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おやすみ、東京 の商品レビュー

3.9

103件のお客様レビュー

  1. 5つ

    20

  2. 4つ

    48

  3. 3つ

    26

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2023/11/12

久しぶりに吉田作品へと帰ってきた。 クラフトエヴィング商會の装丁も大好き。 目次から楽しめる。 (途中にキーパッドの数字並びがあるのは何故なんだろう…) 表紙を眺め、開き、目次を捲り、本編に入る頃にはもう、読者は深夜の気分になっているから不思議だ。 目次のあちこちに居るカラスも、...

久しぶりに吉田作品へと帰ってきた。 クラフトエヴィング商會の装丁も大好き。 目次から楽しめる。 (途中にキーパッドの数字並びがあるのは何故なんだろう…) 表紙を眺め、開き、目次を捲り、本編に入る頃にはもう、読者は深夜の気分になっているから不思議だ。 目次のあちこちに居るカラスも、作品内に登場する。(こちらはちょっぴり怖い) やっぱり吉田ワールドに登場するネーミングが好きだ。 "調達屋"であるミツキや、松井のタクシー"ブラックバード"、片時町にある"食堂よつかど"…。 (そうか、ブラックバードの松井さんを呼ぶ時に電話をかける。だから目次にキーパッドの数字並びが忍ばせてあったんだね)と、20ページ辺りで気付く。 やっぱり隅から隅まで楽しい作品だ。 「びわ泥棒よ」 吉田さんの手にかかると、何でもない一言がこんなに魅力的に響くのは何故だろう。 他に沢山の心惹かれるフレーズが。 「…「言葉が重なる」という現象がたびたび起こる」であるとか、 「この街の人々は、自分たちが思っているより、はるかにさまざまなところ、さまざまな場面で誰かとすれ違っている」であるとか、 「コーラって、あんなに黒い飲み物だったかしらね」であるとか、 「何らかの目的にしたがってつくられたものーーとりわけ人間がつくる「道具」と呼ばれるものはあらかたそうなのだがーーそうしたものは壊れたときに、ようやく人間に従事することから解放されて、はじめて自由になる」であるとか。 最後の文章は古道具屋イバラギの持論なのだけど、便利を求めすぎた人間(勿論、私も含めてだが)への細やかな抵抗のように思われて、何故か気分が良くなった。 そんな彼の店の"客は減りゆく一方"らしい。 だが、なんといってもピーナッツ・クラッシャー大、中、小。(いや、ただのラジオペンチ) そして小さな奇跡が起こる、"羽の降る夜"。 なんだそれ?と思われた方は是非本作を手に取ってみて下さいませ。 それから、"夜"や"映画館"などの、吉田さんのいつものキーワードも登場する。 いつもといえば、今回の食に関するキーワードは"ハムエッグ定食"と"コークハイ"だ。 キーワードというよりアイテムと言った方が、自分の中ではしっくりくる。 吉田さんが持つ幾つものアイテムの数々。 その中の幾つかが、いつも作中に登場する。 それがまた何故か、とても魅力的で心に染み込む。 私は自分の中に染み込んでくる、その感覚がとても好きだ。 だから定期的に吉田作品に帰ってきてしまうんだ。 魅惑の吉田アイテムの他に、今回はキーパーソンが。 名探偵シュロことマイティ田代! マイティ田代って…笑 こちらも、なんだそれ?と思われた方は是非本作を手に取ってみて下さいませ。 都会の夜に起こる、少し不思議だけど有りそうなお話。 懐かしいAがすぐ近くを通る。あの時○○していれば、Aに会えたかもしれない。 けれどひょんな事から、"あの時"を逃してしまう。 かけようとしていた電話を切ってしまう。 帰ってしまう。 道を間違えてしまう。 たまたま職場を休んでいる。 無論本人達は、"あの時"を逃していることに少しも気付いていない。 ここで二人が出会えたらいいのに…ブラックバードに乗ればいいのに…そう思う読者をよそに、物語はすれ違う。 又は、イバラギとアヤノの会話。 同じ"夢"という単語を使って会話するが、彼と彼女の"夢"は、意味するところが違う。 話しは食い違っているはずだ。 それなのに絶妙に会話が噛み合って…。 「あっちを向いた人とこっちを向いた人が出会うと、二人のあいだにはちょうどいい均衡が生まれる。必ずしも同じ方を向いていなくてもいいのである。」 イバラギの"夢"が、もうひとズレするのもクスリとするところ。 イバラギの営む古道具屋は、クラフトエヴィング商會の『ないもの、あります』みたいな不思議な店だ。 〈二階まであと一段〉を購入したアヤノにも、小さな奇跡が。 なんだそれ?と思われた方は………もういっか。 「びわ泥棒よ」の、何でもない一言が魅力的だと伝えたが、終盤、そのびわ泥棒についても素敵な出来事が。 ジグソーパズルの最後の一片、踏み出すための最後の一段、人はその最後の1つを求める一方で、チラリと"このまま、ここにいたい気もする"と思ってしまったりもする。 でも踏み出せばホラ、ささやかだけどこんなに素敵な出来事が待っていたりする。 すれ違っていた誰かと、出会えたりもする。 そうそう、然り気無く夜空の星達も見えたり見えなかったりと、いい演出をしてくれている。 あとがきにある、"連作短篇の交差点"という呼び名はぴったり。 吉田さんの頭の中をほんの少し覗けるような楽しいあとがきだった。(いつもだけど)

