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非色 の商品レビュー

4.5

118件のお客様レビュー

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    68

  2. 4つ

    37

  3. 3つ

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2025/04/21

すごい作品だった。この作品の衝撃といったらなかった。黒人兵士と結婚してアメリカに行った女性の波乱に満ちた人生の中で問い続けた肌の色による差別について、どこに帰着するのかハラハラしながら読んだ。肌の色の人種差別だけでなく、この世は差別だらけだと実感させられる。異国で、差別の中で日本...

すごい作品だった。この作品の衝撃といったらなかった。黒人兵士と結婚してアメリカに行った女性の波乱に満ちた人生の中で問い続けた肌の色による差別について、どこに帰着するのかハラハラしながら読んだ。肌の色の人種差別だけでなく、この世は差別だらけだと実感させられる。異国で、差別の中で日本人女性が子を産み育てながら働き、必死に生きながらの様々な葛藤を読むほどに、有吉ワールドに引き込まれていった。最後は彼女なりに自分は何者かという答えに辿り着く。最後の『私は二グロだ』という言葉に、確かに人間は「肌の色ではなく」、どこでどう生きるのかを選び取っていく主人公の人生に清々しさ、頼もしさを感じた。

Posted byブクログ

2025/03/03

この時代にすごすぎる。 移動中に、感情が追いつかなくて一目もはばからず泣いてしまった。素晴らしかった。 1964年初版、現在は不適切といわれる差別的表現が多いが、出版社や遺族による尽力により、当時のままでの再出版という注がある。  戦争で黒人米兵と結婚し、肌の黒い幼い娘の手を...

この時代にすごすぎる。 移動中に、感情が追いつかなくて一目もはばからず泣いてしまった。素晴らしかった。 1964年初版、現在は不適切といわれる差別的表現が多いが、出版社や遺族による尽力により、当時のままでの再出版という注がある。  戦争で黒人米兵と結婚し、肌の黒い幼い娘の手を引き日本を出た女性の一代記。しかし、米国において働き始めて階層を行き来することで世の中の差別は単に日本で受けた黒人への糾弾のみならず、さまざまな人種同士がお互いについての考えがあることを知り、そんな世の中でもどんどん混血児は生まれてくる。 黒人も白人も黄色人種も、肌の色に関係なくそのなかでさまざまな階層意識がある。だから「非色」。今日もアンダーグラウンド、もしくは公で交わされている、誰しもにつきまとう差別意識や思想について、上流階級の使用人をつとめる主人公のまなざしはとても正直である。そして、仕事を終えると、彼女とは違う肌や髪を持つ、家族が住むハーレムの貧民街に帰るのだ。 主人公より四半世紀ほど後であり、黄色人種同士であるので単純化はできないが、わたしの親は片方が日本人であり、結婚後米国NYCに住みわたしが生まれ、夢やぶれ日本に家族で越して来たと聞いたことがある。わたしは、日本人の方の親とは言葉が分かっても気持ちが通じないなと何度か思ったことがある。そして、言葉が通じない従兄弟がひしめき合い、賑やかだが寄る辺なく過ごしていた片方の実家の雰囲気をふと思い出した。 いまに至るまで、どちらのアイデンティティに対してもそれらを代表する気にはなれないから、ずっとふわふわとした気持ちでいる。日本で過ごす場合、特にそれで困ったこともないし、そうした「スタンス」が邪魔になることすらあるように思う。 しかし、半世紀以上前のNYにおける肌の色・国籍・訛りがある人種の坩堝において、自分の思想が輪郭を帯びてくる様子がまざまざと描かれる。それが、例えば自分が産み落とし成長した子女とすら違った場合、何を思うだろうか。 生い立ちにまつわるアイデンティティについて、誇りに思うことは大事だと思う。しかし、自分が選ぶ、選ばないにかかわらず、主人公、そして自分の両親、国を越えてパートナーになった人たちを見ていると、その後の人生で「そうなるしかなかった」としか言いようがないことが多い。そして、そんな出自を生まれながらにして生抱えていても、いやどんな出自を持ってしても、決して何かを成し遂げる必要はないのだと思う。そしてそれは決して厭世的な意図ではない。

Posted byブクログ

2025/02/24

100分de名著で有吉佐和子が取り上げられていたので借りて見た。ら、予想以上に面白かった。もっと古めかしく堅苦しい話かと思いきや、主人公がバイタリティ溢れる強い人なこともあってグイグイ展開し、そして考えさせられるラスト。今の時代にも全くそのまま通用する人権意識とメッセージ、すごい...

