魯肉飯のさえずり の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
台湾育ちの母親と日本育ちの娘。母親の子を想う描写に泣け、日本語で話してほしいという娘に日本語で話そうと努力し、そのために感情が昂ると何も言えなくなりもどかしくなる母親の気持ちや日本語が話せない母親に怒りや恥ずかしさ、そして思春期ゆえの母親に対する態度、両方の気持ちが分かり泣けてくる。 そして夫婦がうまくいく条件に妻が言いたいことをなんでも言えることという文章に大河の光る君で この男を選んだ理由は私のいう事を聞いてくれるから というフレーズを思い出す。 そして何故自分の恋愛がうまくいかないのか、相手から愛されていたとしても自分を分かってくれなかったり分かった振りをして自分の思い通りに進ませようとしていた。何故別れたいと思ったのか分からなかったが桃嘉夫婦を読んでよくわかった。桃嘉の母親、雪穂夫婦みたいな関係になりたい。素敵な夫婦でも思春期を持つ親の苦悩もあり言葉の葛藤で悩みどの家庭でも問題はあるが乗り越えていくために夫が妻を理解し、支えて受け入れる包容力があるなら強くなれるのだと教えてくれた気がする。 思ってる事を言ってくれないとわからない、何を望んでいるのかわからないと片言で泣きながら娘にいいそこで桃嘉が母親を守らないと決意し思春期に終止符を打つきっかけとなった場面では弱い部分も出していいのだと安心?した。 難しい小説を読んでいて頭をリフレッシュしたくて読んだのだがのめり込んでしまった。
Posted by
台湾人の母と日本で育った娘の話。「台湾生まれ日本語育ち」で書かれていた著者が小さい頃から感じていたことなどが具現化されているのかなあと感じた。心温まる話だった。
Posted by
中央公論新社、2020年8月。初出は『アンデル 小さな文芸誌』2018年6月~12月。織田作之助賞受賞作。 日本で育ち、日本語の環境で育った娘と台湾生まれで日本で暮らすことを選んだ母の声が響き合う物語。ことばはコミュニケーションにとって大切な道具だが、唯一の手段ではない。「こ...
中央公論新社、2020年8月。初出は『アンデル 小さな文芸誌』2018年6月~12月。織田作之助賞受賞作。 日本で育ち、日本語の環境で育った娘と台湾生まれで日本で暮らすことを選んだ母の声が響き合う物語。ことばはコミュニケーションにとって大切な道具だが、唯一の手段ではない。「ことばがつうじるからって、なにもかもわかりあえるわけじゃない」。中国語も台湾語も学んだわけではない娘と、とっさに日本語が出てこない母とのやりとりはもどかしいが、そのぶん、二人はじっくりと時間をかけてお互いのことを知ろうとし、それぞれのやり方で労ろうとする。作者は各章ごとに視点を変えながら、それぞれの気づきの瞬間をていねいに描き出していく。 読み始めた当初は、一人称語りで語られる娘の人物像と、母から見た娘のイメージがかけ離れているように感じられて少し戸惑ったが、それはこの物語にとっては必要な戦略(?)だったのだろう。娘の夫のわかりやすい愚かさ(こういう人間のことを「アタマのよいバカ」という)もよい。 ちょうど淡水に滞在した直後だったこともあって、娘が一人で出かけて行く淡水の駅と街並みとが思い出されてしまった。遠い海の向こうを想像しながら見る淡水の夕景のような、なつかしくあたたかい小説。
Posted by
日本語が上手く話せない台湾人の母親と台湾語、中国語が上手く話せない娘・桃嘉(ももか)。 娘が成長するにつれて、更に言葉の壁は大きくなり、伝える面倒くささから母親の事を疎ましく、恥ずかしいとさえ思えてくる。「ふつうのお母さんが良かった…」 母親が言葉もわからない日本で子供を産み育て...
日本語が上手く話せない台湾人の母親と台湾語、中国語が上手く話せない娘・桃嘉(ももか)。 娘が成長するにつれて、更に言葉の壁は大きくなり、伝える面倒くささから母親の事を疎ましく、恥ずかしいとさえ思えてくる。「ふつうのお母さんが良かった…」 母親が言葉もわからない日本で子供を産み育て、全ての愛情を注いできた娘にふつうのお母さんが良かったと言われる辛さ。「私は台湾人。日本人にはなれない…」と涙を流す母親の切ない気持ち。ふつうとは? 日本で生まれ育ち日本語は自由に話せるはずなのに、夫とは意思疎通が上手く出来ず精神的に追い込まれていく桃嘉。 言葉が通じるから何でもわかる訳ではない。 作者が日本育ちで台湾語混じりの中国語を話す台湾人の両親に育てられた生い立ちも作品に影響しているであろう。 大切なのは相手を思いやり理解する気持ち。自分の価値観だけで物事を判断しない様に。 最初ははっきり伝えられない桃嘉にイライラしたけど、読み進めていくうちに話にのめり込んでいった作品でした。
Posted by
本を読み終えて内容にピッタリの素敵な題名を感じた。装丁も装画も全部含めこの一冊好きである。内容は主人公二人(母と娘)の心の機微、成長を台湾と日本の背景に乗せて描かれている。
Posted by
母の子へのまっすぐな想いが自分の親と重なって涙が止まらなくて中々読み進められなかった モモカの旦那、その周りの人たちの無意識に傷をつけてくる言葉はすごく冷たくて私が逃げ出したくなるほどだった
Posted by
日本人の父と台湾人の母の一人娘である桃嘉は、思うようにいかない就活から逃れるように結婚する。 周りからは、理想的な夫で羨ましいと言われていたが…。 魯肉飯を一口食べたところで、こういうの日本人の口には合わないよ、ふつうの料理のほうが俺は好きなんだよね、という夫。 なんでも喋りあう...
