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熱源 の商品レビュー

4.1

347件のお客様レビュー

  1. 5つ

    118

  2. 4つ

    137

  3. 3つ

    66

  4. 2つ

    5

  5. 1つ

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2022/08/12

最近は読んだ本については、なるべく短くても感想を残すことを目標にしている。 とは言え、どうも感想が書けない時がたまにある。 理由は何パターンかあるのだが、その中の1つに、素晴らしい作品だと思うのに、物語の量や熱が膨大で、逆に上手く感想をまとめられない時、と言うことがある。 この作...

最近は読んだ本については、なるべく短くても感想を残すことを目標にしている。 とは言え、どうも感想が書けない時がたまにある。 理由は何パターンかあるのだが、その中の1つに、素晴らしい作品だと思うのに、物語の量や熱が膨大で、逆に上手く感想をまとめられない時、と言うことがある。 この作品はまさにこのパターンで、作品を通して、タイトルにもなっている「熱」が伝わってくるのだ。それに圧倒されながら読み進め、ずっと、悲しみ・怒り・諦念、様々な感情を抱いていたのに、いざ、読み終えると、言葉にならないのだ。ただ、時代の変化と、それに振り回されながらも生き抜いた登場人物達に圧倒されている。 それにしても、自分は知っているつもりで、アイヌの人達の歩んできた道を、あまり知らなかったのだと実感した。

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2022/08/09

ヨーロッパに行く時に、シベリアの上空を通る。基本的に通路側の席を取る私だけれど、たまたま窓側の席に座った時にちょうど夕暮れで、ずっと外の景色を眺めていたことがある。あちこちに湖だか池だか沼だかの水面が夕日に反射して輝き、街と街が道でつながり、車や人家、街の灯がキラキラして見えた。...

ヨーロッパに行く時に、シベリアの上空を通る。基本的に通路側の席を取る私だけれど、たまたま窓側の席に座った時にちょうど夕暮れで、ずっと外の景色を眺めていたことがある。あちこちに湖だか池だか沼だかの水面が夕日に反射して輝き、街と街が道でつながり、車や人家、街の灯がキラキラして見えた。縁もゆかりもない土地なのに、ここにも人の生活があるのだと思うと、郷愁のような気持ちが湧き起こるのが不思議だなと思ったのを覚えている。何故か、この小説を読みながら、あの時の景色や感覚がよみがえってきた。 知らなかったことが多かったので興味深かったし、大国・強国の論理で言語や文化を取り上げられ存在を脅かされながら、尊厳を保つために抵抗したり悩みもがいた人達の姿に胸が熱くなった。 ウクライナの人達のことを想った。

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2022/08/05

アイヌの人々について、今まであまり触れた事がなかったが、少し勉強になった。南極探検のタロとジロに関連した人だったとは驚いた。

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2022/07/29

「そこには支配されるべき民などいませんでした。ただ人が、そこにいました。」 誰のものでもない自分達の故郷が、外国人たちに踏み荒らされるという理不尽。その中で文明に押しつぶされまいと懸命に生きる人々。生きるための「熱」は人種を超え、時代を超え受け継がれていく。 「黙って見てろ。...

「そこには支配されるべき民などいませんでした。ただ人が、そこにいました。」 誰のものでもない自分達の故郷が、外国人たちに踏み荒らされるという理不尽。その中で文明に押しつぶされまいと懸命に生きる人々。生きるための「熱」は人種を超え、時代を超え受け継がれていく。 「黙って見てろ。あたしたちは滅びない。生きようと思う限り、滅びないんだ。」 極寒の大地を舞台にしながら、 絶えず力強い「熱」を肌で感じる物語でした。

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2022/07/09

(借.新宿区立図書館) 色々な人が出てくるけど主人公は樺太(サハリン)かもしれない。もっとも樺太は日本名だしサハリンはロシア名。元々の住人からはそんな名前はなかったのか?だから「熱源」が題名なのだろうがちょっと題名としてはわかりにくい。あるいは日露(ソ連含む)両国または文明に翻弄...

