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慟哭は聴こえない デフ・ヴォイス の商品レビュー

4.3

59件のお客様レビュー

  1. 5つ

    22

  2. 4つ

    30

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

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2019/09/10

妊婦の診察の手話通訳の話から始まり、以前から悩んでいた「自分の子供を持つこと」についに向き合い、そして娘が誕生した。音が聴こえない娘の治療についてみゆきと模索する話も良かったけど、孤独死したホームレスの男の身元を探る「静かな男」が一番、印象に残った。荒井のろう者との接し方って、距...

妊婦の診察の手話通訳の話から始まり、以前から悩んでいた「自分の子供を持つこと」についに向き合い、そして娘が誕生した。音が聴こえない娘の治療についてみゆきと模索する話も良かったけど、孤独死したホームレスの男の身元を探る「静かな男」が一番、印象に残った。荒井のろう者との接し方って、距離を置いているのに何故かとても温かみを感じる。荒井が益々、興味深い人物になっていた。手話通訳士として、親として、どのようにろう者と向き合っていくのか…何森とも、細く長く付き合っていって欲しいな。これからも目が離せないシリーズです。

Posted byブクログ

2019/08/30
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※このレビューにはネタバレを含みます

居酒屋で健常者とろうあ者が揉めた時に ジョッキがガチャンと音を立てて崩れた という表現をろうあ者がしたとあり 先天的に聞こえない人には そのガチャンという表現ができないとあり あっ!となる 何をもって見えている、見えていないかの 境界線は曖昧だが この作品を読むたびに手を差し伸べるだけが 優しさと勘違い、驕ってはいけないなと思う 甥っ子の司くんが 親の不慮の事故で 給料が減り 普通大学の受験の機会が奪われて 荒れていくさまは別にある意味どこの家庭でも 起こりうる それを伝えるすべを持ち合わせてない人に どう寄り添うかを考えなければいけない 人の不幸を簡単に見てる側からだけで 決めつけてはいけない

Posted byブクログ

2019/08/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

シリーズ3作目。 今回が一番私は好き。 聴こえない両親のもとに生まれた主人公、コーダーということも このシリーズで初めて知った。 今回も、私たち健聴者は「あぁ歩み寄っていないな」と痛感させられた。 確かに、自分にないことはイメージがしにくいものだけれど 自分と違う人はどう感じているのか 知っているのか、理解できているのか、ということは 想像力と広い視野とそして何より「知る」ことが大切だと思った。 若者たち司君や美和ちゃん, 大人の荒井とみゆきの成長も楽しみだ。

Posted byブクログ

2024/05/13

「デフ・ヴォイス」シリーズ第3弾。手話通訳士・荒井の仕事を横軸に、みゆき・美和との家族としての成長、甥っ子(兄の息子)司の悩みを縦軸に6年間が描かれています。 第1話「慟哭は聴こえない」 男性通訳者は歓迎されない産婦人科での通訳。初めての出産を控えたろうの夫婦と出会う。 美和は...

「デフ・ヴォイス」シリーズ第3弾。手話通訳士・荒井の仕事を横軸に、みゆき・美和との家族としての成長、甥っ子(兄の息子)司の悩みを縦軸に6年間が描かれています。 第1話「慟哭は聴こえない」 男性通訳者は歓迎されない産婦人科での通訳。初めての出産を控えたろうの夫婦と出会う。 美和は小学3年生。 冒頭の居酒屋でのトラブルには、蛇の目寿司事件が思い出されます。 第2話「クール・サイレント」 ろうの人気モデルHALの通訳を引き受ける。テレビ業界が求める「かっこいい手話」とは? 美和は小学5年生。2016年の設定。 第3話「静かな男」 廃業した安宿で変死体が発見される。この事件を何森が担当。亡くなった男がろう者だった可能性が出てくる。 あとがきにある通り、愛媛県の「宮窪手話」をモデルにした話。 第2話の1年後くらい? 第4話「法定のさざめき」 「フェロウシップ」から民事裁判の手話通訳依頼。ろうの女性が雇用差別で会社を訴えるという。 第2話の終わりから2年半後。障害者の法定雇用率が民間で「昨年の四月から二・二%に引き上げられました」とあるので、2019年の設定。 各話メインテーマ以外にも、今回もさまざまな課題がてんこ盛りです。人工内耳、インテグレーション、きょうだい児の気持ち、などなど。こんなに書いちゃったら、もう続編はないのでは?と心配になりましたが、そういえば前の2作のときも同じことを思ったのでした。杞憂杞憂。

Posted byブクログ

2019/08/18

今回もまた勉強になる一冊だった。 一枚のフィルターを通して荒井さんの家族を見つめているような。 聴こえることと聴こえないこと。そこにどんな差があって、どう互いに歩み寄れるのか。 何かあったときに助けを求められないことがどれだけ怖いことなのか。 消防も警察も『呼ぶ』ことが前提の世...

