ワンダフル・ライフ の商品レビュー
事故により障害を追った妻を介護する夫から物語は始まる。 いきなり重いテーマだ。 作品は、時と舞台の違う、4編の男女のエピソードで構成されている。 一つ一つの話を読み進めると、何か違和感を感じながらも少しずつ明らかになるもどかしさ。 トレーシングペーパーに断片的に描かれる4枚の紙の...
事故により障害を追った妻を介護する夫から物語は始まる。 いきなり重いテーマだ。 作品は、時と舞台の違う、4編の男女のエピソードで構成されている。 一つ一つの話を読み進めると、何か違和感を感じながらも少しずつ明らかになるもどかしさ。 トレーシングペーパーに断片的に描かれる4枚の紙のようだ。 夫々を重ねることで、空白が少しずつ埋まり、最後に全てが浮かび上がりるといった趣向に唸らせられた。 それよりも本作は、健全者と障害者の意思疎通の難しさ、偏見、差別など、自分の良心や道徳心を試される、心を強く揺さぶられる内容に正にやられた。 生きているだけで幸せ。と煩悩の塊の私に思える時が来ることはあるのだろうか。
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なんともやりきれないスタートで、最後までやりきれません。 要介護になってしまった妻とのすれ違いから始まった物語が、どういう風に転がっていくのか全然分からないまま読み進め、最後に至った時にやるせなさマックスになります。 ありがとうと言われる事なくこき使われれば消耗していくし、世間か...
なんともやりきれないスタートで、最後までやりきれません。 要介護になってしまった妻とのすれ違いから始まった物語が、どういう風に転がっていくのか全然分からないまま読み進め、最後に至った時にやるせなさマックスになります。 ありがとうと言われる事なくこき使われれば消耗していくし、世間から置き去りにされたような気持になるのも仕方ないです。めちゃくちゃ頑張っているし献身的なのに何が気に喰わないんだとむしゃくしゃした気持ちで読みました。 でもその何が気に喰わないんだという気持ち自体が上から目線だと言われてしまうんでしょう。だとしたらどうしたらいいのかなあ。もし自分がこういう態度の人の介護をずっと続けなければいけないとしたら、その手前にどんないきさつが有ってもつきあいきれないなというのが正直な所。 しかしデフボイスといい本当に身につまされ、新たな問題提起をしてくれる作家さんです。
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どこか繋がっているんであろうなと思っていたけど、そう繋がっていたとは… テルテルさんとの過去があったから、好きな人にCPとして介助される側になった摂は、余計に相手のことを考えただろう。 ラストの摂の未来は悲しいけれど、これが現実なのだと思わされた。
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事故による頸髄損傷で肩から下が動かず寝たきりの妻の介護をしている男…で話しは始まる。 それから違う話しが次々と…、と思って読み進めるとひとつの人生だった。 繋がっていたそれぞれは、すべて重くてその時々で悩みは尽きず…。 だがそれなりに何かを抱えたままで日々を過ごしていくことが生...
事故による頸髄損傷で肩から下が動かず寝たきりの妻の介護をしている男…で話しは始まる。 それから違う話しが次々と…、と思って読み進めるとひとつの人生だった。 繋がっていたそれぞれは、すべて重くてその時々で悩みは尽きず…。 だがそれなりに何かを抱えたままで日々を過ごしていくことが生きているということなんだろう。 妻が介護して貰っても決して「ありがとう」と言わなかった訳に胸を締めつけられる思いがした。
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まさか全部が繋がるとは思わなかった。 最初の障害を持った女性の態度はさすがに無いかなと思いながら読んでいた。 しかし、全部読んでから彼女も生き生きとした魅力的な女性に変わりはないのだと言うことに気付いた。 障害者を異物に感じる世の中はダメだと書いていたが、確かにそうかもと思う。 最後に彼女が言った「ありがとうを言わなかった理由」は本当だろうか?判断がつかなかった。本当ならば彼女はかなり辛かっただろうな。
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なんだこの本は。 ガツンとくる作品だった。 脳性麻痺、頸髄損傷、障害を持つ人が登場し、いくつかのパートが時間軸を変えながら描かれている。 バラバラの話を読み進めるうちに、何となく名前に繋がりを感じ始め、最後にきれいにまとまるのだろうと期待したが、それが思いがけない形で裏切られた。...
なんだこの本は。 ガツンとくる作品だった。 脳性麻痺、頸髄損傷、障害を持つ人が登場し、いくつかのパートが時間軸を変えながら描かれている。 バラバラの話を読み進めるうちに、何となく名前に繋がりを感じ始め、最後にきれいにまとまるのだろうと期待したが、それが思いがけない形で裏切られた。 混乱しながら最後の最後まで読んで、納得…。 この作者の作品は、他の聴覚障害のものも同様だが、とてもリアルに感じさせる。 障害のある人が差別される、というありがちなものではない。障害のある人が、他者を差別することもあるだろう。 でも、どんな人も、無関係ではない。 この作品を読んで、また一つ知る。 私にとって読む必要のある作品だったと思う。
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オムニバス形式?と思いきや、次第に繋がっていく線が見事で一気読みしてしまいました。 エンドロールで一瞬混乱したけど、おもしろい! 最後の年譜も親切ですね(笑) 扱われている題材が、頚椎損傷で夫婦間介護、障害差別、養子縁組問題など、ひとつひとつが重いのです。 また、心情がリアルで最後まで読んでも救われません(!)が、なんでかちょっと希望を持ちたいと思わせる終わり方。 そうあって欲しい、と思うのは登場人物に感情移入させる技術が見事だからなんでしょうね。
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4つの時間と舞台が違うストーリーが入り混じった作品。 障害を持つ方が身近にいる人とそうで無い人とは理解度が違うと思いますし、哀れみや同情などみんな違うそれぞれの感情を持つと思います。 この作品は、そういった障害者がいる状況をベースに書かれているので、それに対しての想いや考えが描か...
