本の読み方 の商品レビュー
2024.10.5読了 著者の書く小説が好きで、近年の速読へのアンチテーゼとなるテーマがおもしろそうと思って手に取った。 今年はいいペースで本が読めてる、目指せ年間100冊なんて思っていたところだったから、そういう読み方はただの大食い競争、また情報処理だという主張に耳が痛くな...
2024.10.5読了 著者の書く小説が好きで、近年の速読へのアンチテーゼとなるテーマがおもしろそうと思って手に取った。 今年はいいペースで本が読めてる、目指せ年間100冊なんて思っていたところだったから、そういう読み方はただの大食い競争、また情報処理だという主張に耳が痛くなった。が、本当にその通り。 私の中で、自己啓発本などは情報処理でいいかなとも思うが、小説はやっぱり時間をかけて読みたいもの。好きな小説は、いつまでもこの世界に浸っていたいと思わせるような作品であることが多い。存分に味わうように読書をたのしみたい。
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「スロー·リーディング」とは、焦らずゆっくりと自分の読書ペースで読むことで、作品への理解が深まるとのことだった。速読も魅力的だと思っていたが、この「スロー·リーディング」もなかなかいいと思った。実践編での、森鷗外の「高瀬舟」の解説は、真に迫っていたように感じた。読書の量ではなく、...
「スロー·リーディング」とは、焦らずゆっくりと自分の読書ペースで読むことで、作品への理解が深まるとのことだった。速読も魅力的だと思っていたが、この「スロー·リーディング」もなかなかいいと思った。実践編での、森鷗外の「高瀬舟」の解説は、真に迫っていたように感じた。読書の量ではなく、質にこだわってみたいと思った。
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『本の読み方』 著者 平野啓一郎 PHP文芸文庫 2019年 この本は小説家の平野啓一郎さんが本の読み方に関して書いたものであるが、私は個人的にこの本は「本の読み方に関する哲学」だと思っている。 この本で著者はスローリーディングなるものを推奨している。このスローリーディ...
『本の読み方』 著者 平野啓一郎 PHP文芸文庫 2019年 この本は小説家の平野啓一郎さんが本の読み方に関して書いたものであるが、私は個人的にこの本は「本の読み方に関する哲学」だと思っている。 この本で著者はスローリーディングなるものを推奨している。このスローリーディングとは字の如くゆっくり読むことであり、通俗的な言葉で置き換えると、一字一字注意しながら読み、そして行間を読むことで、本の内容をより深く理解しようとする読み方である。著者はこの読み方を本の中で何回も勧めているのだが、それの対になる読み方として速読をあげており、それに関してはこう言うとなんだが、貶している。引用しよう。 速読化の知識は単なる脂肪である。それは何の役にも立たず、無駄に頭の回転を鈍くしているだけの贅肉である。決して自分自身の身となり、筋肉となった知識ではない。(p42) このようなことを書きながら、著者は最終的に速読を「明日のための読書」と位置付け、いわゆる即効性が高いが、応用範囲は狭いものとしている。 逆にスローリーディングは「5年後、10年後のための読書」とし、長い目で見たときに、その人の教養となるものであるとしている。 そもそも、著者は読書の面白さの一つとして、ほかの人とコミュニケーションが取れるということを挙げており、本の読み方はそのための手段の一つであると書いてある。そして、ほかの人とその本について語りたいのであれば、スローリーディングをして、本の内容を深く理解し、自分ならどう感じ、どう行動するかを考えていくことが個性的な読書のためには必要であると記してある。 スローリーディングと言う奥深いせかいに触れてみたいなら手に取るべきだろう。 本書の後半には、著者がどのようにスローリーディングしているか、実践編と称して解説してあるので、それも合わせて読むと面白い。
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「読書は量より質」ということを、例文や解説を使って教えてくれる。巷に溢れる速読本に、なんとなくもやもやしたものを感じていたが、なるほどと腑に落ちた。 紹介された方法以外にも色々な本の読み方があるだろう。これを取っ掛かりにして自分の読書方法を見つめ直していきたい。しかし、フーコー...
