さいはての家 の商品レビュー
とある古い家を舞台にした短編集。 文章が読みやすいので、どんどん読んだ。 そしてどんどん怖くなった。 気持ちがざわついた。 そんななか『ままごと』の姉妹に救われた。
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いろんな事情で逃げてきた人が住む家の物語。物語に登場する人物の物語もよかった。 はねつき。最初「不倫カップルの話か...美化したらやだな」という先入観を持って読み進めてたが一番好きな物語だったかも。気無知な女の子が男性を通して自分で感情や物事を考えるようになる描写、最後の描写が全て美しくてこの作家さんの小説をもっと読みたいと思った。 ままごと。妹から見えるお姉ちゃんが実家からこの家にきたことで変わっていく。それと同時に今まで絶対的にだった父の存在も変わっていく。その過程には周り(社会から)いい人とされる竹平くん(非の打ち所がない恋人だが自分の感覚とは合わない)の存在もある。主人公と周りの人間の配置の仕方がうまい。 かざあな。これも周りからみたら自分が悪い、だけどその考えが自分を否定し続けてしまってとうとう息苦しくなって逃げずにはいられなくなってしまった人の話。逃げてもいいんだよ、と逃げることは悪くない、と救ってくれる。
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色々な事からそれぞれ逃げて来た人達が借りる、古くて汚い家。 そこで過ごすうちに、何かしらの方向が決まっていく。 人生の休憩時間みたいなものって必要なのかも。 自分の気持ちをじっくり見直すのは大事。
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‣ あんたみたいな人ばっかり来るんだよ、この家。なんていうの、それまでの環境や、色んなものから逃げてきたっぽい人 ‣ 困っていた。ただ、困っていてもやっていけたから気にしなかった。一度気にしてしまったら、手に負えないほど深い穴へ落ちる予感がしていた ‣ なにか一つ、強く原因となったものがあるというより、好きときらいがぐしゃりと混ざって切り離せない、そういうものがたくさん溜まって、溜まって、ぜんぶ投げ捨てたくなったのが正直なところではないか ‣ いつだって今いる場所から逃げたくなる。逃げた先はだいたい逃げる前より状況が悪い。そうわかっているのに、ふっと気がゆるんだ瞬間に逃げてしまう。逃げてから後悔して戻りたくなる ‣ この世から逃げたくて仕方がない。それと同じくらい、この先にどんな地獄が待っていても、この世に触れたくて仕方がない ‣ 私を大事だというのも本当なのだろう。だけどそれは自分と同じ人間としてではない。女という、人間よりもいくらか手軽で、うまく躾をして活用するべき別の生き物として、愛されている ‣ 昔から、色んなところに行きたかったんだ。あんなに怖い瞬間をくぐり抜けたんだし、これからはどこに行っても、どんな形でも、なんとかやっていける気がする ‣ 逃げなきゃ死んじまうって思ったから逃げたんだろう。あんただけじゃない、誰だってそうだよ。それを許さない、なんて言われても、普通に困るじゃないか ‣ 逃げる、引き返すって判断は、時に現状維持の何倍も勇気がいるんだ。そこで逃げられないで、死んじゃう人もいる。ちゃんと逃げて生き延びた自分を、褒めなよ、少しは ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ 人生に行き詰まって逃げてきた人たちがたどり着く〝さいはての家〟。 そこでは自分でも気づくことがなかった心の奥底に沈んでいたものが見えてくる
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連作短篇集は数多読んだことがあるけれど、こういう連作は初めてかもしれない。 「さいはての家」というタイトル通り、訳ありの人たちが一度は通りすぎる、1軒の古い家にまつわる物語。 訳ありの内容もさまざまで、キャバクラ嬢とそのお客、かつて新興宗教の教祖であった女性、家から逃げてきた若...
連作短篇集は数多読んだことがあるけれど、こういう連作は初めてかもしれない。 「さいはての家」というタイトル通り、訳ありの人たちが一度は通りすぎる、1軒の古い家にまつわる物語。 訳ありの内容もさまざまで、キャバクラ嬢とそのお客、かつて新興宗教の教祖であった女性、家から逃げてきた若い女性とその妹…など。 最終章だけは元々訳ありではなかった男性なのだけど、住んでいるうちに状況が変化し、だんだんと訳ありに近づいていく。 引っ張られるようにして、なぜかその家にたどり着く。古いだけで、とくに様子がおかしい家ではないのに、なぜか。 家に宿るもの、というのもやはりあるのだろうか、と考える。今、変な間取りの家の本とか映画も流行ってるけど、どことなくおかしな家であるならそういう家になった理由とか、それこそ借家であるなら歴代住んできた人とかで、だんだんと宿っていく念のようなもの。 家じゃないけど私はやばめの物件に出会ったことはある。何をやっても長続きしない場所で、結局最後に入ったお店は火事になってなくなったらしく、今は何も建っていない。 この場合は土地に宿るもののような気がするけど、うっすらでも実感として分かるからこそ、こういう家もあるだろうな、と思った。 彩瀬まるさんとても好きなのだけど、たまにあるこういう微ホラーっぽいのも、面白い。 この家も天井裏に残された謎のダンボールが怖い。ありふれた物しか入ってないのだけど、借りた家にあんなものが残ってたら、私ならぞっとしてすぐ引っ越したくなる。笑
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はじめて読んだ作家さん。 ある古民家に賃貸で住む人達の連作短編集。 ほんわかしたり、ぞわっとしたり不思議な雰囲気で惹かれた。 みんな色々な事情があって流れついてきたんだよね。
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いろんなものから逃げてきた人が行き着くところ、さいはての家。 その古民家の貸家には次々といろんな事情をかかえた人が住みつく。 5編の短編集でありながら、その家でつながっていて一気に読了した。 どれもひきこまれたけど、特に「ままごと」が印象に残った。実家でずっと言われていたことがそ...
