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ケイトが恐れるすべて の商品レビュー

3.8

60件のお客様レビュー

  1. 5つ

    9

  2. 4つ

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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2019/12/28

これも面白かった!! 前作『そしてミランダを殺す』では、語り手の視点がどんどんと入れ替わり『狩られる者が狩る者となり、そして狩る者が狩られる者となる』というジェットコースターサスペンスミステリーとして非常に楽しめたが、本作『ケイトが恐れるすべて』も前作『そしてミランダを殺す』と同...

これも面白かった!! 前作『そしてミランダを殺す』では、語り手の視点がどんどんと入れ替わり『狩られる者が狩る者となり、そして狩る者が狩られる者となる』というジェットコースターサスペンスミステリーとして非常に楽しめたが、本作『ケイトが恐れるすべて』も前作『そしてミランダを殺す』と同等、いやそれ以上のサスペンスミステリーを著者ピーター・スワンソンは読者に楽しませてくれる。 随所にヒッチコックをオマージュしているシーンもあり、往年のミステリファンも唸らせることだろう。 ストーリーは、アメリカ・ボストンに住む、実際には会ったことのない又従兄のコービンから、彼がイギリスで半年間の仕事をする必要が生じたことからその間、ロンドンで一人暮らしをするケイトと住居を交換しようという提案がある。 ケイトはその提案に応じ、ボストンのアパートメントに引っ越すのだが、その日の翌日、コービンの部屋の隣室の女性が殺されているのが発覚した。 殺された女性とコービンとは恋人同士だったのか? コービンがその女性を殺してイギリスに逃げたのではないだろうか? ケイトは過去のとある事件から極度の被害妄想を患っており、すべての減少が自分を陥れる悪夢ではなのかと想像する。 そしてさらにケイトを混乱させる出来事が次々と起こっていくのだった…。 本書は、ヒッチコックの上質な古典名作ミステリー映画を見ているかのような雰囲気の心地よさから一転、激しいサイコ・スリラーに変貌していく。 誰もが本当のことを言っているようで、絶対に誰かが嘘をついている。 そしてケイトの目には、目に映る誰もが『殺人鬼』に見えてきてしまう。 本作も前作『そしてミランダを殺す』ほどではないが、同じ出来事を別の登場人物の視点から描くという「別視点による繰り返し描写」が多用されている。 まさに3歩進んで2歩下がるような物語の進み具合なのだが、これが冗長に感じられず、むしろ小気味よい。 これは筆者の筆力の素晴らしさによるものだろう。 そして特筆すべきは著者ビーター・スワンソンが登場させるキャラクターがどれも一癖も二癖もある個性的なキャラの持ち主ばかりなので、目の肥えたミステリー好きの読者たちを全く飽きさせないところがミソなのだ。 例えば、被害妄想の持ち主である主人公のケイトや過去に隠された秘密を持つコービン、そしてケイトと同じアパートメントN住む覗き趣味を持った隣人、そして謎のシリアルキラーなど本書に登場するキャラクターの誰もが「もしかしたら現実にいそうでありながらも、やはりフィクション的な性格を持っている者」という「リアルとフィクション」のギリギリの線を攻めたキャラ作りが秀逸なのだ。 このキャラ作りは前作『そしてミランダを殺す』で完全なサイコパスなのだが、読者の共感を得てしまうという主人公の美女リリーにも当てはまる。 人間の性格は、単純ではなく、多層構造をもった非常に複雑なものであるが、それを全部小説のキャラクターに書き落としてしまうと、読者はキャラクターの性格を把握しきれず混乱してしまう。 だからこそ小説に限らず、いわゆる『物語』に登場するキャラクターはその性格をある程度、単純化させているのであるが、著者ピーター・スワンソンは、読者が混乱しない程度に登場するキャラクターの誰もに「多重的な性格」を持たせている。 このさじ加減が絶妙であるからこそ読者は、そういった意味において、主人公のケイトもコービンにも、そして覗き趣味の隣人にもすら魅了されてしまうのだ。 本書のストーリーは「あっ!」と驚く大どんでん返しとまではいかないが、最近のミステリーの中では秀逸な面白さである。 前作『そしてミランダを殺す」、そして本書「ケイトが恐れるすべて」と連続してスマッシュヒットをたたき出すピーター・スワンソン。 僕の中で「今後も必ず新作が出たら読もうと思うミステリー作家リスト」に彼が入ったのは言うまでもない。

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2019/12/18

2019.12.18読了 そしてミランダを殺すが衝撃的な面白さだったので、今回はかなりの期待をもって読み始めてしまった。 ミランダの時の衝撃感とまでは言わずとも、よく計算された面白さでかなり楽しむことができた。 最後にどんでん返しがあるわけでもなく、よくあるシリアルキラー系の話が...

