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東京藝大 仏さま研究室 の商品レビュー

4.1

56件のお客様レビュー

  1. 5つ

    21

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2021/07/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室、通称「仏さま研究室」では、日々仏像を修復したり制作したりしている。 その「仏さま研究室」の修士生4人の修了制作として仏像の摸刻を巡る物語。 仏像を摸刻してもよいか許可を取ったり、木を探したり、制作過程や制作後の進路だったり、悩みはいっぱい。4人は明るい未来を勝ち取れるのか。 藝大の物語と聞いて奇人変人の方々が出てくるのかと思いきや、青春を謳歌している悩める学生さんのお話だった。夏に学生さんが読む本としてピッタリです。 仏像の知識もさらっと盛り込まれていて仏像の展覧会に行くときがあれば再読したい。

Posted byブクログ

2021/07/05

ちょっと変わったタイトルだが、東京藝大に実際にある研究室をモデルにした小説である。 研究室の名は東京藝術大学大学院美術研究科・文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室。 無暗と長いが、要するに、仏像などの文化財の保存修復を手掛ける研究室である。 東京藝大というと、芸術家を輩出するところ...

ちょっと変わったタイトルだが、東京藝大に実際にある研究室をモデルにした小説である。 研究室の名は東京藝術大学大学院美術研究科・文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室。 無暗と長いが、要するに、仏像などの文化財の保存修復を手掛ける研究室である。 東京藝大というと、芸術家を輩出するところという印象だが、この研究室は、自らアートを作り上げるというよりは、古い仏像などの模刻(まねて、同じように作ること)や修復を行う、技術者養成の面も大きい。「仏像修理が学べる国内唯一の大学組織」というわけだ。 東京藝大のどこか尖がったイメージからは少々意外にも思えるが、これには訳がある。藝大の前身の片割れである東京美術学校(もう一方は東京音楽学校)の設立は明治時代初めであり、「廃仏毀釈」が叫ばれたころである。だが、日本の古美術が排斥されていくのを恐れた創立者たちは、教授陣に日本画や仏像彫刻・伝統工芸品の職人をあえて多く迎えた。「文化財保護」の礎を築いてきた伝統もまたあるのだ。 彫刻家である籔内佐斗司が教授に就任(在籍は2004年~2021年3月)して、注目が高まった研究室である。 著者・樹木アンミツは、映画監督・三原光尋とライター・安倍(あんばい)晶子の合作ペンネームである。三原が企画を立ち上げて、取材交渉や原案を担当し、安倍が小説化した。 取材は綿密になされている印象だが、本書はノンフィクションではなく、堂々の青春小説である。 主人公らは、保存修復彫刻研究室=「仏さま研究室」の修士2年生4人。この研究室では、修士2年の課題として、自分の好きな仏さまを一体選び、模刻することになっている。 田舎の美術大学から院で藝大にやってきた「まひる」。美術家としては一流になれなかった父への反発を抱いている「シゲ」。天才肌で冷たく見られがちだが実は繊細で煩悶を抱える「アイリ」。体育会系で進路にも恋路にも悩んでいる「ソウスケ」。 個性豊かな4人が、これだと思う仏さまに出会い、模刻を仕上げる中でさまざまに悩み、波風にもまれる。それぞれの物語がオムニバス形式で綴られる。 そんな青春模様の合間に、仏像修復や模刻の手順、寺や檀家との交渉、日本の林業が抱える問題などが丁寧に織り込まれていく。 脇を固めるのは、籔内がモデルであろう一条教授、教授の下で働く牛頭(ごず)・馬頭(めず)先生(もちろん、地獄の獄卒・牛頭馬頭に譬えているだけで、本名ではない)、1つ下で寺の息子の通称「珍念」など。 ディープにがっつり仏像制作の歴史や模刻にまつわる技術的・社会的困難などを盛り込みつつも、彼ら・彼女らが抱える問題は、実に普遍的である。 自分とは何者か。自分はどこを目指しているのか。 修了制作の期間を終え、あるものは軽やかに転身し、あるものは一度すべてをリセットし、あるものは泥臭く地を這う道を選ぶ。 そのすべてがあるいは、彼ら・彼女らが出会った「仏」の導きであったのかもしれない。 仏の像を刻み、それに祈るとは何か。そんなことも思わせるような余韻を残す。 東京藝大の「藝」は「芸」の旧字である。だが実際は、「芸」は本来、「くさぎる」「刈る」を意味し、「藝」は「植える」「増やす」を意味する。むしろ、反対の意味を持つのだという。 「藝」の字を冠する大学で学んだ彼ら・彼女らは、果たしてこの先、「人にいいものを植えたり増やしたり」する人になれるのだろうか。 登場人物の誰彼を心の中で励ましつつ、自分も励まされるさわやかな読み心地。 なかなかの好作である。 <関連> ・『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』 こちらはノンフィクション ・『げいさい』 現役美術家が描く、芸大生・芸大予備校生の青春

Posted byブクログ

2021/06/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

これは相当面白い。 藝大の仏像修復や作成を専門とする研究室にいる院生4人が、それぞれの修士課題として、仏像を模刻(絵でいうと模写)する。 実際の仏像からモデルを選び、それと同じものを木から作成するのだ。対象の仏像が当時どのように作成されたかを調査研究し、当時の技法で再現する。 X線撮影や3D計測を使い構造を明らかにする。 モデルの仏像探しの苦労や寺や檀家さんに許可をとるむずかしさ。 材料となる木材を調達する過程で、木を使った仏像にもいろいろな種類や歴史があること 実際に木から彫像していくことの難しさ など、知らなかったことが満載だった。 仏像修復や、時代ごとに仏師の在り方が変わっていった話、などなど、たくさん盛り込まれている これが仏像のドキュメンタリーとして描かれていたら、こんなに引き込まれる読み物にはなっていなかっただろう。 若者(といっても多浪あたりまえの世界)が人生の方向性に真剣に悩みながら仏像と向き合う姿にも引き込まれる。 読後感がすばらしく、読書前後で仏像について仏像知識を大幅に得た自分にも満足である。 これを読んだ後に、 ​東京藝術大学 保存修復彫刻研究室  のホームページをぜひ見てほしい。 モデルとなったであろう先生が2021年3月退官とのことで退官記念オンライン展示により、研究内容が詳細にわかりやすく紹介されている。 ひょえーーーという声が漏れるほど、精緻な調査検討による摸刻と、摸刻を通じた作成時の彫刻方法の考察があり、摸刻というものの重要性が非常によくわかった。

