待ち遠しい の商品レビュー
『まだ夜にはなりきっていなくて、空は薄紫色が残っていた。高速道路やビルがひしめいて見通しがいいわけではないが、地上に出てすぐ川の上を走る』 柴崎友香の描く主人公はいつも、積極的に決断をすることがない。もちろん何も決めなかったとしたら日常生活は儘ならない。そういう意味ではなく、人...
『まだ夜にはなりきっていなくて、空は薄紫色が残っていた。高速道路やビルがひしめいて見通しがいいわけではないが、地上に出てすぐ川の上を走る』 柴崎友香の描く主人公はいつも、積極的に決断をすることがない。もちろん何も決めなかったとしたら日常生活は儘ならない。そういう意味ではなく、人生の中で何か転機になるような時や分岐点に差し掛かった時に、この作家の主人公は簡単に選択肢を選ばないということ。それがきっとこの作家の信条のようなものなのだと、デビュー以来読み継いで来た中で改めて認識する。その信条とは、世の中を日常的に観察し得る以上に脚色しない、ということかと想像する。それは「きようのできごと」からずっと変わることのない柴崎友香の芯のようなものなのだろうと思う。 「待ち遠しい」という第三者からの「期待」と自分自身の中のもやもやとした不安との折り合いの悪さは、何も今の世の中に特有の不均衡ではない筈。だが、それにしても近頃は結果を求めるまでの時間がどんどん短くなり、一人ひとりに求められるものの明確化、峻別化圧力が強いように感じる。多様化が叫ばれている反面、世の中の基準とでも言うようなものは画一化され、ポリティカルコレクトネスばかりが求められる。生き方の多様性、などと声高に叫ばれていなかった30年前の方がむしろ様々な人が自由に生きていたような気さえしてくる。そういう中で、柴崎友香の描く主人公は、とてもオネスト(正直、ではなく)である。そこに共感が生まれる。けれど、この共感と思ったものもよくよく吟味してみると、同じ価値観を共有しているよ、といった類の共感ではなく、同じ時代を同じように苦労しながら生きているね、という式の共感であるような気がする。価値観の一致に裏打ちされた共鳴を求めないまま、何やら捉えどころのない感情を呼び起こすことが出来るのが何より柴崎友香的文体だと思う。 この作品では今まで以上に周囲に翻弄されそうになる、あるいはされてしまっているのにそれにすら中々気づかない、主人公が描かれる。この作家の小説にしては珍しい位に様々な出来事が起こり、主人公以外の人物の色が多彩だ。それを作家の社会へのコミットが増えたからと解釈するのは少し言い過ぎかも知れないが、アイオワでの経験なども含めて、デビュー以来この作家が歩いて来た道程の健全なことが反映しているのは間違いないように思う。その健全さに信頼感が湧く。これからもきっと柴崎友香を読むのだろうな、と改めて思う。 もちろん、彼女の繰り出す大阪弁のニュアンスや、一回り異なる世代の異性の価値観など本当のところ理解し得ないとも思うけれど。と言いつつ、柴崎友香の大阪弁は案外と自然に脳内変換される。そして相変わらずの動体視力の良さにしびれる。
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こういう家族ではないけど、ゆるく繋がるご近所づきあい、他で読んだような気がするし、映画で見たような気がする。こういう題材、最近流行っているのかな。 独身のままだったり、結婚したけど一人になったり。一人は気楽でいいけれど、いい時ばかりではない。ゆるく人と繋がっていたい、そういう人が...
こういう家族ではないけど、ゆるく繋がるご近所づきあい、他で読んだような気がするし、映画で見たような気がする。こういう題材、最近流行っているのかな。 独身のままだったり、結婚したけど一人になったり。一人は気楽でいいけれど、いい時ばかりではない。ゆるく人と繋がっていたい、そういう人が多いのかも。シェアハウスとかも。わかる気はするし、そういう小さなコミニュティみたいなもの、うらやましい気持ちもある。春子さんやゆかりさんが近所にいたら楽しく心強いだろう。
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一軒家の離れに一人住む独身女性・春子39歳。春子と近所の人たちとの日常。大家さんのゆかり63歳。ゆかりの親類で近所に住む新婚沙希25歳。その二人と接することにより、近所の出来事、食い違い、自分を見つめ直してゆく。 劇的なことはないんだけれど、3人の年齢や背景の違いにより、価値観が...
一軒家の離れに一人住む独身女性・春子39歳。春子と近所の人たちとの日常。大家さんのゆかり63歳。ゆかりの親類で近所に住む新婚沙希25歳。その二人と接することにより、近所の出来事、食い違い、自分を見つめ直してゆく。 劇的なことはないんだけれど、3人の年齢や背景の違いにより、価値観が異なりそのやり取りにその都度考えることがあった。結婚、親類との付き合い、自分の未来について。物語にある近所付き合いについては、ありそうなこと。それぞれの意見の相違とか実際ありそうなことを上手く描いているなあとじっくり読めました。みんな考えることが違うけれど、それは当然であって、いかに自分を持つかかな。理解できるか分かり合えるかどう距離を置くか。春子は流されずにしっかり生きていると思うよ。未来でもなんでも待ち遠しいと思える心の心境を保ちたいなあって思いました。
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ドラマ化したら話題になるかな、と思った瞬間、それはないな、魅力的な男性が誰も登場しないから。 読むと、異なる世代の女性同士の話題作りになるかもしれない。でもそれこそが地雷だったりして。
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なんか、他人の生活を覗き見しているような気分になって、読んでいてあまり心地が良くないので、途中で放棄。起源前に図書館に返却。
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初めのうちは、ご近所に住む世代の違う人たちの日常が淡々と描かれていくのかなと思ったけど、きれい事で終わるわけではなかった。 3人それぞれの生き方や考え方の違い、春子の思いとか、沙希の辛辣な言葉とか、結構深くて、いろんなことを考えさせられながらとても興味深く読めた。 一番年齢が近...
