十の輪をくぐる の商品レビュー
家族との関係性や愛情といった登場人物の心情が丁寧に描写されていて気持ちの変化や言動の理由について疑問を抱くことなく頭に入ってきて良かったことそれにあっている雰囲気の違いなど面白かった。
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この本を20代で書いたことが驚きです。取材と想像力、資料の読み込みでここまでリアルにあの時代の日常を描きだせるとは。 私は母親世代がまだ万津子のような生活をしていたことを直接聞いて知っていますが…。多少残っているああいう空気も肌で感じているし。関門海峡から南に行くと、今でも一気に...
この本を20代で書いたことが驚きです。取材と想像力、資料の読み込みでここまでリアルにあの時代の日常を描きだせるとは。 私は母親世代がまだ万津子のような生活をしていたことを直接聞いて知っていますが…。多少残っているああいう空気も肌で感じているし。関門海峡から南に行くと、今でも一気に時代を遡るんですよ。本当に。家(うち)んこともでけんでおって、外さん働きに行くとは、家んことしよごんなかけんたい、とか、普通に言われちゃう。スーパーウーマンじゃないと、そがんこつでけんて。 あらすじ紹介で想像していた内容とはちょっと違いました。私がこの本で面白かったのは、万津子時代の生活の描写と、その流されていく様、また、泰介の変化です。 泰介の小説前半の酷さといったら、自分の夫が可愛らしく見えてしまうほど。いかんいかん、錯覚だよ?泰介の変化のきっかけや内容が読みながら、もしかしてそうかな、と感じていたことと重なり、面白かったです。 朝読書も効果あると思うけど、朝ランニングとか、朝縄跳びとかで身体動かすのも落ち着きない子には効くと思います。
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公は58歳の会社員、泰介とその母の万津子。80歳で認知症になってしまった母の姿を認められない泰介は、つい冷たくしてしまう。そんな母に妻の由佳子がとても細かく行き届いたケアをしてくれているのを当たり前のように振る舞う泰介にイライラしたが、それは後半への布石だった。また、万津子が、育てやすくない子供である泰介をけっして諦めず、叱らず、叩かずに育てる姿は感動しかない。由佳子もいい人だし、娘の萌子は、泰介の今後の人生を救う程の聡明さを見せる。ジェンダーが当たり前な時代だった前半の万津子の生活が辛かっただけに、後半からは一気に読んでしまいました。いいぞ!東洋の魔女!と思いました。 考え方の癖を直していく事で、生きやすくなる。とても大事なことを、教わりました。泰介ほどではなくても同じような事を感じていたので、勉強しようと思いました。
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女工時代が楽しそうだっただけにその後の結婚、子育て、現在の息子からの扱われ方をどんな気持ちで読んだらいいのか戸惑いが続いた。息子をバレーに集中させ、良い孫もでき、どんなにほっとしているかと思いきやずっと秘密を守り抜く母の強さが重すぎて苦しい。
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単なるオリンピックの内容だけでなく、そう言う方向の話しだったのかと膝を打った。バレーを頑張る萌子がとても良い娘で良かった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
私は東京五輪は大反対で、反対の署名までしました。 でも、この物語を読むと、オリンピックが開催されることにより、こんなにも生きる気持ちを明るく持てるようになる人も存在するのだと思いました。 今回の東京五輪・パラリンピックも開催まであと3週間をきりました。ここまできたら、とにかく本当に安心・安全にどこの国の選手も国民も楽しめるよい大会になりますようにと願うのみです。 以下、最後まで全部ネタバレで書いていますので、これから読まれる方はお気をつけください。 物語はオリンピックを9カ月後に控えた2019年10月から始まります。 佐藤泰介は1964年の東京オリンピックの時、3歳でした。1940年生まれの母の万津子は当時24歳。 今はくも膜下出血による認知症を患っています。 