童の神 の商品レビュー
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延々と、こういうことを、人間は繰り返しているんだなと。どちらの側にも(とくに末端の者は)暮らしがあって言い分があるのもわかるし、それでもどちらの側に「居たい」かだけは、忘れずに生きてゆこうとおもった。
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歴史の大きなうねりの陰には、名もなき者たちの涙と怒りが沈んでいる。権力の外に追いやられた人々の痛みを、伝奇の衣をまとわせながら鮮やかに描き出す。鬼とは何か、異形とは誰か。物語は、その問いを通して、異なるものを恐れ排除してきた人の業をあぶり出してゆく。強き者の記した歴史には残らぬ声...
歴史の大きなうねりの陰には、名もなき者たちの涙と怒りが沈んでいる。権力の外に追いやられた人々の痛みを、伝奇の衣をまとわせながら鮮やかに描き出す。鬼とは何か、異形とは誰か。物語は、その問いを通して、異なるものを恐れ排除してきた人の業をあぶり出してゆく。強き者の記した歴史には残らぬ声が、ここでは確かな息遣いをもって立ち上がる。時代が変わっても、社会はなお境界をつくり、名づけによって他者を遠ざける。本書は、古の説話を借りながら、弱き者に宿る誇りと、人が人を分け隔てることの残酷さを、今を生きる私たちへ問い返している。
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今村さんの作品は「じんかん」「塞王の楯」「幸村を討て」「イクサガミ」と読んできて、ブックオフで過去の今村作品を探しているとき表紙を見て本書を手に取りました。 酒呑童子という名前はもちろん知っていました。昔(京都近郊の)大江山を住処としていた鬼です。しかし、とてもあやふやな記憶で...
今村さんの作品は「じんかん」「塞王の楯」「幸村を討て」「イクサガミ」と読んできて、ブックオフで過去の今村作品を探しているとき表紙を見て本書を手に取りました。 酒呑童子という名前はもちろん知っていました。昔(京都近郊の)大江山を住処としていた鬼です。しかし、とてもあやふやな記憶で、子どもの頃に読んだ絵本の挿絵に描かれた鬼がとても怖かったことを覚えている程度でした。本書が当時「鬼」と呼ばれた酒呑童子を主役に据えた作品であることは途中からわかりましたが、記憶の中にあった鬼のイメージとは全く異なる展開で、とても新鮮でした。 安倍晴明の話から始まり、「ああ、平安時代の話なのだ。道長にも関係するのかな?」などとつらつら考えながら読んでいると、突如の鬼の話となる。そして、基本的に当時の京人(みやこびと、朝廷の統治下で生活をしている人々)にとって、それ以外の人々は「鬼」として遠ざけられる存在であったと言う事実を思い知りました。そして現代でも形は違うが個々の集団の間で似たような差別意識がまだまだ様々な形で日本人の中に残っていることを思い知らされました。 当時の「鬼」の存在や朝廷側の人々の認識。これまで歴史・伝承で伝わっている朝廷側の見方しか認識できていなかったので、とても新しい視点で捉えることができました。 酒呑童子、源満仲・頼光、頼光四天王(とはいっても坂田金時/金太郎しか記憶してませんでしたが)、藤原道長といったそうそうたる顔ぶれは個々の歴史・伝承上の人物として認識はできていたものの、同時代を生きていた相互に関係性を持った人たちという認識はなかったのでした。個々の人物像がとても魅力的・個性的に描かれていて、今村さんの筆力が良く発揮された差品だと思います。 本作は私が今村さんの各作品の特徴であると認識している下記の事項が、比較的初期に近い本作のフェーズで色濃く出ていると感じ入りました。今村さんの凄いところなのだと思います。 ・史実・伝承に基づいていること(最新の研究に基づいていること) ・主役の視点だけではなく多面的に人物を描くこと ・断片的な史実・伝承の間を埋めるストーリー展開がとても人間味があり面白いこと また、文体や言葉(はきとして、方笑む、、等々)も私が今村さんの作品に特徴的なものと認識しているのですが、既にこの作品のころから特徴づいていたのだな、と思いました。 とても面白かったです。
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人を信じたい…その気持ちが無ければ、もっと冷酷に戦えたのかもしれない。 朝廷や政治に民の反感が向かないよう京を脅かす存在として忌み嫌われて生きてきた男たちの熱く激しい戦い。 流れている血はみな同じ。 それなのになぜ奪い、争うのか。 もうやめて…そう言いたくなるシーンが何度もあり、...
人を信じたい…その気持ちが無ければ、もっと冷酷に戦えたのかもしれない。 朝廷や政治に民の反感が向かないよう京を脅かす存在として忌み嫌われて生きてきた男たちの熱く激しい戦い。 流れている血はみな同じ。 それなのになぜ奪い、争うのか。 もうやめて…そう言いたくなるシーンが何度もあり、ハッピーエンドを期待する自分がいた。 争いは新たな憎しみを生み、負のループは途切れることがない。 争うことの虚しさと平和であることのありがたさを改めて感じる。 どちらが正義でどちらが悪なんだ? 偏見や先入観で人と接さない…小さなことだけど自分にもできることはある。 京に入ってみんなで歌ったあの時のように、心を一つにすることはできるんだから。 私もやっばり人を諦められない。
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「塞王の盾」「幸村を討て」に続いて3作目の今村翔吾さんの作品。物語の力がすごくて、心に刻まれた。泣いた。まず、童が子供ではなく奴隷という意味だったことを知らなかったし、雅なイメージのある平安時代に人外の者として迫害された人々がいたことも知らなかった。京の権力の外で、鬼や土蜘蛛、人...