100分de名著で有吉佐和子が取り上げられていたので借りて見た。ら、予想以上に面白かった。もっと古めかしく堅苦しい話かと思いきや、主人公がバイタリティ溢れる強い人なこともあってグイグイ展開し、そして考えさせられるラスト。今の時代にも全くそのまま通用する人権意識とメッセージ、すごい本だった。そしてこの本が書かれてから何十年も経ったのに、差別、分断、貧困、ほとんど何も解決できない愚かな人類よ。みな笑子のように強くあれ。

Posted byブクログ

2025/02/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分をより優れていると思いたいのではないか。それでなければ落着かない。それでなければ生きて行けないのではないか。 本書の中の一節。私もきっと無意識のうちに何かを差別し、何かから差別されている、ということを忘れずに生きていこうと思った

Posted byブクログ

2025/02/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かなりひさしぶりに手にした有吉佐和子の小説はやはり素晴らしかった。 非色というタイトルも内容も文章も何もかも圧倒的な才能を感じた。ここ数年の新刊として読んだの小説と心への響き方が違う。 世間や自分自身と葛藤しながらも、黒人と結婚し子供を産み、豊かな生活を夢見てニューヨークへ渡った笑子。貧しいハアレム暮らしに困惑しながらも生き抜く姿が人間的であり、悲しく優しく逞しい。 目や髪や肌の色に一喜一憂し、碧い目と金の髪を頂点とし、その中でも見下して良い人種をつくり、アメリカとアフリカの黒人間でも優劣をつけあう。 人種の偏見や差別の問題の深く掘り下げ、日本でもアメリカでもアフリカでも、どこでも差別があることを改めて知る

Posted byブクログ

2025/02/05

終戦直後黒人兵と結婚した笑子 生まれた娘はやはり肌が黒く、髪が特徴的 日本で過ごすにはあまりにも目立ちすぎた 島国特有の差別的な目が アメリカ、ニューヨークへ向かわせた が、アメリカでのさまざまな人種問題が あるとあらゆるところで渦巻いていた 貧しい生活の中で 知らず知らずのうち...

終戦直後黒人兵と結婚した笑子 生まれた娘はやはり肌が黒く、髪が特徴的 日本で過ごすにはあまりにも目立ちすぎた 島国特有の差別的な目が アメリカ、ニューヨークへ向かわせた が、アメリカでのさまざまな人種問題が あるとあらゆるところで渦巻いていた 貧しい生活の中で 知らず知らずのうちに 自分より劣っていることを 他者に見つけ出している 人間の本質であるかもしれない 安全のために、身を守るため 違ったものを排除したくなる 誰かの上に立っていたくなる 色にあらず それは 色の違いではなく、別の大きな問題が‥ 日本の中でも差別は多々ある 宗教的な差別もある 差別を問う! すごい小説です そして笑子は強い! この小説の時代からなんら変わりのない現代 差別意識の数々 自分は関わりを持つことがないと 知らん顔していてはいけない問題が 山ほどあるのだろうな

Posted byブクログ

2025/01/21

色に非ず。 人はいったい何を見ているのか。 差別する側とされる側。 差別の善悪にとどまらず、何で差別がおこるのか、 差別の構造にきりこんだ、深く考えさせる内容だった。 難しいテーマだけど、笑子の行動力と登場人物の魅力的な 描き方で、どんどん読ませる。 有吉さんすごい。 笑子の自...

色に非ず。 人はいったい何を見ているのか。 差別する側とされる側。 差別の善悪にとどまらず、何で差別がおこるのか、 差別の構造にきりこんだ、深く考えさせる内容だった。 難しいテーマだけど、笑子の行動力と登場人物の魅力的な 描き方で、どんどん読ませる。 有吉さんすごい。 笑子の自分なりの答えの見つけ方、ラストかっこよくて、しびれた。

Posted byブクログ

2025/01/16

今では禁止用語となっている言葉も多く登場するので、ここにはっきり書けないことも多い。 しかし、いくら言葉をごまかそうとしたところで人間の感情や意識はなかなか変えられないと思う。 それが逆に、この物語が少しも古くならない所以でもある。 林笑子(はやし えみこ)は、長女のメアリイを...

