三体 Ⅱ(下) の商品レビュー
中国のSF小説『三体』シリーズ第2巻の下です。 様々なSF要素を盛り込みかつ綺麗に纏まっている、最高傑作と言えます。 大量の伏線が所々に敷かれ、読者を最後まで飽きさせません。 上巻で確立されていた人体の冷凍保存技術により、舞台は一気に未来へ移ります。 三体文明対策で絶大な権限を付...
中国のSF小説『三体』シリーズ第2巻の下です。 様々なSF要素を盛り込みかつ綺麗に纏まっている、最高傑作と言えます。 大量の伏線が所々に敷かれ、読者を最後まで飽きさせません。 上巻で確立されていた人体の冷凍保存技術により、舞台は一気に未来へ移ります。 三体文明対策で絶大な権限を付与された面壁者は、世紀を跨いで地球文明のために活躍します。 しかし、彼らを含む全人類には大きな試練が…。 2巻では学者の羅輯と軍人の章北海の二人がキーパーソンとなりますが、全く違う未来を目指している人物であるため展開が予想できません。 物語の筋道がしっかりと立っている作品ですが想像を超えた裏切りが待ち受けている、1巻と同様に独特な世界観を含有しています。 状況が劇的に変化し、地球と三体、そして他(ネタバレしたくない!)の今後が気になる終わり方です。 3巻にも期待します。
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普通の人間が感染すれば、ただの軽い風邪ほどの症状しか現われない弱毒性のウイルス。しかし、ターゲットとされた特定の遺伝子を持つ人間に感染したとき、それは命を奪う猛毒と化す。巷に流行していた謎のウイルスに感染し、瀕死状態となった面壁者・羅輯(ルオ・ジー)は人工冬眠を施され、医療技術の...
普通の人間が感染すれば、ただの軽い風邪ほどの症状しか現われない弱毒性のウイルス。しかし、ターゲットとされた特定の遺伝子を持つ人間に感染したとき、それは命を奪う猛毒と化す。巷に流行していた謎のウイルスに感染し、瀕死状態となった面壁者・羅輯(ルオ・ジー)は人工冬眠を施され、医療技術の進歩と終末決戦を待つことになる。 そして185年後。危機紀元205年、無事に人工冬眠から目覚めた羅が目の当たりにした地球文明は一変していた。 半世紀にわたって続き、世界人口の2/3を失った大不況「大峡谷時代」を経た後、智子(ソフォン)に基礎物理学発展の芽を摘まれ一度は停滞したテクノロジーは、既存の技術を応用することで飛躍的に進歩。ほぼ無限のエネルギー・食糧供給を獲得することができた。軍備は再編・拡張され、2000隻をこえる宇宙戦艦を建造するに至り、膨れ上がった組織は亜細亜艦隊・北米艦隊・欧州艦隊といった「三大艦隊」と呼ばれる独立国家となって宇宙空間上に存在する。 一方で、太陽系へと迫る三体艦隊は長い宇宙の旅の末に損耗していた。速度は低下し、隊列は乱れ……人類は三体文明の仕掛ける侵略戦争に対する勝利、危機の終焉を確信していた。 しかし、三体文明が放った一機の探査機「水滴」と人類が初めて接触した瞬間、すべての希望は失われる。 ――わたしがおまえたちを滅ぼすとして、それがおまえたちとなんの関係がある? 例えるなら宇宙は暗黒の森であり、あらゆる文明は猟銃を携えた狩人で、幽霊のようにひっそりと森の中に隠れている。もしほかの生命を発見したら、それが獲物であろうと、別の狩人であろうと、出来ることは銃のひきがねを引いて、相手を消滅させることだけなのだ。 三体文明と地球文明の圧倒的な力の差を目の当たりにした人類たちの社会はあっけなく自壊してゆく。そんななか、面壁者として激しい毀誉褒貶に晒される羅。彼の脳裏に浮かぶ公理。かつて、高校の同級生だった物理学者・楊冬(ヤン・ドン)の墓前で彼女の母・葉文潔(イエ・ウェンジェ)から伝授された“宇宙社会学の公理”。人類が滅ぶことを望んだ文潔が彼に残した公理は、どのような解をもたらすだろう? 現代人でありながら人工冬眠を経て未来へと送り込まれた宇宙軍将校・章北海(ジャン・ベイハイ)もまた、亜細亜艦隊のなかで人類の生き残りを模索していた。