一人称単数 の商品レビュー
ヤクルトの話を読むために買ったような気がした。それを差し引いても、読んでよかった。夏の爽快感すら感じられる短編集。ドームじゃない球場で野球見たいな
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村上春樹の短編集。主人公の視点で「あの時の思い出に出てきたあの人」を軸に思い出話が語られる。村上春樹調の文体により、どこまでがリアルでどこまでがイマジネーションなのかが曖昧になって、空間がねじれているような居心地がしてくる。途中から果たして、語っている主人公はフィクションなのか、...
村上春樹の短編集。主人公の視点で「あの時の思い出に出てきたあの人」を軸に思い出話が語られる。村上春樹調の文体により、どこまでがリアルでどこまでがイマジネーションなのかが曖昧になって、空間がねじれているような居心地がしてくる。途中から果たして、語っている主人公はフィクションなのか、村上春樹本人なのか、も定かではなくなる。 短編集で気軽に読めて、村上春樹ワールドに足先だけ浸かれるような作品。
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数年前に買ったまま二度しか袖を通していないポール・スミスのスーツにエルメネジルド・ゼニアのネクタイを締めて、僕は不思議な違和感を抱いたまま、初めてのバーでウォッカギムレットを飲む。 そこで起こった出来事はに、7つの物語がつながっている、多分。 長く結びつくことのない誰かとの、人生...
数年前に買ったまま二度しか袖を通していないポール・スミスのスーツにエルメネジルド・ゼニアのネクタイを締めて、僕は不思議な違和感を抱いたまま、初めてのバーでウォッカギムレットを飲む。 そこで起こった出来事はに、7つの物語がつながっている、多分。 長く結びつくことのない誰かとの、人生の一瞬で、そしてある意味深い関係。 その誰かとの、その一瞬の関係はもしかすると僕にとって、あるいは誰かにとって後ろめたさを伴う「恥」のような何かなのか。 ありえた出来事と、ありえない出来事で、ぼくの世界はできている。
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村上春樹さん自身の経験を(おそらく)題材に、そこにファンタジー、フィクションをまじえた(といっていいのかどうかもよくわからないけれど)村上春樹ワールド。好きです。「回転木馬のデッドヒート」に似ている、というのが読みながら感じた印象。 普通に生活していたら見逃してしまったり、気づ...
村上春樹さん自身の経験を(おそらく)題材に、そこにファンタジー、フィクションをまじえた(といっていいのかどうかもよくわからないけれど)村上春樹ワールド。好きです。「回転木馬のデッドヒート」に似ている、というのが読みながら感じた印象。 普通に生活していたら見逃してしまったり、気づかなかったり、あるいは忘れてしまったりしそうなことを、しっかりと文章に残して、そこからなにがしかの面白みやストーリーを見つけ出していく力(力という言葉を使うのもおこがましいけれど)は常人にはまねできないな、と思う。もし、何らかの奇跡が起こって、村上春樹さんとワインでも飲みながらお話しする機会があったとしたら、わたしがなんとも思っていなかった日常の話の中に彼は何かお話を見つけてしまうのかもしれない。何もないのかもしれないけど。それは淋しいな。 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」と「品川猿の告白」が特に好き。品川猿に名前をとられるというのは、影が他の人より薄いナカタさん(海辺のカフカ)みたいなものなのかも。他にも、以前の作品の登場人物に雰囲気が重なる人物も出てきて、いろいろ思い出すところがあった。国境の南、太陽の西が特に。 表題作は、人の悪意にじりじり締めつけられるような怖さ。表題作での一人称単数は「私」。「僕」じゃなくてよかった。
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タイトルの通り一人称「僕」の視点で描かれる8つの短編。 それ自体は村上春樹の小説で珍しいことじゃない。むしろ、メジャーな作品の大部分は「僕」の視点で描かれる一人称のものではないだろうか。 作者の考え・思いが最も直接的原始的に表現される文体。エッセイにも多用されるし、本作のように小...
タイトルの通り一人称「僕」の視点で描かれる8つの短編。 それ自体は村上春樹の小説で珍しいことじゃない。むしろ、メジャーな作品の大部分は「僕」の視点で描かれる一人称のものではないだろうか。 作者の考え・思いが最も直接的原始的に表現される文体。エッセイにも多用されるし、本作のように小説なのかエッセイなのかその中間を浮遊しているような作品にはもってこいの文体だと思う。 不思議に感じつつもスッと懐に入ってきてしまう。 相変わらずとても村上春樹的な作品でした。
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女性の物語への登場のさせ方が村上春樹。あと道具立てが精神分析的なところも。その中で「ヤクルト・スワローズ詩集」はよかった。あと、最後の書き下ろしの一人称単数は次の大きな物語の一部のような気がしたし、また太宰治的なところも感じられ比較的面白かった。
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村上春樹は、私はいつも意味がわからないけれど、何かすごく面白いと思うことがあるので読んできました。 今までに読んだ短編集では『象の消滅』、『東京奇譚集』などが特に面白かったです。 6年ぶりのこの短編集には8作品が載っています。 ちょっと抽象的な言い方ですが、今までに読んできた作...