いろんなものから逃げてきた人が行き着くところ、さいはての家。 その古民家の貸家には次々といろんな事情をかかえた人が住みつく。 5編の短編集でありながら、その家でつながっていて一気に読了した。 どれもひきこまれたけど、特に「ままごと」が印象に残った。実家でずっと言われていたことがそのままの価値感として根付いていることがある。それは外に出て「おかしい」と思って初めて気づくことだと思った。
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彩瀬まるさんの作品はいつか読みたいと思っていた作品です。最初に読むなら、この作品かなと「さいはての家」を手にしました。 この作品は古い庭つきの家が舞台…そこに住まう人たちの過去、現在を描きその後の未来がどうなっていくのかを読み手に予想させる作品。登場人物のつながりはないけれ...
彩瀬まるさんの作品はいつか読みたいと思っていた作品です。最初に読むなら、この作品かなと「さいはての家」を手にしました。 この作品は古い庭つきの家が舞台…そこに住まう人たちの過去、現在を描きその後の未来がどうなっていくのかを読み手に予想させる作品。登場人物のつながりはないけれど、同じ家に住んだという共通点はある…。 「はねつき」「ゆすらうめ」「ひかり」「ままごと」「かざあな」の5編の短編集…。 「はねつき」:親ほど年の離れたわけありカップルが住人。彼は身元をさらさず、彼女の稼ぎと庭で育てた野菜で食を得ている…。 「ゆすらうめ」:逃亡者とその友人が住人。友人の母は認知症を患っているけれど、一時的にこの家で過ごす…。「ひかり」:新興宗教の元教祖の老婦人が住民。健康教室を開き、庭ではハーブを育てる…。その過去が明らかになる…。 「ままごと」:親が決めた結婚から逃げた女性と、彼と別れ話がこじれていた妹が住民。妹は姉の変化を目の当たりにする…。 「かざあな」:単身赴任を口実に家族から逃げた男性が住民。仕事に逃げたつもりがうまくいかず、家庭崩壊の危機に…。 「はねつき」は、乙女の本棚シリーズで読んできた作品(夢十夜・山月記)のことがちょっとだけ触れられてて…ちょっとだけ嬉しいとなりました!!すべての住民が、逃げたいことから逃げてこの「さいはての家」にたどり着いています。「かざあな」で、大家さんが「逃げる、引き返すって判断は、時に現状維持の何倍も勇気がいるんだ…ちゃんと逃げて生き延びた自分を、褒めなよ、少しは…」と話します。逃げることも時には必要、人に頼ることも必要なことで、逃げる自分を肯定してもらえることっていいなって感じました。全体的に、不穏なストーリーだけれど、いろんな事を考えさせられました。
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おんぼろ庭付き一軒家に、逃げるようにして仮住まいしている人達の話し。時々、主人公達の妄想と幻視が入るから何処が現実に起こった出来事?か迷う。
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築50年ほどの古い庭付き戸建て住宅を舞台にした連続短編集。 駆け落ちした不倫のふたりを描いた「はねつき」 同級生の男ふたりが暮らす「ゆすらうめ」 新興宗教の教祖になった女性を描いた「ひかり」 社長令嬢の姉妹を描いた「ままごと」 働き盛りの単身赴任の男性を描いた「かざあな」 5...
築50年ほどの古い庭付き戸建て住宅を舞台にした連続短編集。 駆け落ちした不倫のふたりを描いた「はねつき」 同級生の男ふたりが暮らす「ゆすらうめ」 新興宗教の教祖になった女性を描いた「ひかり」 社長令嬢の姉妹を描いた「ままごと」 働き盛りの単身赴任の男性を描いた「かざあな」 5作の作品のどれもが 本来の自分を取り戻そうと、苦しみ逃げようとする自分と向き合い闘う姿が描かれており 主人公に憑依した気持ちで読めた。 何が「本来の自分」なのかを問うときりがないが 今の自分を終わらす、さいはての家。 リスタート。
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