Posted byブクログ

2021/05/24

最近アートの解説や原田マハの本を読んでいて、自分にはアートは理解できないのかと思っていたところで、橘玲さんのTwitterで紹介されていたので読んでみる 柔らかい文体で読みやすい 登場人物に「東京藝大の人」というイメージにあるエキセントリックさは感じられなかった 話もしてみたこ...

最近アートの解説や原田マハの本を読んでいて、自分にはアートは理解できないのかと思っていたところで、橘玲さんのTwitterで紹介されていたので読んでみる 柔らかい文体で読みやすい 登場人物に「東京藝大の人」というイメージにあるエキセントリックさは感じられなかった 話もしてみたことないけど、そんなものなのかな 仏像の歴史やその素材などについても勉強になった 自分には理解できなくてもアートや基礎研究に公的な援助が必要なことはなんとなくわかる 著者が亡くなっているのが残念

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2021/05/16

実在する仏像の歴史などが登場し、それを観に行きたい想いに駆られた。 「仏様と在る暮らし、仏様が寄る辺である暮らし‥」いいなぁ~。 「仏像に功徳があるというのか?‥疫病も絶えず人をおそう。仏はいったい、誰の肩を持っているのだ?」と不動明王の想いを想像した言葉に、驚き考えさせられた...

実在する仏像の歴史などが登場し、それを観に行きたい想いに駆られた。 「仏様と在る暮らし、仏様が寄る辺である暮らし‥」いいなぁ~。 「仏像に功徳があるというのか?‥疫病も絶えず人をおそう。仏はいったい、誰の肩を持っているのだ?」と不動明王の想いを想像した言葉に、驚き考えさせられた。 木に煩悶するシゲと父、材木店の父娘の話に優しさと切なさを感じた。 「あらゆる悪いことはしない、善いことは喜んでしましょう、いつも心を清めて」などなど、仏の教えが伝わった。 学ぶことの多い、素敵な話だった。

Posted byブクログ

2021/04/29

面白かった。 空間把握能力皆無の私には、仏さまがどのようにつくられていくのか、途中からわからなくなったけど、藝大の修士課程所属学生という特殊な環境のなかで、4人の学生のエピソードが綴られ、全体の時間が進んでいく、というのはとても好みの構成だった。 できすぎな展開も出てくるのだけど...

面白かった。 空間把握能力皆無の私には、仏さまがどのようにつくられていくのか、途中からわからなくなったけど、藝大の修士課程所属学生という特殊な環境のなかで、4人の学生のエピソードが綴られ、全体の時間が進んでいく、というのはとても好みの構成だった。 できすぎな展開も出てくるのだけど、それすら心地よく感じるのが不思議。

Posted byブクログ

2021/04/04

藝大生に憧れる。東大より高い倍率。そこで学ぶ個性的で才能ある人々…。この本は東京藝大で仏像の保存について研究する「仏さま研究室」の修了課題・仏像の「模刻」に取り組む学生たちの物語だ。恋や家族との関係、劣等感、進路など様々な悩みを抱えつつ、向き合い乗り越えようとする姿が爽やか。

Posted byブクログ

2021/02/19

すごく読みやすくて面白かった。知らなかった東京藝大のこと、仏像修復のことなど、別に知りたいと思っていた訳じゃないけど、どんどん興味が湧いてきて、読み進めたくなってくる。 上記のただの説明でなく、そこで学ぶ学生たちのドラマもくさくなく描かれている。 珍念さんで続刊出ないかな…。

Posted byブクログ

2021/01/28

東京芸大大学院の文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室の院生たちの一年間。修士修了に必要な仏像模刻に挑む四人それぞれの生き方を通して、このちょっと珍しい研究室と仏像修復の基本を小説で教えてくれる。ノンフィクションで書いても良かったのかも知れないけれど、小説仕立てで読みやすかった。 芸...

東京芸大大学院の文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室の院生たちの一年間。修士修了に必要な仏像模刻に挑む四人それぞれの生き方を通して、このちょっと珍しい研究室と仏像修復の基本を小説で教えてくれる。ノンフィクションで書いても良かったのかも知れないけれど、小説仕立てで読みやすかった。 芸大って、やっぱり不思議な大学だ。

Posted byブクログ

2021/01/25

仏像好きにはたまらない一冊。 良い。本当に良い。色々勉強にもなるし、1人1人が成長していく様が美しい。もうあの頃に戻れないおじさんには胸が熱くなるね。 20年以上前に本気で仏師を志した事を思い出した。ネットもままならない時代だったから、情報どころか応募の仕方も分からず諦めたな笑...

仏像好きにはたまらない一冊。 良い。本当に良い。色々勉強にもなるし、1人1人が成長していく様が美しい。もうあの頃に戻れないおじさんには胸が熱くなるね。 20年以上前に本気で仏師を志した事を思い出した。ネットもままならない時代だったから、情報どころか応募の仕方も分からず諦めたな笑

Posted byブクログ