2019.12.18読了 そしてミランダを殺すが衝撃的な面白さだったので、今回はかなりの期待をもって読み始めてしまった。 ミランダの時の衝撃感とまでは言わずとも、よく計算された面白さでかなり楽しむことができた。 最後にどんでん返しがあるわけでもなく、よくあるシリアルキラー系の話がピーターの手に掛かるとこんなにもドキドキするのかと、今回も高評価

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2019/12/16

過去の恋人の被害から恐怖症かかえるケイトが自分のロンドンの部屋と又従兄のボストンの部屋を交換し、移り住むが、すぐに隣人の殺人事件が発生する。事件の被害者と又従兄の親密な関係があり、事件は恐るべき他の事件とかかわりがあることが次第に明らかになる。主要登場人物が病んだ人たちの小説。

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2019/11/17

人物描写が深くて丁寧。登場人物が目の前で動いているように思えたほど。翻訳作品を読んでる感覚がありませんでした。実に気持ち悪い奴が登場しますが、展開が見事で目が離せなくなり後半は一気読みでした。面白かったです。羊たち、、を思い起こさせるショッキングさ。次の作品が早く読みたいです。

Posted byブクログ

2019/11/04

前作、「そしてミランダを殺す」を読んだ時のドキドキ感&面白さは、ヒッチコックの映画を見てる時と同じ感覚なのだなと再認識した。『裏窓』。 作者がミステリーの古典を敬愛していることがわかる。

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2019/10/30

 この作家を一躍有名にした『そしてミランダを殺す』を読んでいない。昨年の『このミス』2位となったことで気にしているのだが、ぼくの側の環境が変化した。現在の新刊を追うことで手いっぱいの多忙な日々となり、いろいろと遅れを取っている。  しかしこの作家の凄みは、本作でも十分に味わえる...

 この作家を一躍有名にした『そしてミランダを殺す』を読んでいない。昨年の『このミス』2位となったことで気にしているのだが、ぼくの側の環境が変化した。現在の新刊を追うことで手いっぱいの多忙な日々となり、いろいろと遅れを取っている。  しかしこの作家の凄みは、本作でも十分に味わえる。とても完成度の高い、幻惑に満ちたスリラーである。主人公がケイトというヒロインであるのは間違いないが、実はケイト以外の視点にストーリーはダイナミックに移動する。ロンドン在住のケイトが、会ったことのないロンドン在住の又従兄弟コービンと、半年間住居を交換し合うという経緯からすべては始まる。最初からタクシーでトンネルに入り込んだケイトが暗闇に対しパニック障害を起こすというイントロも、どこかヒッチコック映画を思い起こさせる伏線のように思える。  そして新居に着いた途端、隣室でその住人女性の遺体が発見される。完全な巻き込まれ方殺人事件と単純に思われるが、ストーリーテリングは空間と時間の歪みを自在に辿りつつ、視点と時制を変えて、物事が見た通りでは決してないということを読者に知らしめる。  真犯人しか知り得ない真実への経路は、時空の視点を変化させつつ、語られる作者の作品展開であり、実は何よりもそれこそが本書の優れた離れ業とも言える。凡百のホラーやサイコに陥ることを嫌い、ある異常な真犯人による凝りに凝った執着と異様なる性癖を、語り口によるスリリングな解き明かしによって描いてゆくのだが、これがむしろストレートなホラーよりもずっと怖い。背筋に何かが這い回りそうな、脂汗ものの嫌な種類の恐怖を感じさせるのだ。  視覚や聴覚、嗅覚や触覚にまで訴えてくる感覚的な怖さ、なのである。それでいて構成の妙で読者はぐいぐいと引き込まれてしまう。主要登場人物は多くはないのだが、それぞれに個性的であり、謎に満ちた疑わしい人物たちが、ケイトも読者をも幻惑させるかのように入れ代わり立ち代わり出現する。誰が誰であるのか? そんな足元さえぐらつきかねない懐疑は、やはり皮膚感覚的に怖い。  虚実入り乱れるとは、本書のような作品展開を言うのだろう。驚愕のスリラーであることを請け合いたい。個人的には『そしてミランダを殺す』も射程に収めておくことにしよう。

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2019/10/18

『そしてミランダを殺す』の著者の新作。 今回はひょんなことからボストンに住むことになった ケイトというイギリス人の女性の周りで起こる不可解な事件の数々。 読み終わった後の感覚で言うと、どこかスッキリはしなかったなと。 それが狙いなのかもしれないが。 とは言え、物語のケイトの抱え...

