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童の神 の商品レビュー

4.4

37件のお客様レビュー

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2024/05/21

歴史はこういう背景があり作られて行くんだな。綺麗事ばかりでは無い。虐げられる民族がいる。そして声を上げ立ち向かう。3部作との事ですが早く続きが読みたいです。

Posted byブクログ

2024/05/05

 本作発刊当時から、今村翔吾さんが紛れもないエンタメ作家で勢いのある書き手なのだと理解できました。理屈抜きに楽しめる物語でした。描かれるのは、土着の民たちの、朝廷への抵抗と差別のない社会の希求です。  平安時代「童」と呼ばれ、京人(みやこびと)から蔑まれ虐げられる人々がいました...

 本作発刊当時から、今村翔吾さんが紛れもないエンタメ作家で勢いのある書き手なのだと理解できました。理屈抜きに楽しめる物語でした。描かれるのは、土着の民たちの、朝廷への抵抗と差別のない社会の希求です。  平安時代「童」と呼ばれ、京人(みやこびと)から蔑まれ虐げられる人々がいました。朝廷の支配に屈しない先住の者たちです。  その一人、桜暁丸は凶事の日に生まれ、母の来歴や風貌もあり「禍の子」と呼ばれました。父と村を奪った京人への復讐を誓い、同じ境遇の仲間「童」たちと共に朝廷へ闘いを挑んでいく展開です。  今村さんは、神話や伝説を取り入れながら、想像力豊かな作品世界を作り出しています。特に闘いの場面は臨場感あふれ、手に汗握る描写です。人物の書き分けも明確で、心の機微や揺らぎ、変容などの表現も巧みで引き付けられます。
 桜暁丸が望んだ差別のない社会、平等で貴賤のない未来を夢見て散った者たちの願い‥。容易に埋めることのできない隔たりに、人間の負の側面を見せ付けられる思いです。  千年後の現在でも、洋の東西を問わず紛争の絶えない人間社会が続いており、彼らの願いが叶えられていない現実が哀しいですね。それでも、未来に希望を抱かせる読後感でした。

Posted byブクログ

2024/04/11

歴史は勝者により作られる。この事を強く考えさせられました。 室町時代に土蜘蛛、鬼等の化物話しが多くありますが、それらは人であり「京人以外は人では無い」という思想から生まれてたんですね。平将門の首が飛ぶ話しもこれと同様に、京人以外を化物扱いとする事で根絶やしにする口実を与える寓話と...

歴史は勝者により作られる。この事を強く考えさせられました。 室町時代に土蜘蛛、鬼等の化物話しが多くありますが、それらは人であり「京人以外は人では無い」という思想から生まれてたんですね。平将門の首が飛ぶ話しもこれと同様に、京人以外を化物扱いとする事で根絶やしにする口実を与える寓話となります。 欧州でも迫害の歴史が多くありましたが、日本でもこれ程の迫害が罷り通る時代があったとは思いもしませんでした。 歴史の裏を書き出し、その者達の抵抗がどれ程過酷だったかを知る事が出来ます。勿論小説としての面白さは十分。オススメです。

Posted byブクログ

2024/03/22

味方がいて。 敵がいて。 それぞれに信念があって。 同情すべき過去があって。 裏切りがあって。 四天王がいて。 必殺技のようなものがあって。 こんなマンガがあったらな~って思ったらあったりして。 原作今村先生、原哲夫先生に描いてもらいたかった作品。

Posted byブクログ

2023/12/31

平安の世で勃発する差別との闘いの物語。 てっきり、妖怪の話だと思っていたため、本篇を読み始めてから差別の話であることに気づいた。 差別と戦無き世を目指して励む主人公たちの姿が勇ましかった。

Posted byブクログ

2023/12/13

今村さんの話は、本当に素晴らしい。思わず引き込まれる。この話、題材から最後が見えてるんだが、そうじゃない最後を期待してしまう私は愚か。しかし、同じような虚しさは今も世界のあちこちで続いているのが悲しい・・・。3部作の真ん中の時代のものと云う構想で今(2023年12月)には出てない...

今村さんの話は、本当に素晴らしい。思わず引き込まれる。この話、題材から最後が見えてるんだが、そうじゃない最後を期待してしまう私は愚か。しかし、同じような虚しさは今も世界のあちこちで続いているのが悲しい・・・。3部作の真ん中の時代のものと云う構想で今(2023年12月)には出てないようだが、きっと悲しい話になるんだろうなあ。でも、読んでしまう私

Posted byブクログ

2023/11/25

大江山の鬼と渡辺綱、源頼光の伝説を、鬼と呼ばれた側から描いた作品。 人を蔑むことによって、自らが蔑まれない立ち位置を確保しようとする都人 その鋭い指摘は、現代にもつながる闇だ。 その蔑みを、自らの誇りをもって打ち破っていく桜暁丸とその仲間たる童たちの熱い想い。 仲間を守り、誇りを...

