本の読み方 の商品レビュー
【読もうと思った理由】 最近、一度読むだけだと難解で理解しにくい本を徐々に読むようになり、「もっと読解力があったらなぁ」と思うことが多くなっていた。そんな折、この本とたまたま出会い読むに至る。 【読後の感想】 プロの作家の方は、「ここまで考えて本を読んでいるのか」と脱帽し、恐れ...
【読もうと思った理由】 最近、一度読むだけだと難解で理解しにくい本を徐々に読むようになり、「もっと読解力があったらなぁ」と思うことが多くなっていた。そんな折、この本とたまたま出会い読むに至る。 【読後の感想】 プロの作家の方は、「ここまで考えて本を読んでいるのか」と脱帽し、恐れ入った。 (以下、感銘を受けた箇所を記載。) 読書を今よりも楽しいものにしたいと思うなら、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないというところから始めなければいけない。 作家のタイプにもよるが、たとえば、三島由紀夫などは、様々な技巧に非常に自覚的な作家だったので、スロー・リーディングをすると、ここまで気を使うのか!というほど、細かな仕掛けがいくつも見えてくる。しかし、その多くは、実はほとんどの読者に気づかれないまま、埋蔵金のように今も小説の至るところに眠っているのである。 本当に読書を楽しむために、「量」の読書から「質」の読書へ、網羅的な読書から選択的な読書へと発想を転換してゆかなければならない。 文章の上手い人と下手な人との違いは、ボキャブラリーの多さというより、助詞、助動詞の使い方にかかっている。やたらとたくさんの単語が使われていても、ちっとも胸に響かない文章もあれば、「ボキャ貧」であっても、妙に説得力のある文章もある。動詞や名詞を生かすも殺すも、助詞、助動詞次第である。 人間のワーキングメモリは少しづつしか情報処理できないから、本を読むときに速読で大量に情報をインプットしようとしても、そもそも無理がある。スロー・リーディングによって、小分けにして、その都度長期記憶の間を往復しながら情報を処理していかないと、理解は進まないのである。ドストエフスキーの名前のややこしい登場人物が大勢出てくるような小説を読むときには、しょっちゅうページをさかのぼって、「なんだったけ?」と確認し直している。 (筆者が読書にハマったきっかけ) 筆者がそもそも読書にのめり込むようになったきっかけは、三島由紀夫の「金閣寺」だったそうだ。最初に読んだときは、「なんだこりゃ?」的な衝撃で、内容がどこまで理解できたか、怪しいものだったそうだが、だからこそ、ひどく興味をそそられたそうだ。 そこからは、しばらく三島の本ばかりを読みあさり、気づけばすっかり、ファンになっていたんだそうだ。今度は三島が好きだとエッセイで言っていた作家である、マン、ゲーテ、シラー、ドストエフスキー、ゴーゴリー等等、まさしく三島は、筆者にとって読書の正確なルートを示してくれた優秀なナビだったんだそうだ。そして三島が影響を受けた様々な作家の小説を読んだあと、もう一度金閣寺をはじめとする三島の作品を読むと、最初に読んだ時よりも、はるかに作品の内容を深く理解出来るようになったことが、嬉しかったとのこと。 そこから学んだことは、作家の作品の背後には、さらに途方もなく広大な言葉の世界が広がっているという事実。 【本書を読んで得た気づき】 本を読むことは、相手とコミュニケーションを取ることと、ある種似ているなぁと感じた。作者がその本の中で訴えたいことがある中で、極力読み飛ばされない様に、工夫を凝らして、何度も何度も推敲して、作品を作り上げているんだと。そこまで時間を掛けて作った作品を、数時間で、たった一回読んだだけで、すぐに全てを解るわけもないということが、肌身に染みてよく理解できた。 一回読んで理解できなかった作品は2度、3度と何回でも理解できるまで読もうと思った。 今後は今まで読んだことのない作家の作品を、極力読むよう意識をしていこうと思う。色々なタイプの作家を知ることで、読解力、理解力も上がっていくはずだと思うからだ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
スローリーディングを訴える、今の時代にこそ必要な良書。自分自身、早く読まないとと焦って読んでしまったことが何度もあった。それは、速読とか多読といった情報をいかに早く要点だけに絞って取り入れるかという観点のもの。一方で、スローリーディング、とりわけなぜ作者はこの一文を入れたんだろうか、なぜこんな表現なんだろうか、と立ち止まって自分なりの考えと照らし合わせてみたり、思考をさらに深めてみたりしてみてはどうだろうか?というススメである。長い時間をかけてじっくりと読んでいく、量ではなく質こそ大事、その人となりを大きく、豊かにしてくれる。そんな読書をしたいものだと思うから、じっくり腰を据えて本と向き合う。特に内容を、センテンスを選び、色々仕掛けている小説においては。 自分自身、忙しい日々だから、この行為がいかに贅沢で、幸せなんだろうかと思いながら読んでいるのだけれど、改めて平野氏の速読へのアンチテーゼはグッとくるものがあった。読書を無駄にしない、時間の浪費にしない、これは逆をいうと早く読めば読むほど、無駄だと感じてより速読しなければならなくなるのかもしれない。どんなフレーズが、どんな風に感じたが、それは何を意味するのか、筆者の意図を考えながら読み進めていくことが作者との対話そのものなんだという考え方であり、本を先に進めるのではなく奥に進んでいくことで、人生を豊かにしてくれるはずだと説く。 カフカの橋、川端康成、三島由紀夫の作品を通して、スローリーディングを実践していく。5W1Hに気をつけながら、なぜ筆者がこの話を出してきているのかを考えると、橋が示すのは官僚だったりする訳だけど、そして高瀬舟が高い関心を今でも集めるテーマを含むのは、殺人と自殺の正しさか、悪かという問いだからである。これをすっ飛ばして読んで、理解できるのか、それがどういう構成で導かれているか、じっくり読まずして、その奥深さがわかるわけがないではないか、という筆者からのメッセージである。
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国語の問題を解いてみたくなった。 前半部分よりも、実際の作品をもとにキーポイントを解説される後半に学びが多かった。
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速く、一冊でも多く本を読みたいと思っていたが、自分がこれだ、と思った本をじっくりゆっくり読んでみたくなった。
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子供の頃本が嫌いで、最後まで興味を持続させて読み通すということが出来なかった自分にとって、読書というものに対してはずっと引け目を感じていました。 手に取ってパラパラと眺めても「ここには頭のいい人だけが読み取れるメッセージのようなものがあって、自分には決して読み取れないのだ」と。 ...