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2023/10/19

晩夏から秋に読みたい一冊。全編夜が舞台の小説。基本的に明るい時間は出てきません。真っ暗。そのため大人な雰囲気が出ています。落ち着いているんだけど、どことなく不思議。でも前に進んでいる、そんな感じです。ただ、登場人物が多く、途中で「アレ?」とつながりが分からなくなってしまいました。...

晩夏から秋に読みたい一冊。全編夜が舞台の小説。基本的に明るい時間は出てきません。真っ暗。そのため大人な雰囲気が出ています。落ち着いているんだけど、どことなく不思議。でも前に進んでいる、そんな感じです。ただ、登場人物が多く、途中で「アレ?」とつながりが分からなくなってしまいました。序盤はそれぞれの事情が断片的に書かれているので話が進まないなという印象も受けます。それなのに、ラストよく回収できたなと驚かされました。わたしが大好きな朝井リョウさんとは明らかに毛色が違う一冊です。 ●夜に働いている人がたくさんいる。 色々な立場で夜に働いている人がでてきます。なるほど、こういうニーズあると思わされました。遠いと思っていた登場人物が最後、おもしろいように繋がっていくのはパズル感がありよかったです。 ●名探偵がミステリアスのようでただの男だった笑 シュロ。タクシーではうまく振る舞って、どういうスパイスを与えるのか?と思ったら。忘れられない人に再会したらいい感じになってしまうとは笑 「やることがある」とかこれで次の旅に出たらおもしろかったのに・・なんて!(コナンの工藤新一的なイメージ笑) ●クラフト・エヴィング商會?! 著者紹介で気になったこの単語。実在しない書物や雑貨などを手作りで作成し、その写真に短い物語風の文章を添える活動をしているそうです。なるほど!それで「イバラギ」がそういう感じなのか!なんというか、センスがないと絶対にできない活動ですね。

Posted byブクログ

2023/08/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タクシー運転手の松井 そのタクシーの常連客で映画会社で働く調達屋ミツキ そこでびわを探した時に出会ったオペレーター加奈子 そして出会うことになる使わなくなつわた電話を回収するモリイズミ 探偵シュロ 11人の若き女優の栄子 映画館を建て直す青年加奈子の弟 バーを開いた前田 古道具屋のイバラギ よつかど定食 それぞれの人物の物語ストーリーがパズルのようにつなぎ合わさるのが感動した。

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2023/08/22

「眠らない都市」とはいえ、午前1時ともなれば、ネオンも届かない暗い場所がいくらでも隠されていて、そんな暗さの中で働き、悩み、語る人々がいるのですね。「車のいろは空のいろ」がきっかけでタクシー運転手になった「松井さん」に幸あれ!

