営繕かるかや怪異譚(その弐) の商品レビュー
1巻目を読まずにいきなり2巻目のこちらから読んでしまいましたが、オムニバス形式なので特に支障は無かったように思います。 つまらない訳ではないけど個人的に文章のテンポが合わないのか、カタい印象を受けました。人によってはちょっと取っ付きにくいかも。 収録作『魂やどりて』の人物描写に唸...
1巻目を読まずにいきなり2巻目のこちらから読んでしまいましたが、オムニバス形式なので特に支障は無かったように思います。 つまらない訳ではないけど個人的に文章のテンポが合わないのか、カタい印象を受けました。人によってはちょっと取っ付きにくいかも。 収録作『魂やどりて』の人物描写に唸らされました。こういう人、居るなぁと思いつつそんな人物を淡々と描ききる表現力と観察力はさすが十二国記の作者さんだなぁと。 どんな話でも営繕屋・尾端のやわらかい人物像に救われます。 家=人の暮らす場所、暮らしてきた場所 という図式が好きです。 怪異譚というだけあって日本の昔ながらの怪談のようなどこかじんわり湿った空気を感じさせる雰囲気があるのも良いです、物語に浸ることができます。 はらはらドキドキとか泣ける!とかものすごく読み応えがある作品ではありませんが、ゆっくりのんびり読書を楽しみたいときに手が伸びるタイプの作品かと思います。
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「営繕かるかや怪異譚(その弐)」小野不由美著、角川書店、2019.07.31 323p ¥1,728 C0093 (2020.06.17読了)(2020.06.10借入) 【目次】 芙蓉忌(ふようき) 関守(せきもり) まつとし聞かば 魂(たま)やどりて 水の声 まさくに ☆...
「営繕かるかや怪異譚(その弐)」小野不由美著、角川書店、2019.07.31 323p ¥1,728 C0093 (2020.06.17読了)(2020.06.10借入) 【目次】 芙蓉忌(ふようき) 関守(せきもり) まつとし聞かば 魂(たま)やどりて 水の声 まさくに ☆関連図書(既読) 「残穢」小野不由美著、新潮社、2012.07.20 「鬼談百景」小野不由美著、メディアファクトリー、2012.07.24 「営繕かるかや怪異譚」小野不由美著、角川書店、2014.12.05 「丕緒の鳥」小野不由美著、新潮文庫、2013.07.01 「白銀の墟 玄の月(一)」小野不由美著、新潮文庫、2019.10.12 「白銀の墟 玄の月(二)」小野不由美著、新潮文庫、2019.10.12 「白銀の墟 玄の月(三)」小野不由美著、新潮文庫、2019.11.09 「白銀の墟 玄の月(四)」小野不由美著、新潮文庫、2019.11.09 (「BOOK」データベースより)amazon かつて花街だった古い町の実家に戻ってきた貴樹。書斎として定めた部屋の鏡を何気なくずらしてみると、芸妓のような女が見えた。徐々にその女から目が離せなくなり…。(「芙蓉忌」より)。佐代は『通りゃんせ』の歌が嫌だ。子供のころ、夕暮れの闇が迫る中、怖いのを我慢して神社への石畳の道を走っていると、袴を穿いた鬼に出会い―。(「関守」より)。三毛猫の小春は交通事故で死んでしまった。あるとき息子が裏の古い空家から小春の声がするという。得体の知れない「何か」は徐々に迫ってきて―。(「まつとし聞かば」より)。住居にまつわる怪異や障りを、営繕屋・尾端が、いとも鮮やかに修繕し、解決へと導く―極上のエンターテインメント。 【内容情報】(出版社より) 両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋の書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。やがて貴樹がその女を見ずにはいられなくなり……。(「芙蓉忌」より) 佐代が生まれた家の町の一郭に神社があった。その神社の脇に背戸があり、夕暮れになると暗くて怖い細道だった。まるで『通りゃんせ』の歌のように。あるとき時間を忘れて遊びすぎ、忘れ物を取りにさらに遅くなり、夕暮れの闇が迫る中、怖いけれど急いで背戸に向かって走っていると、瀬戸に豪華な模様の入った袴を着た鬼が立っていた。その鬼は逃げようとする佐代の肩を掴みーー。(「関守」より) 離婚して実家に帰ってきた俊宏の母親が飼っていた三毛猫の小春。半月前に家を出て、そのまま交通事故にあって死んでしまった。母親は2か月前に倒れて意識もなく病院で寝たきりの状態だ。そのいずれも息子の航に告げることができないまま日々が過ぎていくのだが、あるとき航が「小春がいると思うんだ」という。裏の古い空き家から声がするという。さらに「布団に来た」ともいう。布団を調べると僅かな汚れと激しい異臭がする。その得体のしれない「何か」は徐々に迫ってきてーー(「まつとし聞かば」) 古い民家をリフォームして住むことに憧れをもっていた育は、築50年以上のこの物件を暇を見つけては手を加えてきた。ある夜零時過ぎ、風呂上りにドライヤーで髪を乾かしていると女の呼ぶ声がする。しかも何かを責めるような強い語調だった。このところ続けて見る、暗闇に人影が座り込んで何かを責めている夢と煩い隣人との関係はーー。その答えは意外なところにあった。(「魂やどりて」) 恋人に結婚を切り出すと「僕には結婚する資格がないんだ」「たぶん僕はもうじき死んでしまうから」と。その理由は小学校五年生夏休みにさかのぼる。広い川の大きな堰の先にあるブロックで遊ぶ幼馴染のリュウちゃんを見殺しにしたも同然だった。亡くなった翌年から、背後からふっと淀んだ水の臭いが漂うようになる。臭いはどこかくるのかーー。(「水の声」) 祖母の家に引っ越してきてから、両親の不仲から逃れるために押し入れに寝場所を作ると、天井に屋根裏へ通じる隙間を見つけた。上がってみると、誰かが作った屋根裏部屋だった。その脇にゆらりと揺れる影ーー項垂れた人の黒い影だった。それは片眼のない片脚もないお腹も血だらけだったーー。(「まさくに」)