『そしてミランダを殺す』の著者の新作。 今回はひょんなことからボストンに住むことになった ケイトというイギリス人の女性の周りで起こる不可解な事件の数々。 読み終わった後の感覚で言うと、どこかスッキリはしなかったなと。 それが狙いなのかもしれないが。 とは言え、物語のケイトの抱える情緒不安定な部分が 最後まで読んでいる我々にも与えてきたのは確か。 読み進めていくうちに、思わぬ斜め上からの展開が待っていて ミランダの時とは別の驚きが待っていた。

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2019/10/13

 不安症で過敏なケイトは、過去に陰惨な事件の被害者となった。  イギリスに住む彼女が、アメリカに住む従兄弟と部屋を交換することとなった。  環境を変えて過ごそうと思うその時に、隣の部屋の住人が遺体で発見される。  だれが隣人を殺したのか。どうしてなのか。ケイトの不安は過剰なのか...

 不安症で過敏なケイトは、過去に陰惨な事件の被害者となった。  イギリスに住む彼女が、アメリカに住む従兄弟と部屋を交換することとなった。  環境を変えて過ごそうと思うその時に、隣の部屋の住人が遺体で発見される。  だれが隣人を殺したのか。どうしてなのか。ケイトの不安は過剰なのか、などなど読み応えのある展開なのだが……。  この話に出てくる男性陣がものの見事に癖のある人間しかいないことが一番驚き。  ケイトにはたくましく幸せになってほしい。

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2019/10/11

ロンドンで一人暮らしをしているケイト。会ったことのない又従兄弟のコービンが仕事でロンドンに行くので、半年住まいを交換しようと提案され、ボストンに行くことにした。コービンの住まいは三階建てのドアマンがいるような豪華なアパートメント。何人かの住人と知り合いになった。すると、隣人のオー...

ロンドンで一人暮らしをしているケイト。会ったことのない又従兄弟のコービンが仕事でロンドンに行くので、半年住まいを交換しようと提案され、ボストンに行くことにした。コービンの住まいは三階建てのドアマンがいるような豪華なアパートメント。何人かの住人と知り合いになった。すると、隣人のオードリーが殺されてしまった。住人によるとコービンとオードリーは恋愛関係にあるはずなのに、コービンはそれを否定する。なぜ?殺したのは彼なのか? ケイトは強迫神経症気味で、周囲に対していつもビビっている。この不安定な語り手の存在がユニーク。それと章を替えて、コービンが語り手になるのだが、真相(なぜ交際を隠したのか)(誰が殺したのか)について明らかになると、思わず、そう来たかっ、とつぶやいてしまった。ちょっと長いかなーとは思ったけれど、なかなかの秀作だった。

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2019/09/29

親戚のコービンと半年間お互いの住居を交換することになったケイトは、イギリスからアメリカへ初めて暮らすことに。再出発の人生の足掛かりになるはずだったその生活は、隣室で女性が死体で発見される事件によって、思いがけない方向へ転がっていく…… 序盤からどこか不安定な女性の視点から始まって...

親戚のコービンと半年間お互いの住居を交換することになったケイトは、イギリスからアメリカへ初めて暮らすことに。再出発の人生の足掛かりになるはずだったその生活は、隣室で女性が死体で発見される事件によって、思いがけない方向へ転がっていく…… 序盤からどこか不安定な女性の視点から始まって、やがてほかの視点からも物語が綴られて、意外さに意外さを重ねて最後は綺麗に収束を迎えていく。その視点のスイッチングの鮮やかさと、飽きさせない意外な展開な連続に読ませてくれました。 個人的には某日本古典ミステリの要素を勝手に感じて、視点のひとりの持つとある「性癖」が実は物語全体をも覆っていたのだと気づく終盤はなかなかの気持ち悪さでした(褒めています)。 そもそもの設定、「親戚とはいえ顔も知らない、しかも男女間での住居交換」がどれほどリアリティがあるのか欧米の習慣を知らないので、そこが話のミソかと思ってたりしたのですが、それは普通にそういう流れで……こういうことって実際にあるんかなあというのは、ちょっと思ったところでした。

Posted byブクログ