独ソ戦 の商品レビュー
独ソ戦の歪んでいる面をすごく感じた。世界史をまともに勉強しなかった私だが、第二次大戦のコアの部分を知れてよかった。また、『正義』という言葉の空虚さを改めて感じた。
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一般的な独ソ戦史観を覆す、新たな視点で独ソ戦を見つめた内容。冷戦時代にはソ連を過度に弱くみせ、ドイツを強者とする形の情報操作が西側にはなされており、それを正しい形に揺り戻すことが目的。常に歴史は都合の良い形に修正されうることを改めて感じる。 独ソ戦を、通常戦争に加えて、収奪戦争...
一般的な独ソ戦史観を覆す、新たな視点で独ソ戦を見つめた内容。冷戦時代にはソ連を過度に弱くみせ、ドイツを強者とする形の情報操作が西側にはなされており、それを正しい形に揺り戻すことが目的。常に歴史は都合の良い形に修正されうることを改めて感じる。 独ソ戦を、通常戦争に加えて、収奪戦争、絶滅戦争の3つに分解。通常戦争ではありえない、捕虜の虐殺やスターリングラードへの固執、勝算のない中でのドイツの継戦などを収奪戦争と絶滅戦争の文脈で説明する。 個別の事象は戦争とは不思議な行動ではあるが、単にナチスドイツが狂信的というよりも、ナチスドイツの一定の戦争目的の達成には合理的である、という説明付けがされる。 感想としてはやはり戦争は悲惨だということ。また単なる意見の相違がイデオロギーの対立にまですすむと人間は恐ろしいことを行うようになる。
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簡にして要を得る。 それが何よりの魅力ではある。しかも、読む手が止まらないような事実の重さ・興味深さ。 正直、このような「事実」と「俗説排除」によって成り立つ欧州戦史が新書1位になる。その前年の1位とともに、怪しげなレトリック抜きの端正な史書が求められているということなのだ...
簡にして要を得る。 それが何よりの魅力ではある。しかも、読む手が止まらないような事実の重さ・興味深さ。 正直、このような「事実」と「俗説排除」によって成り立つ欧州戦史が新書1位になる。その前年の1位とともに、怪しげなレトリック抜きの端正な史書が求められているということなのだろう。
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『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』観たかったすよ。地元の映画館で上映が始まったと思ったら、一週間ほどで上映が打ち切られてしまって観れずじまい。コロナの前でっせ。よほど人気がなかったんだろか?それはさておき、人権不在の絶対戦争、法秩序無視の収奪戦争さえも包含し、敵の生命をひたす...
『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』観たかったすよ。地元の映画館で上映が始まったと思ったら、一週間ほどで上映が打ち切られてしまって観れずじまい。コロナの前でっせ。よほど人気がなかったんだろか?それはさておき、人権不在の絶対戦争、法秩序無視の収奪戦争さえも包含し、敵の生命をひたすら奪う絶滅戦争であった独ソ戦の経緯を知る。ここでは、ヒトラーを悪魔化し、能力を過小評価するばかりの定説を分析・検証し、スターリンについても同様に扱う。そして、独ソそれぞれの国家としての戦争の位置付けと、惨禍の実像にせまる。ホロコースト、ゲシュタポについては触れていないが、振り返ればなんと杜撰な戦略と戦術であったことか。これほどまでの殺戮って本当にあったんだよね。
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※このレビューにはネタバレを含みます
史上最も悲惨な戦争であった独ソ戦。その凄まじさは『スターリングラード』など映画には繰り返し描かれてきたし、個々の戦闘に関してはミリオタの関心を満たすような書籍はいろいろとあったようだが、最新研究の成果を反映して、手軽に全貌を掴むことのできるのが本書。 ペレストロイカ以降に明らかになったソ連=ロシア側の資料を用いて更新された著作が日本語ではこれまでほとんど読めなかった。共産圏の強さを示すためにソ連側の資料は誇張や脚色が含まれていたが、実際にはスターリンにも独断からくる相当の判断ミスや失敗があった。 なぜ独ソ戦はここまで悲惨な戦争になってしまったのか。それはドイツ側が政治的・戦略的目的を達成するためではなく、特定の思想(例えば共産主義)や属性(例えばユダヤ人)を持った人々を絶滅させるために戦争を行うという世界観を持っていた点にある。そのこと自体は広く知られてきたことだが、これを現場の戦略・戦術・作戦という点から検証しなおしたのが、本書の(あるいは近年の歴史研究の)成果と言えるだろう。 戦争法に反し現場では野放図な略奪や殺戮が繰り返されたが、それは単なる軍規の乱れではなく、そもそもの戦争の目的だったというわけだ。戦況が悪化すると指揮系統は無理な指令を次々と発し、現場のタガは外れていった。残忍な行為は報復を呼び、殺意はエスカレートしていく。 ヨーロッパ=ユーラシアは陸続きという点も余計に被害を大きくした。太平洋戦争では、南洋の島々と海戦がメイン、陸上戦で被害が及んだのは沖縄戦のみ、本土は空爆にとどまった。確かに多くの命が失われたが、もし本土決戦をやっていたら、とてもこんなものでは済まなかったろう。本書を読んで慄然とした。
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独ソ戦の熾烈さは本書冒頭の数値に表れている。ソ連側の戦闘員・民間人の死者は2,700万人に及び、当時のソ連の人口の14%が失われたことになる。スターリンが事前情報を無視したために、ドイツ軍の奇襲攻撃を受けたソ連軍は各地で崩壊、多くの民間人も犠牲となった。人的被害を倍加させた原因の...
