マチネの終わりに の商品レビュー
『幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の名前が、くっきりと示されることだった。』
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筆致が美しい、平野さんらしい作品。 前半部分だけでは、蒔野の想いは理解できるが洋子はなぜ蒔野に惹かれたかがよく分からなかった。 後半にかけて、そのなぜが解明されてきて2人が時間や立場を越えて特別な関係であることが分かる。 読者の方には共感出来ない、世界に入りにくいと感じる人もいると思う。 過去が今を、未来を変えているとは本作品の主文かもしれないが、その意味を深く考えると味わい深い作品だと私は感じた。
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第2回渡辺淳一文学賞受賞作。ということもあり読み物としての品質は担保されているのだろう。一種のプラトニックラブを演出しようとしたのだろうが,著者の自己陶酔の域を出ていないように感じる。
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未来は常に過去を変えていると言う言葉が印象的だった。 未来の事、これからの行動で過去はいい意味でも悪い意味でも変わってしまう様な繊細なもの。 過去の出来事は変えられない事実だと思っていたのが覆されるような文章だった。
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映画を途中で断念して小説へ。ロンドン、ニューヨーク、東京を舞台に、お互いを想いながら別々の人生を生きた男女のお話。「冷静と情熱の間」を思い出させる。
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たった3度の出会いで変わってしまった過去と未来、とても広大な三角関係。戦争や精神病、その他色々の情勢のより深く知ってたらもっと面白かったのかな、にしても三谷の気持ちは凄くわかる 卵が奪われた親鳥の気持ちの様な...けど洋子側が不憫すぎる結局1人になったのはダメだよ...
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2024.2.21 高校ぶりに読み返した 運命論を描いていると思うが、もう少し単純であれば、薪野と洋子がそれぞれの苦悩を相手に預けられれば、2人が結ばれる世界線は守られたのではないかと思う。 でも、この小説で何度も唱えられる、「過去の記憶は変えられる」がお守りにもなるし、悲劇...
2024.2.21 高校ぶりに読み返した 運命論を描いていると思うが、もう少し単純であれば、薪野と洋子がそれぞれの苦悩を相手に預けられれば、2人が結ばれる世界線は守られたのではないかと思う。 でも、この小説で何度も唱えられる、「過去の記憶は変えられる」がお守りにもなるし、悲劇における幸福をしっかり感じさせてくれる 私も過去の辛い記憶や苦い記憶を 少しでも良いものに思えるように、感じやすさや繊細さを大切に生きたいと思った。
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この作家をそれほど読み込んでいる訳ではないのであくまで印象に過ぎませんが、19世紀頃の大河小説の日本語訳のような読感を意図的に構築した作りのように感じました。 要するに今時のスピーディーなものではなく、ゆっくりと書き込むような文体で枝葉はあるけれども基本は大きくて、かつシンプルな...
この作家をそれほど読み込んでいる訳ではないのであくまで印象に過ぎませんが、19世紀頃の大河小説の日本語訳のような読感を意図的に構築した作りのように感じました。 要するに今時のスピーディーなものではなく、ゆっくりと書き込むような文体で枝葉はあるけれども基本は大きくて、かつシンプルな物語を語るという。 映画は観てないですが、観ない方が良いかな?と思わせてくれる作品かと。
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あまりにも切なくてあまりにも美しい、 物語が大きく変わった第六章での三谷の行動。 一読者としても軽蔑したし大きな憤りを感じたけど、痛いほどに三谷の気持ちもわかる。 あれだけ日々蒔野に寄り添い尽くしてきて、そして恋愛感情まで抱いていたら、その愛情の中には強い執着も混ざっていたので...
あまりにも切なくてあまりにも美しい、 物語が大きく変わった第六章での三谷の行動。 一読者としても軽蔑したし大きな憤りを感じたけど、痛いほどに三谷の気持ちもわかる。 あれだけ日々蒔野に寄り添い尽くしてきて、そして恋愛感情まで抱いていたら、その愛情の中には強い執着も混ざっていたのではないか。 三谷があの行動を起こさず蒔野と洋子が出会っていたら、三谷は自分の存在意義まで見失って理性を保っていられなかったようにも感じる。 洋子に対する三谷の嫉妬や怒りの感情も分かるからこそ辛かった。 子育てにしろ終盤で語られる洋子の母親の決断にしろ結婚というものの前には愛情よりも先に利害の一致という冷たくて大きなものが横たわっているように感じた。 三谷の行動は傍から見れば醜かったし、リチャードは少々打算的だった。 けれど生活は醜い、そしてお金は打算的でなくちゃ得られにくい。 結婚をして子供を産み育てるには蒔野と洋子はあまりにも美しすぎて熱情的だった。 どれだけ遠く離れていても求め合い愛し合った二人、魂が共鳴し合っていたというか(蒔野と洋子だからこの言葉が似合う)だからこそ一瞬のすれ違いで崩れてしまった恋だったのかな。 愛すること、苦しむことは地続きになっているように感じたし、想いが大きければ大きいほどその両方に胸を締め付けられるのだと思った。 この本を読んでから一読者としてもやり場のない感情が心の中でせめぎ合っている。 感想はうまくまとめられないけれど、とにかく読めてよかった。 今私が読んで感想に最初に書いたのは物語が大きく動く第六章のことだったけど、年齢を重ねてからまた読んで、仕事や死生観について多く描かれている章をもっと深く読めるようになったらいいなと思う。
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大人になるからこそ現実との折衝で動き出せない言葉にできない気持ちがあるんだろうなあ。 些細な気持ちの変動を読者に読み取らせる言葉選びが繊細すぎる一札
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