今回もまた勉強になる一冊だった。 一枚のフィルターを通して荒井さんの家族を見つめているような。 聴こえることと聴こえないこと。そこにどんな差があって、どう互いに歩み寄れるのか。 何かあったときに助けを求められないことがどれだけ怖いことなのか。 消防も警察も『呼ぶ』ことが前提の世の中で、誰もが安心して暮らせる社会って夢物語なのかも。もっといろんな人が考えられるように、この作品が多くの人に読まれる世の中にまずなってほしい。 そして私は、声なき声が存在する事をきちんと忘れずにいよう。

Posted byブクログ

2019/08/18

初めて読む作家さん。 読み初めて知ったのだが、これは手話通訳士を主人公にしたシリーズ物の第三作になるらしい。 なので前の物語を念頭にした表現やエピソードも時折出てくるのだが、この作品だけでも楽しむことは出来た。 タイトルのデフ・ヴォイスとはろう者の発する声を指すらしい。 主人公...

初めて読む作家さん。 読み初めて知ったのだが、これは手話通訳士を主人公にしたシリーズ物の第三作になるらしい。 なので前の物語を念頭にした表現やエピソードも時折出てくるのだが、この作品だけでも楽しむことは出来た。 タイトルのデフ・ヴォイスとはろう者の発する声を指すらしい。 主人公・荒井尚人について説明すると、彼は自分以外の家族全員がろう者だが彼自身は聴者(コーダというらしい)で、現在は刑事のみゆきと結婚し、みゆきの連れ子である美和と三人暮らし。作品中に荒井とみゆきの間に娘が生まれ、その子がろう者であることが分かることから二人はある選択について悩むことになる。 作品中にに描かれている事件は4つ。 第一話はろうの妊婦、しかも初産の彼女とその夫に産婦人科での手話通訳を頼まれる。 この顛末は辛かった。もっと早く救急車を呼べたら…でも呼べないのだ。 これほど様々な技術が発達しているのに何とかならないのか。だが、どんな素晴らしい技術も使うのは人間、その人間が変わらなければ活かせない。 第二話はろう者モデルがドラマの準主役に抜擢される。 昔、ろう者を相手にした恋愛ドラマがあったのを取り上げられていたが、あれは結局『聴こえる者』に向けたドラマであり、使われていた手話はろう者に通じるものですらなかったというのは衝撃だった。 私は該当ドラマは見ていないが、改めて虚像の世界の現実を見た気がする。 ただろう者への感心を集めたという意味では罪ばかりとは言えない。 第三話はろう者のホームレス男性の遺体が発見される。 手話にも各地特有の方言のようなものがあるだろうことは何となく想像していたが、ここまで独特な手話があるのは知らなかった。また標準語手話も一通りではなく、いくつか種類があったり、ミックスされていたり、それもきちんと学校などで習ったものや独学や何となくで覚えたりと様々あることを知った。 そしてたまにテレビ番組の中継に写りこむ人がいるが、そこにこんな切実な事情のある人もいるとは切なかった。 だがこのケーブル局のディレクターの配慮には感心した。どこにでも素敵な人がいる。 第四話は障害者雇用枠で雇用されたろう者女性が会社の不当な扱いについて裁判を起こす。 こうした問題はどこにでもありそうだ。最近は配慮配慮とうるさいくらいだが、これは必要な配慮だ。 結局はこのくらい良いだろうが積み重なった結果なので、小さなうちにきちんと話し合うべきだった。 事件以外のシリーズとしての部分、例えば荒井の甥である司の苦しみや、荒井とみゆきの間に娘・瞳美が産まれたことによる連れ子の美和の変化や、瞳美に人工内耳をつける手術を受けさせるかどうかの選択など、気になって仕方なかった。 荒井は聴こえない家族に囲まれ育ちつつも自らは聴こえる者だけに、聴こえない者の真の心は分からない。だが逆に聴こえない者も聴こえる者の心は分からない。 聴こえようが聴こえまいが、どちらにとってもストレスなく生きられる社会になるのが理想だが、その第一歩である互いの歩み寄りが何より難しい。 日頃気付かないことを突き付けられた、非常に興味深い作品だった。ただ全体的に重く、主人公のキャラクターも妻のみゆきも魅力が薄い。 第一作から読むにはかなり気合いが要りそうだ。

