いのちの停車場 の商品レビュー
超高齢化社会で避けて通る事が出来ない「在宅医療」「終末医療」 医師である白石咲和子が、故郷で引退した医師である父の最後を看取るまでの話です。 東京で要職を務めながらも、大事故で発生した負傷者を多数受け入れた責任を取って辞職します。対応としては問題ないながらも、医師免許をまだ持って...
超高齢化社会で避けて通る事が出来ない「在宅医療」「終末医療」 医師である白石咲和子が、故郷で引退した医師である父の最後を看取るまでの話です。 東京で要職を務めながらも、大事故で発生した負傷者を多数受け入れた責任を取って辞職します。対応としては問題ないながらも、医師免許をまだ持っていない助手に点滴をさせた事によって口実を与えた形になりました。 金沢の幼馴染の経営する病院で、在宅医療の医師として活動していくうちに、終末医療の重要性を痛感し、新たな道を見出して様々な事に取り組み始めます。 そんな中で高齢の父が入院し、次第に苦痛にあえぐ姿を目の当たりにします。苦しみの中で父は積極的安楽死を娘に依頼するのでした・・・。 大きなテーマとして終末医療、在宅医療が太く有り、患者の人生が枝、根としてしっかり絡んでいて、医療小説として読み応え満点です。 エンターテイメント性は低い、というかあまり軋轢とかが無くスルスル行くので、ドキドキしたり手に汗握ったりという事は無いです。 今回はネタバレを辞さないつもりなのです。それでないとこの本は語れないと思うのです。 僕が違和感を持ったのは、主人公の父が娘に積極的安楽死を依頼する部分です。最初から帯で明かされているので意外でもなんでもない話ではあるのですが、父は苦痛に苛まれながらも冷静な判断の出来る状況でした。それなのに娘に安楽死を頼むことが理解出来ません。自分も子供を持つ身として、自分で身動きも取れなくて殺してくれという気持ちは分かります。本当にいたたまれないです。しかしこの父は娘を冷静に犯罪者にしようとしているのです。 医療の世界に一石を投じようという訳でもないのに、医師免許を捨てよという父親は傲慢ではないでしょうか。自分は医師としての人生を全うしながら、彼女にはその安寧を捨てよという。これは道義的とか倫理的とか言う前に、親として失格ではないかと思います。 どうしてもその部分が納得できませんでしたし、そもそもそれがこの本の骨子ですから、何とも言えない気分になってしまいました。
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在宅医療をテーマにしたヒューマンドラマです。救急救命士として活躍していた主人公が、訪問診療医として奔走します。 全6章+プロローグとなっていて、各章ごとに異なる症状を抱えた患者が登場し、主人公はどう患者と向き合っていくのかが見どころとなっています。さらに家族との絆、死を目前に控え...
在宅医療をテーマにしたヒューマンドラマです。救急救命士として活躍していた主人公が、訪問診療医として奔走します。 全6章+プロローグとなっていて、各章ごとに異なる症状を抱えた患者が登場し、主人公はどう患者と向き合っていくのかが見どころとなっています。さらに家族との絆、死を目前に控えた身内との向き合い方が描かれていて、辛く悲しくも暖かくさせてくれました。日に日に衰えていく状態にページを捲るのも辛かったですが、家族ならほぼ訪れることであり、色々と考えさせられました。死を目前に関係者は、冷静さを保てるのか。自分だったらなかなか正常ではいられませんが、その覚悟は常時持っていないといけないなと思いました。 現役医師ということで、文章は医療関係の難しい言葉が多いですが、医者が患者に分かりやすく説明するかのように丁寧に書かれているため、そんなに支障はありませんでした。 主人公の周りの人達も個性溢れる人達で、ほっこりとした気持ちにさせてくれました。 物語では、その他にも主人公の父が、骨折を皮切りに日に日に体調が悪化し、全身に痛みが。そして、「死なせてくれ」と主人公に安楽死を懇願します。主人公は、どう判断するのか。 最後は、予想もしなかった展開、衝撃的過ぎる結末に言葉でどう表現したらいいのかわからないくらい複雑な気持ちになりました。 結末のその先が気になりますが、この気持ちを他の人と共有して話し合いたいです。 暖かい気持ちにさせた矢先の衝撃的展開を是非目撃してみてください。
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