「読書は量より質」ということを、例文や解説を使って教えてくれる。巷に溢れる速読本に、なんとなくもやもやしたものを感じていたが、なるほどと腑に落ちた。 紹介された方法以外にも色々な本の読み方があるだろう。これを取っ掛かりにして自分の読書方法を見つめ直していきたい。しかし、フーコーの難解さはお手上げだ。
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多読の重要性に気づいてから、逆にこの本を読んでみたが、しっくりこなかったので、多読を実践してみようと思う
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速読が推奨されていることをよく見かけるのもあり、読むのが遅いことが悪いことかと思っていました。 紹介されているスローリーディングのテクニックをすぐに習得することは難しいが、本を自分のペースで楽しんでいこうと前向きになれました。
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数年前、某書評サイトに参加していた時期がありました。そこではみなさん競うように書評を上げていて、中には毎日3冊から4冊もの本の書評を上げる人も。私はそのスピードにまったくついていけず、大好きなはずの読書がちっとも楽しくなくなってきてしまい、これはいかんもうここにはいられない、と一...
数年前、某書評サイトに参加していた時期がありました。そこではみなさん競うように書評を上げていて、中には毎日3冊から4冊もの本の書評を上げる人も。私はそのスピードにまったくついていけず、大好きなはずの読書がちっとも楽しくなくなってきてしまい、これはいかんもうここにはいられない、と一年足らずで退会しました。 そんな私にとってこの本は、天から差し込まれたひと筋の光、「大丈夫だよ」とやさしく手を差し伸べてくれる、救世本です。まさに我が意を得たりな一冊で、読みながら「そうそうそうなんですよ!」、「ほんっとまさしくこれ!」と心の中で叫びどおし。 本書は、徹底的に〈アンチ速読〉。〈一年間に何冊読んだ、といった類の大食い競争のような読書量の誇示にも辟易していた〉著者は、速読はもはや〈読書ではなく、情報処理〉であると喝破し、〈読書は何よりも楽しみであり、慌てることはない〉、〈本くらいはゆっくり、時間をかけて読みたいものだ〉と述べています。 そこで提唱されているのが、スロー・リーディング。ゆっくり時間をかけて、〈味わい、考え、深く感じる豊かな読書〉を楽しもう、というもの。それにはやはりコツがある、ということで、そのコツをこの本で教えてくれています。「基礎編」と「テクニック編」でその理論を解説、「実践編」で、夏目漱石の『こころ』やカフカの『橋』、金原ひとみ『蛇にピアス』など、古今の作品をスロー・リーディングしていきます。 すごく本を読みたくなるし、読むのが楽しみになりますね。これからは自信を持って、焦らずゆっくり読書を楽しんでいけそう。〈「ページを捲りたくない、いつまでもこの世界に浸っていたい。」と感じてもらえるような作品を書きたいといつも思ってい〉るという著者の作品も、ぜひこれからゆっくり読ませていただこうと思っております。 最後に、ここに宣言いたします。わたしは、スロー・リーダーです!
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⚫︎受け取ったメッセージ ※引用 「一冊の本を価値あるものにするかどうかは、 読み方次第」 「読者が本を選ぶように、本も読者を選ぶ」 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) "本はどう読んだらいいのか? 速読は本当に効果があるのか? 闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、深く感じる豊かな読書へ。 『マチネの終わりに』の平野啓一郎が、自身も実践している、 「速読コンプレックス」から解放される、差がつく読書術を大公開。 「スロー・リーディング」でも、必要な本は十分に読めるし、 少なくとも、生きていく上で使える本が増えることは確かであり、 それは思考や会話に着実に反映される。 決して、私に特別な能力ではない。 ただ、本書で書いたようなことに気をつけながら、 ゆっくり読めば、誰でも自ずとそうなるのである。(中略) 読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである。 ⚫︎感想 夏目漱石のこころ、森鴎外の高瀬舟、三島由紀夫の金閣寺カフカの橋、金原ひとみの蛇にピアスなど、一部分を取り上げて、小説家がどのような工夫やテクニックを凝らして書いているか、いかに気付きながら読むことができるか、実践を交えて丁寧に解説してくれる。 ・作中で登場人物が疑問を発した時、 その答えは特に重要 ・成功している比喩は重奏的 ・作中の唐突に起きる違和感は注意喚起=主題に関わる ・「不自然さ」は場面転換の印 ・「お茶を飲む」という何気ない動作→緊張しているから→この先重要な言葉が語られるかも ・ポリフォニー小説…登場人物がそれぞれに完全に独立した思想を持ち、彼らが対話を通じて対決するタイプの小説 ・書き出しの一文に意味がある ・形容詞、形容動詞、副詞に着目する ・間を取るための風景描写や心理描写の挿入。 一般的に、こうした間の後には重要な発言が控えている。 など、たくさんの書く側の配慮を知ることができた。このようなタイプの本は初めて読んだので、このように書く側からのテクニックを知って、もっと深く小説を味わいたいと思った。 (以下引用) 小説というのは、マジックミラーのようなものである。しっかりと目を凝らせば、向こう側に作者が見えるかもしれない。しかし同時に、そこに映し出された自分自身を見てしまうのかもしれない。
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「先へ、先へ」より「奥へ、奥へ」 平野啓一郎さんのいう本の読み方はその通りだと思う。SNS全盛の今こそこういうアプローチは身につけたい。 実践編を読んだら、自分が大学受験の現代でやぅてきたやり方とそっくり。平野さんとほぼ同世代なので、なんとなくこう考えるひとが多いのかな?と感...
