さいはての家 の商品レビュー
彩瀬さんは淀んだ水の澱のような人を書くのが最高にうまいなぁと思う(褒めてます)。 物もそうだけど、家、ましてや一軒家ともなれば前の住人たちの生活の跡や念みたいなものが染みついていそう。
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人生の危機やいざこざから逃げてきた人が順番に住んでいく、古い一戸建て。それが「さいはての家」、彼岸と此岸の関所のようなこの家に住み着いた様々な人を描く連作短編集。 相変わらずスゲー設定でさらっと怖いことを描くのが上手いなぁ。女っぽさとはまた違う女性特有の匂いをグイグイと感じさせつつ、文章自体はソリッド。女性=柔らかさ、なんてのは男が甘えて考える幻想にすぎないってことがよくわかる。 さて、登場人物たちは何から逃げてきたのか?たぶん世の中のいう「それが常識やろ、当たり前やろ」という価値観。このご時世とみにクローズアップされている「同調圧力」ってやつじゃないだろうか? 人に当たり前を押し付けることの怖さ、今一つ分かってない人が多いと思う。俺だってそういう面がまだまだある。「人は人」をしっかり持てるから「自分らしく」生きていけるという原則をしっかり持っておきたいと切に思う。 そして、ここが難しいのだが「人は人なんだからほっといたれ」と押し付けるのは同調圧力になる…んだろうな。人間関係は難しい…だからひと時のこととはいえ逃げ場所が必要で、「さいはての家」が繁盛するわけである。
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2020.9.5 はー。彩瀬さんの本て、うっとなる描写も多いけど、やっぱりなんか好きだなあと思う。 人間のどうしようもない部分とか他人に分かってもらえないような諦めとか絶望とかの心の動きが、ひりひりと伝わってくる感じ。 絶望感で終わらないのがまたすき。
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彩瀬まるさんは昨年11月に読んだ『くちなし』以来。その時の感想を見てみると「私の中で評価が定まらないまま、いつの間にやら5冊目です。」と書いていました。そうだな・・・・相変わらず定まりません。 とは言え、傾向は判ってきました。 この短編集もそうですが「正しさ」という呪縛から逃げ...
彩瀬まるさんは昨年11月に読んだ『くちなし』以来。その時の感想を見てみると「私の中で評価が定まらないまま、いつの間にやら5冊目です。」と書いていました。そうだな・・・・相変わらず定まりません。 とは言え、傾向は判ってきました。 この短編集もそうですが「正しさ」という呪縛から逃げ出すというテーマが多いようです。そして描く際には、しばしば天井裏から下がった男の腕(『くちなし』でも別れる男の腕を欲しがる愛人が出て来た)や屋根裏に巣くう蛇と言ったややグロ目の幻想が登場する。もう一つ、やはり「女くさい」(悪い意味では無く「男くさい」の対語ととって下さい)作家さんなのだと。 そのあたりの感性の違いなのか、判るのだけどグサリと来てくれない。私にとってはそんなもどかしさを感じる作品が多いのです。その中で、お人形さんの様だった姉が親の決めた結婚から逃げ出して自立して行く「ままごと」と会社に潰され子育てからも逃げ出す男を描いた「かざあな」は気に入りました。
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彩瀬まるの作品 3冊目 前作同様 とても読みやすく情景が浮かぶのだが・・・グロい!! 訳アリの登場人物たちが辿り着く 古い物件の格安の貸家 駆け落ち、殺人からの逃亡、結婚から逃げた姉妹、不思議な力を持っている老婆 様々な理由で逃げている人たちが吸い寄せられるように この家に住ま...
彩瀬まるの作品 3冊目 前作同様 とても読みやすく情景が浮かぶのだが・・・グロい!! 訳アリの登場人物たちが辿り着く 古い物件の格安の貸家 駆け落ち、殺人からの逃亡、結婚から逃げた姉妹、不思議な力を持っている老婆 様々な理由で逃げている人たちが吸い寄せられるように この家に住まう 登場人物の背景が重く、読者の心に不安を落としていく。 描かれる小道具もうまく使っている。 屋根裏の段ボールの 前の住人が置いていった品 読者は 前の住人を知っているだけに(あぁ・・それか)と 後味の悪さを感じる。さすがだ。 梅雨の夜 じっとりと心も湿らせてみてはいかかがでしょうか。
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駆け落ち、逃亡、雲隠れ。行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹...
駆け落ち、逃亡、雲隠れ。行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」 彩瀬まるさんの小説は、時折ぐっと心に差し込んでくるトゲを持っていると思う。決して甘いだけではないこの現実で私たちが出会うであろう、違和感や寂しさとか。ひりひりとする痛みがちょっと心地よいときもあるし、うーんと距離を置いてしまうときもある。100%相性がいいとは思えないのだけれど、たまに読むと自分の中に巣食う暗闇を掘り出されるような不思議な感覚になるんだよなあ。「かざあな」は希望の光が見えたけど、わりと後味が苦い終わり方だったので、もう少し明るく〆てる方が好きだけど、この作家さんからそのどろっとした部分をなくしたらダメな気もする。うーん難しい。
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連作短編5作。 そこにあるのは絶望ではなく、ひとやすみのような静謐な時間。 逃げきたエネルギー、近隣のホーム、氾濫する植物、住まう人間。 自分たるもの見定める、強烈な生を感じる。
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彩瀬まるさんの本は初めてかな。名前はちらほらと見かけていて面白そうだなと気にはなっていた。 このさいはての家、帯に「この世から逃げたくてしかたがない。それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」もうまさにその言葉通りの内容。郊外に建つ古い借家に住む人たちの遍歴。となりの介護...
彩瀬まるさんの本は初めてかな。名前はちらほらと見かけていて面白そうだなと気にはなっていた。 このさいはての家、帯に「この世から逃げたくてしかたがない。それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」もうまさにその言葉通りの内容。郊外に建つ古い借家に住む人たちの遍歴。となりの介護施設がいい連携。共感と納得の連作短編集だった。 全編面白いのだが中でも、元新興宗教の教祖だった老婦人が住む「ひかり」が面白かった。あとヒットマンとその同級生が住む「ゆすらうめ」も面白い。 派手さはないけど静かに狂っている感じが好きだった。
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なんらかの理由で自分の居場所から“逃げた”人達を描いた5編の連作短編集。描かれるのはいずれも人生に行き詰まった人の姿で、彼らがたどり着いた郊外に建つ古い一戸建ての借家が舞台となる。そこで彼らを待つ運命とは……。こう書くとホラーっぽいけど、特別なことが起きるわけではなく、現実と非現...
なんらかの理由で自分の居場所から“逃げた”人達を描いた5編の連作短編集。描かれるのはいずれも人生に行き詰まった人の姿で、彼らがたどり着いた郊外に建つ古い一戸建ての借家が舞台となる。そこで彼らを待つ運命とは……。こう書くとホラーっぽいけど、特別なことが起きるわけではなく、現実と非現実の境界に踏み止まっているような不思議な小説だった。
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行き詰まった人々が逃げて同じ家につぎつぎに住んでいく五つの物語。 同じ家というのが奇妙な話。 「ままごと(親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹)」と「かざあな(子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男)」が面白かった。 印象に残った文章 逃げる、引き返すって判断は、時に現状...
行き詰まった人々が逃げて同じ家につぎつぎに住んでいく五つの物語。 同じ家というのが奇妙な話。 「ままごと(親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹)」と「かざあな(子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男)」が面白かった。 印象に残った文章 逃げる、引き返すって判断は、時に現状維持の何倍も勇気が要るんだ。
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