一人称単数 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
石に漱ぎ流れに枕す。 夏目漱石の由来となったと言われる故事ですが、 本書一つ目の「石のまくら」は少し漱石と猫を想起させる表現がまぎれてる気がした。 名前はまだないと言うより、「もうない」と言う表現の方があってるような気もするが、それはちょっと言い過ぎかな。 それに他の短編が漱石かと言うとそうでもないし、なんとなくなんとなくだった。 猿並みのブスと人より人をしてる短編があったり構成自体も、どこか身近な異界に優しく身を委ねさせてくれる。その時の気分で気になる話が変わるのかな? 個人的に神戸に住んでいたことがあり、高校は大阪にあったので、「クリーム」や「ヤクルトスワローズ詩集」の舞台はすごく面白い。「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年」「騎士団長殺し」もそうだったけど、少し境界的な、特殊な土地柄の舞台設定を偲ばせるのは村上春樹の上手いところと思っていて、僕自身が水墨画家なんて余白を扱う人間からするとマージナルやらリミナリティやらの文章に触れるとテンションが上がってしまう。 ファッション的にもキャラクター的にも「一人称単数」のスーツをたまに着る設定もまさにと肌感覚だし、最近じゃバーで酒嗜む程度になってきたし本も開いたりもするので、もはや恥ずかしくなる。女に絡まれたことはないけど、絡まれないようにウォッカギムレットは人がいないときに頼むとしようか。
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村上春樹さんの久しぶりの短篇集。 どの短篇にも、独特な比喩があり、遊び心もある。 タイトルの『一人称単数』が示す通り、収められた八編の短篇はすべて一人称で語られる。 村上春樹さんも、もう71歳(!) 『猫を棄てる』を読んだ時に感じた、「父の死」が影響しているのか、単に年齢ゆ...
村上春樹さんの久しぶりの短篇集。 どの短篇にも、独特な比喩があり、遊び心もある。 タイトルの『一人称単数』が示す通り、収められた八編の短篇はすべて一人称で語られる。 村上春樹さんも、もう71歳(!) 『猫を棄てる』を読んだ時に感じた、「父の死」が影響しているのか、単に年齢ゆえか、これまでの人生を見つめ直し、自身の体験したことを物語の要素に加え、俯瞰する姿勢が、この『一人称単数』の短篇ごとに少なからず現れているように感じる。 不思議なことに、全編通じて、「これはフィクションなのか?それともエッセイなのか(あるいは「私小説」なのか)?」と思ってしまうくらい、そう、「品川猿の告白」でさえ、村上春樹さんが体験したことをもとに書いているのではないかと、思った。 「石のまくらに」 和歌が出てくる不思議な短篇。 個人的には、あまり、すとんと心に落ちてこなかった。 再読すれば、変わるかもしれない。 「クリーム」 18歳に経験した出来事について、年下の友人に語っているという設定。 不思議な体験。催されるはずだったピアノリサイタル。しかし、そこには誰もいなかった…。そして、「中心がいくつもある円や」という言葉を残す老人。 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」 ありもしないジャズレコードの寸評をもとにした短篇。しっかりとした、本当に存在しそうな寸評。そして、後年、体験することとなるもの。 エッセイのような短篇と強く感じた作品の一つ。 物語の中に、一つの創作(ありもしないレコードの寸評)をもって、話を進めるのは、すごい。 「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」 冒頭の7行。人は誰でも遠い昔の好きだった人、それがたとえ、名前を知らなくても、しっかりと記憶されているものだと思う。 胸にしっかりとビートルズのLPレコード「ウィズ・ザ・ビートルズ」を抱えた女の子の記憶。名前を知らない、そして、もう再び会えない女の子。 そして、高校生の時に付き合っていた女の子とそのお兄さんの話。 再会できた人と、もう再び会えない人。 「『ヤクルト・スワローズ詩集』」 個人的には、どこか村上春樹自身のエッセイを読んでいるかのように感じた。 いろいろとチャーミングな表現が多い。 「謝肉祭(Carnaval)」 まず、冒頭の書き出しがすごい。醜い女性の話。シューマンの「謝肉祭」が好共通項。 「品川猿の告白」 別の短篇集に収録されている「品川猿」の人生を知ることのできる短篇。ありえない話なのだけれど、なぜか、村上春樹さんが、ほんとうに温泉地でこのような体験をしたんじゃないかと思うほど。そして、後日、ある女性編集者とのエピソード。そう思わせる不思議な力がある。 ここまでは、「文學界」に随時発表されたもの。 「一人称単数」 唯一の書き下ろし。 「私」に対して、じりじり詰め寄ってくる女性の存在。 女性に投げられた言葉。 「私」が抱く“長く鋭い針で突かれた”感情。 そして、不穏な空気。 久しぶりの一人称での小説。 また、『騎士団長殺し』とは違った、新しい一人称形式の長編小説への布石となるのか。 個人的には、「「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」」「『ヤクルト・スワローズ詩集』」「一人称単数」が、好き。
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ひさびさの一人称。現実と虚構の境目が曖昧で怖くなる。ノルウェイの森を彷彿とするいくつかの描写。 それにしても、小説全体に濃厚な死の気配が漂っており、そのことがとても恐ろしかった。
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『ヤクルト・スワローズ詩集』の冒頭5行目でさらっと自虐ギャグを披露する村上さん。 タイトルにもなったチャーリー・パーカーをはじめ、ジャズ・ミュージックに詳しければ割増で面白くなるんだろうな。クラシックも同様で、元村上さんの音楽ガールフレンド・現詐欺犯罪者のF*さんと繰り広げるクラ...
