1,800円以上の注文で送料無料

ガーデン の商品レビュー

3.5

69件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    23

  3. 3つ

    26

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/03/09

自分を隠すことでしか自分を守れないのだろうか。 他人の心に踏み込まないことでしか他人を傷つけず生きられないのだろうか。 自分が傷つかないこと、他人を傷つけないことに 腐心をしてひどく大人びた子供のような主人公だった(主人公は30代くらいの男性だけど) 主人公は極端なように描か...

自分を隠すことでしか自分を守れないのだろうか。 他人の心に踏み込まないことでしか他人を傷つけず生きられないのだろうか。 自分が傷つかないこと、他人を傷つけないことに 腐心をしてひどく大人びた子供のような主人公だった(主人公は30代くらいの男性だけど) 主人公は極端なように描かれているが、 自分を守り、他者を傷つけまいとした時、 誰しもこの主人公のようになることがあるだろうと思う 節々に刺さる言葉があり、好きな小説。 個人的には高津さんが好き

Posted byブクログ

2024/01/18

主人公は帰国子女の羽野くん。 植物(観葉植物や南国の草花)を愛し、自宅では沢山のそれらに囲まれて暮らしている。 編集という仕事柄か周りには沢山の女性たちが居るが、華々しい彼女たちとはいつも、一定の距離感を保っている。 いや、女性たちだけでなく、羽野は他者と深く関わらないように生き...

主人公は帰国子女の羽野くん。 植物(観葉植物や南国の草花)を愛し、自宅では沢山のそれらに囲まれて暮らしている。 編集という仕事柄か周りには沢山の女性たちが居るが、華々しい彼女たちとはいつも、一定の距離感を保っている。 いや、女性たちだけでなく、羽野は他者と深く関わらないように生きているように思える。 決して人付き合いが下手なわけではないけれど、 口先だけの褒め言葉や、信念を曲げてまでの軽口はたたかない。 スマートと言えばスマートなのだけど。。。 その場で口にするかは別にして、言いたいことがズバズバとト書きで書かれるのはちょっぴり清々しい。 また、植物の描き方が美しい。 濃密で、こちらにまでむんとする緑の匂いや花の香りが伝わってきそうだ。 けれど、この作品は苦手だった。 以前別のレビューで書かせていただいたことがあるが、私も沢山の植物を育てている。 私がハマっているのは山野草とクレマチスだが、狭いベランダに山ほど同居している。 彼らは正直だ。 弱いようでいて強く、羽野くんの家にある観葉植物や蘭ほど派手さや力強さはないけれど、楚々とした風情のある姿が可愛らしい。 世話をするほど花を咲かせて返してくれる。 それに、植物を沢山育てている方は経験がおありかもしれないが、外出している時でさえ、彼らは私と共に居る。 おかしな感覚だけれど、常に私自身の周りに彼らを感じる。 その点でいうと、羽野くんの感覚に近いのかもしれない。 だから本作で植物描写が事細かにされるほどに、人間が生々し過ぎて、女たちが痛くて、面倒で、苦手に思えたのだ。 自分も女なのにね。 女性特有の、自分自身でも嫌だな…と思う部分が多く描かれていて、なんだか不快感を感じた。 自分も含まれるだろう嫌な部分が際立って感じられて、それなのに物語は淡々としていて、 なんだろ………とにかく苦手だった。 植物が"生"に対して純粋に清潔に描かれている分、余計にそれらを感じることとなった。 でも、それだけ生々しく感じたということは、やはり千早茜さんの作家としての力量なんだろうな。 益々我が家の植物たちが愛おしくなった 笑 それでもラストシーン、あれは羽野くんの僅かな変化を描いているのかしら。。。 羽野くん、植物と生身の人間は違って当然だよ。自身を180°変える必要はないけれど、植物とは違う人間の温度を、少しでも安らぎと捉えられるようになれたらいいね。

Posted byブクログ

2024/01/04

好みの人って、自分がなりたい人だったりするよね。 だから、気が合う人は変わっていくのかもしれない。自分が成長していけてたら。 どこかへ出かけた時に浮かぶ人。 それは心に存在する人かもしれない。 理沙子を思い出した羽野のように。 だとしたら、初詣へ行けない私のことを神社で思い出...

好みの人って、自分がなりたい人だったりするよね。 だから、気が合う人は変わっていくのかもしれない。自分が成長していけてたら。 どこかへ出かけた時に浮かぶ人。 それは心に存在する人かもしれない。 理沙子を思い出した羽野のように。 だとしたら、初詣へ行けない私のことを神社で思い出してくれた2人には感謝。

Posted byブクログ

2024/01/01

【2024年2冊目】 芸術家の話だな〜というのが読んだすぐの感想でした。そして誰もいなくなった、ですね。世界観が強い人ほど、いわゆる月並の日常とはほど遠くて、主人公も、彼の周りにいる彼女たちもそうだったんじゃないかなって。世間一般から見れば変人同士でくくられるのかもしれないけれど...

【2024年2冊目】 芸術家の話だな〜というのが読んだすぐの感想でした。そして誰もいなくなった、ですね。世界観が強い人ほど、いわゆる月並の日常とはほど遠くて、主人公も、彼の周りにいる彼女たちもそうだったんじゃないかなって。世間一般から見れば変人同士でくくられるのかもしれないけれど、中味を紐解いて見ると全員バラバラの方向性を向いていたんじゃないかと思います。誰もいなくなったけれど、きっとこれからも変わらず彼は生きていくし、傍に誰かがいる状況が訪れても、きっと変わらない。芸術家の話だなとカテゴライズすること、なんだか安心するのでそういうことにしようかな。 主人公の彼がずっと凪いでる人だったので、こっちもずっと凪の海を漂うような心地で読んでました。

Posted byブクログ

2024/08/24

お願いごとをすることは、自分にとってなにが大切かを考えるってことなんです。 でも、あの子は結婚に向いていると思うわ。自分を殺すことを愛や喜びと思えるタイプだから けど、の後に続く言葉はなんとなくわかる。人が人に何かを求めている時は、本人が思う以上にあからさまにでてしまっている...