その方法は知略に長け、人望も篤く、羅と比べるに余程こちらが妙手を打っているように見えていた……にもかかわらず、劉先生の筆は容赦ない。章北海の物語は、荒唐無稽な物語なのに、人間と社会の特性と宿命を突きつけられる一幕だ。 なにより揺るぎない三体星人の、地球人類への殺意に震えて(歓喜)読む下巻。楽しい! ハイテクvs.ローテク、最後は拳で殴り合う的展開が好きなんだけど(バトルシップみたいなやつ)、そうなると必要なのは史強(シー・チアン)だろうか。もう兄貴が何とかしてくれそう。最終兵器兄貴。そんな愉快な展開はないだろうと思いつつ、第三部が待ち遠しい。
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SFネタがオマージュとしてそこかしこに盛り込まれていて面白い。 ストーリーは三体星人との戦いに一気にシフトする。 ところで、「三体」のWikipedia記事は、内容についての記述が大変詳細に書かれている。そのウィキペディア記事に書かれてある内容と本書の内容とを比べると、"...
SFネタがオマージュとしてそこかしこに盛り込まれていて面白い。 ストーリーは三体星人との戦いに一気にシフトする。 ところで、「三体」のWikipedia記事は、内容についての記述が大変詳細に書かれている。そのウィキペディア記事に書かれてある内容と本書の内容とを比べると、"ある部分"の記述が決定的に異なっている。 読んでいる間、ずっとその相違が気がかりだったけれど、訳者あとがきでその秘密が明かされていた。
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羅輯は、冬眠から目覚めた。そして覚醒の手順はやりなれたもののようで、一連の手順が済むと、医師の「次の方!」との声で、蘇生室から出されたのだ。同室の冬眠者と話をして今の状況の概略を知った。地球人類の宇宙艦隊はとても強力で三体人の戦艦よりずっと強いという。そのうち三体人と和平交渉ができるだろうとまで。宇宙艦隊はそんな戦艦を二千隻も保有しているという。三体艦隊は宇宙塵を三回通過して、今は隊形もばらばらで艦隊の体をなしていないという。「面壁計画はどうなった?」そう聞いたが、彼も看護師も聞いたことが無いという…。羅輯は何をしたらよいのか?
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話題になるのが納得の面白さ。 物理学だけでなく、政治学、社会学を横断したような広範なアイデアが縦横無尽に駆け巡っていながらも、かなり読みやすいのは著者の力量だけではなく、翻訳者の力量というのも大きな要素だと思う。 part3を早く読みたくてたまらない。
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上巻はほとんど心理戦が中心でしたが、下巻は派手な宇宙艦隊戦でハラハラしました。三国志の赤壁の戦いを思い出した… 羅輯(ルオ・ジー)理想の女性とイチャついてるだけじゃなかった(笑) 黒暗森林という理論ーーなるほどなと思ったけど、それでも高い文明を持つ異星人と仲良くなれると信じたい...
上巻はほとんど心理戦が中心でしたが、下巻は派手な宇宙艦隊戦でハラハラしました。三国志の赤壁の戦いを思い出した… 羅輯(ルオ・ジー)理想の女性とイチャついてるだけじゃなかった(笑) 黒暗森林という理論ーーなるほどなと思ったけど、それでも高い文明を持つ異星人と仲良くなれると信じたい!
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上巻冒頭のだるさを吹き飛ばす怒涛の展開で、評判に違わぬ気宇壮大な物語を堪能した。 面壁者それぞれの戦略構想に唸らされ、水滴のもたらすカタストロフに戦慄し、逃げ延びた艦隊がモデル的に示した黒暗森林の暗い原理を突きつけられつつも、羅輯の気迫に息を飲む(コミカルでもあるが)ラストシーン...