独ソ戦の熾烈さは本書冒頭の数値に表れている。ソ連側の戦闘員・民間人の死者は2,700万人に及び、当時のソ連の人口の14%が失われたことになる。スターリンが事前情報を無視したために、ドイツ軍の奇襲攻撃を受けたソ連軍は各地で崩壊、多くの民間人も犠牲となった。人的被害を倍加させた原因の一つは、お互いに妥協の余地がない世界観戦争、イデオロギー戦争だったことである。ヒトラーはボルシェヴィズム撲滅のための「絶滅戦争」へと狂奔し、スターリンは仮借ないドイツ軍の攻撃を前に「大祖国戦争」を標榜、軍事的合理性さえ欠いた破壊と殺戮が繰り返された。本書は、両国の戦略思想、作戦経過をたどるとともに、ドイツ側の「絶滅戦争」に国防軍と国民がどのように関わっていたのかを明らかにする。独ソ戦の入門書として好適であり、読者のための文献解題も参考になる。
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第2次世界大戦は出来事が多すぎて、独ソ戦も一局面として捉えられることが多いが、ヨーロッパ戦線の中心であり、戦死者、被害も桁違いに多いことを認識した。ナポレオン戦争に引き続いてこんな戦争をしてしまえば、ソ連、ロシアがヨーロッパや世界と一線を隠して独自社会を築く気持ちが理解できる。厄...
第2次世界大戦は出来事が多すぎて、独ソ戦も一局面として捉えられることが多いが、ヨーロッパ戦線の中心であり、戦死者、被害も桁違いに多いことを認識した。ナポレオン戦争に引き続いてこんな戦争をしてしまえば、ソ連、ロシアがヨーロッパや世界と一線を隠して独自社会を築く気持ちが理解できる。厄災は外部からやってくるのだから、実を守らねばならないのだ。しかしヒトラーとスターリン、権力闘争には長けているが、統治能力はさして高くなかった二人がちょうど同時期に指揮者であったことが歴史の不幸だ。
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2020新書大賞とのこと。もうすでに次作が他社から同じ新書というメディアで出ている。正直なところテーマにさほどの興味はなかったが、なぜそこまで売れているのかその理由が知りたいと思い購入。序文によれば、本書の狙いは独ソ戦について「看過しがたいほど広がった」定説の「どこに議論の余地...
2020新書大賞とのこと。もうすでに次作が他社から同じ新書というメディアで出ている。正直なところテーマにさほどの興味はなかったが、なぜそこまで売れているのかその理由が知りたいと思い購入。序文によれば、本書の狙いは独ソ戦について「看過しがたいほど広がった」定説の「どこに議論の余地があるのかを伝える」ことにあるという。“生き残った側の論理”、即ちドイツ国防軍やソビエト共産党指導部によって都合よく解釈された史観を問い直そうという試みのようだ。 ドイツ側の「世界観戦争」、ソ連側の「祖国戦争」という両国の動機を軸に、それぞれの戦争が変質していく様(前者はゲルマン民族の生存圏を確保しようとする「プログラム」の行き詰まりによって、後者は戦略と戦術を有機的に接合する「作戦術」の進展によって)を描く。特にナチスドイツ側が、軍事的合理性を放棄してまで収奪戦争と絶滅戦争を優先させる特異さについての記述が中心。 しかし程度問題ではあるが、それではなぜドイツがソ連に対しそこまで憎悪の念を募らせたのかの説明が、本書ではやや薄いと感じた。スラブ民族に対する偏見的優越感や第三帝国確立が主な理由に挙げられているが、産業革命で露呈した階級的矛盾を背景に隆興したマルクス主義と、ドイツ教養主義の行き詰まりによるロマン・民族主義への退縮という19世紀に両国で起こった流れを踏まえると、「両イデオロギーは不倶戴天の敵であった」とする本書の記述はやや粗すぎるのではないか。マルクス主義とファシズムは直接ぶつかり合う主義思想ではなく、むしろ産業革命以降のアダムスミス的資本主義から疎外を受けた労働者階級を支持基盤として奪い合う、同じベクトルの向きを持つ競合関係にあったことが、激しい軍事的衝突の根底に抜き難く存在していたのではないだろうか。 個人的には軍事的な戦術・戦略に殆ど興味がないため、戦況の詳細な記述は退屈でしかなかったが、著者の文章は語彙に富むわりには平易で読みやすく、なるほど広く読まれるのも理解できると思った。ただ、内容的にはさほどの刺激を感じることは出来なかった。
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https://ytkssn.hatenablog.com/entry/2020/03/11/091413 P.2019/8/11 f.2020/3/10
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多くの日本人にとって、第二次世界大戦での欧州戦はナチスドイツとアメリカイギリス連合軍の戦いだという印象だろう。 しかし、死者数でいえばロシアの2000万人という戦死者数は飛び抜けている。(日本は300万人) 本書は現在最新の資料を元に、独ソ戦を描く。 30年前なら大戦車戦が繰り広...
多くの日本人にとって、第二次世界大戦での欧州戦はナチスドイツとアメリカイギリス連合軍の戦いだという印象だろう。 しかし、死者数でいえばロシアの2000万人という戦死者数は飛び抜けている。(日本は300万人) 本書は現在最新の資料を元に、独ソ戦を描く。 30年前なら大戦車戦が繰り広げられたはずの東部戦線。 ドイツ、ロシア双方がいかに互いを読み違え、自身を過信し、歴史上稀な収奪戦争から絶滅戦争へと移行していったのか。 行き当たりばったりの目標、戦略的に無意味な都市包囲、安易な兵站、全てが破滅への道筋を示す資料はまさに失敗の本質と言えそうだ。 「戦争は女の顔をしていない」や「失敗の本質」と併せて読みたい。
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