子供の頃本が嫌いで、最後まで興味を持続させて読み通すということが出来なかった自分にとって、読書というものに対してはずっと引け目を感じていました。 手に取ってパラパラと眺めても「ここには頭のいい人だけが読み取れるメッセージのようなものがあって、自分には決して読み取れないのだ」と。 読書感想文なども、他の人はあんなにすごいことが書けるのに自分はろくなことが書けない、という劣等感がずっとありました。 本書を読んで良かったなと思うことは、「本を読むことは人に会うことに似ている」と思えたことかもしれません。 「今日誰と会って、何を話したか」なんてことは、誰かと比べるようなものではなくその人だけの体験じゃないかと。 「うまく言葉にできなくても、読んで感じたままを自分だけの体験とすればいい」と思えれば、本というものがずっと身近に感じられる気がしました。
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なるほどな、ずっと気になってたんで読んでよかった。確かに、読んでるそばから新しく買ってしまう気質のせいで、時たま、追いまくられているような気がして、折角読んでる本もあんまり味わえないし、中にはもう惰性で文字を追ってるだけみたいになってしまうことも正直あった。 そんなんじゃやっぱり...
なるほどな、ずっと気になってたんで読んでよかった。確かに、読んでるそばから新しく買ってしまう気質のせいで、時たま、追いまくられているような気がして、折角読んでる本もあんまり味わえないし、中にはもう惰性で文字を追ってるだけみたいになってしまうことも正直あった。 そんなんじゃやっぱり勿体無いよな。 そんな中でも乙川さんのように味わえる本もあるのだが、もっとそういう本に出会いたいし、いや恐らく出会っているのだが、素通りしてしまったのだろう。 ペースをゆっくりではなくて、対話し、創造しながら読めば自然とゆっくりにならざるを得ないだろうし、その分、味わえて読める本が増えるなら、味わえないでその三倍読めてもあまり意味がないんだろうな。
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またしても読み方の本。 ゆっくり深く読むことで、記憶にも残るし技巧も分かるし、いいことだらけだよ、といった内容。 作家ゆえ、違和感や間の作り方、冒頭などなどに注力してる、というのが具体的に述べられていて面白い!これからの読み方がちょっと変わってくる。
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2006年の単行本を2019年に文庫版として新装。タイトルにあるようにスロー・リーディングこそが本来の読書のあり方、楽しみ方であるとのメッセージに多いに安心させられる。深読みのこつも第3部以降に古今の名著を題材にして解説され得ることの多い一冊。
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本は早く読めた方がいいのかな~と漠然と思ってたけど遅くてもいいんだよと、自分らしく読めばいいのよと励まされた気がしました。確かに読書は楽しいからするものだから急がなくていいんですよね、ゆっくり自分のペースで想像をふくらませながら時に脱線しながらでもひとつの本をじっくり味わう事が大...
本は早く読めた方がいいのかな~と漠然と思ってたけど遅くてもいいんだよと、自分らしく読めばいいのよと励まされた気がしました。確かに読書は楽しいからするものだから急がなくていいんですよね、ゆっくり自分のペースで想像をふくらませながら時に脱線しながらでもひとつの本をじっくり味わう事が大切なんだと教えてもらいました。
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スローリディングのススメ。量より質。おっしゃる通りだと思いながら、感覚的に読みたい時もある。しかし、それだけではもったいないことが理解できた。再読をしていこう。ただここでもまず自分がよかった、面白かったと思った本からになるだろう。ここの意識を変えると、見えてないことがよくわかるの...
スローリディングのススメ。量より質。おっしゃる通りだと思いながら、感覚的に読みたい時もある。しかし、それだけではもったいないことが理解できた。再読をしていこう。ただここでもまず自分がよかった、面白かったと思った本からになるだろう。ここの意識を変えると、見えてないことがよくわかるのだろうけど。
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