上巻冒頭のだるさを吹き飛ばす怒涛の展開で、評判に違わぬ気宇壮大な物語を堪能した。 面壁者それぞれの戦略構想に唸らされ、水滴のもたらすカタストロフに戦慄し、逃げ延びた艦隊がモデル的に示した黒暗森林の暗い原理を突きつけられつつも、羅輯の気迫に息を飲む(コミカルでもあるが)ラストシーンまで。 完全に論理的にふるまうことから逸脱してしまう人間の業、あるいは直感、言ってみれば嘘、要するに愛は、スタートレックなんかを代表に多くのSFの主題であったが、そこから敷衍して豪快な物語がつくられている。 人海コンピュータはじめ、第一作で見られた大陸的な空間描写の妙味は、主戦場が太陽系規模に拡大される。「2001年宇宙の旅」や「ファウンデーション」との関係は解説にもあるが、私には「星を継ぐもの」から「ガニメデの優しい巨人」への展開を思い起こさせるものだった。 ドラマ化も発表され、完結篇の邦訳は来春刊行予定とのこと。待ち遠しい。
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2020.09.09 図書館 まじですごい。 ジェノサイドを読んだ時以上の衝撃。 三体3部作、2冊目。 3冊目は2021春頃に出版されるらしい。 その時にもう一度読み返したい。 この第二部は本国中国で一番人気らしい。 わかる。 正直第一部が衝撃すぎて、超えることはないだろと思っていたけど、とんでもないスケールとストーリー性で第一部に全く引けを取らない完成度だった。 相変わらず前半はしこたま読みづらいし、第一部と登場人物が(まさかの)ほぼ入れ替えだったために人物把握が大変だった。(第一部からの登場人物もたくさんいるから、その人たちの確認も…。) 下巻は一気に読み終えた。 終盤のスピード感と大風呂敷の回収が圧巻。 宇宙論に疎い私は、宇宙黒暗森林説、フェルミのパラドックスへの回答にもなってるこの説がすごくリアルでそうとしか思えなかった。 頭脳戦エンタメ感が渦巻いているけど、とにかく暗い。 無慈悲。 予想外の展開と予想外の行動の連続。 最後の最後まで主人公の考えは読めなかった。すごい。 一番衝撃だったのは章北海。 孤独で多くを背負いすぎていて、一番目が離せないキャラクターだった。母性本能? 主要メンバーがみんな人生かけて苦労を背負い込んでるのに、ことごとく報われない。 虐げられた以上の報われエピソードがもう少しあると救われた。
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面白かった。 フェルミのパラドックスへの本書の解答がすばらしく、納得がいく。 ディティール、伏線回収、テンポ、どれも完璧。 起 ・面壁計画始動 人類は三体文明に立ち向かおうとする 承 ・人類の挫折 三体文明に立ち向かおうとするが上手くいかない 転 ・人類が勝てそうになるが、一転して絶望 ・黒闇森林理論 結 ・三体世界と交渉成立した
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「三体 Ⅱ 黒闇森林 下」 劉慈欣(著) 大森望、立原透耶、上原かおり、泊功(訳) 2020 6/25 初版発行 (株)早川書房 2020 9/1 読了 めっちゃ面白かった! 更に大きくなったスケールは人類に根本的問題を突きつけると共に スタート地点に立って シンプルに...
「三体 Ⅱ 黒闇森林 下」 劉慈欣(著) 大森望、立原透耶、上原かおり、泊功(訳) 2020 6/25 初版発行 (株)早川書房 2020 9/1 読了 めっちゃ面白かった! 更に大きくなったスケールは人類に根本的問題を突きつけると共に スタート地点に立って シンプルに明るいであろう未来を目指して終わる。 中国人のダイナミックな心情が良くも悪くも中心に描かれていて興味深い。 三部作最終作は 2021 春に「三体 Ⅲ 死神永生」として発行される予定。 コロナ禍、新総理、東京オリンピック… その時どんな状況で手にしているんだろう。
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