今では禁止用語となっている言葉も多く登場するので、ここにはっきり書けないことも多い。 しかし、いくら言葉をごまかそうとしたところで人間の感情や意識はなかなか変えられないと思う。 それが逆に、この物語が少しも古くならない所以でもある。 林笑子(はやし えみこ)は、長女のメアリイを連れて、夫の待つアメリカに渡る。終戦後7〜8年経った頃。 肌の黒いメアリイに対して周り中から突き刺さる差別の悪意から逃れるため、そして母と妹が、黒人と結婚した笑子が日本から消えることを望んだからである。 連合国軍がアメリカに渡る「戦争花嫁」たちに用意したのは貨物船。 狭い船室に乗り合わせた日本人女性たちとは、その後も縁を持つことになる。 「なに人」の男と結婚したかが、のちに彼女たちの運命を分けた。 1945年の敗戦後、いわゆる「進駐軍」が占領のために日本に入って来たが、なにも知らない日本人の目には、同じ軍服を着ていれば皆アメリカ人だった。違いが見えるのは、肌が白いか黒いか、くらいだった。 しかし、ニューヨークでの複雑な人種カーストに「肌が白ければ良い」という単純な思い込みも壊されていく。 黒人、イタリア人、プエルトリコ人、ユダヤ人・・・ およそ人間ほど、生物学上同じ生き物とされながらそれぞれ違った生き方を強いられる生物はいないのではないかと思う。 差別感情とはコンプレックスの裏返しではないだろうか。 人が最低限生きて行ける心の拠り所とは、自分よりも底辺と呼ばれるものを見下すことによってのみ得られる自尊心ではないかと笑子は気付く。 この物語は人種差別について多くのことが述べられているが、問題定義や啓蒙が目的ではなく、あくまでそれは笑子の目で見た世界、彼女が考えざるを得なかった問題である。 これは、女性の生き方を描いた物語なのだ。 ポトマック河畔の桜を見て、笑子は衝撃を受ける。日本を発つ前に靖国神社でお花見をした桜とはあまりにも違う。 こんな油絵のような桜は、日本の桜ではない。 植物は気候や土壌に合わせて変わっていくものだった。 そして笑子は、自分もポトマック河畔の桜になったと感じたのではないだろうか。 自分が確かにこの大地に根を下ろしたと実感できるまでの、笑子の進化の物語であった。 この小説のタイトル『非色(ひしょく)』とはどういう意味なのかと考えた。 「人間の価値を決めるのは、肌の色に非(あら)ず」 というふうに私は受け取った。 笑子の長女メアリイは、生まれながらの国際人だ。賢い彼女の行く先が楽しみだが、それは想像することにしよう。

Posted byブクログ

2025/01/10

 大学生の頃に、紀ノ川という作品を読みそれ以来の有吉佐和子さんです。はじめは、なんという差別的なことばで差別的な内容の…と思いながらの読書でした。それが主人公笑子の心の変化につれて差別の本質についての考察に至ります。  わたしも笑子の考え方の振れと共に差別とは?肌の色とは?につい...

 大学生の頃に、紀ノ川という作品を読みそれ以来の有吉佐和子さんです。はじめは、なんという差別的なことばで差別的な内容の…と思いながらの読書でした。それが主人公笑子の心の変化につれて差別の本質についての考察に至ります。  わたしも笑子の考え方の振れと共に差別とは?肌の色とは?について考える機会を持つことができました。階級闘争という言葉が頭に残りました。  差別的なことばや内容はその時代のライブな感覚です。その先にある深い考察には本当にビックリしました。有吉佐和子さん、もっともっと読みたいです。

Posted byブクログ

2024/09/19

終戦直後に黒人兵士と結婚し、幼い子供を連れてニューヨークにわたった日本人女が人種のるつぼで直面する偏見と差別の中で生き抜く話。 文体にくせがなく、読みやすい。単なる黒人差別ではなく、より複雑に絡み合った差別の構造をいち市民の立ち位置からわかりやすく描いている。歴史の授業でしか知ら...

終戦直後に黒人兵士と結婚し、幼い子供を連れてニューヨークにわたった日本人女が人種のるつぼで直面する偏見と差別の中で生き抜く話。 文体にくせがなく、読みやすい。単なる黒人差別ではなく、より複雑に絡み合った差別の構造をいち市民の立ち位置からわかりやすく描いている。歴史の授業でしか知らなかった僕にとって自分の教養の無さを思い知らされる内容だった

Posted byブクログ