息吹 の商品レビュー
SF小説の短編集。 世の中ではとても評価されているが、個人的にはピンとくるものがなかった。こればかりは感性なので言葉で表現するのが難しいが、何故か自分にはハマらなかった。 ベストセラー的な小説がハマらなかったことは今までなかったので自分でも少々驚いたが、こういうこともあるのが本の...
SF小説の短編集。 世の中ではとても評価されているが、個人的にはピンとくるものがなかった。こればかりは感性なので言葉で表現するのが難しいが、何故か自分にはハマらなかった。 ベストセラー的な小説がハマらなかったことは今までなかったので自分でも少々驚いたが、こういうこともあるのが本の世界の楽しさなのかもしれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
# 息吹 寓話的な掌編も面白いけど、人間ドラマをきちんと盛り込んだ中編(ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル、不安は自由のめまい)が特によい。また映画化されるんじゃないかな。 最近読んだ日本のSFは「なめらかな世界と・・・」だけだけど、明らかに品質が違う。 中国SFだからよいというものでもなく(そもそもこれは中国SFではないのかな?)、「荒潮」はサイバーパンクの世界で遊んでいるだけのような感じだったし。 またゆっくり読みたい。 ## 商人と錬金術師の門 20年を行き来できる輪っかの話。タイムトラベルもの。昔のイラン、エジプトが舞台。 タイムトラベルをしても過去も未来も変えることはできないが、より深く知ることはできる、というのがよい。 ## 息吹 広大だが閉鎖されている空間の中で生きている人間のような何かの話。大気と肺の気圧差で呼吸をしているが、呼吸すること自体が気圧差を小さくする効果があるため、いずれ平衡状態に達し、すべて死滅する運命にある。地球環境問題の暗喩のようにも思える。具体的に描写されているものがあまりなく、全体が思念的で面白い。自分の脳(といっても機械のような感じ)を解剖する場面がよかった。 ## 予期される未来 短いがすごく面白い。自由意志と決定論の話。 ## ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル 収録されている中でダントツに長い。テッド・チャン史上最長でもあるらしい。 AIの成長や成熟がテーマになっている。ブレードランナーのレプリカントみたいな人間と区別できないぐらいのAIを想定したときに、教育はどうなっているのだろうということはいつも気になっていた。AIにだって個性や多様性はあるはずだし、結局人間と同じということになるのではないかと。そういう意味で、いろいろ納得しながら読めた。 先の3編は寓話的な構成だったが、これはより人間的。デレクの大人な判断に感服した。 ## デイシー式全自動ナニー なぜか19世紀末から20世紀前半が舞台になっている。なのでSFとはいえ登場するのは妙にメカニカルな育児マシーン。通常人間が機械を育成するが、機械に育てられた人間の子供はどう育つかという話で、人間と機械のコミュニケーションがテーマ。 ## 偽りのない事実、偽りのない気持ち 生きている間のすべてを記録して、外部記憶として無意識に取り出せるようにすると、記憶の正確性は高まるのかもしれないが、いいことばかりなのであろうか。自分の過ちを認めるために使うといいというのは確かにそうかもしれない。 ## 大いなる沈黙 これは何だろう?とにかくオウムはすばらしい。 解説を読むと、あるアートインスタレーションで流したテキストらしい。なるほど。 ## オムファロス 神が世界を作ったのが事実で、太古の植物や人間にはそれ以上時代を遡れない証拠、すなわち木の年輪がなくなるポイントがある、最初の人間にはへそがないなどの証拠が存在する世界の話。この設定だけでわくわくする。ただ天文学だけはその設定が成り立たないらしい。そこはよく分からなかった。 ## 不安は自由のめまい パラレルワールドを覗き見て、そちら側の人間と対話できる装置がある話。最高すぎる。 分岐は人間の選択によって起こるものではなく(この辺は自由意志の否定)、量子的な何かの力によって起こり、その力を発生させられるのがプリズムという装置。
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★ゼロです。ごめんなさい。ACクラークさん「幼年期の終わり」といい、私にはこの手の虚構を理解し楽しむ知力が足りない。
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何故SFを欲するのか。 分からないものを分からないままに、 感じる快感。 まさにdon`t think、feel。 ほんのちょっとしか理解出来ないのに、 それでもKO負けする衝撃波。 予言機が、将来にわたって開発されないことを 切に願う。いや、生きている間に見てみたい。
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このSF短編集はヤバい。 刺激的過ぎて、読んだ後内容を反芻して考えていると鼻血が出そうなくらい興奮する。 したがって、頭が冴えて眠れないときの寝酒代わりにはならない。 反対に、疲れて眠い時には、内容が難しいから読みながらよく眠れてしまい、眠気覚ましにはならない。 図書館で借りた...