(借.新宿区立図書館) 色々な人が出てくるけど主人公は樺太(サハリン)かもしれない。もっとも樺太は日本名だしサハリンはロシア名。元々の住人からはそんな名前はなかったのか?だから「熱源」が題名なのだろうがちょっと題名としてはわかりにくい。あるいは日露(ソ連含む)両国または文明に翻弄される人々が主人公か。史実を元にしたフィクションとしてなかなかの作品だと思う。 しかしなぜかソヴィエト・ロシアに関わる本ばかり視野に入ってくるのはなぜだろう。基本は文明とか人類について考えさせられる作品だが、ウクライナ侵略、さらには暗殺という現在の状況についても考えさせられる部分のある本でもある。

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2022/06/29

直木賞受賞作。 会社の読書会で、後輩がこの本を紹介してくれた。 明治維新から第二次大戦にかけて、運命に翻弄される樺太島。一方、大国に挟まれていた19~20世紀のポーランドも似たような境遇である。 まず、樺太島にこれだけの異なる少数民族がいたことを知らなかった。「アイヌ」と一言で...

直木賞受賞作。 会社の読書会で、後輩がこの本を紹介してくれた。 明治維新から第二次大戦にかけて、運命に翻弄される樺太島。一方、大国に挟まれていた19~20世紀のポーランドも似たような境遇である。 まず、樺太島にこれだけの異なる少数民族がいたことを知らなかった。「アイヌ」と一言で言っても、北海道のアイヌと樺太のアイヌは異なる。他民族の共存状態だった島が、支配者によって武力により差別を受け同化させられる運命にある。本作の登場人物たちは、戦争と差別によって不条理にさらされつつも、自らのアイデンティティを絶対に滅亡させないという情熱に突き動かされ、過酷な環境で生きている。この壮絶な生き様を見せつけられ、ところどころで涙が出た。 その情熱は、ポーランド独立運動、アイヌ民族の教育、南極探検隊への志願など、それぞれ異なる形で現れるが、「弱肉強食の摂理の中で戦うのではなく、摂理そのものと戦う。」という意味では同じである。 史実に基づいた話であり、日清日露の戦い、ロシア革命、南極探検など、知的好奇心が刺激され、ところどころでネットサーフィンしながら読んでしまった。アイヌの文化(女性の入れ墨、熊送りの儀式、五弦琴)も興味深い。 大河ドラマにもなりうる長編。 人気の漫画「ゴールデンカムイ」も近いうちに読んでみたい。

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2022/06/14

「降りかかる理不尽は文明を名乗っていた」というのがものすごく腑に落ちました。他民族への同化政策など、第二次世界大戦で終わりかと思ってたけど、最近そうとも言えない情勢で、なかなか変わらないのだなあと、、。

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2022/06/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

帯の「樺太アイヌの闘いと冒険を描く」という惹句から活劇的なエンタメかと思っていたけど、もっと静かで重い、それでいて熱い物語だった。登場人物の多くが実在の人物なので「劇的な最期」という事もなく、淡々と歴史は進んでいく。恥ずかしながらアイヌの歴史にこれまで関心がなかったので、金田一京助の本で読み易そうなのを探してみよう。

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2022/05/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

かなり重たい話ではありましたが、とても興味深く読めました。 太古の昔から人は、争いをして生きてきているのだなと、改めて感じ、考えさせられました。 「もともとこの島はだれのものだったのだろう」と何度となく出てくる言葉が印象的でした。 古いものを手放し、学問をし、快適で便利な生活を手に入れたこの土台が、とても儚いものに感じられます。 生きていく熱を、奪うのも与えるのも、人との出会いなのですね。

Posted byブクログ

2022/05/09

読み応え抜群。今のロシアウクライナ情勢に通ずるところもあり、最初の女性兵士が最後の方で再登場しそう繋がったか!と。さすが。

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