カゲロボ の商品レビュー
どこにでもいるような、今を生きる人たちのお話を描いた短編集。 でもそこに現実ではあり得ないシステムやテクノロジーが合わさることでちょっぴり不気味で、どこか不思議な読後感をもたらしてくれました。 みんな色々悩んだり考えたりしながら生きているんだなー、と当たり前のことを再発見できた気...
どこにでもいるような、今を生きる人たちのお話を描いた短編集。 でもそこに現実ではあり得ないシステムやテクノロジーが合わさることでちょっぴり不気味で、どこか不思議な読後感をもたらしてくれました。 みんな色々悩んだり考えたりしながら生きているんだなー、と当たり前のことを再発見できた気がします。
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最悪のことは何も起こらなかった。 何も起こらなかったということが、ここにあった。 それはなんという幸せなことだったことか。 作中に出てくるこの文章で、今の私がどれだけ幸せかと気づかせていただきました。
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ロボットがテーマの短編が9つ収録されている短編集。 「カゲロボ」という人間そっくりなロボットがこの世界にいるらしいという噂から1つ目の物語は始まる。短編を読み進めるごとに、この作品の世界でロボットの立ち位置が変遷している様子がうかがえる。 連作短編集とまではいかないけれど、短編同...
ロボットがテーマの短編が9つ収録されている短編集。 「カゲロボ」という人間そっくりなロボットがこの世界にいるらしいという噂から1つ目の物語は始まる。短編を読み進めるごとに、この作品の世界でロボットの立ち位置が変遷している様子がうかがえる。 連作短編集とまではいかないけれど、短編同士の繋がりもみられた。 物語の設定や展開は平和でないものばかりなのだが、木皿さんの作品をドラマや小説で見たり読んだりする中で感じる優しさを、今作でも感じることができた。 押し付けがましくなく、すとんと心に落ちるような、そんな優しさだ。 特に後半は個人的に印象に残ったり、はっとさせられる文章があったように思う。 終盤のメッセージもとても素敵だなと思ったし、他の短編との繋がりがあって良かった。 一方で、特に前半はこの物語の世界観がよく分からないまま進んでいた感があり、物語に入り込みにくい部分もあった。 また優しさはありつつも、これまでの作品や可愛らしい表紙とは対照的に内容の不穏な感じや得体の知れないロボットの不気味さも所々あり、戸惑いもあったかもしれない。
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木皿泉さんといえば、クスッと笑えるけれど、なんともいえない奥深いものを残してくれるドラマや小説…といったイメージ、それにこの表紙から、もう楽しむ気満々で読み始めました。 でも、今回の木皿泉さんは全然違う! 人間そっくりのロボットが職場や学校に入り込み、イジメや虐待がないか監視して...
木皿泉さんといえば、クスッと笑えるけれど、なんともいえない奥深いものを残してくれるドラマや小説…といったイメージ、それにこの表紙から、もう楽しむ気満々で読み始めました。 でも、今回の木皿泉さんは全然違う! 人間そっくりのロボットが職場や学校に入り込み、イジメや虐待がないか監視している、それがカゲロボ。 読み始めは都市伝説のようだったカゲロボ。 それがどんどん読み進めていくうちに、世にも奇妙な物語的な世界観になったり、ものすごく現実的っぽかったり…。 短編集で、それぞれのお話でカゲロボは違う形で登場してくるのですが、人間の弱かったり狡かったりする心を抉ってくるのです。全くクスッとはできません。 作中、何度か苦しみの象徴に蓋をして、縫い込み、見えなくしてしまうという場面が出てきます。それは、ザックリと開いた傷口を縫って、もう一度やり直せということ。小説家はいつも針と糸を持ち歩いて、破れたところを見つけたら、とにかく縫うのが仕事だと。 だから私はいつも小説に救われているんだなぁと、そんな風に思いました。 カゲロボは本当にいたのか?自分自身が作り上げた幻想なのか?なんとも不思議なお話でした。
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ご夫婦で脚本家をされているお2人の小説第3作目の作品。 人間そっくりなロボットが人間社会に紛れ込んでいて密かにターゲットを見張っていると言う嘘かまことか不明な都市伝説に沿った話から始まる短編集。 そっくりロボットは人間にとどまらずネコや金魚や鉄の箱や痴漢の指などなどまで笑 肌 ...
ご夫婦で脚本家をされているお2人の小説第3作目の作品。 人間そっくりなロボットが人間社会に紛れ込んでいて密かにターゲットを見張っていると言う嘘かまことか不明な都市伝説に沿った話から始まる短編集。 そっくりロボットは人間にとどまらずネコや金魚や鉄の箱や痴漢の指などなどまで笑 肌 足 目 声 指 顔 汗 影 傷 の9篇から成っているちょっと不気味で怖いけどドキッとする真実味も醸している♪ さらっと読み終えることができるけれど、それぞれの篇にドキっとさせられる箇所が散りばめられていて結構じっくりと考えながら読まれされてしまった。 まるで絵空事とも言い切れないのを現実社会現象から受け取る昨今だけに! そしてエピローグ部分とプロローグ部分とがきちんと繋いであるのもなかなかでした。
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社会の随所に配置され、ある状況に置かれた人間を見守るアンドロイドと、彼らによって人生が変わっていく人間を描くSFヒューマンファンタジー連作短編集。 ◇ 「人間そっくりに作られたロボットがこの社会に溶け込むようにして我々のすぐそばで暮らしているらしい。...