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2023/08/06

ほっこりしたハートフル 人の出会いと縁のあたたかさを感じる 巡り巡り繋がる人々が抱えた蟠りがひょんなご縁で腑に落ちていく。 偶然も人も思いを捨てたもんじゃないなと。 現実そんなにうまくはいかないけど時としてこんなこともあり得るだろう。

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2023/07/24

全てのお話が夜中1時から始まる短編集。 東京に暮らす色んな人の夜中1時から始まる出来事..だけど全てのお話が少しずつ繋がっているのがわかって読んでいてわくわくしました。 夜寝る前に読みたくなる1冊でした。

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2024/01/26

縁のつながりの不思議を感じさせられた。、 東京は広いようで案外狭くて、みんなどこかで繋がっているのでは、、?という気がしてくる。 本を読み進めていくうちに、そこが繋がっていたか〜〜!と、点が線で繋がれていく感覚。 そして、この本を読むときは自然と夜を選んでしまう自分が..- ̗̀...

縁のつながりの不思議を感じさせられた。、 東京は広いようで案外狭くて、みんなどこかで繋がっているのでは、、?という気がしてくる。 本を読み進めていくうちに、そこが繋がっていたか〜〜!と、点が線で繋がれていく感覚。 そして、この本を読むときは自然と夜を選んでしまう自分が..- ̗̀☾⋆ ̖́-

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2023/07/10

少し前の本だがランキングに入っていたのを見て買ってきた。 午前1時の東京を描いた物語。 もう随分と昔、飲み屋を除けば9時には真っ暗になる北陸の田舎町から東京に転勤になって、12時になっても明々とスーパーが開いてるのを見た時には結構なカルチャーショックだった。 午前1時であっても東...

少し前の本だがランキングに入っていたのを見て買ってきた。 午前1時の東京を描いた物語。 もう随分と昔、飲み屋を除けば9時には真っ暗になる北陸の田舎町から東京に転勤になって、12時になっても明々とスーパーが開いてるのを見た時には結構なカルチャーショックだった。 午前1時であっても東京では起きて動いている人はたくさんいるわな。 映画の小道具の〈調達屋〉ミツキ、夜だけ走るタクシーの運転手・松井、よろず相談室のオペレーター・可奈子、使わなくなった電話を回収して回る・モリイズミ、引越し魔の探偵・シュロ、四つ角で食堂を営む4人の女性、元バーテンの倉庫番・前田、オーディションで選ばれ映画の撮影に向けたワークショップ中の11人、下北沢の古道具屋・イバラギ、街はずれの映画館のアルバイトの青年…。 この作者さん、お得意の多くの登場人物が縦横につながる趣向だが、本作はあとがきにあるように、その頭の中にあるいくつもの個性的な人々の物語の存在を思わせ、その断片が街角で交わっていくようなところが面白い。 そこにミツキが調達しなければならない小道具にまつわる話やそれぞれが心に抱く会いたい人への思い入れなどが散りばめられて様々な色合いの話が楽しめた。 中でも、電話を引き取りに行ったモリイズミが不穏な会話にゾッとする「ベランダの蝙蝠」、食堂の4人の一人アヤノがイバラギと夢の中にいるようなやり取りをする「青い階段」、すべてが穏やかに収束していく「最後のひとかけら」が好きかな。

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2023/06/01

東京という街は広いようでいて、狭い。みんなどこかで繋がっている。そのことを深夜1時の出来事を軸に、教えてくれる本。

Posted byブクログ

2023/06/01

“繋がり”を感じれる本だった。 ひとパート読む終わるごとに、深く息をしたくなる(してた笑)、味わえるお話。

Posted byブクログ