時間は存在しない の商品レビュー
ループ量子重力理論の提唱者であるイタリア人理論物理学者によるもので、時間という概念を考察する。 まず低地と高地での時間の進みの違いから始まり、4光年離れた太陽系外惑星プロキシマ・ケンタウリbにいる姉とこちらとで対応する現在はあるのかという話になり、時空の時間的構造は層的なものでは...
ループ量子重力理論の提唱者であるイタリア人理論物理学者によるもので、時間という概念を考察する。 まず低地と高地での時間の進みの違いから始まり、4光年離れた太陽系外惑星プロキシマ・ケンタウリbにいる姉とこちらとで対応する現在はあるのかという話になり、時空の時間的構造は層的なものではなくたくさんの光円錐によって形作られるものだとする。絶対的な時間という概念がニュートンが主張したもので、我々が思っているほどに自明のことではなかった。量子重力理論によれば時間変数は存在しない。 他にも漠然と連続しているように感じている時間も、量子力学的にはプランク時間という最小のものが存在している、出来事のネットワーク、熱時間、宇宙のエントロピー、我々は世界の特別な部分集合に属しており熱時間のある特定の方向におけるエントロピーが低い、すなわち時間の方向性は視点のもたらすもの、エントロピー増大の法則に従う物質的なプロセスが生み出した記憶の時間的非対称性が時間の経過という感覚を生み出す、といった論が展開される。 引用される古典などからも著者が物理学だけでなく幅広い教養を持つ人なのだなとわかる。そういうわけで時間は複雑で重層的な概念で、時間は存在しないという邦題はミスリーディングな気もするが。
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時間に関する本ではありつつも数式は皆無であり、哲学寄りの本だと思いました。 翻訳本ですが無駄にボリュームは多くなく、個人的には良書だと思いました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
物理学(量子力学)の観点から時間の存在について語った本。絶対的な「時間」は存在せず、人間が認識する特殊な状態を「時間」と述べている。 量子力学と哲学を掛け合わせた本であり、どうしても難解ではあるものの、ところどころに今までの要約を挟んでくれているため最後まで食らいついていくことができた。 分野を統合し真実に向かっていく姿勢自体がとても参考になるものだった。 もちろん内容も非常に興味深く、絶対的だと感じていた「時間」でさえ疑い批判できるものだということ、そしてそれは人間の認識と深く関わっているものだという点に驚かざるを得なかった。
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時間という感覚は、独立した変数として存在しない。互いの系により相対的に決定されるものであり、時間の流れはエントロピー増大の法則により説明される一つの変数である。それを時間の流れとして認識しているのは我々の認知がそのように理解するようになっているからだ。時間とは個々にとっての物語で...
時間という感覚は、独立した変数として存在しない。互いの系により相対的に決定されるものであり、時間の流れはエントロピー増大の法則により説明される一つの変数である。それを時間の流れとして認識しているのは我々の認知がそのように理解するようになっているからだ。時間とは個々にとっての物語であり、絶対的なものではないが、それ故に尊い。門外漢の私が本書を読んで到達した理解です。
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時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではないし、過去から未来に流れていくものはない。ということがなんとなく理解できるようになってきた。さらに本書を読んで、さらに理解を深めることができた。
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時間は存在しないことを相対性理論やエントロピーの法則などの物理学を用いて説明していくので難しいところが多く、完全に理解できたとは言えない。 我々は時間という感覚を持つのは記憶が絡んでいるからという説明は面白いなと思った。(過去と未来の非対称性は記憶によって作られる的な)
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読後、書かれていることが分からない不安しかなかったのですが、最近スカイツリーの展望台と地上で時計の進み方の違いを計測したというニュースを見て、この本を思い出せただけでも良しとしたいと思います。
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1960年代にホイーラーとドゥイットは宇宙全体の振る舞いを扱う量子論を、時間を含まない方程式で記述した。量子論的な宇宙は時間が経つにつれ膨張するという形ではなく、宇宙の大きさと物質の状態の相互関係で表された。 カルロ・ロヴェッリの議論はその延長戦上にあり、宇宙を記述する時間変数...
1960年代にホイーラーとドゥイットは宇宙全体の振る舞いを扱う量子論を、時間を含まない方程式で記述した。量子論的な宇宙は時間が経つにつれ膨張するという形ではなく、宇宙の大きさと物質の状態の相互関係で表された。 カルロ・ロヴェッリの議論はその延長戦上にあり、宇宙を記述する時間変数は存在しない、という話が本の中で説明されます。 我々人間は、時間という絶対的なものが宇宙に流れているように考えてしまいがちだが、そもそも平原と山では時計で観測する時間の流れすら異なっているように(これも驚き)、絶対的なものではない。外側から見た宇宙全体における時間構造と、自分たちがその一部であり影響を受けている世界の内側で観察する時間の法則は異なるってことで、つまり、我々が知覚している時間感覚は、環世界における時間の流れみたいなものなのだと理解。 では、この時間感覚を作ってるものは何か?という議論になると思いますが、それは熱力学やエントロピーの概念を使って説明されます(熱力学の第二法則の不可逆性、そして低いエントロピーを地球に供給する太陽、そしてさらに太陽もさらに低いエントロピーの原始太陽系星雲から誕生し、さらに遡ると宇宙の最初の極めてエントロピーが低い状態に行き着く...というような宇宙の始原の話) ということで間違ってるかもですが、自分の理解は大体こんな感じ。書評とか読むとわかりすいとか書いてあったけど十分難しかったです(汗。でも、物理学にありがちな数式びっしりみたいなことはなく、哲学に近い説明なので自分のようなド文系でもある程度読めたかな...と思ってます。
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世界中でベストセラーになっている作品、「時間は存在しない」という考察を、数式などを極力使わず(出て来るのは一つだけ)文学的に書き切ったカルロ・ロヴェッリによる一冊。数式を使わないとはいえ内容はかなり難解で哲学的、物理学を学んだ人ではないと全部の理解は困難かなと思った。時間が存在し...
世界中でベストセラーになっている作品、「時間は存在しない」という考察を、数式などを極力使わず(出て来るのは一つだけ)文学的に書き切ったカルロ・ロヴェッリによる一冊。数式を使わないとはいえ内容はかなり難解で哲学的、物理学を学んだ人ではないと全部の理解は困難かなと思った。時間が存在しないのではなく、宇宙人類共通の絶対時間が存在しないということか。
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「時間」という人類の有史以来の最大の謎に物理学の範疇を超えて、哲学、芸術、脳科学に至るまであらゆる視点で考察される。現在の量子力学界で、「超ひも理論」と並んで有力な「ループ量子重力理論」をもとにして様々な時間に関する独特の性質と思われてきたものを再定義する。時間が流れていると感じ...
「時間」という人類の有史以来の最大の謎に物理学の範疇を超えて、哲学、芸術、脳科学に至るまであらゆる視点で考察される。現在の量子力学界で、「超ひも理論」と並んで有力な「ループ量子重力理論」をもとにして様々な時間に関する独特の性質と思われてきたものを再定義する。時間が流れていると感じるのは出来事が相互関係の結果によって生じているというのは新鮮な視点に感じられた。また、宇宙の始まりが低エントロピーのように考えら得るのは、私たちがいる宇宙の物理系から眺めた場合であって他の物理系を考慮に含めると実はそうではないという考えは、人間が結局は自らの主観の範囲を超えて思考することは極めて難しいことなんだなと感じた。著者の主張は最先端の学界でも主流ではないものもあるらしく直感として理解できなかったものもあったが、「時間」というブラックボックスな概念に新たな視点を与えてくれた。
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