Posted byブクログ

2019/08/02

【収録作品】慟哭は聴こえない/クール・サイレント/静かな男/法廷のさざめき/エピローグ   手話通訳士の荒井の目を通して描かれる聴覚障害者の現実。障害者を「減らす」べきものとして捉える社会の生きづらさと、そのなかで静かに闘い、誠実に生きようとする人たちの生き様が描かれている。

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2019/07/26

丸山正樹さんが書かれた「慟哭は聴こえない 」は、手話通訳士が主人公のデフ・ヴォイスシリーズ第3弾。法廷の通訳も行う手話通訳士の荒井が、通訳業務や自身の家庭での出来事を通じて“聴こえない”ということは何かを伝えてくれる連作短編集だ。 「荒井はろう者の親を持つ聴者、いわゆるCODA...

丸山正樹さんが書かれた「慟哭は聴こえない 」は、手話通訳士が主人公のデフ・ヴォイスシリーズ第3弾。法廷の通訳も行う手話通訳士の荒井が、通訳業務や自身の家庭での出来事を通じて“聴こえない”ということは何かを伝えてくれる連作短編集だ。 「荒井はろう者の親を持つ聴者、いわゆるCODA(コーダ)として生まれ育ってきた。兄もろう者であるため、家庭内では孤立しがちだった荒井も、警察官のみゆきと知り合い家庭を持つことによって心穏やかな日々を過ごすようになっていた。 そんなある日、医療通訳の依頼が入る。内容病院への同行通訳だったが、依頼者が女性であったための辞退した。しかし、派遣センターからの強い要望があったため現地におもむいたが、結局は診察室に入ることなく待合室での対応のみになってしまった。その後、再び同じ夫婦に同行通訳を依頼されることになり、若いろう者夫婦の初めての出産に関わることになる。ところがある日、出かけていた夫婦から緊急の連絡が入り事態は急変する。(「慟哭は聴こえない」より)」 今回の連作短編集は殺人事件などの犯罪はなく、聴覚障害の男性モデルの話や会社を訴える女性の話、空き部屋でひっそりと亡くなっていた中年男性の話など、実際の社会で起きている事件や事故が取り上げられている。 その一つ一つが、どれも聴覚障害書を取り巻く深い課題を含んでいて非常に興味深い。聴覚障害当事者や手話を勉強している人なら、誰もがその内容に頷くだろう。むた、そうでない方でも、このようなことが世の中にはあるんだと言うことを改めて知り驚くだろう。 テーマとしては重いものばかりだが、読み終わったときの感覚はとても爽やかで暖かいものを感じる。それは、著者が聴覚障害に対して真摯に向き合っているからこそであり、良いことも悪いことも含めて、すべてを書き表そうという強い意志があるからに違いない。 そして何よりも、すべての人に対して分け隔てないフラットな考え方が出来る方だからこそ、登場人物に対する愛情を読者も感じるのだろうと思う。

Posted byブクログ

2019/07/01

慟哭を発する 慟哭を聴く ろう者の人たちにとっては、そのような心からの叫びを上げることも難しい。 話せるもの、聴けるものは、もっと心を広げて色々な人々に添わせないとと、思う。 出来ること、得意なことをちょっとずつ周りにも使って、柔らかに生きる。そういう世の中の方が、豊かだろう。 ...

慟哭を発する 慟哭を聴く ろう者の人たちにとっては、そのような心からの叫びを上げることも難しい。 話せるもの、聴けるものは、もっと心を広げて色々な人々に添わせないとと、思う。 出来ること、得意なことをちょっとずつ周りにも使って、柔らかに生きる。そういう世の中の方が、豊かだろう。 心からそんな風に思える短篇4篇。 きっとずっと胸に残る。

Posted byブクログ