現実の延長を求めているからだ(と自分では思っている)が、著者が、「私がいま帰ろうとしている場所は、1970年代のニューヨークで・・・三日前まで私がいたのは1968年と2010年のイギリス、コーンウォール州で・・・そのすぐ前に私がいたのは1990年前後と思われるロンドンで・・・その前には17世紀のオランダで・・・」というような、「物語のなかとそと」を自在に出入りするという視点・行為も面白いものだと感じた。 今後小説を読むときの心の持ち方が(僅かでも)変わるような気がする。 (2023年2月了)

Posted byブクログ

2023/01/17

中学生のときに初めて読んでから印象が変わらない作家。 少女的なのに大人で、それを表すかのようにチョコレートとお酒が好きな人。 II読むことが全体的にとても好きだった。

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2023/01/07

読むこと、書くこと、その周辺にフォーカスしたエッセイ集。夢中になる本と出会って没頭してる感覚が適切な言葉で表現されていて、ウンウンと頷いた。とても良かった。

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2022/12/30

江國さんのエッセイに触れるたびに 彼女のことが好きだとおもう。 好きな人とことを知りたくて、好きな人のエッセイを読む、好きな人が書いた小説を読む そして、新しい部分に気づいたり、変わらない頑固なところに気づいたりする 彼女の考え方は、かわいい。 文字の質量。 文字を書かなけれ...

江國さんのエッセイに触れるたびに 彼女のことが好きだとおもう。 好きな人とことを知りたくて、好きな人のエッセイを読む、好きな人が書いた小説を読む そして、新しい部分に気づいたり、変わらない頑固なところに気づいたりする 彼女の考え方は、かわいい。 文字の質量。 文字を書かなければ透明な箱であるあたまも、 文字を書くことで、文字が穴を開けてくれて、 冬という言葉を書くと雪景色が広がるし、 こんにちは、と書くと外と繋がることができる。 風邪をひいて咳をすると腹筋が痛くなる。 私にも腹筋があったのか、と驚き嬉しくなる。 筋肉痛がなくなると筋肉が消えてしまったようで淋しい。 彼女のごはんの描写も好き。 不思議なことに、お鮨屋さんで飲むビールは海と似ています。 晴れた真昼の、とてもきれいな海です。 波が岩を洗うみたいに私の喉や内臓を洗うので、海辺のバカンスの気持ちになります。 ときどき飲む日本酒は夜風のようなものです。 好きだなぁ、と思う。 お友達になりたいなぁ、と思う。 彼女とおしゃべりすることは、どれだけ楽しいことだろう、と思う。 自分で感じている、という事が伝わって それが言葉にでてきて、 いいなあ、と思う。 あと、文中にあった 世の中のよいこと、美しいものがすべて書かれている静かで質素で清らかな 本、プラテーロとわたし この本を探します。

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2022/12/17

私も読書が好きなのですが、江國さんのように時間も周りのことも忘れるほど本に没頭するといったことが最近少なくて江國さんが羨ましくなってしまいました。仕事のことや人生の不安など、今考えなくてもいいことは頭の隅に追いやって本の世界にもっと没頭出来るようになりたいです。 江國さんの目で語...

私も読書が好きなのですが、江國さんのように時間も周りのことも忘れるほど本に没頭するといったことが最近少なくて江國さんが羨ましくなってしまいました。仕事のことや人生の不安など、今考えなくてもいいことは頭の隅に追いやって本の世界にもっと没頭出来るようになりたいです。 江國さんの目で語られる世界は生き生きとして色鮮やかで、本当に小説家になるために生まれてきたような方だなと思いました。

Posted byブクログ

2022/12/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

物語の「中と外」ではなく「なかとそと」という言葉の使い方がとても好きです。 心が弱っていたり不安に苛まれている時にはいつも、江國さんの綴る柔らかく優しい言葉に会いたくなります。 そしてその行間に流れる静けさに癒されます。

Posted byブクログ

2022/11/28

江國香織さんの文章は果実を食べているみたいだ 甘くて瑞々しい優しさを含んだ果実 江國さんの世界が好きだ

Posted byブクログ

2022/10/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

わたしが持っているのは単行本だけど、文庫本に田中みな実さんが帯を書いているんですね。 そしてその言葉にわたしも同感します。 特に好きなのはインド料理屋さんのトイレの上品な言葉の話 (ここは是非訪れたいと思っている) 緑色のブーツの話 (ご主人の「返し」が最高、箱根?という提案) 川上弘美さんや荒井良二さんへ宛てた手紙の文章 (宛てたおふたりのファンでもあるし) 秀逸なのは「骨」の話よね こんなふうに褒められたらほんと嬉しいと思う 作者をまるごと愛しているからどのお話も好きではあるんだけどね。

Posted byブクログ