『ヤクルト・スワローズ詩集』の冒頭5行目でさらっと自虐ギャグを披露する村上さん。 タイトルにもなったチャーリー・パーカーをはじめ、ジャズ・ミュージックに詳しければ割増で面白くなるんだろうな。クラシックも同様で、元村上さんの音楽ガールフレンド・現詐欺犯罪者のF*さんと繰り広げるクラシック談義は、作曲家の名前は分かっても演奏者は殆どちんぷんかんだった。 「なんだか妙だな」と感じるシュルレアリスティックな世界観の中で、現代国語の解釈問題やルッキズムなど今の時代に問いを投げかける要素が小説内にちりばめられている。村上さんの夢世界で生きながら、現実世界の地もきちんと踏みしめる頼もしさはこれらの短編にも健在だった!やっぱり私は彼の作品が好きだ。
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ゆっくり楽しみたかったのに一気に読んでしまった。村上さんの本を読むと自分は自分でいいのだといつもホッとする。謝肉祭が聴きたくなった。
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まるでエッセイの様な短篇(私)小説集。 「石のまくらに」 「クリーム」 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」 「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」 「『ヤクルト・スワローズ詩集』」 「謝肉祭(Carnaval)」 「品川猿の告白」 (以上、「文...
まるでエッセイの様な短篇(私)小説集。 「石のまくらに」 「クリーム」 「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」 「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」 「『ヤクルト・スワローズ詩集』」 「謝肉祭(Carnaval)」 「品川猿の告白」 (以上、「文學界」に随時発表) 「一人称単数」(書き下ろし)
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小説のような、自分の振り返りのエッセイのような、 ちょっと不思議なんだけど、なんだかありそうな感じもする、8つの短編。 個人的には「謝肉祭」がなんだか面白かった。 よくもまぁあの短いページ数に「醜い」というワードを詰め込めるものです…。
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日常ような非日常を綺麗な文章で描いてくれる村上春樹の短編がとても好きです。 読んでいるときには不思議で心地よい感覚を与えてくれて、読んだ後にはその感覚がさっと抜けるように消えていく。いい意味でも悪い意味でもあまり後に残らない作品が多いと思います。 でも、たまに後からボディブローの...
日常ような非日常を綺麗な文章で描いてくれる村上春樹の短編がとても好きです。 読んでいるときには不思議で心地よい感覚を与えてくれて、読んだ後にはその感覚がさっと抜けるように消えていく。いい意味でも悪い意味でもあまり後に残らない作品が多いと思います。 でも、たまに後からボディブローのように効いてくる作品もあって、それが村上春樹の短編の中毒性が増している要因になっています。『女のいない男たち』では『独立器官』と『木野』がそれに当たります。 今回の短編集は、どれも村上春樹らしさのある作品で、やっぱり読んでいるときは面白かったです。しかし、読み終わった後にボディブローのように残るような作品は残念ながらありませんでした。ウィズ・ザ・ビートルズと謝肉祭はそれなりの重さを持ち得た作品だと思いますが、それらに出てくる女性に今一つ引き込まれなかったためか、ずしっとくるものはありませんでした。 それでもやっぱり総じて村上ワールドを裏切ることなく楽しませていただいたので、評価は4とさせていただきます。
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村上春樹さんによる久々の新刊小説(8篇を収録した短編集で、表題の「一人称単数」は書き下ろし)。テーマは「記憶」で、どの短編も「記憶」に関する物語となっていて、フィクションとノンフィクションの狭間にあるような作品が多いのかなこれは。個人的にはあるものを盗む猿が出てくる「品川猿の告白...
村上春樹さんによる久々の新刊小説(8篇を収録した短編集で、表題の「一人称単数」は書き下ろし)。テーマは「記憶」で、どの短編も「記憶」に関する物語となっていて、フィクションとノンフィクションの狭間にあるような作品が多いのかなこれは。個人的にはあるものを盗む猿が出てくる「品川猿の告白」が面白かった。あと、今回の表紙は村上さんっぽくないかな(どこかでみた絵だなと思ったら豊田徹也さんなんですね)。
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村上さん、小説うまくなってないか…? 久しぶりの短編集だそうだけど、とても面白かった。村上さん自身が主人公らしく、エッセイぽいかなと思ったら外しがあったりして楽しめた。
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