「先へ、先へ」より「奥へ、奥へ」 平野啓一郎さんのいう本の読み方はその通りだと思う。SNS全盛の今こそこういうアプローチは身につけたい。 実践編を読んだら、自分が大学受験の現代でやぅてきたやり方とそっくり。平野さんとほぼ同世代なので、なんとなくこう考えるひとが多いのかな?と感じた。
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ゆっくり読むことについて。 ・助詞が「私は」であるか「私が」であるかで、ストーリーの空気感は大いに変わる。 ・学術書でよくある、「一般論・相手の意見→理解→しかし、否定→自説の展開」は良くも悪くも、読書でもそれ以外のコミュニケーションでも色んな場面で出てくる。自分が活用するのももちろん、周りでそのうな構成で話していることにも敏感になれる。 このあたり、受験勉強での現代文の先生の講義が蘇る。今にして思えば、文章を読む基礎力はここでついたと思う。 また、大学の政治学の週2回の講義では、都度3,40ページの日英の予習課題が課されていたのも思い出した。予習期間が短いのに「3回読め」と言われて苦痛に喘いでいたのも思い出した。流し読みをするだけでも、同じペーパーを3周してみると、意味が全く分からなかったところも、少なくとも薄日が刺すように論理構成や主張が見えてくる。スローリーディングの醍醐味だ。 そのあたりの記憶が甦りながら、色々共感できる箇所も多く、原点回帰になりそうな読書体験だった。 === 「読書は読み終わったときにこそ本当に始まる」(p.44) 「現に何を読んでも、「今までの自分」という殻からは一歩も外に出られず、一本調子の感想しか抱くことのできない人は、世の中にもたくさんいるのである。そういう人は、自分で自分の周りに檻を作ってしまった囚人であり、いつまで経ってもその狭い檻から抜け出せず、その中からしか、世界を見ることができないのである(中略)読書は、「作者」という名の他者と向かい合うことを通じて、私たちをより開かれた人間にするきっかけを与えてくれる」(p.50) 「私は読書の喜びを知り、自分の好き嫌いを知った。しかし、それ以上に学んだことは、ある作家のある一つの作品の背後には、さらに途方もなく広大な言葉の世界が広がっているという事実である(中略)作者は一体、何を言おうとしているのだろうか?そしてその主張は、どんなところから来ているのだろうか?それを探るのは、常に、奥へ、奥へと言葉の森を分け入っていくイメージである」(p.85) 「そういう意味では、さりげないながらも、この、「先生先生というのはいったい誰の事だい」という一文は、小説の冒頭(私はその人を常に先生と呼んでいた)と呼応している。こうした作品内の言葉の響き合い、呼応関係を掴むことができると、小説全体の構造の見通しが急によくなることがある」(p.118) 「人間は生まれてから死ぬまで、ずっと変わり続ける?ものの見方も変われば、考え方も変わる。それは、悪いことではない。同じ本を数年後に読み、そこで自分の感想が変わっていたならば、それだけ自分が変わったということであり、その数年間に意味があったということだ。感想は、一回限りのものでなくていい。むしろそれは、生きている限り、何度も更新されるものであるべきだ」(p.175) 「小説の執筆という作業は、一見マラソンのようにみえて、実際には、短距離ダッシュの繰り返しである。持続可能な力加減で書き続けても、緊張感のある作品にはならない。呼吸も忘れるほどの集中力でアタックしては休憩し、またアタックしては休憩する。その繰り返しだけが、作品を真に鍛え、充実させてくれるのだと信じる」(p.236)
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