このSF短編集はヤバい。 刺激的過ぎて、読んだ後内容を反芻して考えていると鼻血が出そうなくらい興奮する。 したがって、頭が冴えて眠れないときの寝酒代わりにはならない。 反対に、疲れて眠い時には、内容が難しいから読みながらよく眠れてしまい、眠気覚ましにはならない。 図書館で借りたんで、限られた時間の中、貧しい理解力をもって読んだので、消化不良の部分アリ。 ぜひ購入して再度読みたいと思った。 「商人と錬金術師の門」 評価5 深い。相対性理論に矛盾しないタイムトラベルの話。たとえ過去を変えられなくても、捉え方で幸せになれるものなのか? ー なにをもっても過去を消すことはかないません。そこには悔悛があり、償いがあり、赦しがある。ただそれだけです。けれども、それだけでじゅうぶんなのです。 「息吹」 評価5 ありふれない「死」と、有限の未来。 「生きているのはなぜだろう。」を彷彿させる内容。 人間は秩序を消費し無秩序を生成している。 つまり、宇宙の秩序の無秩序化こそ生きる使命。 でも、もし我々の身体という装置に「死」がなかったら、いつかやってくる全くの無秩序という状態を、どうやって受け止めるのだろう? 「予期される未来」 評価5 自由意志は存在しない。 ではなぜ決定(するフリを)するのか? 「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」 評価4 オンラインと筐体を行き来して成長する人工生物(ディジエント)の話。 ディジエントと人とのセックスは少し気持ち悪い、と思ったけど…将来的にはそんなこともあり得るのか…もしれない。 「ディシー式全自動ナニー」 評価4 機械じかけの子育て… 「偽りのない事実、偽りのない気持ち」 評価4 歳をとったからか、ライフログ的なものがほしいとよく思う。忘れることが上手になり、過去の事実がますます曖昧になっていくから。 情報が漏洩するんじゃないかとか、もし運営会社潰れたらログは利用できなくなるんじゃないか、とか考えてしまう点もあって活用できてないのだけど… まあ、ブクログはある意味、ライフログだな。 偽りのない気持ちで書いている。 読み返して赤面することが多いけど。 「大いなる沈黙」 評価4 「フェルミのパラドックス」と絶滅しつつある種のオウムについて フェルミのパラドックス…地球外文明の存在の可能性の高さと、そのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾。「三体」の中でも大きなテーマになってる。 「オムファロス」 評価5 神は天地創造を起こしたが人類がその目的ではなかったことが、証明されてしまった世界を描く。 「不安は自由のめまい」(←タイトルが素敵!) 評価5 人生の分岐において違う選択をしている自分。 そんなもう一つの人生を見たいか、と問われると、僕は見たくない。
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ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル。 ロボットは子供のようにみなしがちだ。 人格がなく追従する無邪気な存在。 ある日、自我を持ったら。 自分の子供が、性や死について目覚めるような感覚。 感情移入することは正しいことなのか。 それは、当人とロボットの間に閉じられた関係...
ソフトウェアオブジェクトのライフサイクル。 ロボットは子供のようにみなしがちだ。 人格がなく追従する無邪気な存在。 ある日、自我を持ったら。 自分の子供が、性や死について目覚めるような感覚。 感情移入することは正しいことなのか。 それは、当人とロボットの間に閉じられた関係か、 社会を形成できるか。 息吹。 自分自身を分解することで世界の仕組みに気づく。 世界の偉業がなしとげられるという奇跡。 自分自身という「メカ」が成立しているという奇跡。 人は、言葉を通じて空気を、息遣いを共有することができる。 たとえ当人が死のうとも。 ものづくりとは、「息吹」を込める行為。
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短編集9編 短編集ながら一つ一つが珠玉のような作品で,単にアイデアが緻密で突拍子もなく素敵だと言うだけでなく,生き方や子育てなど心の問題にも深く切り込み,とても考えさせられるものばかりだった.「商人と錬金術師の門」「不安は自由のめまい」が特に良かった.
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SFは普段かなり選り好みしてますが、結構好きかも!と感じました。 どの作品も考えさせられる内容で、「これが現実世界だったら…?」「私がもし登場人物の立場になったら…?」と非現実世界の物語りなのに、思わず感情移入する場面もちらほら。 物語りを「読む」じゃなくて、「見に行く」感覚でペ...
SFは普段かなり選り好みしてますが、結構好きかも!と感じました。 どの作品も考えさせられる内容で、「これが現実世界だったら…?」「私がもし登場人物の立場になったら…?」と非現実世界の物語りなのに、思わず感情移入する場面もちらほら。 物語りを「読む」じゃなくて、「見に行く」感覚でページを開いていました。だからか、物語りの内容を結構鮮明に記憶できて、なかなか読み進められない状況で、久しぶりに本を手にしても直前までの話を簡単に思い出せました。 ちなみにプレゼント企画でまさかの当選でした。ありがとうございました!それなのに諸事情により、上記の通りなかなか読み進められず、レビューが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
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待望のという言葉がぴったりの作品集。「あなたの人生の物語」を読んだときよりはSFを読みなれていて、素直に楽しめた。表題作の「息吹」は、気圧の高低で空気の流れが生まれると知ったときに、なぜ世界はならされてしまわないのか不思議だった小学生の自分を思い出した。物語性の強いものが好きなの...
待望のという言葉がぴったりの作品集。「あなたの人生の物語」を読んだときよりはSFを読みなれていて、素直に楽しめた。表題作の「息吹」は、気圧の高低で空気の流れが生まれると知ったときに、なぜ世界はならされてしまわないのか不思議だった小学生の自分を思い出した。物語性の強いものが好きなので「商人と錬金術師の門」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」が好きだ。SF的なアイデアから着想を得ながら、描かれるのは人間で、逃れられない何かに対峙したときの選択には勇気づけられる。作品ノートや解説まですみずみ楽しめた。
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テッドチャン 「息吹」https://hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014399/ 読んだ。おお、おもしろかった。がまさかSF短編集とは。タイトルと雰囲気だけで決めるのでいつも中身を知らずに読み始めてこれは実は文芸長編だと思って買っ...
テッドチャン 「息吹」https://hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014399/ 読んだ。おお、おもしろかった。がまさかSF短編集とは。タイトルと雰囲気だけで決めるのでいつも中身を知らずに読み始めてこれは実は文芸長編だと思って買った。息吹という単語からSFを予想する人いる?思索的できれいに落ちないところもよかった(おわり
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