大江山の鬼と渡辺綱、源頼光の伝説を、鬼と呼ばれた側から描いた作品。 人を蔑むことによって、自らが蔑まれない立ち位置を確保しようとする都人 その鋭い指摘は、現代にもつながる闇だ。 その蔑みを、自らの誇りをもって打ち破っていく桜暁丸とその仲間たる童たちの熱い想い。 仲間を守り、誇りを守るべく、最期の覚悟をもって闘う姿が心に残った。

Posted byブクログ

2023/11/22

悲しい物語でした。 今で言うなら、人権問題に立ち向かった主人公。 どこに住もうが、家系がどうであろうが、人は皆同じであると言う信念のもと戦います。 戦などしたくはないけど、命令に従うしかない都の人々。 いつの世も戦は悲しみしか生みませんね。

Posted byブクログ

2023/10/14

大江山の鬼退治という童話のような伝説ともなっている話を、リアルでありながらファンタジックに、生き生きと描いた小説。 平安時代。 中央集権が進み、宮中文化が栄えた平安時代は、平和でも安心できる世でもなかった‥? 安和の変が起きた962年に物語は始まります。 京の都にも、ほど近い地...

大江山の鬼退治という童話のような伝説ともなっている話を、リアルでありながらファンタジックに、生き生きと描いた小説。 平安時代。 中央集権が進み、宮中文化が栄えた平安時代は、平和でも安心できる世でもなかった‥? 安和の変が起きた962年に物語は始まります。 京の都にも、ほど近い地域にも、「童」と呼ばれる、朝廷にまつろわぬ者たちがいた。「童」というのは、子供という意味ではなく、鬼、土蜘蛛、夷、滝夜叉、山姥などをまとめて蔑んで呼ぶ言葉。 一方的に蔑む権力者に対抗して、乱が起きたのだが、あえなく鎮圧される。 安倍晴明は、皆既日食を凶事と断じ、ゆえに恩赦が出るように事を運ぶ。じつは童と通じていて、囚われた彼らを救ったのだ。 この年この日、越後で桜暁丸(おうぎまる)が生まれた。父は郡司で、流れ着いた異国の女性との間に子をなしたのだ。夷を差別しない人柄だったが、京に目をつけられてしまう。 桜暁丸は父と故郷を喪い、「花天狗」という盗賊となった。のちの「酒呑童子」この童子という名が子供という意味ではなかったわけです。 跋扈する盗賊や、表には出ずに山で暮らす人々との出会い。 それぞれの強さと意気地、はかなさとしぶとさ。 影に日に活躍する女性たちも魅力的です。 実在する人物も、伝承を思わせる内容も出て来て、その描き方がスピーディで熱っぽく、きらきらと輝くよう。 引き込まれて一気読み。 史実でこれほど大規模な闘いがあったのかどうか。 平安時代については、数字的なことがよくわからないのだが。 赤い血の流れる同じ人間でありながら、秩序になじまないという理由で、否定する。 元はそれぞれ離れた土地で、その土地なりに暮らしていただけなのに。 世の制度が整っていくときに起きる残酷さ。 時代の流れとはまた別な、異なるものを排除する心理。 現代でも、根深く、あちこちで起きている現象のようにも思います。 せめて、極端な差別や争いを起こさない方向へ、進んでいけたらと願うばかり。 2019年初読。2023年、文庫で再読。

Posted byブクログ

2023/09/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

塞翁の盾の前に読むつもりやったけど、予約期限の関係で後回しにした本作を読んで納得。今村翔吾は外したらアカン、フォロー必須の小説家。 日本史の悪役として虐げられてきた化外の人々。ちょっと目線を変えたら彼らこそ被害者、力を持つものに敵視され捕らえられ奴隷とされて忌み嫌われ差別されてきた人々。 「人を分けるな」「人を諦めない」…生まれた場所、地位、性別、趣向、何がどうであっても人は人なのであり、等しく同じく赤い血が流れている。桜暁丸の目指した世の中は千年たった今も達成されてはいないが、それでも俺たちはまだまだ目指していけるはずである。 民俗学や伝承を重層的に構築しなおした設定に難しいテーマを載せている小説だが、痛快でさわやかで少し切ない水滸伝にも通じる名作、個人的には生活圏の山々が舞台となっているのも良かった。 究極の個人主義は無差別社会に通じると思う。俺は俺、お前はお前、必要に応じて連携もするが、基本的にはそれぞれで頑張れ、各々で楽しめ…それでいいじゃないか。

Posted byブクログ