「塞王の盾」「幸村を討て」に続いて3作目の今村翔吾さんの作品。物語の力がすごくて、心に刻まれた。泣いた。まず、童が子供ではなく奴隷という意味だったことを知らなかったし、雅なイメージのある平安時代に人外の者として迫害された人々がいたことも知らなかった。京の権力の外で、鬼や土蜘蛛、人外と差別されて、蔑まれながらも、国家権力にあらがった人たちに今村翔吾さんが光を当ててくれて千年後の現代に蘇らせてくれて、その物語を読めて本当に良かった。愛宕山に酒呑童子のお詣りに行きたい。 平安時代の差別は苛烈で暴力的で、あまりに哀しすぎて読み進めるのがつらかった。見て見ぬふりしたり社会の底辺に組み込むとかじゃなく、本気で皆殺しにしようとしてくる苛烈さが、すっごい哀しくて本当にショックだった...(泣) 白村江の戦いについて触れられていて火の鳥太陽編の犬上宿禰や妖怪たちの戦争のことを思い起こしたりした。これからは鬼の伝説を聞くたびに、鬼滅の刃を観ても、鬼側の味方になってしまいそう。畝傍山(うねびやま)や大江山に行って無もなき童たちに花を手向けたい。 渡辺綱や坂田金時のような朝廷側の武将との心の交流が素敵だった。
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グッと胸ぐらを引き寄せられて、物語にのめり込んでしまった。歴史的背景も御伽噺も知らなかったが、読み進めながら史実を確認していくうちに、あっという間に童たちの虜になる自分がいた。生きよう。もっと本を読んで教養を身につけよう。
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京人から嘲られてきた人々が調停と戦う物語。 主人公は酒呑童子。外国人とのハーフの生まれの設定となっている。史実をもとに、作者のインスピレーションを紡ぎ合わせてできたお話。 小気味よく流れていくストーリー。映画化もできそうな、スピード感。キャラの特徴をよく描けた小説だと思います。...
京人から嘲られてきた人々が調停と戦う物語。 主人公は酒呑童子。外国人とのハーフの生まれの設定となっている。史実をもとに、作者のインスピレーションを紡ぎ合わせてできたお話。 小気味よく流れていくストーリー。映画化もできそうな、スピード感。キャラの特徴をよく描けた小説だと思います。泥臭さ、汚さ、やるせなさはあまり感じず、さわやかな読み心地だった。ざらざらした感じが欲しい気もする。
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※このレビューにはネタバレを含みます
初めて歴史小説を読んだけど、大河ドラマとか朝ドラみたいな感覚で読んでいけるのがわかって楽しめました。もっと堅苦しいものだと思っていた!読んでる物語が完全に架空というわけではなく、現実にあったものなのかもしれないとほかのジャンルよりも思えるのは歴史小説の良さだと思いました! 特に感動したのは、皐月と安倍晴明の最期の描き方。さすがに感動しました。 あとがきにもかいてあったとおり、続編も書いてくれると思うので(もうあるのかな?)、書いてくれるのを待とうと思います!
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イクサガミで話題の今村翔吾作品。 いろんなキャラが出てきて、面白かった。 作者あとがきで、三部作構想だと書かれてたので続編も発表が楽しみ。
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「童」とは、今でこそ子どもを意味する言葉ですが、平安時代では全く違う意味を持っていました。鬼や土蜘蛛と同じように、京の人々が自分たちと異なる土着の民を蔑んで呼ぶ差別的な言葉だったのです。 本作の主人公・桜暁丸は、皆既日食の日に生まれ「禍の子」と呼ばれます。京人に父や故郷を奪われ...
「童」とは、今でこそ子どもを意味する言葉ですが、平安時代では全く違う意味を持っていました。鬼や土蜘蛛と同じように、京の人々が自分たちと異なる土着の民を蔑んで呼ぶ差別的な言葉だったのです。 本作の主人公・桜暁丸は、皆既日食の日に生まれ「禍の子」と呼ばれます。京人に父や故郷を奪われた彼は、各地に暮らす「童」たちを集め、朝廷との闘いに挑みます。その姿は、やがて伝説に語られる「酒呑童子」として記憶される存在へとつながっていくのです。 一般的に酒呑童子は、源頼光らによって討たれる「鬼」として知られています。けれどこの物語で描かれるのは、その鬼がもともと人であり、虐げられ居場所を失った者たちだったという視点。なぜ「異なる者」として恐れられ、なぜ討たれる運命に至ったのか――その背景を追うことで、伝説がぐっと人間味を帯びてきます。 桜暁丸がいかにして酒呑童子と呼ばれるようになったのか。その過程を描いた物語であり、同時に「人はなぜ差別し、なぜ壁をつくるのか」という問いを千年前から今に投げかけてくる一冊でした。
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