慈雨 の商品レビュー
じわじわと掴まれて引き込まれる作品でした。 10年後の自分と、現在の自分と、10年前の自分とを考えながら読んでいました。 いつかお遍路参りをしてみたいです。
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3.5 冤罪に悩む定年した警察官神場。何も知らない妻とともに、四国遍路の旅に。そんな中で起こった少女誘拐殺人事件。デジャブのような事件に、かつての部下、緒方と同僚の鷲尾課長に連絡をとり、安楽椅子探偵のような感じに。遍路の旅と捜査が同時進行で進む。柚月らしく、人物の熱さと苦悩、真面目さを描き出し、考えさせられ感動させられる作品。妻香代子の、贖罪に伏し無一文になろうとする神場に、何もないところから始まった自分たちが最初に戻るだけだと宣言するところには救いがあり泣ける。優しく降り注ぐ慈しみの雨、慈雨。 逆打ち。一回の逆打ちは順打ちの三回分のご利益がある。弘法大師は常に順打ちなので必ず会えるとか。道標に沿って進む順打ちに比べ、苦労が多い。深い業を背負っている者は、敢えて辛い道のりを選び、己を強く戒める。ばらばらに回る乱れ打ちというのもある。 「全ての人間は、本人の意思とは関係なく、この世に産み落とされる。望まれて生まれてくる命と、そうでない命。だが、命の重さは変わらない。どの命もこの世に生をうけたことを祝福されるべきだ。祝福する人間はひとりでも多い方がいい。その人間が赤の他人の、刑事であってもな」 刑事になるには、実績がいる。犯人の検挙数、表彰の数など目立つ手柄をあげ、刑事選抜試験を受けるための署長推薦をもらう。講習を受け、刑事課長から呼ばれて始めて刑事になる。3年間呼ばれなければ資格は失効する。
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警察と言うのは、大変な仕事だな。 警察だけでなく、検事や裁判官、そして医者などもそうかもしれないが、1つの過ちが人の人生を左右してしまうかもしれない、責任の重さたるや、、、 仕事をしていれば、長い仕事人生、過ちや後悔の1つ位あるものだ。個人の倫理だけではどうにもならなくて、組織...
警察と言うのは、大変な仕事だな。 警察だけでなく、検事や裁判官、そして医者などもそうかもしれないが、1つの過ちが人の人生を左右してしまうかもしれない、責任の重さたるや、、、 仕事をしていれば、長い仕事人生、過ちや後悔の1つ位あるものだ。個人の倫理だけではどうにもならなくて、組織の判断にのまれるしかないことだってある。 ただ、普通の仕事では、それが1人の人生、その家族などの周囲の人達の人生を、根底から変えてしまうようなことは、ほぼ無いだろう。 幼女誘拐殺人事件、冤罪。重いストーリーの中で、香代子と娘の幸知の明るさ、優しさが救いだった。 二人の存在そのものが、慈雨のようだ。 そして、緒方の真っ直ぐさと強さも清々しい。長い警察人生の中でも折れることなく濁ることなく、今の緒方のままでいて欲しい。
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何だか骨太な刑事ドラマを観てるような感じで一気読み。神場の長年の葛藤、それも含めて支えてきた刑事の妻。古き良き昭和感にハマる。 ただ、今の方の事件解決が意外とアッサリ。 ミステリーというよりも人間ドラマ色が強いかな。 虎狼の血や佐方貞人みたいな柚木裕子作品の男くささ、結構好き。
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四国お遍路の旅を、ほんの少し一緒に体験している感覚が、読了の達成感を押し上げます。警察小説の大河に、血脈、運命、夫婦、親子の支流が注ぎ込まれたように感じました。できた妻 香代子をちょっと見習って、夫を労わないと、と今夜は思ってます。
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文句無しの秀作!ダブル進行の上げ方と切り替え方は相変わらず絶妙だし、タイトルの「慈雨」、唸ります。ちょっと言葉が見当たらないぐらいの作品でした。
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「孤狼の血」にすっかりどハマりしてからの柚月裕子さん2冊目。 妻への想い、娘への想い、かつての職場、同僚、後輩への想い。ちょっと独りよがりの考え方が、定年を迎えだ昭和男性にありがちでリアル。 私財投げ打っちゃて筋を通そうとするなんて最後の最後まで独りよがりの自己満足ぽい所が残念...
「孤狼の血」にすっかりどハマりしてからの柚月裕子さん2冊目。 妻への想い、娘への想い、かつての職場、同僚、後輩への想い。ちょっと独りよがりの考え方が、定年を迎えだ昭和男性にありがちでリアル。 私財投げ打っちゃて筋を通そうとするなんて最後の最後まで独りよがりの自己満足ぽい所が残念だけど応援したくなる。 不器用な神さんに穏やかな老後がありますことを…
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ミステリアスな展開を想像していたが、主人公をはじめとする登場人物の心情や思想、生き様が描かれたヒューマンドラマ。 主人公の神場、遍路の旅路で出会った鶴のセリフには何度か心を打たれた。
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事件の解決より人の気持ちに重点を置いた作品だと思う。 面白かった。しかしその後どうなったか気になる。
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作者柚月裕子さんは四国八十八箇所お遍路を歩いたのだろうか。歩いた後に慈雨のストーリーを考えたのか、冤罪と言う命題にお遍路を噛み合わせたのか。事件の被害者や家族の思い、冤罪を生んだ背景など様々折り込まれ面白かった。
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