日本人の父と台湾人の母の一人娘である桃嘉は、思うようにいかない就活から逃れるように結婚する。 周りからは、理想的な夫で羨ましいと言われていたが…。 魯肉飯を一口食べたところで、こういうの日本人の口には合わないよ、ふつうの料理のほうが俺は好きなんだよね、という夫。 なんでも喋りあうのが理想的な夫婦とは言え、片方だけが一方的だと感じることが多め、こうなるともう無理なのかもと… 台湾人の母・雪穂は、異国の地で日本語も上手く喋れず心細い思いをしながらも頑張って子育てをしてきたが、娘の変化にどう声をかけてやればいいのかわからない。 悩みはあるのだろうが、上手く聞けないでいた。 遠い昔に雪穂の母が言ったことをたったひとりの娘に教えるのを忘れたいたことに気づいた。 「どんなに立派そうにしていても、あなたのことを大きな声で脅したり、叩いたり殴ったりすることで従わせようとする男のひとを好きになったらだめよ。 守ることと、力でねじ伏せることは全然ちがうことなのだから。」 日本人だからとか台湾人だからとかではなくて、信頼できるか素直になれるか優しくできるかだろうと思った。 娘を思う気持ちは親なら当然なのだが、苦しんで辛い思いをしているのを見るのは身を削るような思いだろうと感じた。 父と母がお互いを思いやり幸せなことに気づいたのは、父が日本人であっても魯肉飯をおいしそうに食べ三杯もおかわりをして祖母や伯母たちにこの人なら安心できると思わせたことだろうか。 要するに人柄なのだ。 思いやる気持ちなのだ。 最後は、桃嘉の笑顔が見れて良かった… とても可愛らしいく静かな感じが漂う小説だった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今まで同じ場面を視点を変えて表現される小説は好きになれなかったけど、この小説では同じ場面をただなぞるのではなく、主人公視点で描かれなかった空白の時間を主人公の母の視点で描かれており、それが楽しかった。 もう読まないで図書館に帰してしまおうと途中で思ったこともあったが、読み進めていくとどんどん物語に厚みが出てきて、最後には主人公の頑張りで生きやすい人生を紡いでいく様子が見られてほっこりした。主人公、主人公の母の人生が日本語、台湾語、中国語により厚みを増していくのもまた良い。最後はロバプンの匂いが本当にしてくるような暖かい気持ちになっていた。
Posted by
愛する夫だけを頼りに台湾から遠い日本へとやってきた雪穂。 言葉も通じぬ異国での子育て。幼かった娘も成長するに連れ、他者と自身の〝ふつう〟の違いに戸惑い、日本人ではない母親(雪穂)を疎ましく思うようになり、冷たく当たってしまう。 母としての我が子に冷たくされたときの喪失感、哀しみ...
愛する夫だけを頼りに台湾から遠い日本へとやってきた雪穂。 言葉も通じぬ異国での子育て。幼かった娘も成長するに連れ、他者と自身の〝ふつう〟の違いに戸惑い、日本人ではない母親(雪穂)を疎ましく思うようになり、冷たく当たってしまう。 母としての我が子に冷たくされたときの喪失感、哀しみといったらもうこれは親にしか分からないと思うのだけど、それが「日本人じゃない」からなんて、自分にはどうしようもないことが理由だと本当に辛い。 そんな娘の桃嘉に戸惑いながらも、自分のことは二の次に彼女に寄り添い支えようとする母としての姿がいじましい。 桃嘉もやがて大人になり、ままならない人生に悩み傷付くなかで、母の想いに素直に寄り添えるようになっていく。 夫とその周りの女の子たちというのが無神経なことに無自覚な、人を見下したいわゆるスクールカーストの1軍で構成されていて、桃嘉の居心地の悪さは容易に想像できた。 でもね桃嘉…母はもっと辛かったと思うよ。 我慢しすぎて良いことなんかひとつもない。 自分を大切にして初めて周りの人を大切にできるし、大切にされていることにも気がつく。 桃嘉が自分に正直になって、両親の想いに母への想いに辿り着いたとき、本当の意味で自分を大切にしてくれる人とも出会うんだと思う。 今年の22冊目
Posted by
この著者だから書ける小説だと思った。 台湾から日本に嫁いだ母、雪穂。日本語が思うように操れない葛藤もある中でも、娘の力になりたい一心で生きている姿がとてもかっこよくて、目頭が熱くなる場面もあった。娘である桃嘉はハーフである自分の境遇を幼い頃は受け入れられない。自分が誰なのか何をし...
この著者だから書ける小説だと思った。 台湾から日本に嫁いだ母、雪穂。日本語が思うように操れない葛藤もある中でも、娘の力になりたい一心で生きている姿がとてもかっこよくて、目頭が熱くなる場面もあった。娘である桃嘉はハーフである自分の境遇を幼い頃は受け入れられない。自分が誰なのか何をしたいのか分からないまま大人になり、親友の誘いで母の故郷を訪ねる。 現地での桃嘉の祖母や叔母たちの会話の描写がまるで、自分もそこにいるかのように引き込まれる。 母と娘の心の葛藤と共に進むこの話は、なにも読者が外国人またはハーフだから共感できる話ではなく、皆共感できるのではないかと感じた。人はみんな自分は何者なのか、それを見つけ出そうとしているんだと気付かされた話だった。
Posted by