息吹 の商品レビュー
何千年前であっても、何千年後であっても、ヒトは悩み、迷い、抗い、流されながら、ヒトと関わり続けるしかないのでしょう…。 素敵な本でしたが、私には少し難しかっです…。
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ヒューゴー賞を4回取ったというSF作家、テッド・チャンの作品集。初めて読んだけど、とにかく圧倒的に面白い。派手さはない。基本的に未来と思われるがいつどこかは分からない日常生活の中で、あくまで自然に人が生きているけど、とんでもない前提があり世界は今と大きく変わってる。それだけに日常...
ヒューゴー賞を4回取ったというSF作家、テッド・チャンの作品集。初めて読んだけど、とにかく圧倒的に面白い。派手さはない。基本的に未来と思われるがいつどこかは分からない日常生活の中で、あくまで自然に人が生きているけど、とんでもない前提があり世界は今と大きく変わってる。それだけに日常との対比が、設定のリアルさを増し、生み出す現象のリアリティが高まっていくという、逆説的な世界観がクセになる。日常的SFでイメージしがちな、不気味さとか、匂わせとか、圧倒的とか、ドライすぎるとかもなく、あくまで淡々と読者を異世界に連れ込む作品。強くおすすめしたい。
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シンギュラリティにより人類をAIが越えていく心配とは、AIロボを人類が我が子のように慈しみ、そのAIロボが親元を離れてどんどん自活する世界なのか!?と具体的な例示すぎて驚くストーリーがありました。自分や家族の人生をすべて保存しては、あの時のあの選択に対し、他を選択した場合といった...
シンギュラリティにより人類をAIが越えていく心配とは、AIロボを人類が我が子のように慈しみ、そのAIロボが親元を離れてどんどん自活する世界なのか!?と具体的な例示すぎて驚くストーリーがありました。自分や家族の人生をすべて保存しては、あの時のあの選択に対し、他を選択した場合といった分岐から検証しなおせるほど学習経験を積んだAIが身近にあるのも嫌だなと感じます。少し嫌な感じが残るところがこの本の味わいなのだと思いました。
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2020-07-05 テッドチャン「息吹」読了 9篇全てが傑作、とんでもない。知ってたけど。 全作品、(科学)技術と(自由)意思の絡み合いから来る驚きを描いている。 単に好みで言うと、「ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル」が愛おしくて好きです。
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静かな興奮をもたらしてくれた至高の短編集。暗い話題が続く中で、頭を大幅にリフレッシュさせてもらった。
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2020.8.15市立図書館 →2023年8月ハヤカワ文庫入り、即入手 どこでだったか(新聞書評欄か文芸誌か…作家の対談か、思い出せないのがもどかしいが)、いまおすすめのSF作品ときいて、図書館に予約を入れておいたのが順番まわってきた。しかし、仕事に追われて本のページを開いたのは...
2020.8.15市立図書館 →2023年8月ハヤカワ文庫入り、即入手 どこでだったか(新聞書評欄か文芸誌か…作家の対談か、思い出せないのがもどかしいが)、いまおすすめのSF作品ときいて、図書館に予約を入れておいたのが順番まわってきた。しかし、仕事に追われて本のページを開いたのはやっとおととい。 冒頭の短編「商人と錬金術師の門」からぐっとひきこまれる。表題作「息吹」、掌篇「予期される未来」そして中編「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(←AIの成長やアイデンティティをめぐる物語で打ちのめされた)までなんとか読み終えてあえなく返却。次に借りられる日はなかなか来ないだろうから、もう単行本を買うしかない。 そうこうしているうちに、SNS上の「このハヤカワ文庫がすごい総選挙」で、この寡作と言われる作家の第一作『あなたの人生の物語』が堂々トップとなり、これももうさっそく読むしかない。 長らく「(空想)科学小説」という訳に引きづられてか「SF」を敬遠してきたけれど、去年であった北野勇作といい、松崎有理といい、実はSFがかなり好きなのかもしれないと思えるようになってきた。考えてみれば清水義範もパスティーシュの前にSF出身であったし、哲学や人間探究とボーダーレスな感じのSFはそこらの純文学や恋愛小説よりずっとおもしろい。 2020.10.10市立図書館(再) 意外と早く再度借りることができたので、続きを読み終えることができた。後半では書記言語の獲得と脳の記憶のアウトソーシングを絡めて「正確さ」と「正しさ」を考えさせる「偽りのない事実、偽りのない気持ち」が圧巻だった。短いながら「デイシー式全自動ナニー」も考えさせられた。最後の並行世界・多世界解釈をベースにした「不安は自由のめまい」を含めて、人の知性への信頼と期待、あたたかさが感じられ、人間について深く考え理解することをたすけてくれそうなすぐれた作品ばかりで、寡作なのも大いに納得できる。たぶん、新作を待ちながら何度読んでも都度発見や学びがあるだろうから、むしろ寡作なぐらいでちょうどいい。借り物で読了したとはいえ、手元に愛蔵したい一冊。 2020.11.11 この本を読みたい本リストに加えたきっかけは、3月にネット上で読んだ対談だったことがわかった。 菅付雅信×山本貴光「AIを魔術化しないために」 後編 コンピューターに田舎道を歩かせること https://kangaeruhito.jp/interview/13110
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『しかしなんといっても、いちばん一般的なのは、給気所に残って社交を楽しみ、その日の出来事について友人や知人と語り合ったり、また満杯になった肺を話し相手にさしだしたりすることだろう。厳密な意味での空気共有とは呼べないにしろ、われわれの空気すべてがおなじ源から発していると実感すること...
