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八月の銀の雪 の商品レビュー

3.9

271件のお客様レビュー

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2024/06/05

 著者作品は二作目。  前作と同じく短編集だ。経歴(神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了)を活かした、科学的蘊蓄、自然の摂理を物語に絡ませながらのハートウォーミングな筆致は相変わらず。  前回読んだ『月まで三キロ』の時のレビューを...

 著者作品は二作目。  前作と同じく短編集だ。経歴(神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了)を活かした、科学的蘊蓄、自然の摂理を物語に絡ませながらのハートウォーミングな筆致は相変わらず。  前回読んだ『月まで三キロ』の時のレビューを見返してみると、「悪人がいないこと」がタマニキズとある。さて、その翌年に出た本作はどうだろうか?  5篇のお話が収まっている。 『八月の銀の雪』は地球の核のお話。鉄の塊の核があり、液体の外核の中に浮かんでいる。鉄の結晶が伸びた樹枝のような森に覆われ、雪のように鉄の結晶が降り積もる。 『海へ還る日』は、クジラのお話。シングルマザーの苦労を、クジラやシャチの群れに存在する親に代わって世話をする育児を終えたメスを例に、現代社会の、都会の殺伐さを浮き彫りにする。 『アルノーと檸檬』、伝書鳩の世界。どこに居ても自分の帰る場所、その方角を認識している鳩の能力。故郷を捨て、家族と絶縁して都会に暮らす不動産デベロッパーの、帰巣本能を刺激する。 『玻璃を拾う』は、ミクロの世界。微生物の珪藻を使ったアートをキッカケに出会うことになる男女の話。関西弁のやりとりに無理がないのは、作者の出自によるものか。 『十万年の西風』。気象にまつわるお話に、原発の放射線廃棄物のお話を絡める。  結果、やはり、これといった悪人は、出てこない。  強いてあげれば『八月の銀の雪』に出てくる大学の知人。怪しげな投資ビジネスに人を勧誘する、その片棒を担がせようとするが、主人公に直接の害が及ぶわけではないので、敵対する存在としての「悪」ではない。 「人間の中身も層構造のようなものだ。地球と同じように。」  と、あるように、その友人にしても、表面的な見た目とは別の内面がある。  科学の小ネタは楽しい。悪くはないが・・・ という短編集。前作ほど夢中になれなかった。

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2024/05/26

人生うまくいかない主人公たちが研究者(探究者?)との出会いで前を向く短編集。 科学による心の栄養補給。玻璃の二人を全力で応援します。

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2024/04/10

科学にまつわる短編集。 人の温かさというか優しさが感じられる。 好きなのは表題と海へ還る日 自分の人生について考える時生命や自然の知識に感化される。

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2024/03/25

登場人物たちが科学に触れ、世界の見方が変わっていく物語の短編集。  「月まで3キロ」と同じ構成の短編集であり、登場人物たちが科学に触れて少し前を向くことができるようになる、優しい短編集だった。 地球の内核や珪藻といった、自分には全く馴染みがないテーマばかりだが興味深く読むことが...

登場人物たちが科学に触れ、世界の見方が変わっていく物語の短編集。  「月まで3キロ」と同じ構成の短編集であり、登場人物たちが科学に触れて少し前を向くことができるようになる、優しい短編集だった。 地球の内核や珪藻といった、自分には全く馴染みがないテーマばかりだが興味深く読むことができ、自然のすごさを感じられる。それは、各短編で科学に触れて世界の見方が変わる主人公たちと近い体験なのかもしれないと思った。 巻末の、小説とは思えない量の参考文献からも、作者である伊与原さんが「科学」というテーマで真摯に作品作りに取り組んでいることが窺えた。 科学に関する情報が具体的で魅力的な一方で、登場人物たちの背景等は前作よりもややあっさりした印象があった。そういった意味では、人物の描写がもう少し多い方が好みかもしれない。

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2024/03/24

アルノーとレモンについて 同じ経験あり。鳩をひろったことがある。小学6年王のとき、名前はアルノーと名付けた。作文も書いたタイトルは「無念アルノー」

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2024/03/18

五つの短編に描かれる景色がどれもとてつもなく美しい。地球の中心にあるかもしれない銀の鉄の森。深海で唄うクジラに夕焼け空を飛ぶ鳩。人間には生み出せない玻璃の芸術品。ピンクに輝く白い凧。詳しいことまで理解できなくても、情景の美しさだけで何度も読み返したいと思える本。

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2024/03/16

科学と現実の心の問題。不思議な感覚のお話。初読みの作家さんでしたが読みやすかった。短編集で1話目が良かった

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2024/03/01

読みやすい文体、各話で科学的な知識が得られるので普段読書しない理系の方にお勧めしたい一冊。どの話も読後感よく、心温まる。余韻をもたせた終わり方で、読み手が登場人物のその後について自由に思いを馳せることができるのが良いと思った。表題作も良かったが、「玻璃を拾う」が一番好きだった。

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2024/02/25

全体的に地球と人という感じで、表紙もあってか美しかった。 私は最初の話が好みで、美しかった。ただああいう人ってあんなにすぐ改心しなさそうなのでちょっと強引かなとは思った。 あとはクジラの話も綺麗で良かった。やはりどんな人でも外から見えない悩みがあるのかもなと思う。 ありそうな話に...

全体的に地球と人という感じで、表紙もあってか美しかった。 私は最初の話が好みで、美しかった。ただああいう人ってあんなにすぐ改心しなさそうなのでちょっと強引かなとは思った。 あとはクジラの話も綺麗で良かった。やはりどんな人でも外から見えない悩みがあるのかもなと思う。 ありそうな話に科学が絡んでいることでより面白さが増している。

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2024/02/21

これはいい!表紙の装丁も素敵だし、 前に読んだ「宇わたる教室」よりも科学度が薄くなり、人の物語に重点を置かれてる気がしてとても読みやすかった。 理科!みたいや科学だけでなく生物や気象なと多岐にわたるせいかもしれない。 表題の「八月の銀の雪」も、苦しさの中に光が見え心が解けていく感...

これはいい!表紙の装丁も素敵だし、 前に読んだ「宇わたる教室」よりも科学度が薄くなり、人の物語に重点を置かれてる気がしてとても読みやすかった。 理科!みたいや科学だけでなく生物や気象なと多岐にわたるせいかもしれない。 表題の「八月の銀の雪」も、苦しさの中に光が見え心が解けていく感じがしてよかった。 「アルノーと檸檬」は知らなかったレース鳩や伝書鳩の話で初めて鳩が可愛く思えた。 一番好きな話は「玻璃を拾う」だ。 関西弁がゆらりゆらりと、読みやすく冒頭に出てくる瞳子の長いまつ毛がそー使われるかと納得! この瞳子と野中の続編読みたいなぁ。

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