初めのうちは、ご近所に住む世代の違う人たちの日常が淡々と描かれていくのかなと思ったけど、きれい事で終わるわけではなかった。 3人それぞれの生き方や考え方の違い、春子の思いとか、沙希の辛辣な言葉とか、結構深くて、いろんなことを考えさせられながらとても興味深く読めた。 一番年齢が近いはずのゆかりには共感できなくて、むしろ春子目線で読んだけど、あんなにご近所さんとガッツリ関わるのは、私は避けたい。
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39歳の独身女性・春子の借家の大家さんが代替わりし、63歳のゆかりが来たことから、親しい近所付き合いが始まる。ゆかりの甥・拓矢の若奥さん沙希と3人の世代が違う女性の考えの違いが面白い。女3人の天橋立旅行など、春子の人生が大きく変わったかのよう。ゆかりの幅広いお付き合いから交流の輪...
39歳の独身女性・春子の借家の大家さんが代替わりし、63歳のゆかりが来たことから、親しい近所付き合いが始まる。ゆかりの甥・拓矢の若奥さん沙希と3人の世代が違う女性の考えの違いが面白い。女3人の天橋立旅行など、春子の人生が大きく変わったかのよう。ゆかりの幅広いお付き合いから交流の輪が広がり、五十嵐という不思議な独身男性が登場するなど、変化に富む展開で飽きずに楽しめた。一方では春子が独身でいることの意味合いが力説されており、著者自身の考えがかなり出ているように感じた。
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柴崎友香さんは、優しい。 女が結婚せず働くってまだ風当たりがある。(たぶん) 妊娠しても離婚しちゃった場合、苦しいのは女性の方。 死別で残されるのは断然女性が多い。 嫁ぎ先の両親のことも、たぶん女性の方が関わる。 (伴侶が死んでも、義理の両親の面倒をみるのは、女性だけじゃない?)...
柴崎友香さんは、優しい。 女が結婚せず働くってまだ風当たりがある。(たぶん) 妊娠しても離婚しちゃった場合、苦しいのは女性の方。 死別で残されるのは断然女性が多い。 嫁ぎ先の両親のことも、たぶん女性の方が関わる。 (伴侶が死んでも、義理の両親の面倒をみるのは、女性だけじゃない?) そのことで、もやもやし、悩み、怒り、泣いたりしながら、 女性同士の繋がりを優しく描く。 怒りながらも女性たちは、男性にも相変わらず残る風当たりがあるんだろう、と、慮る。
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住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける39歳の春子、母屋に越してきた63歳のゆかりと裏手の家に暮らす新婚25歳の沙希がご近所づきあいから始まるストーリー。 3人の関係性はつかず離れずで特別「待ち遠しい」っていう関係性でもないのになぁと思いながら読んでいてやっと関するフレー...
住み心地のいい離れの一軒家で一人暮らしを続ける39歳の春子、母屋に越してきた63歳のゆかりと裏手の家に暮らす新婚25歳の沙希がご近所づきあいから始まるストーリー。 3人の関係性はつかず離れずで特別「待ち遠しい」っていう関係性でもないのになぁと思いながら読んでいてやっと関するフレーズが出て来た。 春子が高校生の女の子に質問される場面。 「あのー、こんなこと急に言うてなんやって思われるかもしれないんですけど、えーっと年取るのって怖くないですか?」 怖くても怖くなくても年は取るしと返しかけて春子は思い返す。年をとることは悪いことじゃない、楽しい事も面白い事もいっぱいある、ってもっと力強く断言できたら良いのにと話しながら春子は思っていた。これから先が待ち遠しくなるようなことを、言えるようになりたい。 全く同感です。今週の俳壇に取ってあった句を添えておきます。<言はば言え老いには老いの爽やかさ>高松市に住む島田章平さん 著者のインタビュー記事は➡https://book.asahi.com/article/12535342
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春子に対して共感の大連発。 もう、分かる!分かる!分かる~っ!! 私は結婚もしてるし子供もいて立場は違うけど もし春子のような人生を歩んでいたら まさにこういうふうになったのだろうと 自分のもう一つの人生を読んでるようだった。 自分ひとりで責任を持って生活できてれば それで...
春子に対して共感の大連発。 もう、分かる!分かる!分かる~っ!! 私は結婚もしてるし子供もいて立場は違うけど もし春子のような人生を歩んでいたら まさにこういうふうになったのだろうと 自分のもう一つの人生を読んでるようだった。 自分ひとりで責任を持って生活できてれば それで自分なりに幸せであれば 外野はいろいろ言うけれど無視ですわ。 女はどんな立場であろうが、堂々と生きたらええねん! ご近所付き合いができるようになったり 誰彼構わずすぐ飴ちゃんをあげる お節介なおばちゃんになるのって楽しいよ。
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