社会の随所に配置され、ある状況に置かれた人間を見守るアンドロイドと、彼らによって人生が変わっていく人間を描くSFヒューマンファンタジー連作短編集。 ◇ 「人間そっくりに作られたロボットがこの社会に溶け込むようにして我々のすぐそばで暮らしているらしい。」 笹野冬がタケルからそんな話を聞いたのは小学3年生の時だった。理髪業を営むタケルの父は顔剃りの時のはだ触りで人間とロボットの違いがわかるという。 けれど、タケルの父は急に痴漢の疑いとやらで逮捕され、タケルも転校していなくなったあと、冬はロボットの話を忘れてしまっていた。 冬がその話を思い出したのは、中学1年になり同級生が自殺して大騒ぎになった時だ。 クラスの男子たちがまことしやかに話しているの声が冬の耳にも聞こえてきた。 曰く、人間そっくりのロボットである「カゲロボ」が学校や家庭等に入り込み、いじめや虐待がないか監視しているらしい、と。 曰く、自殺事件の翌日に同級生のGが早退したのは、自殺の原因となったイジメの犯人として逮捕されたからで、その証拠となる映像を警察に提供したのが潜入していた「カゲロボ」である、と。 やがて男子たちの話題は誰がカゲロボなのかに移ったのを機に、教室をあとにした冬だったが……。 (第1話「はだ」) 全9話。 * * * * * 都市伝説を扱った小説かと思ったのだけれど、本当に「カゲロボ」と噂されるロボットが登場する作品でした。おまけにカゲロボは人間型だけでなく、ネコ型、金魚型なども出てきます。 おもしろいのは、ミッションが完了するとヒューマノイドは姿を消すし、それ以外のロボットは回収されてしまうということで、回収しにくるのもロボットなのです。 気に入ったのは第4話「こえ」で、箱型のロボットが登場します。 それは人間そっくりでなく、ロボットであることは明らかで、それまでのカゲロボとは異なるタイプです。 この箱ロボはイジメにより不登校になった中島という中学生の代わりにクラスにやってきました。授業を中心とする学校の様子を、自宅に引きこもる中島に伝える役割を担います。と同時に人間の中島のように食事もすればトイレにも行くのです。 第4話のポイントは2つあります。 1つ目は、箱ロボが自分では動くことができないという点です。当然、お世話係が必要になります。 2つ目が、そのお世話係に指名されたのがイジメた側のツチヤという同級生であるという点です。 ツチヤは担任教師から ( 半ば強制的に ) 依頼され、11 kgもある箱ロボを持ち ( しかもカメラが常に前を向くよう配慮しつつ ) 、そのロボットの食事 ( 流動食です ) の世話からトイレ ( 「尿的」な液体が飛び出します ) の世話を焼いたうえ、中島宅への送り迎えまでをすることになったのです。 最初はイヤイヤ世話をしていたツチヤですが、世話を続けるうちに箱ロボに対して奇妙な愛情を感じるようになっていくのです。そして、京都への修学旅行を迎えました。 班行動となった京都でツチヤは……。 このカゲロボプロジェクトの持つ意味が明確になってくるのが、この第4話です。 その他では、第6話「かお」が印象的でした。 娘が生まれたばかりで離婚することになった若い夫婦。どちらが子どもを引き取るかでもめた末、公平になるよう娘そっくりの成長型アンドロイドを申請して作ってもらい、1人ずつ引き取ることにします。 ベッドに並んだ2人の赤ん坊はどちらが人間でどちらがアンドロイドか区別がつきません。 ところか、いざ選ぶだんになって、神経質な母親の方が先に ( 人間である方を ) 見極めて選ぶのですが……。 我が子そっくりであっても、ロボットを疎ましく思う親たち。なんとなく鉄腕アトムを思い出しました。 収録されている話の中には一見ホラーっぽい作りのものもありますが、1話ずつ読んでいくうち、カゲロボが何のために社会に投入されているのかがしだいに明確になっていきます。 木皿さんの人間を見つめる優しい目線を感じる9つのお話でした。
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SFのような不思議な話の短編集。設定が面白かったから長編としてもっと深掘りしたものが読みたいと思った。
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短編集だったけど どれも繋がっている 面白かった〜〜けど ちょっと怖い よくこんなお話を思いつくよね
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「はだ」「あし」「めぇ」「こえ」「ゆび」「かお」「あせ」「かげ」「きず」9話収録の短編集。 SFとファンタジーをミックスさせたような短編だがどの物語にも毒や悪意が潜んでいて心がザワついた。 都市伝説になっているカゲロボはみんなを見守っているのか、はたまた見張っているのか、その...
「はだ」「あし」「めぇ」「こえ」「ゆび」「かお」「あせ」「かげ」「きず」9話収録の短編集。 SFとファンタジーをミックスさせたような短編だがどの物語にも毒や悪意が潜んでいて心がザワついた。 都市伝説になっているカゲロボはみんなを見守っているのか、はたまた見張っているのか、その正体が気になる『はだ』 陰険な中学生男子のイジメと奇妙な行動を描いた『あし』は心が波立つ。 映画のエキストラで認知症の徘徊老人を演じる事になった主人公の意外な結末に驚かされる『めぇ』等 不穏と薄気味悪さ、不思議な世界観の中に救いも感じる作品集。
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何者でもない自分の人生。でもその悲しみや絶望を誰かが見守ってくれているのだとしたら。どの物語にもカゲロボ的な存在がいて登場人物がゆるく繋がっていて。生きているっていう実感。おもしろい。さすがだ木皿泉。
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