村上春樹は、私はいつも意味がわからないけれど、何かすごく面白いと思うことがあるので読んできました。 今までに読んだ短編集では『象の消滅』、『東京奇譚集』などが特に面白かったです。 6年ぶりのこの短編集には8作品が載っています。 ちょっと抽象的な言い方ですが、今までに読んできた作品と比べて幻想的な作品が少なく、実直で端正に書かれているような作品が多い気がしました。 物語の舞台が神戸だったり、チャーリー・パーカー、ビートルズ、ヤクルトスワローズ、1960年代の若者が出てくるところは村上春樹っぽいと思いました。 以下「石のまくらに」のみネタバレしているので、ご注意ください。 「石のまくらに」 大学二年生の僕が、二十代半ばのアルバイト先の女性と一晩限りの関係を持ったあとに、送られてきた自作の歌集を読んで、彼女の詠んだ、死のイメージを追い求めた歌を記憶しているのが僕だけかもしれないというもの哀しい話。 たち切るも/たち切られる/も石のまくら/うなじつければ/ほら、塵となる 「クリーム」 ちゃんと読んだのですが、抽象的で今ひとつ、意味がわかりませんでした。 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノバ」 夢のような夢の中の話。 「ウィズ・ザ・ビートルズ」 1065年神戸の高校で初めてできたガールフレンドとその兄との交流。 すごく、村上春樹っぽい話だと思いました。 「ヤクルト・スワローズ詩集」 これは、エッセイのようでした。 「謝肉祭 carnaval」 一番、熱量を感じました。 「品川猿の告白」 女性の名前を盗む猿の話。 これに似た話を読んだことがあります。 続編か、姉妹編でしょうか。 「一人称単数」 太宰治の『晩年』に入っている「親友交歓」を思い出しました。 今回の短編集は、村上春樹の中では特に面白いとは思えず最高点はつけられないので、星4つで。
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2020年28冊目。 短篇集のなかには、一冊の書籍としてのタイトルにしっくりこないものもある。キャッチーさを重視するだけ、あるいは代表作のタイトルを持ってきているだけになっていると、短篇集全体が醸し出す世界観を表現できているか疑問に感じてしまったり、タイトルから抱いた期待と読後...
2020年28冊目。 短篇集のなかには、一冊の書籍としてのタイトルにしっくりこないものもある。キャッチーさを重視するだけ、あるいは代表作のタイトルを持ってきているだけになっていると、短篇集全体が醸し出す世界観を表現できているか疑問に感じてしまったり、タイトルから抱いた期待と読後感がずれてしまったりする。 その点、この『一人称単数』というタイトルは、僕としてはとてもよかった。最後に同タイトルの書き下ろしが入っているけれど、そこから引っ張ってきただけとは思わなかった。それぞれの短篇のなかに通底するものを、このタイトルが表出させてくれたように感じる。 自分という個は、たしかに一人称単数の存在に過ぎない。けれど、人ひとりの人生は決してその単数のなかだけでは完結しない。 自分の窺い知れぬところで、密かに進行している悲劇がある。そこに一切の責任がないと言えるのか。 自分のあずかり知らぬところで、起こしてしまっているかもしれない負の影響がある。そこに無自覚でよいのか。 自分の理解を超えるところから、理に適わない難が降りかかることがある。そこから逃れることなどできるのか。 そういう単数の領域を越えた概念を、『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』に出てくる社会科教師や、自分が何をしでかしてしまうかわからない恐怖から引きこもる同作のガールフレンドの兄、『クリーム』で主人公に起きる出来事と複数の中心を持つ円のメタファー、そして最後の『一人称短数』で出てくる女性が放つ「恥を知りなさい」の一言が、総合して訴えかけてきた。 各短篇を書いているときの村上春樹さんがそんなことを意識していたのかどうかはわからない(短篇集としてまとまった本書においてさえ、そんな意図があったのかは定かではない)。けれど、最後にあの『一人称単数』という書き下ろし短編を入れ、本自体のタイトルとしたことで、少なくとも僕のなかではそういう読み方が生まれた。この書き下ろしとタイトルがなければその読み方はできなかったかもしれないと思うと、やはり全体としてよいパッケージだと感じた。 そういえば、主人公が村上春樹さん本人ではないかと思わされる作品も、この短篇集には多かった気がする。『ヤクルト・スワローズ詩集』は思いっきり本人だし、そういう面でも「一人称単数」感が際立った一冊だと思った。 特に響いた作品は、『クリーム』『謝肉祭(Carnaval)』『品川猿の告白』『一人称単数』。『クリーム』で起きるシュールな理不尽さは、村上作品の特に好きな世界観に近かった。『謝肉祭(Carnaval)』は内容がちょっとセンシティブにも思えたけれど、筆のノリに「あ〜〜村上作品」と一番感じさせられた。恋心を抱いた相手の名前を盗む品川猿には既視感があると思ったら、『東京奇譚集』に出てきたあの品川猿じゃないか。こういう読者サービスもいいな〜
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久しぶりに村上春樹の文章読んだ〜。短篇だし読みやすかった。途中村上春樹本人のことが出てきたから、あれ、これエッセイだったっけ?って何度も確認しちゃった。たまに欲しくなるなぁ、この人の文章。それでたまに読んで、なんかスッとした気持ちになる。 ウィズ・ザ・ビートルズが一番好きだったか...