4つの時間と舞台が違うストーリーが入り混じった作品。 障害を持つ方が身近にいる人とそうで無い人とは理解度が違うと思いますし、哀れみや同情などみんな違うそれぞれの感情を持つと思います。 この作品は、そういった障害者がいる状況をベースに書かれているので、それに対しての想いや考えが描かれていますが、固い話、難しい話、正論が並べられた話、そうではありません。 男女、家族、人間の生々しさが物語としてどんどん先が気になるほど面白さ。 4つの物語がつながった時、壮大な人生を見ることができた満足感が得られ、練られたストーリーに感心すること間違い無い素晴らしい作品です。
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最初、話がぶちぶちちぎれていて、何が何だか理解できなかった。 少しずつ、同じ人が名前を違えて登場していて、時間軸が前後してるのか?と気づき、そのあとは、何度か行きつ戻りつ、読み進めた。 お涙頂戴でも感動の嵐、でもなく、物語は淡々と進む。 酷いことも起こるが、それが現実だから。 ...
最初、話がぶちぶちちぎれていて、何が何だか理解できなかった。 少しずつ、同じ人が名前を違えて登場していて、時間軸が前後してるのか?と気づき、そのあとは、何度か行きつ戻りつ、読み進めた。 お涙頂戴でも感動の嵐、でもなく、物語は淡々と進む。 酷いことも起こるが、それが現実だから。 だから流れに納得感がある。 わかった感があり、最後のあたりでエンドロールが来て、??? 話がひっくり返ってる、どうして? その後の年譜を読むと、全てが腑に落ちる。 妻 岩田(国枝)摂 岩子(がんこ) GANCO 摂の物語だった。 障害者と健常者、というこの書き方自体が差別的で、どこか不自由なことを障害者と言うなら、腰が痛くてゆっくり、短距離しか歩けない人も、とても目が悪くて眼鏡を使っても見にくい人、なども健常者ではないように思えてくる。 冒頭の車椅子でカフェに入りにくいシーンも、妻が外出の練習でエレベーターの乗客、全てに降りろ、と告げ、あなた達は階段もエスカレーターもあると言い捨てる。 どっちの言い分も、間違っていないし、この話はとても難しい。 この辺りの扱いが、この筆者、丸山正樹氏はとてもうまいと思う。今後も楽しみにしています。
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どこかの書評で見かけて図書館の順番待ちに並び、しばらく経って手元に届いたので、内容を忘れたまま読み始めた。 脊髄損傷の女性が出てきて、ああ障がいに関する内容だったかと思ったのも束の間、4組(?)の男女の物語は、ストーリーも時代背景もどこか前後していて奇妙な違和感を覚えながらも、そ...
どこかの書評で見かけて図書館の順番待ちに並び、しばらく経って手元に届いたので、内容を忘れたまま読み始めた。 脊髄損傷の女性が出てきて、ああ障がいに関する内容だったかと思ったのも束の間、4組(?)の男女の物語は、ストーリーも時代背景もどこか前後していて奇妙な違和感を覚えながらも、それぞれが興味深い関係で、引き込まれて読んだ。 各ストーリーの要所要所で、障がい者をめぐる悲惨なニュースや、知事の差別発言、排除アート(「社会から異物を追い出そうと」する意図の元に配置されたベンチやオブジェなどのこと。p129)についての考察など、社会的テーマを読み手にも考えさせる。 相手が障がいを持っていようがいまいが、人と人が出会うところには、必ずすれ違いもあり、傷つけあいもする、納得のいかないこともある。 ただ、そこまでの関係性を、日常では持つ機会がないのが、この日本の現状だ。私も、その内の一人だ。 ラストに一気に「収束」する仕掛けには、「ちょっと一回タンマ!!」と焦って思考を一時停止させたほど。 何より、読者を引き付ける力、巻き込む力がすごい。丸山作品初読ながら驚いた。あとがきを読んで、その理由がわかった。 「(障がい者(児)自身の気持ちは)私自身もわからないんです。~当事者に言わせれば全然違うのかもしれない」(web版 小説宝石2021.3)と謙遜するが、作者が敬意をもって、全身全霊で想像し、作り上げた物語だということが伝わってくる。 そして、「あなたはどう思う?」と作品を通して問いかけることで、読者全員に当事者意識を持たせようとしている。 『ワンダフル・ライフ』という書名もその一つだ。 ほんとうに人生は素晴らしいのか?自分が、大切な人が、重い障がいを負っても?考えろ、想像しろと問いかける。誰もが、「僕」や「妻」になりうるのだ。
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