大学のバレーボール部で出会った妻の由佳子。 高校二年でやはりバレー部の娘の萌子がいます。 そして物語は1958年9月の万津子が結婚前一色紡績という会社で女工をしながらバレーボールをやっていたパートと交互に進みます。 万津子は19歳で見初められ見合い結婚をします。 ところが夫となった佐藤満は酒乱で暴力をふるう男性でした。 泰介と弟の徹平が生まれますが夫は息子たちにも手を挙げる毎日。しかし満は三井鉱山の爆発事故で1963年に亡くなります。 万津子は実家に帰りますが、泰介が情緒不安定で毎日、暴れて実家の家族に嫌われます。満に似たのだろうかと万津子は悩みます。 そして泰介は川に溺れてしまい、一緒に溺れた少年が亡くなり、万津子は実家にもいられなくなり、東京へ飛び出していき、東京で泰介にバレーボールを教え始めます。 2020年。泰介は気が荒くスポーツ用品会社で仕事は降格され、うまくいっていませんが萌子に「お父さんはADHD(発達障害)じゃない?」と受診を勧められます。 果たして受診すると萌子の言った通り泰介は発達障害だったのです。 泰介は素直に病気に対応する術をみつけていき、運も手伝って昇進することができます。 萌子の高校は春高バレーで決勝に進みます。 そして、エースの萌子の活躍により見事優勝。 万津子は病院で萌子の試合を観戦後、泰介に「もうバレーはやらなくていい」と言い残し息をひきとります。 萌子は高校卒業後、実業団に入りオリンピックへの道を目指します。
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その秘密は無償の愛に溢れている - 辻堂ゆめ「十の輪をくぐる」★★★★☆ 著者の心境地だ!これまでは、ファンタジーよりのミステリーが多く、そのどれも外れなしでした。ライトな「片想い探偵」があったり、小学生向けの文庫も出していて幅広いと思っていたらこの作品ですよ。参りましたよ。大...
その秘密は無償の愛に溢れている - 辻堂ゆめ「十の輪をくぐる」★★★★☆ 著者の心境地だ!これまでは、ファンタジーよりのミステリーが多く、そのどれも外れなしでした。ライトな「片想い探偵」があったり、小学生向けの文庫も出していて幅広いと思っていたらこの作品ですよ。参りましたよ。大河です大河。横山秀夫さんを彷彿とさせる骨太作品です。 自分の子供を決して見捨てない!そんな母の無償の愛に心打たれました。東洋の魔女のように決して諦めない! 若干大人のADHAがかんたんに好転し過ぎな気がしないでもないか。
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よく言われる地域の女性蔑視問題、痴呆の問題・・・書きすぎるとネタバレになってしまうが、現在日本が抱える問題を、オリンピックに絡めて正面から描いている小説。都合の良すぎる部分も多いがそこは物語であるので、素直に感動作として読むのが正解。
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前半、あまりにも読むのが辛くて何度も読むのをやめようかと思ってしまいました。 80歳の母ともうすぐ定年になる息子が一章ごとに交互に語り手になるのですが、どちらもあまりにも辛くて辛くて‥‥。 母が若き日に見た東京オリンピックと、今回の東京オリンピック。母、息子、そしてその娘、3代に...
前半、あまりにも読むのが辛くて何度も読むのをやめようかと思ってしまいました。 80歳の母ともうすぐ定年になる息子が一章ごとに交互に語り手になるのですが、どちらもあまりにも辛くて辛くて‥‥。 母が若き日に見た東京オリンピックと、今回の東京オリンピック。母、息子、そしてその娘、3代にわたってバレーボールでのオリンピック出場を夢見る。そのくらいの前情報で読んだこの作品。 母はなぜそんなにバレーボールにこだわるのか?その謎が分かってからはもう心が震えてページを捲る手を止められませんでした。 「この世の中には、普通の人もいないし、異常な人もいない。どんな脳の特性も、人間社会にとって必要なものだからこそ、今の今までDNAが残ってるんだよ。」 これ以上は書けません。ぜひともネタバレなしに読んでもらいたいので。 娘がとても聡明な女の子。なんていい子なんだろう。
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