1,800円以上の注文で送料無料

さいはての家 の商品レビュー

3.7

42件のお客様レビュー

  1. 5つ

    9

  2. 4つ

    12

  3. 3つ

    16

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/04/30

築45年を超えている庭付きの賃貸の物件。そこに住んだ、歴代の住居者たち5つの話。 一つの家には歴史がある。そして、ここは不思議に何かから逃げてきた人たちが集まる家だった。 私は姉妹で住んでいた話の「ままごと」にぐっと心を持っていかれた。分かってもらいたいけど、どんな言葉を使ったら...

築45年を超えている庭付きの賃貸の物件。そこに住んだ、歴代の住居者たち5つの話。 一つの家には歴史がある。そして、ここは不思議に何かから逃げてきた人たちが集まる家だった。 私は姉妹で住んでいた話の「ままごと」にぐっと心を持っていかれた。分かってもらいたいけど、どんな言葉を使ったら、私のこの気持ちがちゃんと共有されるんだろう。取り繕うでもなく、自虐を言いたい訳でもなく、ただただ、分かって欲しい。でも、感覚として分かることを、言葉というツールに乗せて、誰でもが分かる比喩で伝えるということがどうしてもできない。そんなとき、ふっと自分が自分で作っていた柵を解放できたらどうなんだろう。 ―逃げる、引き返すって判断は、時に現状維持の何倍も勇気が要るんだ。そこで逃げられないで、死んじゃう人もいる。ちゃんと逃げて生き延びた自分を、褒めなよ、少しは。― とりあえず、「さいはての家」に私も逃げたい。と思うくらいに、私にとって「さいはての家」という言葉は、今の私にはとても甘美な響きに聞こえてしまった。

Posted byブクログ

2022/02/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

古い貸家に辿り着いた人々。人生に躓いた者たちをただ受け入れる家と庭。そんな5篇の連作短編。 穏やかでない話ばかりなのに共感する部分が多く、自分とそう遠くないのかもしれないと思える。何も特殊な人生じゃないかもしれない。きっと皆そうやって生きているのだ。 『ひかり』の文章の美しさに、言葉を何度も目で追ってしまった。名前を忘れ、影法師の語る女たちになっていくその曖昧さに、死に近づくとはこういうことなのだろうかと考える。そして地獄に足を伸ばす様がグロテスクで美しい。狂うのはなんと甘美か。 住人たちが家に残していく物が、マイナスなものではなく前を向いた印であり、ここで暮らした記念のようでもあって、その存在が感傷を誘った。そういうものもすべてを飲み込んだ家に様々な思い出が生きていて、その一つ一つに惹かれた。

Posted byブクログ

2022/01/23

何かから逃げてきた人が行き着く家をめぐる、連作五編。 彩瀬さんの語りが好きだな〜としみじみ。 スロウで芯の通った、読みやすいけど密度は落ちない感じがします。

Posted byブクログ

2022/01/10

ゆすらうめのお話が一番おもしろかったです。他のお話もおもしろかったけど、同じ家でこんなに事件が起こるものなの?と疑問に思ってしまいました。

Posted byブクログ

2021/06/29

一軒の古い家を舞台に、いろんな人が住んでる様子を描いてる。 最初の話が衝撃すぎて、他があまり頭に入らなかった。生きているネズミがゴミ箱の中でカサカサ動く、とか。 少し苦手かも。

Posted byブクログ

2021/05/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ちょこちょこと、急に刺し込まれるみたいにすきってなる部分が散見していた。 トータルすると「かざあな」が好み。 ズガンてやって来る蛇というモチーフとかそういうものから来る雰囲気とか、旦那さんの性格とか、向き合うことにした最後まで熱さがないところとか。 なんか空気がひやっとしているのも良い。とても蛇らしい。 切った蛇は、鞘になりそうだとか連想してふふってなりつつ。

Posted byブクログ

2021/04/20

第一編を読んではっ、これは気持ち悪い方の彩瀬さん作品だと一瞬気持ちが削がれたけれども結局一気読み。大家さんの闇の部分もどうせなら知りたかった。

Posted byブクログ

2021/01/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最初の方のお話の方が面白かった。 サスペンスっぽいのがよかったのに、霊的なのとか幻想っぽいものになってきってしまったのが残念。 あれは時系列って事でいいのかな? 最初の荷物は話しに出てこないさらに前の住人のものだったのかな?

Posted byブクログ

2020/12/15

彩瀬さんは淀んだ水の澱のような人を書くのが最高にうまいなぁと思う(褒めてます)。 物もそうだけど、家、ましてや一軒家ともなれば前の住人たちの生活の跡や念みたいなものが染みついていそう。

Posted byブクログ

2020/11/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人生の危機やいざこざから逃げてきた人が順番に住んでいく、古い一戸建て。それが「さいはての家」、彼岸と此岸の関所のようなこの家に住み着いた様々な人を描く連作短編集。 相変わらずスゲー設定でさらっと怖いことを描くのが上手いなぁ。女っぽさとはまた違う女性特有の匂いをグイグイと感じさせつつ、文章自体はソリッド。女性=柔らかさ、なんてのは男が甘えて考える幻想にすぎないってことがよくわかる。 さて、登場人物たちは何から逃げてきたのか?たぶん世の中のいう「それが常識やろ、当たり前やろ」という価値観。このご時世とみにクローズアップされている「同調圧力」ってやつじゃないだろうか? 人に当たり前を押し付けることの怖さ、今一つ分かってない人が多いと思う。俺だってそういう面がまだまだある。「人は人」をしっかり持てるから「自分らしく」生きていけるという原則をしっかり持っておきたいと切に思う。 そして、ここが難しいのだが「人は人なんだからほっといたれ」と押し付けるのは同調圧力になる…んだろうな。人間関係は難しい…だからひと時のこととはいえ逃げ場所が必要で、「さいはての家」が繁盛するわけである。

Posted byブクログ