『しかしなんといっても、いちばん一般的なのは、給気所に残って社交を楽しみ、その日の出来事について友人や知人と語り合ったり、また満杯になった肺を話し相手にさしだしたりすることだろう。厳密な意味での空気共有とは呼べないにしろ、われわれの空気すべてがおなじ源から発していると実感することで、仲間意識が生まれる』ー『息吹』 どれも少しずつ形式の異なる文章ではあるけれど、全ての作品に貫かれているものは現代社会に対する警鐘の響き。それも近頃流行りの皮相的な環境論者の吐く感情的な批判ではなく、人間というものの本質を深く考えた未来予想。チューリングが思考をコンピューティング・マシーンで置き換える可能性を提示したのとは裏腹に、ソリッド・ステートな技術では越え得ないものとは何か、それは何故越えられないのか、そんな問いが投げ掛けられてゆく。時として、そこには一神教の影がちらつくが、根源的な問いを連ねていった先に見つかるマトリョーシカのような無限退行、そこから更に広がる新たな問いという構図は、どうしても創造主というものを連想させる構図なのかも知れない。「何故」に対する答えはどこにもないようでもあるし、未知の存在を信じてしまえばそれで解決するもののようでもある。 表題作の「息吹」は、有機体としての生物である人間と陰陽を為す存在による物語だが、そこで問いかけられる「何故」は本質的に「自己意識」を持つものに共通の問いでもある筈だ。考えてみれば、本書に収められた全ての物語に共通する問題意識は「自己」ということに還ってくるものなのかも知れない。「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」や「デイジー式全自動ナニー」等は、直喩として、我々を我々たらしめいているものの本質を探ろうとする試みに関する物語だ。我々は我々の本質を非物質的なものだと信じている。しかしそれが何なのか、どのようにして働き得るのかを語ろうとする時提示されるものは、往々にしてどこまでも具体的な「物」に置換されてしまう。非物質的な何かを、明確に語るための言葉、技術を我々は持たない。限界が言い尽くされた感のある「還元主義」も、「理解」の意味を変えてしまいつつある「人工知能」も、その非物質的な本質の存在を説明することは今のところ出来ていない。そこにあるのはアウトプットの模倣以上のものではない。そのことをテッド・チャンは空想科学小説を通して鮮やかに示して見せる。そして我々の認識する「理解」というものが如何に皮相的なものであるかについても。
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こんな未来は望んじゃいない、と思うような未来が描かれています。でも、過去の人がちょうどこんな感じの今を望んでたのか?と思うと、やっぱり無視できない。 結局は、いじわるで、でも必要な思考実験なのかなと。。ビジネスで言えば、どんな新サービスにも仮のリスクを想定した対処訓練が必要なよう...
こんな未来は望んじゃいない、と思うような未来が描かれています。でも、過去の人がちょうどこんな感じの今を望んでたのか?と思うと、やっぱり無視できない。 結局は、いじわるで、でも必要な思考実験なのかなと。。ビジネスで言えば、どんな新サービスにも仮のリスクを想定した対処訓練が必要なように、未来にも同じく思考実験が必要なのかなという感想を抱きました。 (しかし、同時にSFは実世界とは乖離しているなぁという感も…) どの短編にも概ね通底しているのは、人の弱さ。 人生経験を積めば積むほどよく理解できる、痛切な弱さ。割り切れない弱さ。優柔不断さ。 やめちゃえば良いのに、と思うのは、第三者だから思えることなのか。でも、やめられないのも気持ちとしてはわかる不思議さ。 これは「人間の心の弱さ」を描いているものだけど、結局人間はそれを意思として克服できるのか。その難しさや微妙さが本著で描かれていて、だからこそ本著の中では答えが明確には示されないのかな、と思いました。 読解力が高い方なら本著は満点なのでしょうが、個人的には、本著は抽象論と物語の中間地点のような散文的な文体で、タイムスパンがどれも長くて難しい。 あと、オチはちょっと弱いかなと(全てのラーメンにラーメン二郎感を求めるんじゃないよ、という指摘はあろうかと思いますが。)。 加えて、作中の演出だと言われればそれまでですが、固有名詞が多く、少し読みづらい印象を受けました。(対象層がちょっと上なので、理解度も高い層を想定してるんだろうかなと。。) ただ、無神論者だけど、良く生きようとしている著者の誠実さというか、しにしさと言うか、とても真っ直ぐな意思の塊のようなものを受けた感はあります。 あと、翻訳は優秀で、言語の壁は感じませんでした。 現代SFを語るなら、やはり本著は外せないのでしょうか。
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テクノロジー的に起こりそうなこと、ビジネス的に起こりそうなことにくわえ、道徳的に起こりそうな変化が記述されていた。価値観を揺らがされるかんじがしました。
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夏になるとミステリーやSFを読みたくなる 評価も高く、書店で散々見かけて(装丁的にも)気になっていたこちらをチョイス こちらは9篇からなる短編集 設定や、ストーリーを見せる角度が凝っている ありそうでなさそうなストーリー展開 この際どい辺りを攻めているのが魅力である 印...