お願いごとをすることは、自分にとってなにが大切かを考えるってことなんです。 でも、あの子は結婚に向いていると思うわ。自分を殺すことを愛や喜びと思えるタイプだから けど、の後に続く言葉はなんとなくわかる。人が人に何かを求めている時は、本人が思う以上にあからさまにでてしまっているものだ。 人の望むことに応えてその場その場をうまくやるだけで、本当はなにがしたいのか見失っていた。でもね、そのくせ実は待っているの。誰かが変えてくれるのを。自分からは決して手を伸ばさないで、真っ白な根で心をぎゅうぎゅうに縛って。

Posted byブクログ

2023/12/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

植物の生命力や生々しさを五感で感じられる本。 羽野さんは自分の庭が心の拠り所であり、自分の全てでもあり、精神的にも物理的にも他人とはきっちりと線を引いて関わることを求めている風に一貫して見えるけれど、それでもどこか繋がりを求めてるような節も見える。ただ、勝手なラベルをつけられて、理解してもらえないことが嫌で、怖いからこそ余計に自分の庭に閉じこもってしまうようにも感じる。 境目がないほどに他人と全てを共有できることを望むのも難しいし一定の距離は大切だけれど、自分の庭に固執し周りから自然と人が離れていってしまうのは少し悲しさも感じた。羽野さん自身が一切他人との関わりを持ちたくないという風でもないから余計に。 緋奈が「誰かが羽野さんの庭をぐちゃぐちゃにしてくれたらいいのにね」と言ったように、少しでも羽野さんの庭に土足で踏み入れられる人が現われたらまた何か変わるのか、それでも植物を所有し、庭で死ぬことを望むままなのか。 植物に囲まれたあの一室の独特な雰囲気を肌で感じられるような物語だった。

Posted byブクログ

2023/12/20

植物の冷ややかな図太さに囲まれて、それぞれの弱さが浮き彫りになっていく。登場人物を無理につなげない千早さんの小説は、ほんとうに居心地がいい。どろどろとした人間を、個包装して清潔に保った1冊。

Posted byブクログ

2023/12/15

主人公の羽野のように、他人に自分の陣地に踏み込まれたくなくて、一定の距離感で接するというのはちょっとわかるなぁと思いました。 ただ羽野は自分というものを囲い過ぎていて、関わる周囲の女性たちにそのことを気付かされていきます。 この女性たちの言葉がかなり的を得ている。 特にグッときた...

主人公の羽野のように、他人に自分の陣地に踏み込まれたくなくて、一定の距離感で接するというのはちょっとわかるなぁと思いました。 ただ羽野は自分というものを囲い過ぎていて、関わる周囲の女性たちにそのことを気付かされていきます。 この女性たちの言葉がかなり的を得ている。 特にグッときたのが、 「そういう時、男は必ず間違えるから」 というセリフ。男性が女性に対して、気の利いた返事や行動を取ろうとすると、その判断は大抵間違えているということ。 千早さん、さすがです。男女の心の機微を描いた作品です。

Posted byブクログ

2023/12/02

花の変化を目の当たりにしつつ、自分の変化を止めてしまったものの物語。 人と関わるには人に傷つかない覚悟ではなく、人を傷つける覚悟を持つべきだと思った。 羽野は、自分の変化に満足していながらも、人との関わりの中にある種の欲望を抱える瞬間があり、 その度に花、という自分の拠り所を利用...

花の変化を目の当たりにしつつ、自分の変化を止めてしまったものの物語。 人と関わるには人に傷つかない覚悟ではなく、人を傷つける覚悟を持つべきだと思った。 羽野は、自分の変化に満足していながらも、人との関わりの中にある種の欲望を抱える瞬間があり、 その度に花、という自分の拠り所を利用して落ち着いてきた。 でも、結局、人との関わりを持つ以上、変わらないものはないんだ、ということに気づけたのかな。 自分の世界を壊すのではなく、自分の世界は大事にした上で、相手の世界を想像し、人と関わる、まあ大事ですよね。

Posted byブクログ

2023/11/07

植物を偏愛する雑誌編集者の羽野。 少年時代を「発展途上国」で過ごし、大人になった今も、そのことを隠すように、人と一線を引いている。 そんな彼と、個性的な女性達との交流を描いた物語。 千早さんの濃密な文章がやっぱり好き。 深く呼吸したくなるような。 心酔。 読みながら自分も植物...

植物を偏愛する雑誌編集者の羽野。 少年時代を「発展途上国」で過ごし、大人になった今も、そのことを隠すように、人と一線を引いている。 そんな彼と、個性的な女性達との交流を描いた物語。 千早さんの濃密な文章がやっぱり好き。 深く呼吸したくなるような。 心酔。 読みながら自分も植物の存在をより近くに感じたくて、すぐさま近所のスーパーに切り花を買いに走りました。 羽野さんには、切り花では物足りないだろうけれど。 後半、緋奈ちゃんが羽野さんに放った言葉。 実は、まだ消化しきれないでいる。 それの何が悪いのだろう。 そう私も思ってしまったから。 私もまた、自分の庭を誰にも触れさせないように、生きているのかもしれない。

Posted byブクログ