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読んでたのにレビューを書き忘れていた。 1作目と比べると直接的に営繕屋さんとの関わりが出てくると言うよりかは間接的に出てくると言うテイストに変わっていて、その家に纏わる怪異とそこに住む人達の事情がより一層深く書かれている気がした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作に引き続き、古民家に手を加えることを通じて怪異と折り合いをつける物語。 異色に感じたのが一番最初に収録されている「芙蓉忌」。尾端さんは営繕屋、霊現象に対してすることはあくまで対症療法であってお祓いではなかったんだなー…!とあらためて認識させられました。どうにかアフターケアをしてやってほしい、でも人間なんだからそれ以外どうしようもなかっただろうことも分かる、の板挟みで、後味悪く、ある意味一番ホラーっぽい話でした…。
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古い城下町の古い建物にはそれなりの縁が重なっている。その縁にまつわる怪異譚。この怪たちは今の住人を祟るのではなく、自分の状況をわかってほしいと訴える。しかし、第一話は本当に怖くて、哀しい。
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1を読んだことあるのにまったく忘れてて、1から読み直してこちらに。怖いといえば怖いんだけど、怪異にも起きるだけの理由があると思えばやや怖さが薄まる。
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今作では営繕によって怪奇を逃すというよりも、なぜそれが起きているのかを追求していくお話が多かった気がします。それゆえか読後感はどれも怖さよりも哀しみが残りました。その中でその後が気になった「芙蓉忌」、どうぐや、という言葉の重みを感じた「魂やどりて」、事象としてはやたら怖いのに余韻...
今作では営繕によって怪奇を逃すというよりも、なぜそれが起きているのかを追求していくお話が多かった気がします。それゆえか読後感はどれも怖さよりも哀しみが残りました。その中でその後が気になった「芙蓉忌」、どうぐや、という言葉の重みを感じた「魂やどりて」、事象としてはやたら怖いのに余韻の大きな「まさくに」が印象的です。前作のようなどうしようもない怪奇を逃すのではないので怖さは少し薄め、営繕としても薄めですが、こちらも良かったです。尾端氏自身についての話題が全くなかったのが期待していただけに残念。次回は是非。
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旧城下町を舞台に起きる古い建物に纏わる怪異が語られる短編集第二弾。除き穴から見える芸妓。溺死した友人や死んだ飼い猫と思われる何か。仄暗い古い家の隅に潜む闇に目を向けてしまった語り手が体験する怪異が想像しやすくて寒気が来る。頭の後ろに気配があって足首にすうっと捕まれる感覚が感じられ...
旧城下町を舞台に起きる古い建物に纏わる怪異が語られる短編集第二弾。除き穴から見える芸妓。溺死した友人や死んだ飼い猫と思われる何か。仄暗い古い家の隅に潜む闇に目を向けてしまった語り手が体験する怪異が想像しやすくて寒気が来る。頭の後ろに気配があって足首にすうっと捕まれる感覚が感じられる正に日本の伝統的な怪談の怖さ。「水の声」「まつくに」が特に。営繕屋の尾端が建物を修繕する事で怪異が鎮まる方向に向かうんだけど想像とはずれが生じる所が単なるホラーといいにくい読後感でやっぱり面白い。前作より尾端の出番少ない?でも足りない位がいい感じかもなぁ。
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この手の不思議話好きだわ。 実際には体験したくないけどね。こういう問題に対処してくれる人がいるなら心強いんだけど。
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営繕とは、建造物の新築と修繕、また模様替なども含む。 「かるかや」とは、山野に自生するススキに似た多年草。 屋根を葺 (ふ) くために刈り取る草 優しさと哀しみと恐怖に満ちた全6篇。 古い町や建物が連なる場所に現れる、 日常に紛れ込んできた怪異。 その原因を営繕屋・尾端が建物を...
営繕とは、建造物の新築と修繕、また模様替なども含む。 「かるかや」とは、山野に自生するススキに似た多年草。 屋根を葺 (ふ) くために刈り取る草 優しさと哀しみと恐怖に満ちた全6篇。 古い町や建物が連なる場所に現れる、 日常に紛れ込んできた怪異。 その原因を営繕屋・尾端が建物を修繕したり、 アドバイスしたりして解決していくお話ですが、 尾端の登場は少ないです。 そこがまた、ひかえめでいいんですけどね。 「芙蓉忌」「関守」「まつとし聞かば」 「魂やどりて」「水の声」「まさくに」 恐怖だけでいうなら、前作の方が怖かったと思いますが 今作の方が自然な感じで入って来たので、 これはこれで好きです。 カバーイラストから、本作で尾端さんの関わる怪異がわかる。
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