夏になるとミステリーやSFを読みたくなる 評価も高く、書店で散々見かけて(装丁的にも)気になっていたこちらをチョイス こちらは9篇からなる短編集 設定や、ストーリーを見せる角度が凝っている ありそうでなさそうなストーリー展開 この際どい辺りを攻めているのが魅力である 印象的で気に入った作品のみフォーカスを… 注)気を付けて書きますが、若干のネタバレを含むかも… ■商人と錬金術師の門 「タイムマシン」であり、「どこでもドア」でもあるようなストーリー しかしながら、「過去を変えられない」、「かつ自己矛盾のない単一の時間線しか存在しない」これが重要なポイントとなる ある意味この条件を元に考え出されたストーリーなのであろう 確かに辻褄の合うストーリーになっている! そしてこの話はタイムマシンのありがちな悲劇ではなく、ハッピーエンドへ展開する そこには人間の過去を受け入れ、乗り越えていく姿が 過去も未来も変えられないが自分を知り、その物語を生きることによって教訓を学ぶ バグダッド、カイロの神秘で美しい風景と相まって素敵な作品である ■息吹 「われわれは毎日空になった2個の肺を自分の胸郭から取り出し、空気をいっぱい満たした肺と給気所で交換する ここは憩いの場でもあり、社交場でもある しかし忙しい時や、ひとりでいたい時は保管場所で作業もできる」 ああ、よかった(笑) こういう社交場が苦手な人もいるからね! …いやぁ、のっけから面白く、妄想が膨らむなぁ こういう場所で、地域社会が築かれていくのであろう 肺の外観は全て同じアルミニウムの円筒 ある肺がどこからやってきて、どこまで行くのか…? ニュースやゴシップとともに肺も地域から地域へ渡って行く… あるとき研究者である主人公は時間の流れに違和感を覚え、嫌な憶測に捕らわれる そこで彼がとった行動… これがまたビックリするような奇策なのである! そしてついに彼は現実を知ってしまうことになるのだが… 生命の真の源を理解し、どのように生命が終わるか 宇宙と生命を感じる作品 ■ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル この本のなかで一番心を動かされた作品だ AIとAI開発に携わる人たちの話し ありがちなテーマ 何が幸せで何が正しいのか 考えさせられる AIは学習し、成長し、自我も芽生える 卑猥な言葉を覚えたり、複写されて闇市場で売られたりする 人間は都合が悪くなれば勝手に「停止」することで、なかったことにできる ここではAIも家族のように接し、気長に愛情をもって教育しないとAIは成長しない 近道などないのだ 人間の都合ばかりではことは進まない そこまで辛抱強くAIに向き合える人間は少ない 結果AIを皆手放し出す 残されたAIはどうなるか… また次世代AIや新しいテクノロジーが開発されていくと、どうなってしまうのか… 未来に起こりそうな課題が山積している またAIの好きなようにさせることが正しいのか(幸せなのか)、AIのまだ気づいていない能力を気づかせてあげるため、学習させることが正しいのか(幸せなのか) 子供に対する教育と何がどう違うのだろうか… 最後にAIに対して彼らがしたことは、何がAIにとって良かったのだろうか いや、このライフサイクルの全く異なるAIとともに生きる人間にとっても、どう接することが幸せなのだろうか 様々な角度から多くのことを考えさせられた 同じようにAIに深い愛情を持った、2人の人物の出した答えは同じなのか…⁉︎ はたまた… しかしこのタイトルわかりづらくないですか?(英語の元タイトルも同じなのだ) いつもと違う視点、思考回路を使うことができ、面白い体験となった たまにはSFも良いものである 特にここ数年でテクノロジーが進化し、ついていけなくなりつつあるので、頭を錆びさせないためにもSFは必要かも 10年くらいまでにSFを読んだ時に感じなかったもっと切実な何かを感じるようになった 時代の変化だ! テッド・チャン氏の作品ははじめだが、人間愛をとても感じた テクノロジーが進み時代が変わっても、変わらない人の心を信じる姿が垣間見れ、なんだかホッとできた
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