久しぶりに村上春樹の文章読んだ〜。短篇だし読みやすかった。途中村上春樹本人のことが出てきたから、あれ、これエッセイだったっけ?って何度も確認しちゃった。たまに欲しくなるなぁ、この人の文章。それでたまに読んで、なんかスッとした気持ちになる。 ウィズ・ザ・ビートルズが一番好きだったかな〜
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ー 作家の村上春樹さん(71)の3年ぶりとなる小説の新刊「一人称単数」(文芸春秋)が、18日発売された。東京都千代田区の三省堂書店神保町本店には、同著で作った本のタワーが登場し、通常の開店時間より早い午前7時から販売を始めた。(読売新聞) のだそうだ。 村上さんの新刊は、例え短...
ー 作家の村上春樹さん(71)の3年ぶりとなる小説の新刊「一人称単数」(文芸春秋)が、18日発売された。東京都千代田区の三省堂書店神保町本店には、同著で作った本のタワーが登場し、通常の開店時間より早い午前7時から販売を始めた。(読売新聞) のだそうだ。 村上さんの新刊は、例え短編集だろうとも、発売の際はお祭り騒ぎで、ニュースになるんですねぇ… それにしても、71歳!もうおじいちゃんなんだなぁ。 そのせいか、人生の回顧録的趣きがある内容。その割には文体が相変わらずポップなので、ぼーっと読むと何が書いてあったのか掴めないかもしれない。 (以下、何も考えず書いているので、意図せずネタバレになっているかもしれません。) 石のまくらに 評価2 村上さんの小説に「短歌」が登場するのは結構衝撃的なのではないか? 19歳男子が20代半ばの女性と一晩だけの関係を結ぶ話。 「僕」の認識では「僕」と「彼女」は行きずりのセックスはしたけど、お互いの存在を結びつけているものは何もない。結びつけているものは何もないのに、なぜ「僕」が「彼女」を題材にして小説を書くのか。 短歌を堪能する能力が低い僕にはそこら辺がピンときませんでした。 クリーム 評価3 結構難解で抽象画みたいな短編だと思った。 頭は、わからんことをわかるようにするためにある。 考え抜くこと、特に若いうちは。 「中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円」とはどんな円なんだろう。 多次元の世界の人とか宇宙人とか、あるいはものすごく頭の良い人でない限りわからない、 なんて諦めちゃいけないってこと。 チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ 評価4 タイトルだけでワクワクして、高評価になってしまう。 凄くないすか? このLP聴いてみたい! ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles 評価5 この短編は好きです。 高校時代のガールフレンド、サヨコの事を思い出す話。お互い好きだったし素晴らしい時間を共有した。結局、サヨコは「ウィズ・ザ・ビートルズ」のレコード盤を大事に抱えていたわけでも、耳の奥にある特別な鈴を鳴らしてくれる訳でもなかったけど、大切な人だった。 行きつくところがない思い。喪失感と同時に人生は豊かだとも感じるアンビバレント。 ところで、サヨコのお兄さんの髪の毛の長さについて「床屋に行くべき期日を、少なくとも二週間は越えてしまっているように見えた」と描写している部分がある。昔、村上さんの他の作品で同じような表現を読んで以来、僕の人生にとって「床屋に行くべき期日」というのは重要事項になっている。なかなか守れなくて、借金の返済期限みたいに心に引っ掛かった状態の期間が長くて確実に僕の精神衛生を蝕む要因となっている笑 「ヤクルト・スワローズ詩集」 評価5 村上さんといえば、スワローズ。村上さんのエッセイを読んで神宮球場で野球を見ることが好きになった(ジャイアンツファンだけど)。 読んでたら、野球を見に行きたくなった! はやくコロナ終息してくれ! ー 人生の本当の知恵は「どのように相手に勝つか」よりはむしろ「どのようにうまく負けるか」というところから育っていく。 いい言葉ですね。負けゲームは黒ビールを飲みながら、チームの負け際をしっかり見届けよう、と思った。 謝肉祭(Carnival) 評価2 シューマンの曲。 女性を「醜い」と連呼するのはどうか?と思った(笑) 品川猿の告白 評価3 猿になったことがないので、猿の気持ちはよくわからないし、今のところ、特に理解したいとも思わない。残念ながら。 恋した女性の名前を盗むのは、面白いと思ったけど… 一人称単数 評価3 たとえば、自分に身に覚えのないことで、突然知らない誰かに「恥を知れ」と強く罵られた時、明確に「私じゃありませんよ」って否定できるだろうか? 否定した場合、さらに非難され、自分の知らない自分が他人を深く傷つけていることが顕になるかもしれない… とても怖い話でした。
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